友情と青春には罪を牽引して   作:iiduma

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この作品はシルバー事件25区という作品に影響を受けた少女兵器大戦を基にした二次創作小説です
少女兵器大戦を基にしてはいますが細かい設定はオリジナルであり改変なども加えられています

兵器大戦が元となったキャラクターは元ネタに沿ってはいますがキャラはほぼ崩壊しています
オリジナルキャラクター、グロ表現なども多々ありこれらが苦手な方は閲覧する際は注意してください


prologue

[Let's put black and white]

 

 

 

2162年およそ直径200mの複数の隕石が突如現れ世界を襲った、地球到達前に世界はミサイルによる破壊を試みたがバラバラに散らばった隕石の小片は大気圏を突破した世界中を襲う

世界規模で見ればアメリカの首都ワシントンは完全に崩壊。ヨーロッパ、中国、ロシアも隕石の被害を諸に受け西と東及び第三世界すらも大きな混乱を呈することになった

その被害から立ち直り復興への道を歩みだそうと大国をを中心に世界中が結託したのもつかの間。隕石の影響による変異した生物が世界各地で出現、混乱に拍車をかけた

その中で事故により兵器と融合をした人間は生物としても兵器としても隕石により進化した、人類の叡知も及ばないほどのオバーテクノロジーを用していて、一部の変異体はその力を用いて破壊活動を行い始める。その為か変異体に対する差別はネットやテレビを通じて世界中に広がり始め。国によれば過激な行為も厭わずに、無差別に犯罪者のように彼らを扱い殺害、捕獲をはじめ逆に彼らの反抗心を駆り立てる結果となった。

一方日本では太平洋沿。九州南部地方に落下する。鹿児島県鹿児島市内は復興不可能なほどの被害を呈し崩壊した、が逆を言えば首都に落ちなかっただけまだマシだったと言える変異体の発見情報も見られず世界の混乱とは無関係に被害にあっていない地域は平和な生活を送っていた。

 

しかしその19年後俺は死んだ。平和だったはずの日本の九州の観光地で変異体に襲れて死んでしまった、日本では兵姫と呼ばれているもの。いるはずのない兵姫達は当たり前のように俺達の日常に居座っていた。

 

走馬灯は走り出し止まることを知らない死にたくない止まってくれ、いや止まるな心臓はとまらないでいいんだ、ダメだそんな事まで思い出させないでくれいいんだよ!頼むからやめてくれ、そう自分の脳に語り掛けるとその要求にこたえるように意識が薄れていく光明が見えない‥どうにか助かりたいと思うのの打つ手が何もない。地べたから見る空は生きてきた中で一等美しく感じる、ああ‥‥戦時中に旅行なんてするもんじゃないな

爆音が空からまた一つ響く薄れていくはずの意識は逆にはっきりとしてくる、以前テレビで学者が言っていた死ぬときは逆に脳の活動は活発になり、それが死後の世界や幻覚を見せる。と、活発になった脳は俺の一つ一つの記憶をゆっくりと鮮明に描き始めた

 

 

 

 

*******

 

 

忘れもしないあの日、15歳の頃世界が終わる前日に我が家は最後の晩餐という事で久々に家族三人で外食をしようと赴いた、しかし案の定店は全てしまっていて、街に居るのは絶望にあけくれた人間と暴徒しかいなかった

そんな所にいつまでもいるわけにはいかなかった自分たちは、町を出て遠くへドライブと洒落こんでいた以外にも渋滞は起こっておらず道路はガラガラだった、世界が終わる前日は皆今流行の完全没入型の仮想世界へと旅立っているのか思えば町に居た暴徒たちは装置を購入することも出来なかった人間たちなのだろう、夜の帳のなかで暗黒に染まった海を死について考えながらただただ唖然と眺めていた。

その最中突如空は大きな光に包まれたあまりにも眩しい光に目がくらんでいしまい、その時は世界の終わりを確信したが、事実はミサイルで世界が救われた瞬間だった。携帯でニュースを見ると速報で隕石が爆破されたことを知る、あの光は宇宙から見えた爆破の光だったらしい、俺は柄にもなく明日学校に行けることを誰かに感謝したNASAだとかJAXAだとか当時よくわかってないかったので思いつく限りの機関や組織に。明日がある事と明日を作ってくれた人間に感謝した、翌日の期末テストなどどうでもよくなりあわよくば混乱に乗じてなくなっているように心の底から願ったりもした

その日は家へ帰ることも出来ないほどの距離を走ってしまった上にホテルもやっていなかったので車の中で人生で一番心の底から安心して眠りについたことを覚えている

 

翌日の昼頃家へ帰ると隕石の落下により我が家と、我が家の周囲は完全に破壊されていた。俺たちの住んでいた町に運悪く隕石の小片が衝突し、街から遠く離れたことにより俺たちは運よく奇跡的に助かった

世界が混乱しても日常は続く。意気消沈していた所に早速父親の転勤が決まったとの知らせが飛び込んでくる、家を失った一家は別れを惜しむ間もなく東京へと引っ越すことになった。

 

東京へと引っ越した後の俺の人生は苦労や不安を抱えながらも順風満帆ともいえる日々を過ごせた、受験をなんとか勝ち抜き、大学に入り卒業後は大学院へと入り、24歳で卒業。大手企業へ開発研究者として就職した。

自宅と思い出が破壊された事から今後来る何かから日常を守るための物を開発したいというあいまいな目標を立てて将来を考えていた16歳の少年は、結果的に公務員として武器開発に携わるために装備庁への就職を決めたのだがあえなく試験に落ち。結果自分は内定が取れていた滑り止めの企業に入社した。

我ながら適当な人間だとは思うがこのご時世で大手企業に入社出来ただけましだ、両親に心配をかけることも出来ないために就職浪人など出来なかった夢より安定を取ることは悪い選択ではないと思うし、公開もなかった

 

そうして順調に研究者としての日々を過ごしていたある日、研究責任者からある計画の事を聞かされた、装備庁直々の命令という事で研究室はざわついた。当時の日本政府は大学、企業、各研究機関へと研究資金提供を条件に極秘で政府は新型の兵器開発・例の隕石の研究を募集していた。

ここまであからさまにやられると。平和主義を謳った日本も世界の混乱に乗じて世界を股にかける軍事国家へと動き出すのかと研究所内で話題になったが、先輩によると隣国の動きを警戒しての事だそうだ、仮にあの隕石を軍事利用されたら日本は打つ手もなく、オーバーテクノロジーの前では世界を監視する衛星兵器など役に立たないかもしれない。

当時の公務員でもない企業の社員が利益以上に愛国心を謳い働く様子はとても奇異に映った

「新しい抑止力が現れた今。以前の平和はなくなりまた新しく兵器を開発しなければいけなくなった、不幸中の幸いか日本に向けられた衛星兵器は隕石により破壊された、監視するものもなくなり伸び伸びと兵器開発に乗り出せる!今後の日本の国防の肩を担うのは私達だ!」

と残業で頭がやられた研究棟の先輩が言葉を吐き散らす様子を同僚は冷めた面持ちで見ていたが、内心自分は武器開発という計画に関われることに喜びと期待で胸が躍った

 

俺達に上司からの命令で今後開発に関わる重要な事だと言う事で研究責任者に連れられ、とある施設へ視察へと赴く事となった、施設へと向かう際にはバスに乗り完全に目隠しをされた状態で施設への道のりは分からないようにされていた、施設についた後も目隠しをされたままただひたすらに歩かされたあの時は本当に悪態の一つや二つもつきたかった、ひどい話で事前の説明がほとんどされないままにこの扱いだ。周りからは聞きなれた銃を持った際になるカチャカチャとした物騒な音が聞こえる、しばらく廊下を歩いていると目的地についてようやく目隠しを外された、施設は山奥に位置しているのか廊下の窓からは叢林しか見えない、施設の職員と思われる男が目的の扉の前に立ち自身の目をかざす虹彩認証だろう、ピピっと音が鳴ると扉が開いた

部屋に進むと中は部屋の半分を大きなガラス窓と思われるもので一枚隔てただけのさっぱりとしたものだった

あるとすれば最低限の監視カメラのみで目を引くものとすればガラス窓の向こうにいる厳重に拘束されていたはずの、おおよそ女子高生ぐらいと思われる少女

彼女がちぎったのかバラバラにされた拘束儀を中途半端に纏っている。顔からはとても白い肌が見える、壁に背をもたせかけて俺達が入ってきた事に気づくと目を開けた。

しばらくこちらを見ると又目を閉じる、あまり興味なさげな様子で、どこかうんざりしたような要にもとれる、場の全員が彼女の事を気になっていて、俺も彼女の様相には釘付けになっていた

同僚たちは施設の職員に質問を浴びせかけていたが俺は周りの声が何も聞こえなくなくなるほどに、彼女の姿に魅入られてしまっていた、変に思われるかもしれないけど目を開けた彼女と目が合った瞬間何も考えられなくなった、ガラス窓に近づくと俺の目を彼女もじっと見返してくる職員が俺を制止しようとするがそれを振り払い、窓にぴったりとくっつく

彼女はそれにこたえるかのように立ち上がり、拘束儀をひきずりながらガラスの前に立ってくれた

俺と彼女は向かい合った、この場には彼女と俺しかいないような気さえして、なぜか笑顔が漏れてしまう。彼女もぎこちない笑顔を俺にむけてくれrた、それが嬉しくて仕方なかくてまた笑顔が漏れる

しかし天使のような笑顔は数秒後跡形もなくなってしまっていた。恐ろしく冷たい表情になった彼女は、手をガラス窓越しから俺の手に重ねる、急に恐怖がこみ上げてきた嫌な予感がする彼女の存在がとても恐ろしく思えて同僚に助けを求めようとしたが全員いなくなっていた、なぜさっきまで聞こえなかったのか施設にはブザーが大きく響いている。逃げ出そうと思うのだが足がまったく動かない、彼女に向き直ると何も言わずにただこちらを青い瞳で覗き返す、口をゆっくりと開くと俺に囁いたガラス越しのはずなのにその囁き声は体の奥底まで響いてきた、彼女の口の動き一つ一つに注視するゆっくりと言葉が精神と肉体に浸透する

「殺してやる」

その言葉を聞いた瞬間ガラス越しから閃光が放たれて、俺の体は粉々に吹き飛んだ。

 

 

 

