ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第32話 強行突破作戦 Dパート

「直撃、左翼のムサイです!」

 

 ホワイトベースの砲撃がムサイに命中するが、

 

「誰が砲塔を狙えと言ったか? 機関を破壊すればビーム砲は使えなくなる、砲撃は集中して行え」

 

 と、ブライト。

 そこがビーム砲を主砲とする艦の弱点であり、逆に新鋭艦であるホワイトベースの主砲が火薬砲である理由の一つでもある。

 

「ええい、左翼のムサイにのみ集中攻撃だ。ほかには目をくれるな」

 

 なおも残った砲塔で反撃してくるムサイを狙う。

 

『待たせました、ガンキャノン攻撃します』

 

 そこに、無線封鎖して戦場を迂回。

 ムサイに向かっていたアムロから秘匿レーザー通信で攻撃位置に着いたという報告が届く。

 

「急いでくれ、目標はムサイだ。スカート付きのモビルスーツは構うんじゃないぞ」

『了解です』

 

 

 

「ああっ、ト、トクメルが。リック・ドム二機、後退させろ、こちらからの砲撃の邪魔だ」

 

 ホワイトベースからの砲撃が傷ついてたムサイに止めを刺す。

 それでもドレンは退かない。

 

「キャメル、スワメル二艦で木馬を仕留めるぞ」

 

 残った艦による砲撃戦でけりをつける作戦だ。

 

「シャア大佐が来る前になんとしてもとどめを」

 

 

 

「ムサイ二隻、来ます」

「各砲撃手へ、狙いは左のムサイだけだ、右は忘れろ」

 

 敵艦隊の動きはホワイトベース側でも察知。

 再びブライトは各砲座の集中運用を指示する。

 

 

 

「なに? 聞こえない!」

「シャア大佐から伝えられた黒いガンキャノンが居ないそうです!」

 

 怒鳴り合うドレンと部下。

 宇宙空間は真空なので敵の砲撃音は伝わらないが、自艦の射撃音は船体を通じて伝わる。

 またモビルスーツのコクピットや戦艦のブリッジ等、宇宙戦闘に関わるところには立体音響装置が組み込まれている。

 ミヤビの前世の記憶の中にあるマンガ『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』作中でも語られていたが、カメラセンサーが爆発や射撃を捉えると設定されている音、爆発音などが響いて聴覚で状況を知らせてくれるわけである。

 まぁ、調整が不十分だと想定を超えて濃密な砲撃戦が行われた場合に、このように会話を阻害してしまうこともあるのだが。

 

「あのリック・ドムは?」

「フラシィのです。奴は黒いガンキャノンを見てないと言ってます」

「馬鹿な。……ではどこにいるんだ? ガンキャノンは。うわっ!」

 

 ミサイルを受け爆散するリック・ドム。

 

 

 

「やったか?」

「いや、モビルスーツに当たったんだ」

 

 敵の旗艦に当たったかとも思われたが違ったようだ。

 

「あと一息だ、息を抜くなよ。うっ」

 

 ホワイトベース側も被弾。

 ブリッジの面々もその衝撃に息を詰める。

 

 

 

(右舷モビルスーツデッキ直撃危機一髪ーっ!!)

 

 内心、思わずうめくミヤビ。

 

『もし出撃していなかったらやられていたかも知れませんね』

 

 とサラが言うとおり。

 出撃するきっかけを与えてくれたハヤトには感謝しなくてはと思うミヤビ。

 

 リック・ドムは後退。

 しかしスレッガーのドラケンE改可翔式とリュウのコア・ブースター、ハヤトのコア・ファイターは補給のために帰還途中にある。

 ドラケンE改可翔式、そしてコア・ファイターの継戦能力が低いのは分かるが、コア・ブースターが?

