ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第38話 シャア、ぶっちゃける Cパート

「恐ろしいものね。均衡が破れるというのは……」

 

 そう、つぶやくミライ。

 

「よし、全機回収後、ホワイトベースはテキサスに向かいアムロたちの安否を確認する。中には敵の生き残りがいるかもしれん、気をつけろ」

 

 指示を出すブライト。

 味方機は長距離を迂回しながら移動するという行動を取っていたために推進剤の残量に不安がある。

 回収しての補給は必須だった。

 

「マーカー、爆発があったのはどこだ?」

 

 ブライトはマーカーに確認。

 

「はい、CブロックのポイントN5付近です」

 

 テキサスコロニーはオニール型。

 採光窓から漏れた爆発光を分析して得られた結果だ。

 

「N5に直行します」

 

 ミライはホワイトベースを操作し、ゲートからコロニー内に入る。

 

「オムル、ジョブ、バギースタンバイ」

 

 そう指示をするブライト。

 そこにモビルスーツデッキのセイラから通信が入った。

 

『ブライト、私も捜索に出るわ。少しでも人手は必要でしょう?』

「しかし……」

『このコロニー、砂漠化が進んで視界が効かないわ。ガンキャノンLの120ミリ低反動キャノン砲もこれでは生かせない。射撃手は不要よ』

「それも、そうか」

 

 ブライトはうなずくが、

 

「しかし、その格好はな」

『えっ?』

 

 例の、ミヤビの前世で言うところの『対魔忍スーツ』かという感じの、限りなく薄く肌に張り付いたパイロットスーツ。

 さらにはゲーム『マブラヴ』及び『マブラヴ オルタネイティヴ』に登場する訓練兵用衛士強化装備のように胸から腹部にかけてが肌色に近い色になっており、見た目は透け透けというもの。

『機動戦士Zガンダム』登場のブレックス・フォーラ准将が目にしたら、

 

「何と破廉恥な!」

 

 と言ってくれるような格好だ。

 こんな痴女のような装備で外に出すのはためらわれた。

 しかしセイラは自分の格好に自覚が無いのか首を傾げた後に、

 

『そうね。薄い分、耐久性に劣るのでしょうし大事なスーツを消耗させるわけにも行かないわね』

 

 と違う意味で納得し着替えることに。

 そんな彼女にブライトは自分の方が気にしすぎているのかと不安になり、

 

「ミライ……」

 

 と声をかけてしまうが、

 

「大丈夫、あなたの感覚は正常よ」

 

 と答えられ、ほっとする。

 ここで真顔で、

 

「ブライト、あなた疲れてるのよ」

 

 などと心配されたらブライトの精神の根幹が揺らいでしまいかねないところである。

 

「着地完了」

「よし、オムル、セイラ、ジョブ、捜索に出てくれ」

 

 ハッチを開けてバギーを出す。

 

「アムロを発見できるまで第二戦闘配置。補給作業も急がせろ。ガンキャノンLを最優先で。次はドラケンE改可翔式だ」

 

 コロニー内戦闘の可能性も考えての指示だ。

 

「フラウ、無線の状態はどうだ?」

 

 次いでフラウ・ボゥに問うブライトだったが返事がない。

 

「フラウ、無線の状態はどうか?」

 

 少し声を大きくして再度問うと、フラウはびくっと身体をすくめ、

 

「え? あ、はい、使えそうです」

 

 と回答。

 ブライトは少し考えて、

 

「……フラウ、ハヤトの様態を見てきてくれないか? ハヤト、寂しがってるだろう」

 

 そう指示。

 

「でも」

 

 と遠慮する彼女に、ブライトは、

 

「フラウ、バンマスをすぐに上がらせろ」

 

 予備要員として第2ブリッジに詰めているバンマスを呼ぶように指示。

 

「はい、わかりました」

 

 通信装置に向かう彼女にブライトは、

 

「……みんな疲れているんだ」

 

 とキャプテンシートに備え付けのヘッドセットを身に着け、一時的に通信業務を肩代わりする。

 なお、フラウが消耗しているのは忙しくて睡眠時間が削られているわけでは無く(史実と違ってそこはサラが肩代わりしている)精神的に病んで良質な睡眠が取れていないせいだったりする。

