悪辣の都市、異形の都クラヴァ―。
ここには残虐無惨の理が満ちている。弱き者は順当に死に、強き者だけが呵々大笑と生きる世界。
淀み壊れた街を牛耳るは「支配階級」へ連なる暗黒街の重鎮たち。その頭目、死屍累々の玉座に至る者、カリス=レイドライナーに仕えるは「サイレント・ラウンジ」と呼ばれる尋常ならざる殺戮集団。彼らに逆らえば、誰も生き残れない。誰も逃げられない。力無き市民たちは、ただ屈服するしか道はない。そうして初めて、無秩序の中に秩序は生まれる。

サイレント・ラウンジに属する殺戮者であり、「鬼狼」という異名を持つ男・ナナキは、曰く「絶人葬」なる特殊体術を用いた、凄惨な人体破壊を得意とする殺し屋として恐れられていた。
ナナキは仕事の最中、気まぐれで命を救ってしまった奴隷の少女・ハナと共に、クラヴァ―にて奇妙な同棲生活を続けていたが、彼には一時たりとも忘れることのできない「使命」があり、ラウンジへの所属はあくまで一時的なものでしかなかった。

ある日、支配階級の暴政に抵抗を続ける組織・ペインキラーの拠点へ仲間と共に襲撃を仕掛けることになったナナキだったが、そこでついに彼は、長年探し続けていた思い人との邂逅を果たす。

ずっとお前を探していた。ずっとお前を考えていた。ずっとお前を殺したかった。
おどろおどろしく瞬く月の下、ナナキは自らの使命を高らかに歌い上げる。

――殺すべし、カイン=ヴァンジャンス。

そのために生きて、そのために死ぬと誓ったから。
激化する支配階級とペインキラーの抗争。暗躍し、交差する殺戮者たちの思惑。

これは、ただ一つの目的のために生きる獣たちの物語だ。
序章、或いは致命の過失
  プロローグ「月と狼」
第一章「その夜の邂逅」
  01.気まずい朝2018年12月16日(日) 22:34()
  02 密やかな談話2018年12月16日(日) 23:20
  03 絶人葬2018年12月16日(日) 23:22()
  04.閑話/ある男
X(Twitter)  ▲ページの一番上に飛ぶ