 と考え、ミヤビは思い出す。

 マンガ『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』でも主人公の乗るコア・ブースターはギャプランとの空中戦闘で姿勢制御スラスターを全方位ベクターノズルに見立てて強引な軌道変更を繰り返した結果、あっという間に燃料切れまで追い込まれていた。

 要するにAMBACが使えない戦闘機にモビルスーツに対抗できるほどの運動性をスラスター噴射のみで発揮させるとこうなるということなのだろう。

 

 一方、セイラとカイはガンキャノンL、ロングレンジタイプの砲撃戦能力を発揮するべく左舷モビルスーツデッキに機体を固定し狙撃を行っており、

 

(あとはアムロがムサイを仕留めてくれれば)

 

 という状況ではあるが……

 

 

 

(そんなはずはない、ガンキャノンは居るはずだ。どこなんだ?)

 

 焦るドレン。

 

「ドレン大尉!」

「何か?」

「ゼロ方向から接近する物あります!」

 

 オペレーターからの報告。

 

「なんだ?」

「モ、モビルスーツらしき物、高熱源体接近!」

「ミサイルか?」

「本艦にではありません!」

「スワメルか!」

 

 ドレンは敵の狙いに気付き、船窓に張り付く。

 

「スワメル、よけるんだ!」

 

 直上からの射撃。

 まず、ブリッジを撃ち抜き指揮能力を奪い。

 次に左右、エンジンブロックを破壊、航行およびビーム砲へのエネルギー供給を不可能とし。

 止めとばかりに二基のメガ粒子砲座を破壊することで、その近辺に集中配置されているミサイルランチャーまで潰す。

 正確無比な攻撃。

 

「うっ、ガンキャノンだ。あの赤かったやつが、黒く!?」

 

 改めて肉眼で視認するその姿にドレンは戦慄する。

 しかしそこに最後のリック・ドムが割って入る!

 

「くっ、こうなってしまえば仕方がない。主砲、ガンキャノンに構わず木馬のエンジンを狙え! 足止めさえできれば、あとはシャア大佐が片を付けてくれる!」

 

 

 

『……まずいんじゃないですか、ミヤビさん』

 

 サラの言うとおり。

 その状況を見ていたミヤビの額に冷や汗がにじむ。

 万が一を考え、ドラケンE改のシルエットが小さいこと、ステルス塗装のために隠密性が高いことをいいことに、リック・ドムの残骸というスペースデブリに隠れてアムロのガンキャノンとは違う、ムサイを横合いから狙える位置に密かに移動してはいたのだが……

 捨て身で足止め策に出るムサイ。

 それを阻止するべきガンキャノンはリック・ドムに邪魔され手間取っている。

 ここでミヤビが取れるオプションは、

 

 アムロとリック・ドムの戦いに割って入り、リック・ドムを引きつけてガンキャノンにムサイを沈めてもらう?

 

 (NON)

 最後まで残っていただけあって敵は手練れ。

 史実ではアムロもシールドの影に隠したビームサーベル二刀流で倒したほどの相手であり(同じパイロットとは限らないが)、ドラケンE改で相手取るのは無理。

 

 では、

 

(私に、ただのドラケンE改に対艦攻撃をやれと?)

 

 果たしてこの状況で、ドラケンE改がムサイに有効打を与えることは可能なのだろうか?

 

 答えは可なのである(本当かよ)

 というわけで、

 

「甲壱型腕ビームサーベルリミッター解除、ビームジャベリン展開!」

 

 撃ち尽くしたバルカンの代わりに右腕肘に装備していた甲壱型腕ビームサーベルの先端から柄が伸び、その先端に三叉のついた槍状のビームを形成する。

 

『ビームジャベリン起動しました。燃料電池全力稼働を開始。活動限界まであと4分53秒』

 

 サラのアナウンスと同時に、モニターの隅に若干増減しながらも減っていく活動限界までの時間が映し出される。

 長い柄の先端部のみに刃を発生させることでエネルギー消費を少なくした、とされるビームジャベリンだけあってドラケンE改でも何とか使用が可能。

 

「サラちゃん、ムサイ艦のデータから、最適な攻撃対象部位を指定して!」

『はい、ミヤビさん』

 

 ヘルメット付属のバイザー型HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)に表示される外部映像へ『ここを突いて』というポイントが追加表示される。

 ミヤビはその一点を目指し、スロットルを床まで踏み込み背面ロケットエンジンを吹かして急加速!

