ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第37話 テキサスでボッコボコ Aパート

 ソロモンの攻略戦が終わった。

 ドズル中将旗下の宇宙攻撃軍は事実上壊滅した。

 ジオン公国にとっては予想だにしなかった敗北であった。

 デギン・ザビ公王は、

 

「ドズルにしてもっともな事であるよ」

 

 とギレンに答えたという。

(ドズルは死んではいないのだが)

 ギレンはその公王に怒りを覚えつつも、綺羅星のごとく居並ぶ高官たちの前で叫んだ。

 

「ア・バオア・クーを最終防衛線として連邦を討つ」

 

 と。

 

 

 

『アムロさんが来ました』

 

 ホワイトベース医療班の看護兵にして船医のような役割を担当しているサンマロに報告するのはモビルドールサラ。

 いつもはマサキ軍曹という美人のオッパ…… 助手がつくのだが、彼女は現在休憩中。

 そのためにサラがサポートに回っているのである。

 

 サンマロは両手を洗浄しつつ、

 

「血圧測っといてくれ」

 

 と指示。

 

『はい』

 

 サンマロは鏡に映る自分の顔を見ながら、

 

「オスカ、マーカー、アムロ、みんなよく持つな」

 

 と嘆息。

 アムロはもちろん、オスカとマーカーは敵との遭遇の可能性がある場合は、どちらかが必ずブリッジに詰めている。

 二人で二交代制、休暇無しってどんなブラック企業だよ、という話であった。

 

「あー」

 

 と鏡に向かって舌を出し自分の身体をチェックする。

 

 

 

「サラもいろんなことやらされて大変だね」

『アムロさんに比べたら楽なものですよ』

 

 血圧計でアムロのメディカルチェックを行いながら答えるサラ。

 史実ではこの役目、フラウ・ボゥが行っていたものであるが、この世界では疲れ知らずのサラが居る。

 そのためクルーの苦労も緩和されている。

 ……フラウがこのことを知ったら、自分の役目が奪われている、と歯ぎしりして悔しがるかもしれないが。

 

『医療エキスパートシステムの診断では異常なしですね』

 

 サラの言う医療エキスパートシステムというのは、得られた情報を基に診断を行い、さらには医療処置の手順までアドバイスしてくれるスキルソフトだ。

 サラ、そしてサラシリーズはこれを標準で備えている。

 

『アムロさんって恐いくらいたくましくなりましたね』

「え?」

『それにサイド6で何かありましたか? アムロさん、何だか変わったみたいです』

 

 サイド6であったことといえば、アムロの脳裏に浮かぶのは、自分が買ってあげた首輪…… もといチョーカーを嵌められ、ほほ笑むミヤビの姿。

 彼女の笑顔は非常に珍しいものだけに、目にした者の脳裏に深く刻み込まれる。

 そのせいで肝心なララァとシャアとの出会いの印象が霞んでしまっているのだった。

 そこにサンマロが顔を出す。

 

「どう?」

『異常ありません』

 

 サラが答える。

 アムロはちょうど良いと、

 

「ハヤトの具合どうですか?」

 

 と聞いてみる。

 サンマロは、

 

「順調だよ、運動やってたおかげだな」

 

 と答えてから、

 

「サラナインの応急手当てが適切だったこともある」

 

 彼女が戦場で行った処置が良かったのだと付け加える。

 サラナインは自身が持つ医療エキスパートシステムの診断結果を基にモビルドールサラの義体を使ってコア・ファイターコクピットに備え付けのファーストエイドキットによる治療を行っていたのだ。

 そしてサラも、

 

『そうですね。今も予備の義体を使って付きっ切りで看病とお世話をしていますからね』

 

 と話す。

 

 

 

『はい、ハヤトさん』

「ありがとう、サラナイン」

 

 手のひらサイズの歩行型ミニドローン、モビルドールサラの義体を使って、かいがいしく世話を焼くサラナイン。

 その右目には細い黒のリボンが眼帯のように巻かれ、身体にも痛々しい傷跡がある。

 そう、これは予備の義体ではあるが、正確に言うとソロモン戦でハヤトをかばって損傷した結果、従来予備だったものと入れ替わりで予備機入りしたのを、無理を言って使わせてもらっているものだ。

 それを見て済まなそうな顔をするハヤトに、サラナインは言う。

 