体ががくんと揺れた、焦って周りを見渡すと今までの出来事が夢であることが分かってほっとする、そうだよく考えればあそこで死ぬわけがないんだよな‥嫌な事を思い出した

月明りに照らされた森の中は真っ暗なはずなのに、以前に比べおぼろげではあるが物が見える。死んでから散々な目にあってきたがこの体は以前のバキバキの30代とは思えないほど軽やかで動きやすなった、死ぬことも案外悪くないなと思う

特にやることもなく携帯を開いたが相変わらず圏外で連絡が取れなかった

「繋がらないな圏外‥いやあ‥困りましたねこれね」

独り言をつぶやいていると空の方から声が聞こえてきた

「まったく困ったね」

夢で見た姿と同じ彼女は木から飛び降りてくる、着地するとさっと枝や葉っぱの音が響く、町で拾ったモッズパーカーのポケットに手をつっこむ立ち姿は恰好よくくたびれたパーカーはむしろ様になっていた、一方で自身の血にまみれボロボロになった白シャツにスラックスというみすぼらしい様相の自分に苦笑が漏れる

「やっぱりあまり動かない方がいい感じですかね」

「追われてるとは言えここから止まるわけにいかない動くよ」

「シロちゃん‥しばらく休んでいないじゃないっすかたまには休憩しないと」

足を軽くけられる、俺をにらむと腕をつかみ無理矢理立ち上がらせた

「ねえ‥シロちゃんはやめて十分に休んだでしょ行くよ」

唯々諾々と彼女の後姿を追い始める、これで記憶喪失しているというのだから勇ましいものだ、会社員時代以来の再開を果たし命を救われてからずっと彼女に引っ張られてきた、クーデター軍からの襲撃を受けてから、無くなった記憶を復活させるためにシロちゃんがいたと思われる施設がある東京へと自分たちは向かってる。あるいはシロちゃん自身の記憶を探るために。

「ここで森を降りるんですか?」

「そう道路にでるからそこに沿って歩く危険かもしれないけど迷うよりかはマシだと思うし多分連絡も取れるようになると思うから馬はもう少し頑張って」

「う‥馬?」

「なんかそんな名前だったでしょ」

「漢字は名前にありますけど読みもなにもあったもんじゃないですよ‥ちゃんと名前で呼んでくれませんかね」

質問に答えず彼女はただ沈黙で返した。

森には動物や虫の声が響いている、一歩一歩すすむだびに何かが足をはいまわりのを感じる。森は果てしなく広がっているように思えるほどに広い、ここ数日は携帯もつながらず俺たちは閉鎖的な空間でふたりぼっちのままだった

森を降りていくと次第に懐かしのアスファルトが見えてくるようになった、シロちゃんに道路が見えたことを報告すると白けた様子で生返事をする、ケータイを開いてみると圏外から抜けたことを確認した

「圏外抜けましたよシロちゃん!」

「静かになんかいる」

シロちゃんが前方を見据えて身構えている彼女に倣い前方を見てみると暗い森の向こうには何かがいた、何かといっても本当に真っ暗で何も見えないのだが、ただ間違いなく人間ではない気配がする。頭部から赤い光が漏れ出している事以外は何もわからない。

其処に居るなにかはこちらには物怖じもせず速足で距離を詰めると十歩手前ほどの距離で立ち止まる、その相手にシロちゃんが警戒しながらも口を開いた

「誰?」

「コロシヤだよ」

「何の用」

「何って何をすっとぼけた事言ってるの殺し屋だよ?殺しに来たにきまってる」

「殺し屋と名乗る間抜けな殺し屋なんていないから」

「失礼だなあ‥もしかしたら相当自分の実力に自信があるかもしれないっていう可能性は考えない?」

「考えたよでもそれは言いたくなかったってだけ癪だし」

「性格悪いねまあいいやシロさんの言う通りだよ殺し屋ってのは冗談殺す気もないよ」

「‥なんで私の名前を?」

「そういう情報集めたりするのが私の仕事だから殺し屋ってのもあながち間違いでもないけど」

「そうじゃなくて‥シロって名前はこの男が勝手に読んでるだけだなんで関係ないあんたらが知ってるの」

「あれ‥そうなの?知らなかったなそれはうーんでも私はその男の事は知らなかったし私もシロって聞かされてたよ」

俺がただ適当に読んだ名前。見たままの印象からシロと彼女を呼んでいたその名が彼女を雇っている人間の中で膾炙しているという事は少なくとも記憶を失う以前からもシロと呼ばれていた可能性があるという事、心なしかシロちゃんの表情が困惑で歪んでいる。

「まあそれはともかくとして私はある団体に属しているんだよまあ色々大変な業務を背負わされててね仕事は好きなんだけどただこっちにも色々事情があってねシロさんあなたを追いかけまわすことになったんだけど‥やっと会えたよずっと会いたかった」

「私を追いかけまわして私が行く道行く道を荒らしてる連中はあんたたちって事?じゃあ‥」

「ちょっまってまってまあ‥‥そうなんだけそいつらは私達じゃないシロちゃんが言ってるやつらとは違うから私はシロちゃんのストーカーを殺すストーカー」

シロちゃんと馴れ馴れしく言われたことに対して気を悪くしたのかしかめっ面になっている、というよりはぼんやりだが見えるそのシルエットから見える装備の入り組み方に反して、あっけらかんとした軽い態度と何かはぐらかすような口調に困惑しているようだった

「そいつらはなんなの?」

「私達も分からないけど言うならばうーん‥‥」

わざとらしいオーバーアクションでいかに考えているかを表現しているあご?と思われる場所に手をあて体を大きくのけ反らせると態勢をまた直して人差し指をこちらに向けた

「悪霊かな!成仏させなきゃいけないタイプね大義も何もない執念に突き動かされてるアホアホ亡霊この恨みはらさでおくべきかって感じでさ怪談御三家に比べたらあまりに適当な動機だ謝ってほしいよねまったく」

彼女は手をひらひらさせていかに間抜けかを表現する

「ともかくねこのまま進んでいったらシロちゃんは間違いなく死ぬと思う進んだら駄目だよ別の道をいきなさい道路にでるといいよ森は逆にヤバいから突っ切ろうなんて思わないように」

「あなたは敵なの?」

「彼女らを殺したらその時はまた元のストーカーになるかもしれないシロちゃんの頭はパンドラの箱でもある紐解いたりいじったりすると災厄が飛び出る代物だ人によれば希望だけが飛び出す代物かもしれない‥私もよくわかっていないけどね」

「いきなりそんな事言われて信用すると思う?」

「‥した方がいいよそれじゃあね上司に呼ばれたからもう行くよ‥別にそのストーカーじゃなくても私の上司に見つかったらその男の人‥殺されちゃうかもしれないよ私達は結構強いから二人で勝てるとか思わないようにね‥あと都市に行くのはいいけどあんま派手に動かない方がいいよばれないように動きなねクーデター軍は色々警戒してるからさ」

それだけ言うと彼女は後ろを振り向き立ち去った、自分達に舞い込んできた情報に動揺ししてばらく呆然としていたが、二人で彼女の情報を信頼すべきか否かを話し合った。

「シロちゃんはどうする」

「馬は?」

「俺‥俺は‥確かに怪しいっすけど‥でも嘘を言ってる感じでもなかっとは思いましたねはいそれに上司がどうとかって言ってたけどつまり彼女は上司に伝えずに警告してきたって事じゃないですか‥彼女が単独で行動しているって事だから‥上司を裏切ってまで多分彼女一人で行動する理由があるって事でシロちゃんを生かしたい組織的な所のスパイとか‥」

彼女は俺のたどたどしい物言いにうんざりしたのかもういいと手でジェスチャーをする

「そうとも考えられるけど‥それだけじゃ信用するに足りない‥でも確かに嘘をついてるって感じでもなかってのは同意する態度はともかくとして」

「‥‥前々から思ってたけどシロちゃんはどうやって嘘とか見分けてるんですか?」

「私はなんか勘がいいの‥」

しばらく考え込んでいたが元来た道を戻ることにした、依然として自分たちが信頼できるものと言えばお互いと携帯しかない、多少の力はあるが普通の兵姫達のように装備を持っていない記憶喪失の少女と、罪悪感から会社を辞めた無職の一度死んだ元人間。あまりにもこころもとがなさすぎる面子だ、何よりその一人が足手まといにしかなっていないそれを思うと自分が情けなくて仕方たなくなる、自分が強ければあの女の忠告を無視してでも行けたのだが、今は武器でも何でもいいけどただただ力になるものが欲しい

いつまでも気をもんではいられないので端末を取り出してアプリを開く、現在地から京都へと向かうためには大きく遠回りをしなければいけない、地方から離れれば整備されていてある程度は自由に行動できるはずだ山奥を行動しなければならなくなったが今は贅沢を言っていられない、行動しなければ死ぬだけだ。

「行きましょうシロちゃん」

「うん」

その決意をへし折るように携帯端末からバイブ音が鳴る、山奥へと歩き出そうとしたシロちゃんは動きを止め俺の方向へと振り返る

「何?誰から」

携帯を覗くが見覚えのない名前と電話番号が表示されている、さっきの殺し屋を名乗るおかしな人間もどき兵姫もどきの事もあり恐る恐る電話に出た

「はいもしもし」

「こんにちはやっと会えましたね」

まただ

「‥失礼ですがどちら様でしょうか?」

「オブザーバーと親しい人間からはそう呼ばれています」

「オブザーバー‥オブオブですね」

「兵姫ではないですが私もあまり名前には頓着しません‥それにしてもあなたの安直なネーミングはすきではありません」

「ああ‥癖なんですよねこれすいません」

シロちゃんが私の肩を軽く叩くと真面目にやれと威圧している

「まあ本題に入りましょうシロさんは聞いていますか」

シロちゃんに目を向けると彼女は神妙な面持ちで頷く。

「聞いています」

「そうですか‥シロさんあなたとは後でゆっくりと話したい私の友人もあなたと積話もあるのでね」

「友人かどうかは知らないけど」

シロちゃんが不愉快そうに言葉を漏らすと電話の相手ははははと笑うと咳払いのような真似をする、話してみるとどこか細かい言動の一つ一つがとてもわざとらしく胡散臭い印象を与える人だ

「私の事覚えていませんか?」

「あなたは私の事を知ってるの?私は記憶が無くなってるんだ過去を探してる」

「‥なるほどそうですか道理でね‥私もあなたについて聞きたかったのですが‥‥そうですね残念ながらあなたの事は高校生までの頃しか知りません2162年の事件から大けがを負ってしまいましてねあなたの事を見守ることが出来なくなった」

