ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第40話 ブラレロのララア Cパート

 その頃、地球連邦軍の最前線たるソロモンでは次の作戦のための命令が下されていた。

 すなわち、ジオンに進攻する星一号作戦の発動である。

 各艦隊はそれぞれに定められたコースを取って攻撃目標へ向かう。

 

 しかし、本来もっとも先行すべき第13独立艦隊のホワイトベースの出港だけが遅れていた。

 

 

 

「理論的な自信だけはある。メカニック的な干渉はすべて打ち消したはずだ」

 

 モスク博士の言葉に、アムロはうなずく。

 

「ということは、無限大にスピードは速くできる」

「うむ、理論的にはな。しかしガンキャノンのパワーはそうはいかん」

「そうですね。博士は僕らの救い主です」

 

 そう告げるアムロに、モスクは、

 

「君が生き残ったらそう言ってくれ。今回のデータだけはなんらかの方法で私の手元に届けてほしいものだな」

 

 と答える。

 その明け透けな言い方にアムロは、

 

「だから人の本音というのは聞きたくありませんね」

 

 そう、苦笑する。

 モスク博士もそれには同意し、

 

「まったくだ、アムロ・レイ君。君のガンキャノンに対するセンスに期待するよ」

 

 と右手を差し出す。

 アムロはそれを握り返し、

 

「ありがとうございます」

 

 と礼を言う。

 

「必ず生き延びてくれよ。そのためにこそ、コア・ファイター側もミッションディスク方式に変更したのだ」

 

 つまりドラケンE改と同じく、サラシリーズの記憶も含むデータを記憶媒体で回収できるようにした。

 最悪はディスクだけ取り出して脱出しろということ。

 

「はい。データを持ち帰る為にですね」

 

 まぁ、持ち帰るにはアムロ自身が無事でなければいけないわけで、遠回しにアムロの無事を願っているとも言えるが……

 

「そう、それだ! その生への執着が限界すら超える強烈な超反応を生むかもしれん!!」

 

 声を上げて笑うモスク博士。

 

「気力だ!! 気力でマグネットコーティングの性能を引き出して見せるんだっ!!」

 

 などと言い放つのだった……

 

 

 

 一方ミヤビは、

 

『理知的で自信に満ちた微笑を浮かべた、現状を打破してくれる救世主のように見えたモスク博士は、一瞬にして氷の笑いを張り付けた冷酷な狂的科学者(マッド・サイエンティスト)に変身したわ!!』

「……何ですって?」

 

 恐怖のあまりプルプルと震えながら告白するサラツーをケアしていた。

 

『あ…… あの人は私とガンキャノンを木人形(デク)と呼んで! まるで実験でも楽しむように次々と……』

 

 あー。

 

『作業中に「ん!? まちがったかな……」とか言うし!』

 

 それは怖い……

 

『失敗してダメにしたパーツに背を向けて「捨ててこい! 俺の求めるマグネットコーティングの完成はまだ遠い!!」とか言い放つし!!』

 

 酷い、酷すぎる経験をしたサラツーに深く同情するミヤビだったが、

 

「それでもあなたは頑張って耐えたのね、アムロのために」

 

 滅多に見せることの無い、本当の、慈母のように優しい笑みを浮かべて言ってやる。

 

『あ、当たり前でしょっ!』

 

 一転して真っ赤になるサラツー。

 

『ホワイトベースのメカニックの人たちの立ち合いも許されていなかったし、これからアムロを支えて行くのに、ガンキャノンの機体にどんな改良を加えられたか知っておかなくちゃ!』

 

 道具というのは、使い手の役に立つためにこそ造り出される。

 そういう意味ではとても純粋でけなげなものであって、それに少女の人格を与えられた存在である彼女たちサラシリーズは、時に尊いと思えるほどの感銘を見る者に与える。

 だからミヤビは言うのだ。

 

「そうね。苦労も喜びも分かち合えるマスターの絆、そして誇りでいたいっていう、その想いは…… きっとあなたたちの力になるわ」

 