 動力源である燃料電池の動作に伴い発生する熱は原型機であるドラケンEにおける背面放熱器の代わりに内蔵されている熱回収器を介して推進剤の加熱に使われている。

 このため燃料電池全力運転による発熱は副次的効果として推進剤噴射速度上昇をもたらし、一時的に機動力が向上する。

 その上、

 

「ロケットエンジンリミッターカット! 出力全開!」

 

 リミッターを解除。

 1G重力下でも弾道軌道を描く大ジャンプを実現する大出力が、さらに機体を加速させる。

 殺人的な加速をミヤビはパイロット用ノーマルスーツの耐G機能とバケットシートを支える大型ダンパー、メカニカル・シート・アブソーバーの保護により耐える。

 切っ先がぶれないよう、左腕の二重下腕肢を使って右腕の甲壱型腕ビームサーベル、ビームジャベリンの柄をつかむ変則的な両手持ちで突っ込み、そして右操縦竿のトリガーを引き絞る。

 

『ビームジャベリン分離!』

 

 というサラのアナウンスと同時に、急降下爆撃機の放つ爆弾のように分離投下、そのままの勢いで直進して行くビームジャベリン。

 そしてムサイにぶち当たらないように急速に機首を引き上げるドラケンE改。

 

『命中です!』

 

 サラによる報告。

 ビームジャベリンは史実でガンダムが投げ放ったのと同じようにムサイのエンジンブロックを横合いから貫く。

 ビームを一点に集中することから貫通力が高くガウ攻撃空母を解体したり、『機動戦士ガンダムUC』においてもビームサーベルを食い止めるジュアッグの腕部砲身をまとめて輪切りにするなど威力を見せつけたもの。

 あっさりとエンジンブロックを突き抜け、反対側に位置するもう一つのエンジンブロックまで貫通。

 ムサイを航行不能とする。

 

『やりましたね、ミヤビさん』

 

 アムロが笑顔で通信をつないでくれる。

 彼はムサイが攻撃を受けたことで隙ができたリック・ドムを即座に沈めて見せていた。

 

 まぁ、ミヤビがムサイを沈黙させることができたのも、ムサイの主砲がホワイトベースに向け集中していたこと。

 ムサイには主砲のほかにはCクラス小型ミサイルぐらいしか対空手段が無いが、それも前方に向けた配置。

 つまり前方に全火力を集中できる反面、死角の多い設計であり、対空砲を持たないためミノフスキー粒子散布下における敵モビルスーツの接近に対しほぼ無力であったこと。

 そもそも対空監視が至近に迫ったガンキャノン一機に集中していたこと。

 艦載機は最後に残されたリック・ドム一機で、そちらはアムロのガンキャノンに集中せざるを得なかったこと。

 ドラケンE改の機体のステルス性を生かして絶好のポジションに侵入できたこと。

 これらの条件が合わさったために行えた手段であり、この条件のうちどれが欠けてもダメだったろうし。

 

 そもそもミヤビの知る史実でもジムのビームサーベルはガンダムと同じもの、とされつつも実際にはビームジャベリン機能を持ったものは少数、大半の機体に装備されていたのは『規格は同じでも別物』であったように。

 ドラケンE改に配備されている甲壱型腕ビームサーベルでも、一般機向けにビームジャベリン機能が省略されているものではできない戦法ではあったのだが……

 

『後は私たちが止めを刺すわ』

 

 と言うサラツーに、しかしミヤビは、

 

「待って、ミサイル発射管を潰して戦闘能力を失わせるだけにしてちょうだい」

『ミヤビさん?』

「生き残りが居れば、シャアのザンジバルは救助のため立ち止まらざるを得ない」

『な、なるほど……』

『その隙に逃げるのねっ』

 

 というわけで、ガンキャノンにより残された戦闘能力まで完全に奪われたムサイ艦キャメルは救助があるまでこの宙域を彷徨うこととなった。

 

 

 

「あのドレンが私の到着まで持ちこたえられんとはな」

 