 歯ぎしりや突然夜中に叫ぶような寝言。

 本人もそうだが、一人部屋でなければ同室の人間も共倒れでおかしくなりそうな症状である。

 まぁ、軍隊に耳栓は必需品ではあるし、一般人でも旅行や寮での生活、就職しての新人研修など、他人と同じ部屋で寝る機会があるなら用意しておくと非常に助かるものだったが。

 

 

 

 フラウが向かったハヤトの病室。

 そこで彼女が目にしたのは……

 

『さぁ、ハヤトさん。身体を拭かせてください』

「あ、ああ……」

『モテの第一歩は清潔感からとも言いますよ? 最近は戦いが続いてパイロットスーツ着っぱなしでしたけど服装もきちんと……』

 

 ともろ肌を脱いだハヤトの背中を拭こうとしながらアドバイスなのかお説教なのか、しかしハヤトを想っての言葉を紡ぐサラナイン。

 しかしハヤトの、

 

「そっか…… サラナインはパイロットスーツ着てるような男は嫌いなのか……」

 

 という呟きに、ぴきっと、凍り付いたように動きを止める。

 そうして彼女はうつむき加減に、まだ調子の悪い右目に眼帯のように黒リボンを巻いた顔を真っ赤にして蚊の鳴くような声でこう答える。

 

『……す、好きぃ』

 

 動揺したのか子供のように舌足らずな、しかし本心からの言葉を。

 

 まぁ、当然である。

 サラシリーズはマスターとなるパイロットに依存しやすい性質を持つが、マスターがパイロットスーツを着てくれる時というのはすなわち自分と二人っきりで出掛ける時。

 マスターを独り占めできる時に他ならないのだから。

 

「っ!!」

 

 甘酸っぱい、甘すぎる空気が、病み切ったフラウを寄せ付けない!!

 みかんの皮の汁でもぶっかけられたかのように目を押さえ、声も無くよろよろと後ずさるフラウ。

 やめてくれ二人とも、そのシチュエーションはフラウに効く。

 そして、

 

「あれっ?」

『ど、どうしましたハヤトさん』

「いや、さっきドアの方に人の気配が」

『ええっ!?』

 

 驚く、サラナイン。

 そうして両の手で顔を覆うと、ちらっと、上目遣いにハヤトの表情をうかがって、

 

『さ、さっきの話、誰かに聞かれちゃったんですか?』

 

 恥ずかしくてもう人前に出れない、といったように赤面する彼女。

 ハヤトもそれにつられたように顔を真っ赤に染め。

 そうして互いに照れまくるのだった……

 

 

 

『こちらセイラ、こちらセイラ、ホワイトベースどうぞ』

「セイラか」

 

 通信を受けるブライト。

 

『あら、フラウ・ボゥじゃないのね』

「ああ、今休ませた。どうだ、まだ見つからんのか?」

『ええ、もう少し。あっ……』

 

 途切れるセイラの声、そして、

 

『に、兄さん』

「ん?」

 

 

 

 テキサスコロニーの荒野、再会するシャアとセイラ。

 

「軍を抜けろと言ったはずだ。そ、それが軍曹とはな」

 

 そう嘆くシャアにセイラは言い返す。

 

「兄さんこそ、ジオン軍にまで入ってザビ家に復讐しようなんてやることが筋違いじゃなくて?」

 

 しかしシャアは、

 

「アルテイシア、お前は私が父の仇を討とうとしているなどと、本気で考えているのか?」

「え?」

 

 

 

「あ、相手はだ、誰なのだ? こ、声が……」

 

 通信機越しに聞こえてくるセイラと第三者の声。

 セイラは通信装置が入りっぱなしだということに気付いていない様子だった。

 ブライトはヘッドセットのスピーカーに耳を澄ませる。

 

 

 

 シャアは語る。

 

「私はな、私人としての父を尊敬などしていないのだよ」

 

 いや、それどころか何の情も、価値も認めていない。

 

「私という一個人にとって父は家庭を顧みず、私が何より愛した母とお前を不幸にし、ついには母を幽閉の末の孤独な死に追いやった『まるでダメなおっさん』に過ぎん」

「兄さん!?」

 

 いきなりぶっちゃけたシャアに、セイラは悲鳴じみた声を上げる。

 再会した兄が何を言っているかわからない件。

 

 まぁ実際、安彦良和氏のマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でもシャアは、父とのその父の思想である大義、ジオニズムを子供心に、

 

「不遇な大人たちの負け惜しみだと思っていた!」

 

 と語っていた。

 