 と……

 

 

 

 係留してたロックが外され、ソロモンから出港するホワイトベース。

 

「港を出たら最大船速に移る。先行する隊を追う」

「了解」

 

 ブライトの指示の下、ミライはホワイトベースを加速させる。

 

 

 

 ザンジバルのブリッジ、バタシャムたちの弁明を聞くシャア。

 

「ひょっとしたらララァ少尉の働きはシャア大佐のFZ以上でありましょう」

「歴戦の勇士のお前達がそう言うとはな」

 

 ため息交じりにそう答えるシャアにバタシャムは、

 

「我々はニュータイプの能力というものを初めて見せられたのです。あれほどの力ならばララァ少尉はお一人でも戦闘小隊のひとつぐらいあっという間に沈められます。その事実を知った時、我々は馬鹿馬鹿しくなったのであります」

 

 同席しているララァが、はっと顔を上げる。

 

 バタシャムの言い分は勝手なことと聞こえるかもしれないが、それは当事者でないから言えること。

 バタシャムたちはシャアに、リップサービスかも知れないが「歴戦の勇士」と言われる程度の戦歴を持つパイロット。

 自他ともに優秀であると認められており、それゆえにモビルスーツパイロットという命がけの職務に邁進してきたし、またその陰で血のにじむような努力も積み重ねてきたわけである。

 無論、戦時のこと、同様に命を賭けて戦い、散っていった多くの戦友たちの姿も間近で見続けてきたのだろう。

 その命がけの努力の成果が、まったく問題にならないほどの力を見せつけられたら?

 

 自分たちの積み重ねてきた努力に、そして犠牲にもう意味は無いのか?

 これを知って自分は今後、今までどおり戦えるのか?

 

 そんな根源的な疑問にぶち当たってしまったのだ。

 これは真面目に努力していればしているほど囚われてしまう問題である。

 

 そういう意味では逆に、

 

 努力は積み重ねるから崩れる、積み重ねなければ決して崩れない。

 人間は立って歩くから転ぶ、はじめから横になって転んだ人はいない。

 

 ということで、努力しない者の方がこういう場合、物事をフラットに見ることができたりするのだが。

 しかしどちらが良いという話でも無いだろう。

 

「ララァ少尉ほどのパイロットが現れたなら、我々凡俗などは」

「ララァに嫉妬しているのではないのか?」

 

 そう問われ、バタシャムはとっさに、

 

「心外であります」

 

 と否定する。

 ただ、声を荒げないくらいの理性はあったし、

 

「……いや、皆無とはいえませんが、なによりもニュータイプの実力に驚きました」

 

 と、自らの内面を率直に省みる節度もあった。

 だからシャアも、

 

「うーん」

 

 と思案する。

 ニュータイプとオールドタイプの間の確執。

 その表れに直面し、彼も考えるところがあったのだろう。

 

「軍法会議も覚悟しております。が、ブラレロの出る時、後衛にまわることだけは認めてください」

 

 というバタシャムからの申し出に、シャアは、

 

「できるか? 少尉」

 

 とララァに問う。

 彼女は席から立ち上がり、

 

「中尉のおっしゃることはわかります」

 

 と答える。

 できる、とは言わないところに彼女の立場の苦しさがある。

 シャアは仮面の下に本音を隠しつつ、

 

「そうしてくれ」

 

 と言い、

 バタシャムにも、

 

「中尉、いいな?」

 

 と申しつける。

 

「は、大佐」

 

 バタシャムたちは敬礼しつつ、それに答えた。

 

 実際問題、ララァがサイコミュによるオールレンジ攻撃に集中するためには前衛が必要ではあるのだが、しかしそれは相互理解、信頼関係が無い状態で強要しても、

 

「ニュータイプという優越者を敵の攻撃から守る囮、そして盾として使い潰されてくれ」

 

 と命じているも同じ。

 兵からしてみれば、

 

「そんなに強いなら前に出て戦えばいいだろ」

 

