ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件 作:勇樹のぞみ
が、そちらを読まなくてもこのお話単体でもお楽しみいただけるはずです。
「バブルキャノピーが怖い?」
一年戦争以前にプチ・モビルスーツを完成させたミヤビだったが、とある意見にふむ、と考え込む。
視界良好なバブルキャノピーだったが、考えてみれば透明素材1枚隔てて餡子食う…… もとい、暗黒、真空の宇宙というのは怖いかも知れない。
「バブルキャノピー型は『宇宙恐怖症(アストロフォビア)』や『空間識失調(バーティゴ)』の発症率が高く、人によっては実用に耐えられなかった、か」
宇宙空間というものはどこまでも暗い。
たとえ太陽の光の当たる場所であっても、視界内に太陽もしくはその光を受け照り返しを発する相対物が無い限り、その光を感じることができないのだ。
ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』でEXAMシステム搭載機が青く塗られていたのは、ニュータイプが宇宙空間を青いイメージで捉えているからそれに対する迷彩である、とされていたが。
逆に言うと、宇宙生活に適応した高い空間認識能力を持つニュータイプであっても、真っ暗な宇宙をそのままイメージして捉えるのは困難だということでもあるのだろうか。
では、どうするかというと、
「バブルキャノピーの代わりに装甲とカメラを設置。モニターはHMD…… いえ、バブルキャノピー型を拒否するタイプの人相手なら、通常のモニターの方が良いかしら?」
そこでふと気付く。
「デコプチでいいんじゃない?」
デコプチとは『デコレーション・プチモビルスーツ』の略。
マンガ『機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス』に登場していた、宇宙世紀90年代に木星圏で流行したプチ・モビルスーツの一種だ。
様々な装飾を施された機体で、一言で言うならば『乗るSDガンダム』。
作中では騎士ガンダムやゲルググ、ガンダムMk-IIなどが登場していた。
プチモビのバブルキャノピー部分がSDガンダム風の3頭身にデフォルメされて大きくなった頭部に置き換えられているような感じだ。
そして、
『私にいい考えがある(ろくでもないことを思い付いた)ってお顔してますね?』
と、ミヤビの端末画面上に表示されたサポートAI、サラがツッコむが、
「副音声で酷いこと言うの止めてくれる?」
そう言わざるを得ない。
まぁ、サラの言うこともある意味間違ってはいなかったりする。
「……ジ・Oなんてどうかしら?」
なんてことを考えついていたからだ。
ジ・Oは『機動戦士Ζガンダム』に登場した、パプテマス・シロッコ専用モビルスーツ。
最終決戦で主人公カミーユ・ビダンのZガンダムに、
「ゴッドバァァァァド・チェェェェェンジ!!」
とばかりにウェイブ・ライダー突撃、俗に言うスイカバーされてお亡くなりになった、動けるデブ(注:動けなくなる)、どすこい機体だ。
そんなわけで、さくっと開発。
『全高2メートル程度とは、攻めましたね。人入るんですか、これ?』
とサラが突っ込むように、体形を多少デフォルメしてあるにしろ、ずいぶんな小型機となった。
「パワードスーツじゃない、搭乗型のコンパクト機には乗り込む人の足をどう収納するか、という問題が付きまとうわ」
『装甲騎兵ボトムズ』登場のライト級アーマードトルーパー、『ツヴァーク』は、車高の低いスポーツカーの運転席のように両足を前に投げ出した形のシートを囲うように機体を形成、シートの直下に腰を付けることで、その全高を3メートル以下にまで抑えてあった。
一方、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』に登場する『二式空間機動甲冑』は、揃えた両足を腰部、前垂れの部分に収納してあった。