 戦場の惨状にシャアはつぶやく。

 

「救助作業を急がせい! 木馬のコースは?」

 

 

 

「それは確実なのか?」

「はい。ここからルナ2へ進路を取れば98パーセントの確率でザンジバルと接触しますが」

 

 マーカーと今後について語り合うブライト。

 

「これはザンジバルがムサイを救助しなかった場合ですので、もちろん救助活動に手間取ればそれだけ追いつかれる可能性は下がります」

 

 ということ。

 あとは、その不確実性をどう受け止め決断するかだが。

 例えば、酸素と食料が十分に残っていて治療に急を要する怪我人も出ていない場合、座標と漂流方向だけ記録して他の船に救助を任せ先を急ぐ、などという手も無くは無いのだ。

 スペースノイドの心情としては取り難い手であり可能性は低いが、しかしシャアならやりかねないという怖れもあった。

 それゆえブライトは、

 

「うん。よし、サイド6に向かう」

 

 と結論する。

 

「賛成だな、中尉。俺もいいところなしであのAI、サラちゃんに慰められる始末だよ」

 

 とぼやくスレッガー。

 

「手柄を急ぎすぎましたかね」

「はははは、そんなところだな」

 

 と笑いあうブライトたちだったが、

 

「しかし、あれ本当にただのAIなのか? まるで感情を持っているようにしか思えんのだが」

 

 というスレッガーの言葉にふと考え込む。

 

「おい?」

「いえ、改めてそう言われてみると不思議だな。ミライ?」

「私は姉さんの身内よ。前からサラちゃんのことは知ってたから今さら……」

 

 と苦笑するミライだったが、

 

「でもブライト、サイド6に向かったってどうなるというものでもないし」

 

 そう意見する。

 

「このままザンジバルと戦ったとしても、勝つ見込みはほとんどないぞ」

「そうだな。外から見てもホワイトベースのやられ方はひどいもんだ」

 

 と、スレッガーもブライトに同意。

 

「気になることでもあるのか? ミライ」

「い、いえ、別に」

 

 誤魔化すミライ。

 

「サイド6は中立サイドだ。戦闘行為は南極条約で禁じられているし、うまくいけばホワイトベースの修理もできる」

「その代わり、ジオンに取り囲まれる可能性もありますがね」

「やむを得んさ。その時はその時さ」

 

 スレッガーとブライトの会話を聞きながら、ミライは、

 

「……まさかね」

 

 とつぶやく。

 姉の婚約者が居るはずのサイド6で、またグダグダな二人の関係に巻き込まれたりしたら、と危ぶんでいたのだが。

 なお、そういうおそれを口に出して言ってしまうことを、人はフラグと呼ぶ。

 

「針路変更。ホワイトベース、サイド6へ向かいます」

 

 舵を切るミライ。

 

 サイド6。

 いくつかあったサイドのうち、ジオン公国にも地球連邦にも属さず、戦争には参加していない。

 また、このサイド6の支配下の空域では一切の戦闘行為は禁止されていた。

 

 

 

次回予告

 サイド6に人の出会いが待っていた。

 ミライには姉の婚約者カムランが、

「あ、ああ。ご婦人の口説きようがまずいという訳さ、なあ中尉」

「そういうことだ。なんせミライ少尉はホワイトベースのおふくろさんなんだからな」

(……二人とも絶対勘違いしてるでしょう)

 シャアにはコンスコンが、

「き、貴様のために来てやったんじゃないからな、勘違いするなっ!」

(……誰が得をするのだ、これは)

 混沌の中、人は乾いた笑みを浮かべるしかないのだろうか?

 次回『コンスコン強襲』

 君は生き延びることができるか?




 ミヤビのノーマルなドラケンE改による対艦攻撃でした。
 史実でもアムロのガンダムがビームジャベリンを投げてムサイのエンジンブロック二つを貫通させていましたしね。

 そして次回予告…… サイド6には人間関係の酷いゴタゴタが待ち構えている模様。
 あと冒頭はブラウ・ブロの初登場ですよね。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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