「だから私は父が嫌いだった。

 空論をもてあそび、家族をかえりみず母を苦しませてばかりいる父を憎いとさえ思った。

 だから父の死がザビ家による暗殺であっても病死であっても、それはどうでもいいことだった」

 

 とも……

 しかしミヤビ・ヤシマという存在が転生したこの世界の、今セイラの前に居る兄、シャア・アズナブルは、

 

「一方で、公人としてのジオン・ズム・ダイクンは評価していた」

 

 と話す。

 

「『世のため人のため』家庭を犠牲にしてまで不特定多数の民衆に尽くす。人は分かり合えると信じ、働きかけ続けることができる。私にはそんな『情熱』を持つことはできないし理解もできない。ただ自分に理解できないからといって否定するものでもないし、自分にできないことができる相手は評価されるべきだろう、と」

 

 だが、

 

「しかしな、アルテイシア、私だってそれから少しは大人になった」

 

 そう語る兄は仮面の下、どんな表情をしているのだろうか?

 セイラは思う。

 

「とある人物に、それが欺瞞だと気づかされた」

 

 無論、それはニュータイプであり嘘を強制的に暴き立てる存在、イセリナ・エッシェンバッハである。

 

「私は公人としての父が尊敬できる人物だと『信じたかった』だけなのだ。そうでなくては犠牲になった母は、何のために死んだのだ?」

 

 やるせなくつぶやくシャアに、はっと息を飲むセイラ。

 

「先入観などから判断が歪められることを「認知バイアス」と言うそうだな。私は犠牲の大きさに、正常な判断ができなくなっていたのだ」

 

 損失が、犠牲が大き過ぎて失敗を認めることができなかった超音速旅客機コンコルドの事例からコンコルド効果と呼んでいるが、シャアが陥ったのはそれに近い。

 私人として軽蔑する父は『公人として尊敬できる人物でなくてはいけない』。

 その思い込みが、自分の認知と思考を歪めていたのだ。

 自分の内の矛盾は、そこに根差していた。

 シャアはそう分析する。

 

「そうやって醒めてみるとだな、父は棄民政策により希望を失っていたスペースノイドを鼓舞するのに成功したが、その成功が仇となって失敗したということが普通に分かったのだ」

「失敗?」

「そうだろう、アルテイシア。父が唱えたエレズム「地球を聖地として保護し、全人類は宇宙へ住むべきだ」という思想は美しいが、「環境保護のため、お前の国の国土すべてを自然公園に指定するから立ち退け」と言われて「そのとおりでございます」と納得できる者が居ると思うか? 父の理想は過激で極端であるがゆえに、スペースノイドのプライドをくすぐるのには役立ったが、実際にスペースノイドの独立を実現するには足かせとなっているのだよ」

 

 そう語るシャアはうんざりとした様子だった。

 

「足かせは、ダイクン本人にもはめられている。自身によって出現が予言された宇宙に適応進化した新人類の概念。お互いに分かりあい、理解しあい、戦争や争いから開放される新しい人類の姿」

「ニュータイプのこと?」

 

 

 

「ニュータイプ?」

 

 ブライトはかつてシーマから聞いたことがあったそれを再び耳にし、思い出す。

 

 

 

「そうだ。「人は分かり合える」という理想は「分かり合わなければならない」という呪いに変わった」

 

 つまり、

 

「人は大切な人、自分と思いを共にしてくれる者たちとの時間を大事にすべきだ。そうだろう、アルテイシア」

「そう、ね」

 

 それは当たり前のこと。

 

「しかしな「人は分かり合える」いや「分かり合わなければならない」としてしまうと、それは逆転する。つまり自分と分かり合えない相手を説得することに時間と労力、人生の大半を費やし、それでも分かり合えないことに絶望する。そうして父ダイクンは疲れ果て、ついには病に倒れたのだよ」

 

 それがニュータイプの呪い。

 宇宙世紀に蔓延し、ミヤビ・ヤシマの前世の視点ではファンの間にも浸透して行ったもの。

 

「例えばな、アルテイシア。学校や職場、あるいは家庭に口を開けば否定的な、ネガティブなことしか言わない嫌な人物が居たとする。それも自分は正しいことを言っており、正しいから受け入れられるべき、と思い込んでいるような者だ」

 

 身近な例の方が分かりやすいか。

 