で、このデコプチ、ジ・Oであるが、
「この機体、デブった胴体がコクピットに丁度良い上、脚部はフトモモが小さい逆関節脚になっているわ」
これは元デザインどおり。
まぁ、脚については凄い分かりづらいので、デザインした小林誠氏のコメントを読んだり、プラモデル、マスターグレード 1/100 ジ・Oを実際に組んだ人間ぐらいしか知らない仕様なのだが。
「そして隠し腕が仕込まれ、それ自体が作動肢として動作する、膝下までを覆うボリュームのあるスカート」
『ああ、つまりこれ、左右のスカートに中の人の足、入れてるんですか。脚部はフトモモが小さい逆関節脚……スペースも確保できますもんね』
「そういうこと」
こんな仕様だから、2メートル程度まで全高を圧縮できたのだ。
そんなこんなで、
サイド7に侵入したザクIIに対抗するため、デコプチ、ジ・Oに乗り込むアムロ。
「こいつ、動くぞ」
と、左右の足を突っ込んだ腰部スカートが、それぞれ独立して動くことに驚く。
『先に隠し腕が付いてますからね。「テラ・アームズ伝統の多肢兵器」ってやつです』
ジ・OにインストールされたサポートAI、サラが言っているのは、伊東岳彦(BlackPoint)氏のマンガ、そしてアニメにもなった『Good Morning アルテア』登場の多肢型パワードスーツ『オクタア―ム』を指しての言葉だったが、無論、そんなことはアムロには分からない。
「足も使って多肢を操作するって斬新だな」
というように、変則的な操作系で、
『そうですね、私も動きをサポートしますが』
と、裏側から振り出すように展開された隠し腕の先、三本の指を備えたそれをフリフリ振って見せる様は、ミヤビからすると、
「『攻殻機動隊』のフチコマ、タチコマみたいね」
という話だったが。
「で、これレーザー削岩機?」
通常の右腕が持つのはジ・Oのビームライフルと同じ形状をした破砕ツール。
グリップの下にエネルギーパック、上面に動力パイプが走っているこの形が、工具としての工業デザインにマッチしていたからミヤビはそのまま使っていた。
ミヤビの前世、旧21世紀でも、多くの一般的な電動工具(インパクトドライバーやドリルなど)は、操作性や重心のバランスを考慮してグリップの下部にバッテリーを装着するデザインを採用していたし、その延長線上のものだ。
そして宇宙世紀モビルスーツでもカプールや百式改、量産型百式改など、レーザー兵器搭載の機体はあったし、ファンネルのビームは、メガ粒子砲説と、レーザーである説が両方あったから、ザクII相手に使えないということも無いだろう。
アルビオンの対空パルスレーザーなどもあったし。
最悪、レーザートーチモードで弱点部位を焼き切れば良いのだし。
『アムロ……』
柔らかな少女の声、サラの声がアムロに告げる。
『あなたに、力を……』
ジ・Oのメインモニター上に「TPSモード発動!」と表示された直後、映された視点が幽体離脱でもしたかのように機体を離れ、背後から自機をも俯瞰するTPSモードに。
『神視点』、いや、『ニュータイプ視点』に変化する!
「見える、動きが見える」
2機のザクに挟まれたジ・Oの動きが格段に向上する!
「見える……」
ガンダムを再現した、いや、すべての3Dアクションゲームにおいて、操作者の視点をどうするかは永遠の課題だ。
操作するキャラクターの目線そのものの視点でプレイする一人称視点のFPS(First Person Shooter:ファースト・パーソン・シューター)
操作するキャラクターの背後や斜め上からの視点でプレイする三人称視点のTPS(Third Person Shooter:サード・パーソン・シューター)
リアルなのはFPSではあるが、操作性では周囲の状況や地形が見渡しやすく、広い視野を確保できるTPSが勝る。
実際、両者を切り替えることのできるゲームではTPSモードの方が圧倒的に有利だった。
いや、平面モニターだからじゃないか?