2162年と聞くと反射的にあの嫌な記憶が思い出される、いきなり現れて世界を滅ぼそうとしようとした揚げ句、自宅を吹き飛ばしたあの隕石反射的に携帯を握る力が強くなり眉間にしわが寄る彼女もそれの被害者だと思うと同情した

「見てたって…あなたもストーカー?」

「そうともいえますが決していやらしいものではありません純粋な友情です」

「‥そのストーカーに聞くけど私はその隕石のせいでこうなったって事?」

「そうですね私達に祝福と混乱と呪いを与えたあの隕石があなたの過去に絡んでいるのは間違いありませんこうやって会えてるという時点で事実は違いましたが私の友人からシロさんあなたが死んだことを聞かされてとても嘆いたものですよ」

「私が死んで‥誰なのその友人って」

「あなたのおじいさんです子供のあなたを連れて私の所にやってきましたその時ですかね初めて会ったのは実際会ったのはそれで最初で最後でしたが‥あなたのおじいさんはあなたを深く愛していました彼はあなたの父親と母親からあなたが死んだことを聞かされたようです」

「私の家族‥」

「そうですあなたの家族です残念ながらお祖父さんはシロさんのご両親とは不仲だったようですがね‥事件以来悲しんだ友人は私の家へ訪ねて私の家へと引っ越すことを提案してきました勿論私は了承しましたしかし生きる力もわいてこず大切なものを失った彼の様相ときたら見ていられないものでした10年間そうやって腐れきった生活を送っていると戦争の荒波も気にならないのでしょう私の自宅でゾンビになっていた彼にある時朗報が飛び込んできたのです正確には私にとっての朗報でもありましたがツイッターであなたと思わしき姿の人間が男と歩いてる写真があがったのですそうなるともう彼と私は喜びに喜びましたよ私と協力してあなたの姿を追いつづけましたありとあらゆる組織に手回しをかけようやくあなたとこうして巡り合うことが出来た」

彼女の過去を知る人物に出会えたことに喜びを感じていいのか、散々な目に遭いながらも探し求めてきた記憶の一端を知る人間に遭えたというのに彼女は何処か寂しそうにしていた

「あなたにはできれば過去を探すことをやめてほしいというのが私の本音ですその道は修羅です敵はあまりにも大きすぎますこのまま進んでもあなたを狙う連中に殺されてしまうかクーデター軍に捕まってしまうでしょうね仮にあなたが中立だとしてもです私としてはあなたを追う連中があなたの記憶だけを抜きだして解放してくれるというのなら人間や政府軍がどうなろうと私はどうでもいいのですが」

「クーデター軍は何のためにあなたを?」

「自慢ではないですが私の力ではないでしょうか私の存在は世界を牛耳ることが出来るほどの物です政府軍を倒した後は私を使い世界の実権を握り世界に散らばった変異体を統率する‥というシナリオでしょうかシロさんあなたが捕まってしまうという事それは人類が滅ぶことを示しているという事ですあなたもクーデター軍の人間に対する扱いを見てきたのなら分かるでしょう?」

「‥あなた何者なの?」

「obserberですそのままの意味ですよ」

彼女の表情を見ると苦笑を隠せないようだった記憶がない彼女には英語は分からない

「‥‥まあいいいやオブザーバーさんクーデター軍はあなたが目的って事ね教えてくれてありがとう‥でも私は隠居生活なんて送ることはできないよ残念だけど私を追っかけてくるストーカーにおびえながら送る生活なんて御免だ私が以前は人間だったとしても今の私は人間じゃない記憶を失ってからシロと呼ばれてる元人間として生まれ変わったんだ人間の世界が滅んだとしても不思議とあんまり実感がわかないんだ私に家族がいたとしてもね」

「‥追っている連中がクーデター軍を荒らしまわってるためか今は巻き返しが起こってるみたいですしかし政府軍はいずれ倒されるは間違いないでしょうねそうなると管理下におかれた日本でシロさんとお馬さんの逃げ場は少なくなるでしょうねそのうえでのあなたに危険な目を合わせないためのプランは何通りか考えてきたんですけどシロさんがそういうのなら私はそれに従いましょう仕方ありません」

「随分素直だね」

「あくまで私はただの友人としてアドバイスをするだけですから無理強いはできません」「‥馬はどう思う?」

二人の話を呆然として聞いていた俺はハッとして頭を働かせる、今までも危険な目に遭う事を厭わずに動いてきてはいたが、自身の命の恩人が人間の命運に関ることに無関心と分かると、自身の中で葛藤が生じ煩悶とした感情がうずまいてきた、俺には家族も友人もいる彼らを守るためにはまず彼女に危険な目に遭ってほしくはない彼女は記憶がないが俺は今まで人間として生きてきて今でも人間だったころと変わらなないと思うからこそ、彼女の決断は受け入れがたいモノだったが、しかしそれを口にすると彼女に拒絶されてしまうのが恐ろしく思えて仕方なかった

「馬は‥そうっすね」

シロちゃんが俺の肩を軽く叩くと携帯を手から奪い取る、少し不機嫌な表情を見せていた

「私に気を使ってる?」

「いやそんな事ないですよシロちゃんは命の恩人ですから」

「命の恩人とかどうとか関係ないでしょ?いっちゃ悪いけど馬を助けたのも‥‥‥私が勝手にやっただけだから‥巻き込んだのも私だし」

「いやシロちゃんについていくって決めたのも俺ですから」

「‥‥とにかく私の為に変に気を使わないで‥いい?」

「ああ‥ああシロちゃんがそう思うのならそうします」

シロちゃんはその返答が気に入らなかったらしく今度は強く俺の肩を叩いた

「駄目だ今私に言われてそう決めたでしょ」

「ええ‥シロちゃんはどうしたいんですかそんなの言われなきゃわかんないっすよ」

「‥ごめんでももう一度聞くけど馬はどうしたいの?」

彼女にそういわれると俺は言いたくないという感情を押し込め、一度冷静になって自身の素直な感情を彼女に向き直り吐露した

「俺は‥シロちゃんにあまり危険な目に遭ってほしくないってのが本音です俺には家族も友人もいるんですよね‥でもそれを抜きにしても俺はシロちゃんについていきたいと思うんですよ」

「‥なんで?」

それについては今まで散々考えてきた、なぜ彼女を救おうと躍起になるのかそれは彼女に対する罪悪感もあった、俺は過去に自分が関わろうとしていた事が目の前の少女の人生を奪って為されているという事実から目を逸らして逃げてしまった。結果その罪を清算する形で俺は死んで、皮肉にも償うチャンスを彼女から与えられた、或いは運命が引き合わせた罰なのだろうか。そんな俺に今更人間だったころの物に執着するなんて虫が良すぎる話なのだ

「それが生き返った理由だと思うからです」

「本当に家族は良いの?」

「シロちゃんと同じくもう人間じゃないのなら人間としての人生は名前と一緒にすてようと思います」

「‥そう」

彼女はまた悲しい表情を見せると手に持った携帯に語り掛ける

「‥であなたはどうするのオブザーバーさん」

「私は友人としてあなたをこれからも守っていきたいと思っていますあなたが私を信用するか否かにもよりますが」

「する訳ないでしょ‥でもあなたの話は結構具体的で面白かったよ」

「どうもこれから私が手まわした人があなたの元にやってきますできれば彼女の指示に従って行動するようお願いします」

「もうあったよ上司ってのはあなたの事ね命令を無視するなんて随分勝手な部下」

「‥あれ?そうなんですか‥やれやれ‥じゃあいったん電話を切るので後でメールを送っておきますでは今後ともによろしくお願いしますお馬さんも同じ目的を持ったものとして仲良くいきましょう‥それとありがとうございますあなたが携帯を持っていなければシロさんと連絡が取れなかった」

彼女は愛嬌のある声で俺に声を掛けるそのうさんくさい甘ったるい人の心をわしづかみにするような声につい口角が上がってしまう、シロちゃんに変な目で見られらている事に気づき必死に顔をもみにやけた顔を直す

「ええ‥よろしくお願いしますね」

返事をすると電話はプツリと切れた。ポケットに携帯をしまう

「部下ともどもふざけた奴ら」

「そうですかねいい感じの人だと思いますけど‥」

「何が‥あのバカみたいな部下とはもう会いたくない」

しばらく歩いていくと道路に降りることが出来た、しばらく素足生活が続いていたせいでアスファルトの冷たい感触が足裏に浸透してくる。まっすぐに伸びる道路を見ると月が輝いているのが見えた

今日は満月の夜だ俺たちの頭を煌々と照らし出す、怪しく光る月は魅入られてしまうほどに美しい。

「月が綺麗っすねシロちゃんが夢にでたんすけどその時のシロちゃんにそっくりです」

「は?」

「いや‥かわいいって意味で」

「何言ってんの?」

彼女は俺の言葉を冷たく切り捨てると道路を歩き出した。俺は彼女の後を小走りで追いかけ隣に立って並んで歩く

「‥名前を捨てるって言ったけど馬でいいの?」

「えっあー‥いいんじゃないですかねシロちゃんの馬みたいなものですし」

「‥駄馬でしょ」

「酷いっすね‥」

 

 

************* 

 

 

[Girls who do not cry]

 

 

 

2181年 7月 クーデター勃発から4年 中国地方・島根県江津氏

 

 

燦然と太陽が輝く目眩めく太陽の光の元私達は山奥から町を監視する

森の中は虫や熱気が充満しており蝉の声がひどく喧しい、ヘルキャットさんが必要以上に顔を近づけ喋りかけてくるので、彼女の明朗な声が私の耳元でキーンと響く、彼女から一歩距離をとると再度町を見下ろした

彼女は連日の戦闘に嫌気がさしているのか装備も外して手持ち無沙汰に破壊された町を眺める

彼女にとって私は会話相手としては少々不満らしい。ここ数日は行軍中もけなげに話しかけていたのだが私の反応の薄さに会話する事にあきらめを感じ始めているようだ。申し訳なさを少し感じるもののここ連日のクーデーター軍との戦闘・道中の進軍に多少は私もうんざりしていた。

政府軍との戦闘に向かっているのか分隊が蟻のようにゾロゾロと蠢いている。この兵姫達を10人で奇襲をかける為私達は熱と苛立ちが充満する山奥で肉やコンクリート焼ける匂いを嗅ぎながらクーデター軍を呆然と眺める