「「人は分かり合える」「分かり合わなければならない」そんな理想を掲げて、その人物と話し合い、説得し、良い方向に導く…… などというのは己に害しかもたらさない。いい年をした、人格が固まりきった人物の在り方はそう簡単には変わらない。大抵は失敗し、たとえ成功したとしてもその時には自分が疲弊し、摩耗しきって精神の健康を損なってしまっているだろう」

 

 それゆえ、

 

「だから専門家も言うのだ。そういった人物を説得しようとしてはいけない。可能な限り適切な距離を置くことが必要なのだ、と」

 

 これが現実である。

 

「それは…… 切り捨てではなくて?」

 

 そう問うセイラにシャアは言う。

 

「いいや、「失敗をする自由」を認める。つまりは「自分の選択したことの結果を自分が体験する」という学びの機会を相手に与えているのだよ、これは。学習の機会を奪ってしまっては、人は成長できないだろう?」

 

 そうしてシャアはサイド6で出会ったヤシマの令嬢の言葉を思い出し、口にする。

 

「人が変えられるのは自分だけ。結局は人々が地道に学んで自らが変わって行くほか無いのだ」

「それは……」

「とある人物が私に教えてくれた言葉だ」

 

 と。

 まぁ、そう思っているミヤビだから、

 

 人間、多少上手いことを他人から言われてもそんな簡単には変わらないでしょう?

 そもそもシャア・アズナブルという人物が持つ矛盾が彼の認識や思考を捻じ曲げているのが問題なので、そこを彼自身が自覚し、変わろうと思わない限りはどんな理屈を並べても気休め程度にしかならないし。

 同様にシャア自身が自分の矛盾に向き合わないままどんなに考えたり調べたりしてもバイアスがかかるのだから問題は解決できない。

 

 などと軽く考え、自分でできる限りのことを語って見せただけなのだが。

 

 それがシャアの血肉になっているのは、イセリナ、ララァ、アルレットのおかげ。

 イセリナの存在により自分の矛盾に気付き、ララァ、アルレットの存在に癒され、自分の中の真実に正面から向き合う力を持つことができたから。

 そうやって、まさにシャア自身が変わりたいと願ったところに、彼自身が言語化できないでいた指標が、指針がミヤビによって示されたのだ。

 まるで計ったかのように……

 そうしてシャアは覚醒したのである。

 

 富野監督が、

 

「シャアが”悩む”ということから脱してしまったら最強、アムロも瞬殺」

「『ZZ』なんかは5本もいらずに終わってしまうほど」

 

 などと語っていたことを知っているミヤビにしてみれば、

 

(今、敵に回ってる状態で覚醒ってシャレにならないでしょう! イヤな開き直り方すんな!)

 

 という話だったろうが。

 

 そう、今シャアが語った自己分析が絶対の正解であるとは言えない。

 人の心はもっと複雑なものであり、そんなに簡単に自分を読み解き、変わることができるのならメンタルで悩む人間など居なくなってしまうだろう。

 しかし思い込みだろうと何だろうとシャアが開き直って悩むことを止めた、迷いがなくなったということは事実で、こうなった彼は本当に強い。

 そういうことだった。

 

 そしてシャアはセイラに言う。

 

「これを切り捨てとお前が思うなら、私はお前のその意思を尊重しよう。お前はお前が思うように切り捨てずに生きてゆくと良い。ただ私にはそのような『情熱』は持つことができなかった。それだけだ」

「兄さん」

「たとえお前が私と別の道を行こうとも、私がお前を見捨てるようなことは無い」




 サラナインのターンが終わらない!
 そしてそれを見せつけられるフラウ……

 一方、セイラとシャアの再会ですが。
 シャアって矛盾した人間だよね、どうしてこういう行動をするんだろうか? というのは多くのファンやクリエイターの皆様が考えていて。
 中でも、

> 実際、安彦良和氏のマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でもシャアは、父とのその父の思想である大義、ジオニズムを子供心に、
>
>「不遇な大人たちの負け惜しみだと思っていた!」
>
> と語っていた。
>
>「だから私は父が嫌いだった。
> 空論をもてあそび、家族をかえりみず母を苦しませてばかりいる父を憎いとさえ思った。
> だから父の死がザビ家による暗殺であっても病死であっても、それはどうでもいいことだった」
>
> とも……

 というのが一番メジャーな解釈でしょうか。
 この作品ではそれを参考にさらに踏み込んで考察してみたものです。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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