ガンダムシリーズで登場した全天周囲モニターなら違うのでは、という意見も当然出たが。
パノラミック・オプティカル・ディスプレイ(p.o.d.)とよばれる半球スクリーンを持った操縦席型の筐体を使用したアーケードゲーム『戦場の絆』の登場が、それに対し明確な否定を行っている。
なぜなら、いくら表示される範囲を広げようとも、操作者が見ることのできるのは、その視野に収まる平面でしかないからだ。
故に『神の視点』とも言えるTPSの方が圧倒的に有利なのだ。
ニュータイプとは何か。
ミヤビの前世、西暦の時代でも良く議論になった話だ。
その中では、
人並外れた直感と空間認識能力を持ち、離れていても他者やその状況を正確に認識し、意思疎通をする能力を持つ者。
そして宇宙空間に適応した空間認識能力者がそれだと言われていた。
ここで言う空間認識能力者は、平面の地図を脳内で立体化でき適切にその場所を認識、判断できる者を言う。
西暦の時代の人間なら、セガの3Dロボット対戦ゲーム『電脳戦機バーチャロン』のアーケード版にあったライブモニターなどが思い浮かぶだろうか。
それを脳内でリアルタイムに再現できる能力が高い人間を、空間認識能力者と呼ぶ。
普通の人間は2次元で把握するのがせいぜい。
これが気圏戦闘機のパイロットだと、高さがある分、2.5次元で把握できるようになる。
これも人の進化と言えるだろう。
では人が宇宙に行ったら?
そう、完全な3次元空間の把握、だ。
それが宇宙に適応進化した新人類の概念、ニュータイプだと言われていたわけである。
この能力があるからニュータイプは立体的なオールレンジ攻撃を組み立てることができるのだ。
また逆にニュータイプ以外にも使える準サイコミュ兵器『インコム』がコンピュータによるアシストを経ても2次元的な挙動が限界であるのは、この3次元空間の把握がニュータイプ以外には困難であるからだった。
同様に『機動戦士Zガンダム』にてアムロ・レイが自分と同じニュータイプであるカミーユ・ビダンに対し、
「後ろにも目をつけるんだ!」
と一般人からしたら無茶苦茶なアドバイスをしているのも、この空間認識能力に基づくものだ。
つまり、
ニュータイプはまるでクオータービューで見ているかのように周囲の空間を認識することができる。
当然背後に回った敵のことも、まるで見えているかのように認識し続けることができる。
『機動戦士ガンダム』劇中にてジオンのパイロットがガンダムの背後を取って勝ったと思った瞬間、見えていたように反撃され墜とされてしまうのはこのためだ。
そういうことであって、言葉どおりに前を見ながら同時に後ろも見ろと言っているわけではない。
そもそもモビルスーツならリアカメラがあるので敵機自体は捉えられており、あとはパイロットが戦闘の混乱の中、背後の敵にまで気を配り把握し続けられるかどうかという問題なのだから。
つまりニュータイプの戦場での優位性とは、操作するキャラクターの目線そのものの視点でプレイする一人称視点のFPSゲームに、一人だけチートでキャラクターの背後や斜め上からの視点でプレイする三人称視点のTPS、その視点を持ち込んでいるようなもの。
だから強いのだ。
ではここで、逆転の発想。
実機のモビルスーツにTPS視点を与えるシステムを実装すれば、それは「パイロットに疑似的にニュータイプの視野を与えることができる」
そう、言えはしないだろうか?