「名取ちゃん的にはどこか行きたい場所とかないの?」

「行きたい場所?」

「観光でもさ」

「めんどくさいですよそれに任務がありますし」

「サボろうだなんていってないじゃぁ~ん‥ちょっとした息抜きだと思ってさあ?私達が狙ってる娘もまったりやってるだろうしさ」

「あなたそんな事言う人でしたっけ?゛息抜き゛をしたいだなんて」

「名取ちゃんも゛めんどくさい゛なんて言う娘じゃなかったでしょ」

「‥まあともかく先にここを乗り越えなきゃ観光どころじゃないですからね」

「まあね~」

 

この町で戦闘が行われたようだが戦闘はひと段落ついているらしい分隊が残っているだけで数はそれほどでもないと仲間から連絡が来ている。港の方面も単独行動をしている兵姫が一人だけだ

「これいけるんじゃない?田舎に敵がいないと思って油断してるよ」

「いや‥まだ敵が何型か分かっていないので暫く様子見して頃合いを見計らってから一掃しましょうか」

「そんなの全員陸上部隊に決まってるじゃん」

「念には念をですよ」

「OKOK他の娘にも連絡しとくね」

 

私たちは人数こそ10人しかいない分隊ではあるが個々の頑丈さで言えば普通の兵姫より性能は上らしい、装備自体は特別なものでもないものの生まれ持った頑丈さで敵基地を制圧してきた。勿論作戦はしっかりと立てた上でだ

そのおかげと言っては何なのだが、正体はばれてはいないものの、活動を始めてから数か月でクーデター軍にも私たちの悪評は伝わっているらしい。政府軍の手先として人間の味方をする悪党集団として語り継がれてることを尋問の際に知った。しかし一人を除けば彼らが思うような愛国者集団ではなく私達は一つの任務をこなすことを目的として動いているだけだ。

任務の達成は誰に命令されるでもなく、それをすることが私たちの使命であると潜在意識に深く食い込んでいる、使命に反するなんて考えなんて一つとして浮かばない。抗いがたい衝動のように細胞が従えと命じているから私はただ従っている

今まで屠ってきた兵姫達はその任務の障害になったために殺しただけでありクーデター軍だから。なんて特別な理由ではない

 

 

 

 

 

シロの殺害

 

 

 

 

 

 

 ただそれだけのために動きそして今回も変わらずその人物を殺すため。障害となるものを取り除くだけだ

「じゃあ始めますから静かにお願いします」

「おーけー」

普段なら多摩さんがやるのだが今はここにはいないために代わりに私が敵の様子を探る。

意識を集中する。一つ息を吐きまた一つ息を吸いそして吐く、雑念はすべて取り払われ。レーダーのように私の意識は空間へと広がっていく。周囲にいる物全てが心に触れてくる

不思議と意識を集中すると周囲が鮮明に見えてくる、例えるならすべての物質に平等に与えられる魂と呼ばれるものの波動を感じ取っていると言えばいいのか、自分でもよく分からないが気付いたときには自然と行っていた。要はテレパシーのようなものだろうかこれとは別に兵姫はレーダ―を使えるのだが自分はこっちの方がやりやすい。

 

「どう?」

「‥全員陸上型ですね‥多分」

「じゃあ私とf2ちゃんとで逃げたやつをやればいい訳ね」

「トドメはくれぐれもさしてくださいよテレパシーで連絡でもされたら面倒なことになりますので」

「わーってるってば‥」

彼女が纏っている装備は重厚な見た目に反し肉体の一部のように軽やかに持ち上がりふわりと空を舞った。自分も兵姫専用の武器を腕と腰に取り付け。山を静かに降りはじめた。

 山を下りていると鈴谷さんの声が頭に響いてくる実行の連絡を寄こしてきたのだろう

 

――名取さん準備はいいですか?

 

――とっくに降りてるよ人数は少ないし消耗はしてるから大丈夫だと思うけど

 

――わかってますよ名取さん一人とは言え気を付けてくださいね

 

――あなた達も気を付けて

 

ブツリと彼女の声が途切れる

 

 

山から眺めていても分かっていたが非常に質素な街だ、なぜここで戦闘が行われたのか。なぜクーデター軍がこんな辺鄙な場所に駐留しているのか、彼女らに何があったのかを聞き出す必要がある シロがここのルートを辿っているという事実はすくなからずともクーデター軍がここにいる事と関わっている事は間違いない

クーデター軍の気配を追いながら全神経を張り巡らせ町を歩く、死体は幾つか転がってはいたが、生きた人間は一人としていなかった戦闘が始まり避難したのだろうか。町の人間からしてみれば日本にクーデターが起きたという重大な出来事を認識出来はしてもこんな田舎は戦争に巻き込まれるなどとは想像するに及ばなかったのだろう、事実そうなのだろうが残念ながらこの町は運が悪かったんだ、焼け焦げた死体に黙とうをささげる

 

町から離れ道路沿いに歩くと港がある、潮臭いにおいが鼻につく。どうやらこの町の偵察と言ったところだろうか、一人港をうろついている。戦闘が終了してだいぶ油断している、彼女自身もここで襲われることはないなんて呑気に考えているのだろう、仲間が負傷しているにも関わらずどこか黄昏ているようなうら若き少女の背中に一種の哀愁じみたものを感じる、それを見ると兵姫というものはその装備が無ければただの少女でしかないのだと改めて感じた

気配を殺し一歩一歩近づいていく、兵姫の華美で凶悪な装備の見た目に騙されがちだがそその隙を突けば兵姫と言えどあっけなく死んでしまう。

彼女と私との距離が縮まっていく、生まれた時から肉体の一部として備わった兵器にすべての神経と殺意を集中する 彼女の肉体を滅ぼす為にすべてをささげながら私は走り出した

 

私は彼女の頭に殺意を吐き出し零距離で砲弾を撃ち抜いた 振りかざされた手には赤く濁った花火が爆発する

しかし間違いなく彼女の頭部を破壊したつもだったのだが彼女が思いのほか頑丈だったのと紙一重で躱したのか直撃はしなかったらしい、彼女はよろめきつつも態勢を立て直し私の腹部に拳を放った、腕で防いだものの彼女の腕力に体ごと吹きばされた

体を起き上がらせ彼女の様子を注視する、私の攻撃は決して当たらなかったわけではなかった、彼女の頭部は欠損していて側頭部からは露出した脳が見えている顔面は崩壊していて視力もほぼないらしい、今だに立っていることが奇跡に等しい状態だ仲間に連絡すらも取れないのだろう

自身の肉体から吐き出された重機関銃を私に向け発砲しようとしているのだろうが、立っていることもすらままなっていない彼女はしばらくあらぬ方向に銃を構えていたが機関銃を取り落とし膝をついた

顔からぼたり ぼたりと血が吐き出される 念のため彼女の頭部を砲弾で破壊すると血が飛散し、私の衣服と顔面を赤く染めた

 

 

*********

 

 彼女の死体を引きずりながら海沿いを歩き町の交流施設へと向かう、空は青々としていて白い入道雲は空を覆いつくしてしまう程に水平線に広がっている、浜辺と碧瑠璃の海はどこまでも続いているようだった、彼女の言い分を聞くわけではないが私はその光景を見て向こう側に行きたくなった

しかしその美しい光景に反してどろどろの赤黒いオイルのような血が腕から体に伝い先に殺害した彼女の血を衣服に染み込ませながら歩く自身の姿は醜悪性を醸し出していた、そんな自分にはあまりにも綺麗すぎる世界だ

爆発音が空に響く。町の交流施設から火が上がる、なぜ武器ってのはこう一々五月蠅いのだろうか、あんなデカイ音ださなくてもいいのに私は武器を製造した人間を恨む兵姫が武器を恨むことは自身を恨むことだと鈴谷さんに言われたが、自身を恨むことは何一つ間違ってはいない兵器としての義務なんてどうでもいいだろう、戦争が終わればお払い箱だし。武器が身体の一部なのは私のせいじゃない

また一つ爆発音が空に響くこれは大和さんだろうか。また適当に撃ってるのか、彼女を止める仲間の姿が容易に想像できた

 

施設へ入るとそこらじゅうに死体が散らばっていた、おおよそ暗殺も糞もないやり方で惨たらしくクーデター軍の肢体や内容物が散乱している、場にはヘルキャットさんとバッファローさんを除けば北上さん、木曽さん、多摩さんが三人で寄り集まり何か他愛ないことを喋りヤマトさんを金剛さんとPさんが止めに入ってた、私に気づいた北上さんが鈴谷さんに呼びかける

「名取ちゃん来たよ」

逃げ出すことが無いように足を破損させられていたクーデター軍を一ヶ所にまとめ上げていた鈴谷さんがこちらに振り向く

「どうでした?」

彼女の死体を床に置き鈴谷さんに示すと彼女はうんうんと頷く

「今F2さんとF6さんから周囲を見てもらっていますが報告もないですし今の所は逃亡者はいないですね」

「尋問は?」

「まだです」

鈴谷さんが場にいる仲間に呼びかけると、各々が負傷している兵姫を引っ張ってくる私達が襲撃を掛ける前の戦闘に加わったものは私が殺した彼女を除いて全員負傷、死亡しているらしい

床に散らばる人と有機物と無機物の入り混じる床を飛び飛び避けつつ私は彼女らの前に立った

 

生存した兵姫の内一人が上官で誰かとの戦闘で足を負傷している、残り二人は一等兵二等兵と言ったところかまあ情報が聞き出せれば階級なんて関係ない、尋問の結果の責任の押し付け合いは嫌なので各自で聞きたいことを纏め全員で彼女らを囲んだ。

軍曹を北上さんが前に引っ張り出す、北上さんと私は二人の頭に銃口を突きつける、多少は怯えているようで内一人は今にも泣きそうにしている。それに反し軍曹は命を握られているにも関わらず毅然とした態度を取り、私達を鋭く見据えていた。鈴谷さんが軍曹に拳銃を向けると彼女とその部下に聞こえるようによく通る声で質問した

「単刀直入に聞きますけどなぜここにいるんですか?」

「‥‥お前達こそ何でここにいる」

「こっちの質問に答えてくださいよ答えなかったらあなたの部下を順々殺していきますよ」

「そんな脅しは通用しない」

「‥なるほど」

鈴谷さんが北上さんに目配せをする、北上さんが持つ拳銃から筒音が響くと大口径の銃で頭部を至近距離で撃たれた彼女の頭部は内容物が飛び散った、胴体がずるりと前のめりに倒れると勢いよく血の流れる音がぐちゃりと響く 彼女は死亡した。