 ということになってしまう。

 ゆえにシャアはバタシャムたちの説得をあきらめ、自分が前に出れば良いかと割り切ったのだ。

 

 シャアのように行動力のある自由な人間は、他者を説得してまで変えようとはしなくなる。

 それというのも、動かない障害物は避ける方が楽だからだ。

「動かないものは放置でいい」と割り切って、自分がやりたいことに集中できる。

 事の良し悪しはともかく、それがシャアのような人間の性質、やり方なのだった。

 

 

 

 一方、ホワイトベースは先行する地球連邦軍宇宙艦隊に追いつきつつあり、ブライトは、

 

「総員に告ぐ。食事は今のうちにしておけ、しばらくは戦闘食しか食べられんことになる」

 

 と、全艦に放送をかける。

 

 

 

「へーっ、この食い物が戦闘食でないってんだからな」

 

 そう毒づきながらハンバーガーを食べるカイたち。

 西暦の時代のアメリカ軍で言うところのCMK(Complete Meal Kit)、市販の食品をまとめてパッケージングしただけの個人用食事キットに近いものか。

 栄養バランス的に良くなるはずが無いし、かさばるし、ゴミが出るし、そのゴミには一切の迷彩効果は無いどころか派手な色合いをしているため、比較的安全な後方で移動時などに間に合わせ的に使用されるもの。

 

 一方、アムロはガンキャノンのコクピットで、もっと簡単にチューブ食を胃に流し込みつつ、サラツーのサポートによりマグネットコーティング後の機体のチェックを行っていた。

 試しにマニピュレータを動かしてみて、

 

「なるほど、こりゃすごいや。しかし……」

「アムロ、いい?」

「はい」

 

 そこに顔を見せたのは、肌にぴったりと張り付いた対魔忍スーツを着た痴女、ではなくセイラ。

 肩に乗ったモビルドールサラ、サラスリーが死んだ目をしているのが気にかかるが……

 

「どう? 調子は」

 

 そう問われ、アムロは、

 

「良好ですけど、動きが速くなった分はメカに負担がかかります。その辺のバランスの取り方が難しいですね」

 

 と答える。

 セイラはサラスリーとは対照的につやつやとした顔で機嫌よく、

 

「大丈夫よ、その辺は自信を持って、アムロ」

 

 と言うが、

 

「そうですか?」

「そうよ、アムロはニュータイプですもの」

 

 その言葉にアムロは苦笑して、

 

「ふふ、タイプからいったら古い人間らしいけど」

 

 そう、おどけて見せる。

 セイラも、

 

「フフ、そうね、おセンチでちっとも翔んでないのにね、アムロって」

 

 けなしているような言葉だが、親愛を込めて言っているのだろう。

 きついことを口にしても許してもらえることで、相手との信頼関係を確かめ安心する。

 割と感情表現が不器用なのだ、このお姫様は。

 これまでの付き合いでその辺を理解しつつあるアムロは、

 

「……そう正面切って言われるといい気分のもんじゃありませんね」

 

 とその笑みを深くして答えるのだった。

 

 

 

(むぅ、さすがぎりぎり1970年代の昔のアニメ)

 

 と、セイラのセリフを耳にして感心しているのはミヤビだ。

 

(「おセンチ」とか「翔んでる」とか「流行語ネタはすぐ風化するぞ」「ほら、風化した……」を地で行く会話ね)

 

 いや、一周回って新しいのだろうか……?

 

 なお宇宙世紀の人間である彼らは当然、日本語ではしゃべっていないのだが。

 しかし西暦の時代にあった米国発のサイバーパンク・ニンジャ活劇小説『ニンジャスレイヤー』において原作テキストでも「Wasshoi!」とか「akachan」とか使われていたように忍殺語、スラング的に「おセンチ」「翔んでる」という言葉が使用されているのだった。

 

 

 

「シャア・アズナブル大佐、ララァ・スン少尉、入ります」

 

 キシリアの元に、彼女の艦隊へと合流したシャアたちが挨拶に上がる。

 その彼にキシリアは、

 