『大丈夫ですよ、ハヤトさん。私はロボットなんですから痛みなんて無いんです。この右目も大光量補正(フレア・コンペンセイション)機能が今一つ上手く働かないので薄いリボンテープをサングラス代わりのフィルターとして使って保護しているだけで、実際には見えているんですし』

 

 そう言って、むん、と可愛らしくガッツポーズを取って見せる。

 

『それに、どの傷もハヤトさんを庇って負った名誉の負傷。私の誇りなんですから』

 

 細い指先を己の身体に走る傷跡に伸ばし愛おしげになぞる、その仕草が妙に艶めかしかったりする。

 そうしてサラナインは自分で言うとおり、損傷をまるで気にしないかのように笑顔で、楽しそうにくるくると働いて見せる。

 そんな彼女の様子に、ハヤトは思わずつぶやく。

 

「……もう人間の嫁が居なくても良いんじゃないかな」

 

 それは『この状況を客観視すると』という意味で口にしただけで、自分自身がサラナインを嫁に欲しいとか、そういう意味で言ったつもりは無かったのだが。

 

『――っ!?』

 

 真っ赤になって固まるサラナインに、ハヤトもまた自分の言葉がどのように捉えられたかに気付き赤面するのだった。

 

 

 

 フラウのベッドからギリギリと異音がする。

 睡眠中の歯ぎしりはメンタル面からも発生するもの、とも言うが……

 

「ハヤトどいて! そいつ壊せない!」

 

 と寝言にしては大きすぎる、というか物騒過ぎる叫びが響き渡る。

 

「ヒエッ……」

 

 不幸にして彼女の部屋の前を通りかかったカイは身をすくませるのだった。

 

 

 

「まいったな、テキサスの暗礁空域だ」

 

 オペレーターシートでつぶやくマーカーの声に、ブライトは目を開く。

 

「総員起こしするか」

「あ、起こしてすいません」

「いや」

 

 そう言いながらリクライニングシートで取っていた仮眠を切り上げ、身体と毛布を固定していたベルトを外して身を起こす。

 無重力であるのだから、フルフラットな寝床でなくとも割と熟睡できるのだ。

 

「第三戦闘ラインすれすれにいるのはチベですが、テキサスゾーンにもいるようですね」

 

 ソロモンを抜け出した敵艦の掃討作戦に就くホワイトベースはテキサスゾーンに入った。

 暗礁空域である。

 レジャーと牧畜業を専門に造られたこのコロニーはテキサスと名付けられ、軍事的にはなんの重要性も持たぬために取り残されている。

 それを囲むように岩とコロニーの残骸が浮かぶ。

 

 

 

「まだテキサスには着いておらんのか? エルメスとビットは」

 

 シャアのザンジバルもまた、テキサスコロニーへと向かっていた。

 

「整備が遅れているようです」

 

 副官であるマリガン中尉が答える。

 

「まあいい、私のFZ型ザクが届いているだけでもな」

 

 とつぶやくシャア。

 ミヤビの知る前世の記憶ではYMS-14、先行量産型ゲルググがシャアに回されていたが、この世界には存在しない。

 代わってシャアが選んだのが『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』登場のMS-06FZ、ザクII最終生産型なのだった。

 

 

 

「何でまた大佐は今さらザクなんかを選ばれたんだろうな?」

 

 シャアに類似した操縦技術を持っていたことからシャアの機体を仕上げるフィッターパイロットを務めているダントンは、搬入される予定のFZ型ザクについて首を傾げる。

 

「何言ってるのダントン。スペック表読んでないの?」

 

 と答えるのは相方であるシャア専属のフィッターエンジニアの少女、アルレット。

 

「ビーム兵器が使えないことを除けばカタログスペック上は次期主力量産機の本命だったゲルググ並み。実際の性能はドム並みとも言われる機体よ」

 

 これはミヤビの前世でも言われていたもの。

 

「特に推力はF型の70パーセント増しで、これはゲルググ以上」

 

 それどころか推力比でミヤビの前世の記憶の中にあった高機動型ゲルググを上回る。

 12個の大型化された姿勢制御スラスターを備えていることもあり、直線加速だけではなく運動性も優秀。

 

「ただ、推進剤の量は変わらないから最大推進戦闘時の限界時間は半分になってるけど」

「そのせいか? 首都防衛大隊に優先的に回されているって聞いたが」

「そうね……」

 

 アルレットは思案して、

 

「要撃機(インターセプター)、つまり要撃戦闘機、迎撃機、迎撃戦闘機、防空戦闘機、局地戦闘機と呼ばれる基地や艦隊の上空の防御を担当する機体」

 

