ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第29話 ジャブローに散撒(ばらま)く! Aパート

 それは戦争ゆえの悲しい出来事であったかもしれない。

 しかし戦火の中で失われていったその機械仕掛けの自動人形のことは、セイラにとって決して小さなことではなかった。

 彼女の深い悲しみを慰めることなどミヤビにもできはしなかった。

 

(いや、私に何とかしろって言われても、前世の記憶があったってこんな超展開、対応できないって)

 

 ホワイトベースは南米大陸に入った。

 地球連邦軍本部、ジャブローへ向かうために。

 

 

 

 南米、アマゾン水域に浮上するジオン軍潜水艦隊。

 

「間違いありません。木馬はジャブローに向かっています」

 

 部下からの報告に、シャアはほくそ笑む。

 

「スパイから得られた情報どおりだな。逃がすなよ」

「はっ」

 

 

 

「わあーっ」

 

 子供たちの歓声。

 アマゾン低空を飛ぶホワイトベース。

 その船窓からは宙を舞うチョウの群れを見ることができた。

 

「綺麗なものね」

 

 その様子に見入るミヤビ。

 アムロも、

 

「すごいや」

 

 と瞳を輝かせる。

 その横で、セイラが死んだ目をしてうつむいていたが……

 

「いよいよ連邦軍のドック入りですね」

 

 セイラを視界に入れないようにしながら、その場を取り繕うようにつぶやくアムロ。

 その彼にブライトは、

 

「嫌かね?」

 

 と聞いてみる。

 

「いえ」

 

 アムロはそう否定。

 ブライトは彼を、そしてブリッジに居る他の者の表情を確かめるように見回した後、通話機を上げ全艦放送。

 

「全員に告げる。ジャブローに入る、各員、対空監視を怠るなよ」

 

 その放送に、窓の外を眺めていた子供たちは、

 

「ジャブローたってなんにも見えないじゃん」

 

 と騒ぐが、

 

「あ、あれ」

 

 アマゾンのジャングルが、地面が割れて進入口が開くのを見て目を丸くする。

 まぁ、アニメや特撮にありがちな秘密基地のギミックを、現実にホワイトベースが入港可能なスケールでやられたらそうなるだろう。

 前世の知識で知っているミヤビだって、わずかに目を見開いて見ている。

 その中にホワイトベースは入って行き、

 

「……着陸完了」

 

 操舵していたミライが肩の荷が下りたかのように、ゆさっと胸を揺らしながら息をつくのが印象的で、ミヤビは思わず、

 

(そう言えば『機動戦艦ナデシコ』のハルカ・ミナトもナイスバディだったし、アニメの女性操舵士ってみんな胸に自前のエアバッグが付いてないといけないのかしら?)

 

 などと内心つぶやくのだった。

 

 

 

「おっ、木馬の反応が消えました」

「フフフフ、ついにジャブローの最大の出入り口をつきとめたという訳さ。消えた地点を中心に徹底的に調査しろ。ジャブローの基地もろとも叩き潰してやる」

 

 不敵に笑うシャア。

 

 そう、このためにジャブローの入り口が露見する。

 ミヤビはすっかりそのことを忘れていた。

(妹の胸の大きさを気にしている場合じゃない)

 

 ……まぁ、覚えていたところで常人の彼女にシャアをどうこうしたりはできなかっただろうが。

 

 

 

「かなり傷んでますね。報告以上だ」

「うん、ホワイトベースこそ実戦を繰り返してきた艦だからな」

 

 ホワイトベースを見守る修理担当の技術士官たち。

 

「よーし、点検かかれ」

「点検作業かかれ」

「第一、第二部隊、点検作業かかれ」

 

 そこに艦を降りたミヤビたちがブライトを先頭に歩み寄って行く。

 

「ウッディ大尉でいらっしゃいますか? ホワイトベースの責任者、ブライト・ノアであります」

 

 そう、彼がマチルダ・アジャンの婚約者、ウッディ大尉である。

 左手薬指に輝く既婚者の印、真新しいマリッジリングを見てミヤビは、

 