「空母ドロスの主力隊はグラナダとア・バオア・クーの線上に展開させた。大佐は私の遊撃隊に入り戦闘指揮を取れ」

 

 と指示。

 

「はっ」

 

 そうした後にキシリアはシャアの影にたたずむようにして立つララァを見て顔をしかめる。

 

「気にいらんな、その服は」

 

 ララァは変わらずあのワンピース姿だ。

 

「少尉のサイズを補給部隊へまわしておけ」

 

 と不機嫌に言い放つ。

 シャアは、

 

「補給部隊の連中は服で戦争をするのではなかろう、といつも」

 

 そう抗弁するが、キシリアはそれを遮るように、

 

「私の名前で督促させろ、目障りだ」

 

 とストレートに言い捨てる。

 

「で、どうなのだ? 性能は」

 

 ララァを兵器としてしか見ていない発言。

 

 ……なぜキシリアはこうまでララァに対し当たりが強いのか。

 

 キシリアは政敵であるはずのギレンからは、しかし歯牙にもかけられていない。

 それは自分が『女だから』か、という強烈なコンプレックスと反発心があるから、キシリアは男を震え上がらせるような冷酷非情な手段を取って見せる。

 逆に言うと自分の女を憎み、殺してまで過剰に男社会の価値観に合わせているキシリアにとって、そうではない素の女性のままでいるララァが評価されるのは許しがたいことなのだ。

 

「好き」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」だという。

 そういう意味では、憎しみに囚われるのは、常に相手を意識し続けるということ。

 長期にわたってそうしていくと、その価値観も言動も全部、憎んでいるはずの相手を基準としたものへと染まって行く。

 相手が決めた価値観というルールを憎んでいるくせに、それを無視できず、いや逆に劣等意識の裏返しも含めて忠実に順守する。

 そしてそれを乱す者、従わない者に強烈な敵愾心を抱く。

 

(自分が面従腹背で苦汁を飲みながらも従っているのに、貴様だけそれを逃れるなど許せん! 貴様も自分と同じだけ苦しめ!!)

 

 というやつだ。

 そうやって憎んでいるはずの相手と同質化していくのだ。

 

 冗談ではない。

 こうは成りたくないものだな、とシャアは思う。

 そんな感情を仮面の下に押し隠し、言う。

 

「初陣で二隻のサラミスを沈めました。ララァとサイコミュ兵器の組み合わせは絶大であります」

「ほう、二隻も。それはすごいな」

「はい。ニュータイプの実戦部隊の実現、いよいよかと」

 

 キシリアはほくそ笑む。

 

「……見せてほしいものだな、ブラレロの働きを」

 

 いや、間抜け面をしたブラレロが大活躍する光景はとてもシュールで、見てみたいと思えるものでは無いのだが。

 ……さすが、ザクレロの開発にOKを出した人物。

 その感性も独特なものがあるらしい。




 コア・ファイターにミッションディスクとか、最終話を視野に入れた改修がかかってきましたね。
 まぁ、このタイミングで入れようと前々から考えていたものですが。

 ……いや別にガンキャノン大破して捨てなくても、ホワイトベースも墜ちなくてもいいのか、最終回なんだし好きにやってもいいよね、とかも考えるんですが。
 しかし全機無事というのも不自然?
 まぁ、私はプロットを立てても書いてみるまで、いや書き終わってもアップするまで話がどうなるか分からない人ですし、どのように転んでもいいよう安全策は打っておきます。


> しかし西暦の時代にあった米国発のサイバーパンク・ニンジャ活劇小説『ニンジャスレイヤー』において原作テキストでも「Wasshoi!」とか「akachan」とか使われていたように忍殺語、スラング的に「おセンチ」「翔んでる」という言葉が使用されているのだった。

 連邦軍はアメリカ軍がベース。
 つまりリアリティを出すためにはアメリカの活劇小説が参考になりますね!


 次回はマグネットコーティング後のガンキャノンの初戦闘。
 あと、有線サイコミュの機動に関する考察、第二段ですね。


 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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