 

泣き出しそうになっていた捕虜に血と肉が飛び散り、顔や衣服にかかった。仲間が隣で無残に殺された事が更に彼女の恐怖心に拍車をかけたようだ

「わかったでしょ脅しじゃないあなたも酷い人だ部下が怯えているのにこんな目に彼女をあわせるなんて」

皆がそうだそうだとヤジを飛ばす、そんな状況にも関わらず上官は依然として態度を崩さず黙秘の姿勢を貫く

「こういうタイプって絶対に口を割らないと思うよ」

北上さんがしかめっ面で服にかかった頭部の内容物を床に捨てながら吐き捨てると鈴谷さんは彼女を向き承知しているという素振りを見せた

鈴谷さんがまた彼女に向き直る

「これは最後の警告ですあなたの目的を教えてくださいなぜ彼女を狙っているんですか」

といった緊張した場面で不意に金剛さんが空気を断ち切って鈴谷さんを制止した

「ちょちょちょちょっと待ってよ私たちの任務はシロの殺害でしょ?クーデター軍が狙っているかどうかなんてどうでもよくない?」

「いえクーデター軍が狙っているとは言いますが彼女らがシロを生け捕りにするという可能性もなくはないですからだとしたら私たちの任務の障害にしかなりません私達がここで彼女らの目的を聞きこんで敵であることをはっきり認識しておいた方が今後の為にもなると思います」

「でもなんというか」

彼女の横やりに辟易したのか北上さんが止めに入る

「どーでもいいじゃないそんなのとにかく目的を達成すればそれでいいんでしょ?」

特に言い返すこともなかったのか歯痒そうに金剛さんはおとなしく引き下がった、それを見たヤマトさんが彼女を慰めている

 

「お前たちは何の目的もなく任務についているのか?」

「は?」

普段とはまったく違う恐ろしく冷たい声を鈴谷さんが出す彼女の質問に私達は言葉を返さず沈黙する

「政府軍に命令されて何も考えずになんの信念もなく‥」

「私たちは政府軍に命令されてるわけじゃないよそうしようと思うからするだけです」

「違いますよ!」

そうだ鈴谷さんは今は亡き天皇階下に忠誠を誓っているのだった。よく考えればこの上官と一番近い人間が彼女なのだろか、戦う動機があいまいな隊員の中で彼女が唯一戦う理由を持ち合わせているからよく私が(彼女曰く)適当なことを言うと私は違うと抗議される

「自身が何に命令されたかすらも分かっていないのか愚かだな間抜けだ無様だ機械人形だ自由意志も持たないゾンビだ」

彼女はその後も私達を罵倒し続けたクーデター軍がなぜ戦うか政府軍を倒す意義、クーデター軍元帥クロに対する忠誠心を交えながら、ほかのメンバーは黙って聞いていたが私は嫌悪の感情が心からあふれ出してきた。この手のタイプは好きではないなんというか‥うるさい、やかましい。たまに出る鈴谷さんの゛信念゛も例外ではなくだ。グラスの中から湧いて出来てきたドロドロとした汚物は止まることを知らず私の体中に満たされていく

「‥鈴谷さんちょっと」

「えっ名取さん?」

私は鈴谷さんに尋問を変わってもらい軍曹の前に私が立った。

「あなたの事なんてもうどうでもいいよどう答えないの?」

彼女の頭を銃で小突く

「くたばれ」

「多摩さん!どうこの人」

彼女は特に感覚が鋭く人や兵姫の思考や心あるいは植物や虫の感情すらも読んでしまうほどだ、尋問や探知の際は彼女の協力は欠かせないものとなっている

多摩さんは真面目な表情で軍曹を見つめている、何もかも見透かしたような瞳で。

じっ‥と彼女を暫く見据えると複雑な表情で私の質問に答えた

「ダメですね」

憶測が確信に変わると私は拳銃を彼女に向けた

尋問というのなら彼女の負傷した足を踏んづけ顔面を殴る。あるいそれ以上に残虐な事ははすべきなのだろうが、彼女の魂が答える気はないとそう告げているのなら仕方がない

パシュンと気の抜けたサイレンサーが装着された拳銃の音色が静かに響く彼女も又部下と同じように血を流し倒れる、とうとう生き残った彼女は嗚咽を上げながら泣き始めてしまった

 

「どうする?彼女は食べてしまえばそれでいいだろうけど」

「私はやだ」

北上さんが答えるとそれに便乗するように嫌だ!嫌だと声が上がる、まあだれだって嫌だろう魂を食うという作業は私も嫌いだしどんな俗悪な行為をしてきた私も勘弁としている

一度それをやったことがある魂というものには情報の塊だ。その人間の事が余すことなくわかるその分死んだ相手の体の一部をいじりほじくり返さなければいけない、この作業は私も苦手だなるべく尋問が失敗した最終手段として採用している

 

「私に上官の死体をバラバラにする作業なんてやらせないでくれ」

彼女は涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながらうなずく、彼女の表情には生きたいという思いが犇々と伝わってくる

弱っている彼女は簡単に口を開いてくれた、クーデター軍の兵士全てが戦争の参加には積極的ではない中にはこういう兵姫だっている

鼻水をすすりながら私達に事の様相を説明してくれた

「私達は命令を受けてここに来た彼女の偵察と可能ならば生け捕りと言われて」

「クーデター軍は間違いなく彼女を狙ってるって事?」

彼女はうなずく

「理由は分かる?」

「具体的な事は教えられなかったけど上官は私達に彼女が今後戦争を早く終わらせるかどうかに関わってくるとか衛星兵器の確保に彼女が必要になってくるって言ってた」

「衛星兵器‥?なにそれ‥」

私の疑問にすかさず小型の端末を弄りながら金剛さんが答えてくれた

「まだ戦争がはじまる前に核に変わる抑止力として開発された監視用衛星兵器システム日本に向けられたものは隕石で壊滅したらしいけど現在もほかのものは全部運用してる‥だそうだよ」

「‥へえなるほど‥そうか‥なんかすごい陰謀があるみたいだね‥それであなたたちの部隊と戦った娘はどう戦ってたの?装備は何?」

「彼女は武器も何も持っていなかったけど私達の攻撃を分かってるみたいに避けてきて私達は対処できなかった‥」

肉弾戦での兵姫相手に立ちまわるなんてどう考えても兵姫かそれとは違うなにかであり

人間ではない事はまあ確実だろう

「なるほどじゃあその時の状況をお願いしてもいいかな」

「抑々私達はただの偵察を任務として派遣されただけで部隊では戦闘はするつもりはなかったし想定外の事だった少女にこちらの居場所がばれて戦闘が始まったてしまったんだ少女の片割れには男がいたけど‥あいつが戦闘に関わっていたかは分からない私達が行動できない程度に負傷させると彼女は逃走した私達はここを兵舎として大休止とした所を‥」

「私達に襲われたと‥」

「その隣にいた男ってのは?」

「あいつはただ逃げ回ってただけだから人だと思う」

「そいつの事何か聞かされてた?」

「いや男に関しては何にも聞かされてなかった」

彼女に聞くことを粗方聞いてしまったので鈴谷さんが他の娘に何か聞くことがないかとお互いに確認を取る。

彼女に私は銃口を向けた

 

さっきまで泣きじゃくっていた時から随分柔らかくなっていた表情が驚愕と恐怖が入り混じる表情に様変わりする、゛なんで゛と彼女が言いかけた所で言葉を遮った

「私達にとってあなたは邪魔でしかならないからだよ貴方は残酷だと思うかもしれないけど少しの良心が任務の妨げになるとしたら私はそれすらも殺さなきゃいけない」

許しすら請わずただただ彼女は死の恐怖におびえて泣きだした大粒の涙がこぼれる、仲間の血と混じり赤い涙が頬を伝う。口からは呪詛のような祈りともつかない言葉を繰り返しつぶやいている

「魂があるんだから来世に祈りなよ呪うのなら神様を呪ってくれ」

私が引き金を引くと祈りの声はブツリと途絶えた

 

 

「‥はあ」

施設を出ると、私の暗澹とした心持に反して空は清々しく晴れている。太陽の光が私達を突き刺してくる、雨は雨で嫌なのだがこの暑さも嫌いだ。雨が鬱々としているのなら太陽の光線は朗かな鬱陶さがある。そうまるでヘルキャットさんのような‥いやじゃあヘルキャットさんにとって雨は私か‥?

鈴谷さんが町を偵察していた二人を呼びかけるも全然こちらに向かう気がない、向こうからはとても楽しい声が聞こえてくる

 

――二人とも何してんですか

 

――えー?遊んでる!ははははちょっとやめってって

 

「‥‥‥‥‥」

 

「えーあの二人遊んでるの?私達も行きたい」

「北上さんはここぞとばかりに便乗しますねダメですよ」

「鈴谷さんは真面目だね」

北上さんと鈴谷さんが会話している隣で私は単純に呆れていた。こっちは面倒な尋問をしていたにも関わらず監視もせずに彼女らは呑気に水遊びと来ている。気を取り直して鈴谷さんにこの後の予定を聞いた。

「彼女はまだ近くに居ると思いますから今すぐ追いかけた方がいいでしょうね」

「私疲れたなほらこんなに肌が白くなって」

多摩さんがポロっと弱音を吐く。彼女の透き通るような美しい白い肌を見ると病弱な印象を確かに与えるが、別に病弱なわけではない

「ダメですよ今彼女は近くにいるこのチャンスを逃すわけにはいきません」

「鈴谷さんは意地悪いですよ」

そうだそうだと北上さん達が便乗し始める

「兵姫として生きていて疲れたなんて思ったことありませんよ腹が減ったってのは分かりますがね」

「じゃおなかがすきましたよ」

「我慢してください」

私達もこの機会の重要性が分からないほど馬鹿ではない、渋々としながらも彼女と北上さんと多摩さんは動き出した、この太陽の元では逃げ出したくなる彼女らの気持ちも理解できる

しかし悲しい事に元来より私達に逃げ場はなんてない。休めば汗で風を引いてしまうかもしれない、歩けば熱でやられるかもしれない。でも私達はそんなことで死にはしないから衝動に突き動かされ生ける屍のように働くしかない。あの軍曹の言っていた事が頭で反芻する、あながち間違ってはいなかったからこそ私は苛立ち彼女の頭を撃ち抜いた