「ご結婚を?」

 

 と思わずつぶやいていた。

 ウッディは照れた様子で、

 

「えっ、ああ、この戦時下に何ですが、こういう時だからこそ、しておきたいと」

「新婚さん、なのですね」

 

 ヤシマの人形姫には珍しく、わずかに瞳を細めてまぶしそうに彼を見るミヤビ。

 史実とは違い彼が無事、マチルダと結婚できたことが嬉しかったのだ。

 そう言えば、このジャブローでゴップ大将がホワイトベースを「永遠の厄介者」と称し疫病神扱いしていたが。

 実際、史実とは違って関係しなかったマチルダが戦死していないことを考えると、その評価も妥当なものなのかも知れないと思う。

 

 一方、ホワイトベースのクルーたちは、

 

「み、ミヤビさんが男性に興味を?」

「相手は既婚者…… もしかして年上が好み? だから今まで? そう言えばテム・レイ博士の面倒もよくみていたよな」

「しかも、あんな表情をするなんて……」

 

 などと、彼女の言動を誤解していた。

 実際、マチルダをものにしているだけあってウッディは良い男であるから、その誤解は余計に深まるのだった。

 

 

 

 ジャブローで健康診断を受けるホワイトベースクルーたち。

 

「また増えた……」

 

 複雑な表情で検査室から出てくるのはミライ。

 もちろん彼女が気にしているのは体重でもウェストでも無く、たわわに実るバストのサイズ。

 そのうちアイちゃんとでも呼ばれそうな勢いである。

 

 多分、この場にミヤビが居たら変わらぬ表情の下、

 

(圧倒的ではないか、我が妹のオッパイは!)

 

 などと脳内で語っていたに違いない。

 

 一方でフラウはというと、

 

「ひどい……! ひどすぎるっ……!

 こんな話ってないわっ……!

 命からがら…… やっとの思いで……

 ジャブローに辿り着いたのに…… やり遂げたのに……

 増えてるっ……!

 あの体重計がもぎ取ってしまった……!

 せっかく手にしたあたしの未来…… 希望……

 人生をっ……!」

 

 こちらは対照的に体重だけ増えた模様。

 

「……さすがにそろい過ぎるぐらいにそろっているわね、ここの施設」

 

 部屋の隅で悶々とブラックホールを形成するフラウを見なかったことにしてそう話すセイラは、地球連邦軍制服の上着を脱いだアンダースーツ姿。

 一般にタイツを穿いている、とされる地球連邦軍制服だが、普通のタイツを使っているわけでも無いし、上着の下にワイシャツの着用が必要なわけでも無かったりする。

 

 そして、そういう意味では、このアンダースーツ無しで上着だけ着ているフラウは……

 その昔、マンガ『聖闘士星矢』に登場した黄金聖闘士サガは、他の聖闘士には支給されているアンダースーツ無しで全裸に女神アテナから賜った聖衣を身に着けるという性癖を持った変態、とされていたが……

 

 

 

「なんだって?」

 

 マッドアングラーに輸送機ファットアンクルが三機の、見るからに変なモビルスーツを運んできた。

 顔が一体となったボディは前後対称。

 機能するのか疑問なほど短い脚。

 

「使えるのか?」

 

 シャアの疑問に、副官のマリガンが答える。

 

「水陸両用、ジャンプ力もザクの数倍だと」

「誰が言うのだ?」

「北米キャリフォルニアの技師の話です」

「ふーん、あれがか。見掛け倒しでなけりゃいいがな」

 

 乗せられる者の身にもなって欲しいことをずけずけと言いながら、同じ口で集まったメンバーに向け指示を出す。

 

「北米キャリフォルニアからの援軍が着き次第、我が隊からも第二次攻撃隊が出る。諸君らはその先発隊として任務を十分に果たしてもらいたい」

 

 

 

「全然伸びてない……」

 

 暗い表情で呟きながら検査室から出てくるミヤビ。

 