 つまり、

 

「国土・都市・軍事施設等を攻撃機から護るために開発されるから加速力が重視される。逆に敵機に対してのスクランブルさえ行えればいいから航続距離は重視されない」

「FZ型ザクはその用途にぴったりということだな」

 

 うなずくダントン。

 そして同時に、

 

「大佐なら以前の乗機、S型ザクと同じく腕でカバーできる話でもあるか」

 

 そういうことでもある。

 

 

 

「テキサスには人は居るのか?」

 

 シャアからの確認。

 

「さあ? 昔の従業員とコロニーの管理省の役人がわずかに居るようですが……」

「実質無人コロニーみたいなものか」

「はい」

 

 そうしてマリガンは問う。

 

「木馬はどうします?」

「近くにマ・クベが居るだろ?」

「はい」

「こちらは手持ちの武器が満足に無いのだ、やつにやらせろ。ザンジバルはテキサスに入港する」

 

 

 

 ゼリー食で栄養補給しながら状況を見定めるマーカーとブライト。

 

「チベが動きます、見つかったらしいです」

「よーし、総員起こしだ」

 

 

 

『敵接近、敵接近、全員第三戦闘配置』

 

 ブライトの声が艦内放送で響き渡る。

 

「むぅー、命拾いのあとの一寝入りだったのに」

 

 眠い目をこすりながら起きるミヤビ。

 そのネコ科の動物のようなしなやかですらっとした下着姿の身体を晒すと、いつものノーマルスーツを着込む。

 

 

 

『アムロ、ガンキャノン出ます!』

 

 まずは主力で潰しの効くアムロが左舷モビルスーツデッキから出て、

 

『コア・ブースター、出るぞ』

 

 右舷デッキからはコア・ブースターでリュウがフォローに出る。

 ブライトはそれを確認すると全艦に通達。

 

「ソロモンから脱出した敵と思われる。第二戦闘エリアに入ったら他の機体も発進する。各員、ソロモンの後とはいえ、気を抜くなよ」

 

 

 

「フフ、予定通りだな。木馬をキャッチできたか」

 

 ホワイトベースが捕捉したチベは、マ・クベの乗艦だった。

 ムサイを率い、テキサスの暗礁地帯を航行する。

 

「ウラガン、私のギャンの整備はどうかな?」

 

 彼は白磁の壺をもてあそびながら、副官であるウラガンに問う。

 

「はい、いつでも」

「ようし、エリア2まで進んでリック・ドム発進、私もギャンで出撃する」

「しかし、マ・クベ大佐みずからお出になることはないと」

「あるのだな」

「は?」

 

 マ・クベは腰前に持った壺の首を男性らしく長く、しかし神経質さをうかがわせる細い指先で撫でながら語る。

 

「ギャンは私用に開発していただいたモビルスーツだ。キシリア少将へ男としてのメンツを()てねばならぬ」

 

 正確にはYMS-15、ギャンはゲルググと次期主力量産機の座を争った競作機だったが、マ・クベが典礼用に用意した彼専用のグフと似通った西洋甲冑風の意匠が施されているように、マ・クベに配慮された面もあるというのは誤りではない。

 そもそも次期主力量産機はジオニック社のゲルググと事前に決まっており、ギャンはコンペを成り立たせるためのいわば当て馬だったというのがもっぱらの噂である。

 ゆえに今後のための新技術を盛り込みつつも、コンペ終了後にマ・クベに回すような仕様の調整が成されていてもおかしくはなかった。

 

 ……まぁ、ミヤビが転生したこの世界では、ゲルググは量産されることなく終わるのだが。

 

「それにシャアには例のモビルスーツが届いていないという話だ。きゃつの前で木馬とガンキャノンを仕留めてみせるよ」

 

 そう言って指先でチィン、と壺を弾くマ・クベだった。




 まだサラナインのバトルフェイズは終了していないぜ!!
 というわけでサラナインの追撃回でした。
 やめてくれサラナイン、そのシチュエーションはハヤトに効く。

 そしてジオンのモビルスーツ事情はこんな具合に。
 何でこんなことに、という理由はまた後で。


>「まあいい、私のFZ型ザクが届いているだけでもな」

 FZ型ザクは『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』登場の機体でしたが、スーパーロボット大戦シリーズでは隠し機体としてシャア専用FZ型ザクがありました。
 大抵、移動力や運動性などが本当に3倍になっていたりしますね。


 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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