 

海へと向かう道を歩いていると雨で鳴りを潜めていた蝉がじわじわと復活の声を上げ始める

襤褸(ぼろ)襤褸(ぼろ)にされた町を見ると蝉の声が死んだ人間や町の悲鳴にも聞こえる、クーデター軍に対しての私の残虐な行動は死んだこの町の人間の復讐ぐらいにはなっただろうか。

何かしらの意味付けをすることで私は自身の行ったことに対する正当化をしているわけではないけど、何か意味がなければ自身が何故こんなことをしているのか分からなくなってしまうから嫌だった

 

住宅地を抜け浜辺に出ると空中で二人が手を振っているのが見える、鈴谷さんが二人に怒声を上げるがいつもの事だからか二人は彼女に謝っているもののその声はとても楽しそうにしていた、その様子を見るとあの二人のこの状況を楽しめることに呆れより羨ましさすら感じた

 

合流して私達はとりあえずはシロを追う事と尋問で得た情報を二人に伝えた流石に事態の重要性を理解していたからなのか先ほどまでふざけていた二人も黙って従った

今後のおおまかなルートは島根を抜けて恐らく鳥取から兵庫県へと彼女は向かうと予測される。

探索は以前と同じく道中彼女の動向を街の住民などから集めつつ、多摩さんのテレパシー及びレーダーで探知しながら進んでいく勿論彼女ばかりに頼らず各々が気を付けて彼女を探る

段取りを決めると北への行軍を私たちは初める、全員が早くうごけるわけではないので行軍は一定のペースでしか動けない、車両の一つでも盗めばいいのだが10人分の兵姫を乗せるものがない為に私達は常に徒歩で行く

申し訳なさそうにPさんが重そうな槍を持ち歩く、いつもの事だから仲間も気にしていないのだがその表情を見るとこっちまで申し訳なくなってくる

‥‥あまりこういうことは得意ではないのだが彼女を慰めるために彼女と歩くペースを合わせた

「ごめんなさい私があまり機敏にうごけないから」

いきなり謝られて出鼻をくじかれた気を使っているのがばれたのか、さらに表情が暗くなる

「‥大丈夫ですよそこまで急いでませんからPさんは悪くないよ」

無様にも必死に言葉を考え考えやっていたので片言に聞こえただろうか。Pさんからもわざとらしく聞こえただろう、にもかかわらず彼女は表情を和らげてくれた

「名取さんや北上さんや鈴谷さんは汚れ役をいつもかってくれて本当に感謝してます」

「汚れ役‥はまあ任務だしやるべきことをやってるだけですよ」

「名取さんの任務にまっすぐ向き合う姿勢は尊敬してますよ」

彼女の天使のような笑顔につい顔を背けたくなる、意味づけだの正当化だの言っている自分が余計醜悪に思えた、彼女に悪意はないのだろうがそんな自分を肯定する笑顔に神聖さと凶悪さが見えるようだ

「名取さんは任務が終わったらどうするんですか?」

「え‥?どうって…どうだろう今まで考えたことなかった‥Pさんはどうなの?」

「私は平和に暮らしたいですね皆さんと一緒に」

「未来の事は分からないけど私は‥今の所は自分が何者なのかを知りたくなったな」

「自分自身についてですか?なんだか哲学的ですね」

彼女はにっこりとほほ笑む

「いやそういうわけじゃなくてもっと単純な事だよ私達がなぜ任務を行うのか誰は命令したのかなんで彼女を殺さなきゃならないのかとかさ」

Pさんはしばらく眉毛を八の字にして真剣な表情で考えあぐねていたが彼女ぽつんと答えた

「そうあるからじゃないでしょうか‥?」

「‥哲学的ですね」

私達は乾いた笑いが漏れ出る。なんだか無性におかしくなった

「でもなんか‥訳の分からないままに戦争の重大な役目を担ってますよね‥衛星兵器でしたっけ」

「うん‥」

尋問を行っていた時金剛さんがシロが衛星兵器と言うものに関わっているという事を知った瞬間、私の精神は大きく揺れ動いた

自身に対する興味が芽生たことは何度かあった、ただそう思っても任務の達成と言う欲求にすべてかき消されることが常だった。犬がご飯の合図を出すと自然に涎をたらすように何をしても私の行動や生き方はすべて内に感じる衝動に動かされてきた

しかし自身達の行動が与える影響を考えると何か胸が躍らないでもなかった、楽しいってわけじゃないけど自分自身に対する興味、なんで私はここにいるのか、誰が私達に命令を与えるのか。私達の狙うシロと言う兵姫なのかどうかも分からない少女の裏にある何か‥何も知らないままに自分たちが関わってきた事の暗部を知りたいと。そう思った

 

「でも‥そうですね私達はなんでこの任務についてるんでしょうね私も気になりますね‥できれば私も協力しますよ」

「それはありがたい」

彼女と談笑しているとなんとなく心が晴れていく気がした、だがそれに比例してか太陽は頼んでもいないのにもより一層輝き始める。整備されていない道路に熱によって死んだカブトムシがアスファルトに転がっている うだるような熱の中不意に金剛さんと木曽さんが私達に声をかける

「ねえ!皆さんこれ見てくださいよ」

金剛さんは私達がここから出発する前に支給された小型のタブレットを操作すると空中にディスプレイが映し出される、彼女が見せてくれたのはある人物とのメールとのやり取りだった金剛さんと木曽さんはこの人物二人に少し前からもらっていたという話を聞いた、皆彼女の言葉に足の動きを止めた

「ちょっとメールなんて後で‥」

「‥鈴谷さん‥少しでいいから見てほしいんです」

普段あまり自己主張をしない木曽さんが発言したので彼女と興味を持っていなかったメンバーも立ち止まり空中に映し出されたディスプレイを眺める

 

 

 

 

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金剛:クーデター軍を襲撃しました!

 

ニュートラル:それはお疲れ様です私の予測した通り動いたでしょう?

 

金剛:そうですね!私達も順調に勝てましたよ~それにしてもすごいですねニュートラルさんはなんでわかるんですか?

 

ニュートラル:感覚的なものはあなたたち兵姫ほどではないですが頭は良いんですよそれに私はクーデター軍の動きを予測しただけです

 

金剛:シロさんは今後どう動くと思います?

 

ニュートラル:気になりますか?

 

金剛:それはまあ‥

 

ニュートラル:そうですね彼女はきっと研究所がある方面へ向かっていると思いますね

 

金剛:研究所?

 

ニュートラル:彼女は自分自身の正体を知りたがっていますから

 

金剛:へー

 

ニュートラル:彼女は山奥のルートを辿ると思います田舎はともかく都市はクーデター軍の拠点にもなっていますから彼女とは言え流石に危険ですからね‥

 

金剛:そうなんですか私も世間を知らないなあ

 

ニュートラル:信用に足る情報を発信するものが国民だけという悲惨な状況ですからね仕方ありませんそして個人から発信される情報も玉石混交であり見極めるのは難しい。クーデター軍の情報も偏ってますし まあとにかく彼女はあまり早いペースで動いてはいません金剛さん達も焦らず小休止することがおススメですね 彼女の感覚はなにより鋭いですからバレたら逆に逃げられますよ

 

金剛:なるほど~…しかしなんでニュートラルさんはそんないろんな情報を持っているんですか?

 

ニュートラル:‥そうですね同じく私もあなた達と目標は同じだからですから情熱と言ったところですかね

 

 

 

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「‥またこいつ?うさんくさ」

ヘルキャットさんが悪態をつくと金剛さんが顔を赤くさせて心外だ!と抗議した。しかし木曽さんと金剛さん以外は皆目信じていない様子だった。しかし当然と言えば当然でかくいう私も怪しんでいた。こんな怪しい人間の話など信用する方がおかしい

「‥でもですよ実際彼?彼女?‥かどうかは分からないですけど彼の言っていた通りクーデター軍が現れたじゃないですか‥」

木曽さんの発言に皆一同が黙り込む、確かにこのニュートラルと言う人間の言う通りクーデター軍がいた。それはそうなのだが顔も見えない相手を完璧に信用できはしない。ハッとして過去の戦闘が頭によぎる。

「‥もしかして以前から勘が良かったのはこの人の助言を二人は聞いてたって事?」

彼女は頷いた。彼女ら二人は妙に感が良いところがあったのだがこういう事だったとは思いもよらなかった。私達はよく知りもしない人間に聞き従って、行動していたという事になる

「なんで今まで言わなかったの?」

北上さんが木曽さんに問うが、イントネーションに抑揚がないためか攻め立てているように聞こえたらしく木曽さんは気圧されたのか沈黙してしまう、北上さんはなぜ黙ったのか分からない様子で困惑と苛立ちを感じていその様子をみかねた金剛さんが彼女の代わりに答えた

「いや‥北上さんいう必要ないと思ったし聞かれなかったからさ‥作戦が滞りなく進むならそれでいいかなって思ったんだよ」

「何で今言ったの?」

「特に理由はないよ今まで何かと忙しくていうタイミングなかったかし丁度メールがきたからかなあ」

「‥‥‥‥ちょっとそれ貸して‥」

北上さんが彼女の端末を受け取る なれた手つきで機械を操作する、彼女はニュートラル

と言う人物にメールを返信し始めた

 

 

 

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金剛:ニュートラルさん

 

ニュートラル:何でしょう?

 

金剛:あんたは一体何なの?なんで私達に連絡をよこす?

 

ニュートラル:金剛さんじゃありませんねさっき言った通りですよあなた達と目的は共通しているからです

 

金剛:シロの暗殺‥?

 

ニュートラル:そうですまあ簡単には信じてはくれないでしょうが

 

金剛:なぜシロを狙うんだ?

 

ニュートラル:彼女の事が好きだからでしょうか

 

金剛:真面目に答えろよ

 

ニュートラル:真面目に答えましたよ逆にあなた達に聞きますがなぜ君たちはシロを追うんですか?