 彼女は日本人離れして頭が小さく足が長く頭身が高い、東欧系の体操選手などに居る人形か妖精かという感じの身体を持つ。

 このためアムロあたりには第一印象から「背の高い、年上の女性」と認識していていたのに、距離を詰められ隣に立たれると実は自分より小さくて驚かれる……

 ギャップ萌えされるということに。

 そう、ミヤビはその頭身のおかげでピンで立つと背も高く感じられるが、実際の身長はミライより少し低い160センチ程度しかないのだ。

 

 一方でミヤビの意識は男性のもの。

 つまりミヤビ自身の感覚、認識だと『妹に身長を追い越された兄』なのである。

 

「前世だと、男女の成長時期の違いで一時的に一つ下の妹に背を抜かれたことがあったけど」

 

 女性の方が早く成長期が来ることもあって、中学生のころには妹に身長を追い越されるという屈辱を味わったことがあるが。

 

「男性の成長期が来て再度追い越すことができた前世とは違って、この生ではこのままの身長となりそうね」

 

 そう言ってため息をつくのだった。

 

「ミヤビさん」

 

 続けて検査室から出てくるミハル。

 彼女はヤシマに雇用されるためにミヤビに連れられ、ジャブローにあるヤシマの支社を訪れて入社のための健康診断を受けていた。

 ミヤビの検査はそのついでである。

 ミヤビは軍に出向しているだけのヤシマ重工の技術者なので、法定の健康診断もまた出向元のヤシマ重工で行う必要があるのだ。

 まぁ、その結果は出向先である地球連邦軍の人事にも提出されるわけではあるが。

 

「あたしは身体強健、精神に異常なしですって」

「さすが、しっかり者のお姉ちゃんね」

 

 そう言ってミヤビはわずかに目を細める。

 シーマもそうだったが、ミヤビの知る史実では不幸になってしまった人々。

 それを救えるのはミヤビにとって喜びであり、同時にミヤビ自身の救いにもなるのだった。

 そして、ミヤビは聞く。

 

「本当に、もういいの?」

 

 それにミハルは苦笑して、

 

「うん、カイとは十分に話ができてお礼も、そしてまた会う約束も言えたから」

 

 さよなら(good-bye)ではなく、また会いましょう(See you later)という約束。

 そうして、

 

「湿っぽいのは性に合わないんだよ。男だって笑顔で送り出して欲しいって思うって、母さんも言ってたから」

 

 カラ元気でも元気、とでも言うように笑う。

 

「いつまでもこんな世の中じゃないんだろ? ね、ミヤビさん」

「そうね……」

 

 そう言って、ミヤビも口の端をわずかに上げて……

『ヤシマの人形姫』にはとても珍しく希少な、目にした者の胸にいつまでも残り続けるような微笑を浮かべてうなずくのだった。

 

 

 

 岩肌に一直線に走っているつなぎ目。

 

「見つけたぞ、ジャブローの入り口だ。この金属反応がなけりゃ見過ごしていたところだ」

 

 シャアから宛がわれた前後両面ボディに極短足な新型機三機に工作担当のアッガイ二機を加えた部隊を率い河川を遡っていたボラスキニフは、とうとうジャブローへの入り口を見つける。

 この新型、その出自からセンサー類は、地質や地下の異物について分析も可能な高度なものが搭載されている。

 加えて僚機のアッガイもまた高度なセンサーを備えたステルス偵察機能を持った機体である。

 ホワイトベースの着陸で場所が絞り込めれば、発見は難しくない。

 

 そして、

 

「ということは攻撃はない。カムフラージュを見破られたくはないはずだからな」

 

 そういうことになる。




 始まりました、地獄のジャブロー攻略戦。
 と言っても今回はプロローグ的な身体検査回でしたが。
 そして前後対称のボディに短い脚、謎のモビルスーツの登場。
 ばれている人には前回の次回予告の時点でばれてると思いますけどね。

 なお、次回はジオンの部隊の降下前の謀略戦となる予定です。
 覚醒ガルマとシャアの策とは?
 ご期待ください。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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