 

金剛:知らないし分からないし興味がない

 

ニュートラル:あなた達に記憶がないというのは聞いていた通りですねなるほど。自身のアイデンティティの拠り所が無いという点では彼女とあなた達は同じかもしれませんね

ただあなた達と彼女とじゃ大きな違いがある

 

金剛:何一人で納得して決めつけてんだ

 

ニュートラル:失礼でしたね申し訳ない

 

金剛:‥であんた誰なのかって聞いてるんだけど

 

ニュートラル:あなた達が疑っているように私はクーデター軍に所属している訳じゃありません兵姫一人の戦力は現代の人間たちの部隊をを丸々壊滅させるに足りますしかしクーデター軍の数はそれほどでもないでしょう分隊一つに自身の何人もの部隊を犠牲にするほど馬鹿でもない 政府軍にとってみればむしろクーデター軍と仇なすあなた達と敵対するメリットは今の所ないと言えます、あなた達の邪魔になるのなら敵にもなりえますがね

 

金剛:それ以外の勢力についてるってこともあるだろ

 

ニュートラル:可能性は確かにありますが‥今主要な都市はクーデター軍の絶対的な監視下にあり反抗的活動なんてしたら真っ先に殺されますよそれにあまりそういった組織や活動に私は今の所興味はないんですよ 他の国家の可能性も又ないと思います今は日本のごたごたにかまっていられるほど国もひまじゃありませんいまだにエデンの災害からの復興と偶然的に発生した兵姫との鎮圧に追われています

 

金剛:だとしても信用はできないよ何が目的なんだ

 

ニュートラル:それは言えませんが‥とにかく利用価値はあると思いますよこれからも金剛さんを通じて連絡はよこしますから。私を信じるか否かはあなた達が決めればいいと思います

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「どうすんの?」

北上さんが金剛さんに端末を返すと、私達に聞き返す。みな鈴谷さんに視線を集める

「信用できませんが‥彼に救われたとも言えますし‥名取さんはどう思います」

鈴谷さんが私に聞いてくる。彼女がそういうと私に注目が集まった

「なんで私‥?」

「いえ特に深い意味はないですけど」

「‥彼の情報にもよるんじゃない?私達は私達で行動すればいいし‥別に彼を完全に信用しないでもそれでいいでしょう何より素性も分からない相手を信用するなんてあまりに危険すぎるし話半分に聞けばいいよ」

私が言い出すまでもなく誰かが言う無難な選択だろう、このことに関してはあまり関心を示していなようで皆も特に反対もしなかった

「まあ‥それが妥当ですかね‥じゃあ出発しましょうか善は急げですよ」

話を切り上げて再度私達は歩き出した。

利用できるものは利用すべきだろう私達は彼女の姿すらまだ見たことがないのに任務はすでに行き詰まりを見せているんだ。彼の素性はともかく無償で協力するというのならその力を利用しない手はないだろう

 

私達は今だ見ぬ彼女の為に魂と自分の手を汚しながらまた一つ歩き出した

 

 

*********

 

 

[Deep-sea friendship]

 

 

 

 

東京のある崩壊した薄汚れたビルの一室で報告会議が行われていた、縦に伸びたデスクにはイスがそれぞれ配置されていて私はその一つに座り込んでいた。デスクの一番奥にはクーデター指揮官のクロが手持ち無沙汰に座っている。重々しい空気の中で一人の幹部という立場の人間が彼を口を開いた

「偵察任務に向かった分隊が出発してからシロと遭遇したという連絡を寄こしたことを最後に報告を断ちました」

「シロにやられたって事?」

「違うと思います」

「じゃあ誰に」

「いえ今各地を荒らしまわっている例の‥」

彼女は美しい黒髪を揺らしながら椅子から立ち上がり冷たい黒い瞳で私達を見渡すと何も言わずただ沈黙する

ビルの一室はこれ以上ないほどに緊張に包まれていた

近頃のクーデター軍の戦況は喜ばしいものではなかった、早期に終わると思われた政府軍との戦争は長期化し、九州まで追い詰めたものの政府軍の巻き返しが何かしら゛の力で働き戦争は泥沼化を一歩一歩踏み出しいる。前線へと兵糧を送る部隊が壊滅して勢いをくじかれた私達の軍隊は政府軍との戦闘にも支障をきたし始めそれに比例して一つ一つと政府軍は北へと進軍を順調に開始し始めていた

その状況に対して部下が上司に対し気を使わないわけがない、彼女もそれを感じ取っているのだろうが、何も言わずに沈黙する、その沈黙が私達には何より恐ろしかった。

ゆっくりと彼女は口を開いた

「その部隊ってのは結局何なの‥?」

「わかりません政府軍の隠し玉だとも思われますが‥偶然シロと遭遇したとは思えないのでシロ目的の可能性も考えられます」

「正体は何も分からないの?」

「残念ながら‥基地を破壊した後に痕跡も何も残さずに立ち去るという噂だけです彼女らの存在にの兵士も怯えているようで‥」

「‥私達にとってシロの確保は重大な事なのはわかるよね?」

場が又静まり返る彼女の態度に苛立っているのが犇々と伝わってくる、重圧に押しつぶされそうで私の精神はストレスで弾けてしまいそうになっていた

「私達は決して目前の政府軍にだけに相手をしてるだけじゃだめなんだよ政府軍を倒したとして私達はどうなる?混乱するこの世界でも大国は私達にとって暗い影を落としているんだ彼らも彼らでエデンを研究し兵器として使おうとしてるだろう凡そ彼らが作った゛人権゛なんてものは何一つ考慮せず私達を弄り回し、作り出してはまたもてあそぶそれは人間として生まれてこなかったものとして誇りを持っている私達にとってみれば屈辱でしかない世界には今だに苦しんでいる仲間たちが居る」

彼女は一つ間をおいてまた喋りはじめる

「もしその部隊が政府軍だったらシロを先に取られるわけにもいかないそれ以外の何かである可能性もある何にせよ私達にとっては殺されることも取られることも同じだ世界が結託して私達を殺しにかかる前に彼女の存在が必要なんだこの先私達が生き残るために‥もしシロが目的だったら‥そいつらは滅ぼさなきゃねならない‥勿論私達の部隊が殺されることも問題だがね」

彼女はため息を一つつくとイスに座ったままのけ反る

「とにかく今日は解散‥当面の問題は彼女らだから‥」

全員が一斉に立ち上がり規律よく部屋から出て行った、私もそれに倣い早々と部屋から出ようとしたのだが

「ミドリカワは残って」

彼女の言葉に体が反射的にビクンと揺れる

「‥‥」

彼女は椅子に座り込み目を閉じる、何を考えているのかまったく分からない。あらぬ方向を眺めボーっとしている、私は何をすればいいのか分からずとにかく黙って椅子に座り続けた

「‥‥ミドリカワ」

「‥はい」

「あなたはどう思うのこの状況」

「どうって良くはないかと‥‥」

はっと鼻で笑う、自身の読みが外れたかあまり苛立っているようすではなかった。報告会議が終わった後は彼女には珍しい気の抜けた態度で私に話を振る

「あなたとは昔からの付き合いだけどもう前線に立つつもりはないでしょうね」

「そんなことはありません私はいつだってあなたを尊敬して慕っておりますあなたに死ねと言われたら死にます殺してくれと言われたらあなたを殺します」

クロはむっとした表情を見せた何か不満げなようで、自身が座っていた場所から移動し私の隣にどっかりと座り私に精神的圧力を与えようとしているようだった

「そのふざけた態度辞めなよ別に他の連中がどんな態度を取ろうが構わないけどあなたにそんな口調で話しかけられたくはないのよ」

「そうですか?もう何年もこの口調で話してきましたわたくしとしてはなるべく威厳を立てようと努力したのですが」

彼女は私のイスを軽くけりたくった、口ではやめてくださいとは言ったが抵抗はしなかった

「私の為に死ねるんでしょう?」

「死ねますよ」

「じゃあやめなさい」

「じゃあ‥止めるよ」

それでいいと言うと彼女は椅子を回転させ、立ち上がりまた元の席に座った

「ミドリカワにはその拠点を荒らしまわっているとか言う連中を殺してきてほしい他の幹部にはもう言ってあるよ」

「‥私が指揮官として‥」

「今保全課から派生した部隊として教育されている娘達がいる彼女らを連れて行けばいい迎えも用意してから今日見にいってよ」

「そんな私が‥」

「修羅場を散々潜り抜けてきただろうが泣き言言わないでよヘタレが」

彼女は私が弱音を吐くたびに厳しい言葉を投げかける、彼女は今も昔も変わらず私を悪しざまに罵り、動かない私の体を無理矢理引っ張り続けたその点を言えば私は彼女の事を尊敬してはいるが、その物言いに軽蔑の感情が無いと言われれば嘘になる

「私達には彼女の発見が何より急がれる邪魔をする奴らは全員処分だ私達が統率するにはこの世界は広すぎるその人材の確保の為に彼女は重要なカギであることそれはもう再三言ってきただろう連中は必ず殺して‥‥いいわね?」

彼女の瞳ににらまれ私の体は硬直する、彼女は誰に対してもどんな状況でもこの態度を崩さない例え私がずっと戦い続け生き残った数少ない゛友人゛であったとしても、私は彼女に対しての尊敬の念も友情さえかき消されるほどにに多大な恐怖を感じていた。

「もう行っていい健闘を祈るよミドリカワ」

彼女は手をひらひらと振るとニコリと私に微笑んだ、その顔はとても幼くて可愛らしい五年前から変わる事のない笑顔を私に向ける

「それではクロさん」

私は無理矢理笑顔を作り手を振り返し椅子から立ち上がり部屋を出て行った。

やっと抜けることが出来た安心感で溜息をついた。酷い重圧から逃れ体が軽くなるのを感じる、崩壊したビルを拠点している為どうにも足場が悪い、廊下を歩いていると向こうから見知った顔がやってくる

「こんにちはミドリカワさんどうだった?」

「‥‥アカザワさん」

「ふんふん少し嫌そうな顔だねそれを必死に隠そうとしてる感じかな?」

体を落ち着きなくふらふらさせながら薄ら笑いを浮かべている、別に私の顔が面白い訳ではなくこれは彼女の癖であり、体をふらつかせているのも頭を過去に政府軍の三英傑に当たる兵姫に頭を吹き飛ばされたせいだ。片腕もなくなっている

「どうだった?報告の方は」

「参加すればいいじゃないですか一応幹部でしょう」

「私クロさんに嫌われてんだ」

「そうですか‥そうですね今九州・中国地方の拠点や進軍途中の部隊が襲撃されるという事件が多発していましてそれについての報告と‥シロの偵察部隊がやられたっていう話ともしかしたらそれに関連してるんじゃないかという事を‥でその彼女らを殺すことをわたしが任されました‥保全課と」

彼女は目を輝かせ私の話に好奇心を露骨に示していた、きらきらと輝きながらも濁り切った目を私に向けて手を触ってくる

「保全課!?シロ!?それ‥連れてってよ」

「その体では戦力にはならないでしょう」

彼女は私のお尻を触りだした、手を払いのけようとするがしつこく触ってくるのであきらめたニヤニヤ笑いながらあらぬ方向を見ている

「私が前線を離れたのは自分の意志ではないよそれにいつだってこの腕の代わりも脳みそもあるさでもこの体は気に入ってるからさ異物が入るのは嫌なんですよわかるでしょミドリカワさん」

「そんなこといってもクロさんが許すかどうか」

「大丈夫ですよこう見えてクロさんは私を兵姫として認めてはいるんですよ」

確かに彼女は兵姫としては優秀と言える何を隠そう彼女は多くの仲間が死んでいった中で生き残った歴戦の兵姫だ、今は前線を離れてはいるがかつてないほどの激戦となった東京での市街戦でも彼女は一人活躍し、私達をクロさんと共に引っ張ってきた。

だがその戦績に比例するように彼女の悪行はクーデター軍の中でも有名だったその中でも特に仲間の死体を兵舎に持ちかえる悪癖は嫌われていたどうしたってそんな事をするのかと聞いたら彼女曰く好きだったから。だそうだ

彼女の好きはとても意味が広く私にとってみれば理解しがたいもので。アカザワさんがその仲間を完全に理解する為にその死体をどうしたかは口にするのもはばかられる

不幸にも私はその現場に遭遇し、思わず彼女を攻撃してしまった。あの時の事を思い出すだけで胸糞が悪くなる。

彼女を見ると満面の笑みを浮かべている何ンの悪意もないに純粋な喜びの笑顔。それを見るとつい私は口を開いてしまった

「まあ‥交渉はしてます」

私は人が笑った瞬間が一番好きだ。たとえ俗悪な行為を行う呪われた彼女であっても喜び笑顔を向けてくれるとこちらもつい笑ってしまう。笑った顔はクロさんと同じでその精神に対し大きなギャップを感じるほど可愛らしい。

「有難うミドリカワさん!やっぱり昔からあなたが好きだ」

「はは‥どうも」

「じゃあねまた戦場で今日は前線の兵士たちが戦っていることを犠牲にしたクロさんからの特別な休日だしその分楽しんでくるよ」

手を振ると彼女と別れると外へ出るために階段を降りるガタガタになったビルは小石や瓦礫が散らばり鉄骨が細かく見えている、これを破壊したのは自分たちなのだが。

 

一階まで降り正面玄関から外へ出た。太陽は灼熱の光線を容赦なく私に浴びせかけてくる。あまり暑さはないのだが、自分はどうにも太陽の光がダメらしい。顔をしかめながら歩いているとポケットからブブブと振動が伝わってきた、震源の元のタブレット端末を取り出すと。以前ネットで偶然知り合ったと思われる人間からのメールが送られてきている、

彼女は何かと私を気にかけてくれていて、はじめは適当な返事を返していただけなのだがクロさんのパワハラの愚痴を聞いてもらったことをきっかけにして、彼女と話すことが多くなり、後にオカルトじみたことが好きだという事を知った、彼女は私の幽霊に対するとらえ方が独特だと興味をもってくれていて人間は幽霊に恐怖を抱きつつもそれを上回る未知のものに対する果て無い好奇心とロマンと想像力に駆り立てられていて、それを共有する場として、彼女にその手のオカルト話を投稿する場がネットにあることを教えてもらい。その話し合いをして盛り上がったりもした。

その人物は私にloveと名乗った。名前の由来を聞いてみたのだが、日々誰かを思って過ごしているからと言うよく理解できない答えが返ってきた。

性別は女性で年齢は17歳以前は学生として都心の学校に通っていたのだが、戦争が始まってからは学校が破壊されて、通う事がかなわなくなったために今は母親の手伝いをしながら生活しているらしい彼女はよく戦争が始まる前の話をよく私に聞かせてくれる、私にとってその話はとても興味深いもので、彼女の彩られた生活は兵姫の私にも魅力的に思えた

 

 クロさんは人間を嫌う。私もそれに右に倣えで人間を差別してきた、ただ彼女と話していて若干の死生観の違いなどがあるものの兵姫とあまり変わらないと私は考えるようになった

 彼女に返信すると少しの暇も与えずにまた返信が返ってくる、少し早いペースで彼女と会話し始めた。

 

 

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Love――今日は暑くてうざいですよね

 

Midori――そんな日に上司に仕事を頼まれましたよまた出張です

 

Love――え~このご時世に大変ですね企業かなんかで働いてる人たちはクーデター軍の奴隷だってネットで聞いてるけど本当かな。以前なら人口知能がやってたことを代わりにやらされて大変らしいね

 

Midori―――クーデター軍も秩序を取り戻すために必死なんですよ後今後続く戦争の為に色々準備があるんです或いは戦争が終わった後の事も考えてるんじゃないでしょうか

 

Love――へーやっぱりクーデターする側も大変なのかな~でも私の青春を破壊したことは許さない!あと行きつけの喫茶店をつぶしたこと!別にどっちが勝ってもいいけどさ政府軍でもクーデター軍でも私達の生活を保障できるならしてほしいよ

 

Midori――上司に掛け合ってみましょうかね

 

Love――midoriさんの上司めっちゃ偉そうだけどクーデターの指揮官かなにか?キングメーカー?ミドリさんってやっぱえらい人なの?人間なのにすごくない!?

 

Midori――聞き入れられたことはあまりありませんから権限はないに等しいですけどね

 

Love――でもやっぱりすごいよ人間なのにそんな人と会話出来て私マジで運がいいなあって思うよすごいなあ‥この会話内容をネットに流したらあれでしょ噂の生活保全課とか言う人たちにやられちゃうんでしょ?私すごい陰謀に関わっちゃってるんだなあ‥

 

Midoroi――私も実態までは知りませんが‥多分その人たちと今度の仕事は彼女らと一緒に仕事をするかもしれませんねもしかしたらですけど

 

Love―――midoriさんが課に入ったら私会えるかな?

 

Midori――会うときは多分あなたを殺すときですよ勘弁してください

 

Love――いつか会えたらいいなあ‥今度の仕事でさ会えたりしないかな?

 

Midori――どうでしょうか‥上司に掛け合ってみます

 

Love―― 期待してるよ~会えるといいなあ(*^▽^*)

‥‥いきなり話変わるけど最近中国地方に住んでる友達から物騒な話が舞い込んできてるんだよねまあ戦争始まってからいつも物騒な話しか聞かないけどさあ

なんか私の友達の話だと武器担いだ全身血まみれの兵隊さんが10人でゾロゾロと歩いてるところを見たって言っててね写真もあるんだけどなんか写真からもやばそうだったねマジで 噂によるとね21年前の隕石で非業の死を遂げた10人の女の子が武器をもって仲間を増やすために人間を見つけて殺すっていう話で。でも実は友達の中に一人だけ生き残った娘がいるとかでね実はその娘を探してるとか言う話もあるんだけど

この写真はその心霊写真じゃないかって話友達がとったんだ

 

Midori――どこの話ですか?写真はどこで

 

Love――島根の江津っていう海水浴場があったところそこの街に友達すんでたんだけどちっちゃい街なのにさあ‥まあボロッボロにされてたよ無関係な人もぐっちゃぐちゃだよ

 

Midori――画像私にもくれませんか?

 

Love――おっやっぱオカルト好きだねーいいよ後で送るね

 

Midori――有難うございます。Loveさんほどでもないですよそれにしても彼らは何なんでしょうね一体

 

Love :さあ‥政府軍の人たちかな?本当に噂の幽霊だったら成仏してほしいよー‥怖いしさあ‥そういえば政府軍が勝ったら私達の生活は元に戻るんだろうけど緑さんの事を考えるとあんまり勝ってほしくもないかなあ

 

Midori :まあ‥その後はその時考えますよ‥なるようになるしかないですし

 

Love:あっ‥出かける時間だ じゃあまたね緑さん仕事のメールも送ってね~( ˘ω˘)出張頑張れ!(=゚ω゚)ノ

 

Midori:有難うございますそれではまた

 

 

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私は彼女から送られた画像を見る、亡霊という割にハッキリと写っていた。昔作られたと思われる心霊写真を見ると明らかに偽物だと分かるのだが、本物と偽物どちらが不気味なのかというと偽物の方が怖いのだ、偽物は怖くしようという作り手の演出があるだけに逆に不気味に映る、作られた写真にはその幽霊の明確な悪意が写り殺意や嫉妬人間の言う醜い感情が作り手の経験から滲み出る

逆に本物ははっきりと写りすぎて分からない、写真に写らなくても外傷を負わず死んだか自身の傷を修復している幽霊となると普通の生きた人間・あるいは動物・兵姫、と区別がまったくつかない事がある。確かに亡霊っぽいが恐らくこいつらは生きている、金髪のツインテールの女と。青い髪のポニーテールの女。あとは派手な女と、ショートカットの女、おさげの女、長髪、サイドテール、目が隠れた短髪、白髪の女。全員特徴的で覚えやすい見た目だ。まだ証拠は少ないけど仲間を殺しまわっている連中はこいつらだろう。偶然出会った人間から偶然敵の居場所が見つかるなんてなんという僥倖だろう

 

 端末をしまい一つ溜息をつく、今日はクロさんに与えられた休日なのだが遣ことがない趣味もなければ友人もいないそれでも自分は満足なのだが、前線を離れているのだから何かやらないといけないというか前線で戦っている仲間に申し訳が立たないという強迫観念に襲われる、結局私は戦い以外に何も無いのだろうだろか、生まれて初めての貴重な休日をつぶしつつ次の戦争の事を思った

亡霊を成仏させる。今までにない戦いになりそうだ、彼女らを成仏させるためにお札か訳知りな坊主でも連れて行こうかな、保全課こと公安部隊人間管理生活保全課。実態は一部の人間しか掴めない組織クーデター軍統治下の人間の管理、兵姫間のトラブルの調整。犯罪などを取り締まる機関、彼女らから派生した部隊‥の指揮。やっぱり坊主の部隊を連れて行きたかった、新しい装備の兵姫を保全課は採用しているというのでそれの戦争への登用の実験も兼ねているのだろう責任の重さに少し胃が重くなる、私は次の仕事を思いながら崩壊した東京を歩き出した

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