そこでミヤビは、ジ・Oの背面から垂直尾翼のように斜め後ろ上方に張り出したフィン、その先端に自機を見下ろすカメラセンサーを取り付け、広い視野を持つ魚眼レンズを使って、TPS視点を再現したのだ。
魚眼レンズは、旅行中の集合写真など、広く写さなければならないが、距離を取って収めようとしても距離が取れない、などといった場合に、近くから撮影しても、広く、下がったかのような視点で撮影ができるもの。
その効果を用いてTPS視点の再現を行ったのだ。
魚眼レンズには画面端が歪む、などの問題もあったが、その程度の修正なら画像処理プログラムで簡単に補正が可能。
ジ・Oは俗にテム・レイの回路と呼ばれる初期の教育型コンピュータ、アムロがSUN社製のペットロボット、ハロに組み込んでいたものと同型を採用している。
史実ではサイド6でアムロに「こんなもの!」と投げ捨てられた旧式な回路ではあるが、
・街工場や個人レベルの機材で作ることのできるローテクでありながら、低級とはいえ一応AIを動かすことができる程度のスペック。
・ローテクだからこそ備えている、蹴飛ばされようとも(実際ハロは何度も蹴飛ばされている)問題ない耐衝撃性などの耐環境性。
・安い。
・入出力のI/Oインターフェイスが光統合回路リンクで構成されており、ミノフスキー粒子散布下の環境でもノイズの干渉を受けない。
という点で優秀。
足りないスペックは回路を2つ搭載し並列に動作させるデュアルプロセッサとして働かせることで補っている。
これは性能向上だけでなく一方が故障などで停止してももう一方で処理を継続できるなど、信頼性向上の効果があっての採用である。
発想の元は冷戦時に規制により西側の優秀なCPUを入手できなかったソビエト連邦が巡航ミサイルに旧式な8ビットCPU、Z80(もしくは互換品)を使っていたというエピソード。
そして高度な信頼性が必要とされる設備でZ80系のデュアルプロセッサ構成の制御用コンピュータが利用されていたことに由来する。
実際、高い信頼性を必要とする兵器に使用される技術は極力トラブルを避けるためある程度開発されて時間の経過したものが選ばれるのが常識で、RX-78ガンダムのようなあらゆる最先端技術を投入したような機体は異端であると言って良いものだった。
ともかく、それの能力でも十分に画像処理は可能だった。
「……嘘だ、まさかこんな、ああっ」
「まるでこ、こっちの動きを読んでるようだぜ」
「き、気まぐれだよ、まぐれだ」
ジ・Oの視界の外から攻撃したはずが、動きを読んだかのように対応され、慌てるザクIIのパイロットたち。
言っている言葉も支離滅裂だ。
そして、
『ズームキック!!』
飛び上がったジ・Oの『伸びる』キックが、ザクIIのモノアイを粉砕する!
ジ・Oの脚については凄く分かりづらいので、プラモデル、マスターグレード 1/100 ジ・Oを実際に組んだ人間ぐらいしか知らない、実感できない仕様なのだが。
基本的には人体とはかけ離れた逆関節で折りたたまれ気味のフレームに、大まかに装甲が取り付けられているようになっている。
ゆえにストロークをいっぱいに使い切れば、伸びるキックが放てるのだ。
格闘ゲーム『ガンダム・ザ・バトルマスター』に登場したジ・Oでも、この動きは再現されていた。
このゲームのモビルスーツのグラフィックは体の各部分(頭、胸、肩、腕、腰、脚など)をパーツ別にそれぞれ組み合わせた『モーションパーツシステム』を取り入れたことで、機体がやたらヌルヌル動く迫力のあるアクションが可能となっていたわけだが。
攻撃動作の一部に、この脚部の機構を利用したリーチの長いキックが再現されており、サラの言葉どおりファンからは『ズームキック』と呼ばれていたのだった。
「いや、第一話時点でこの動きって、アムロ、凄すぎない?」
メインカメラをキックで潰し、動きを抑えたところで手持ちのレーザー削岩機や、隠し腕に持たせたビームサーベルならぬ、レーザートーチでザクを解体していくアムロのデコプチ、ジ・Oに、震えを隠せないミヤビ。
TPSモードが補助輪のように作用した結果、アムロのニュータイプ覚醒が早まり、「デコプチ一機の働きで、マチルダが助けられたり戦争が勝てるなどという」ウッディ大尉もビックリな戦果を挙げることになるのだが……
まだ、そのことを彼女は知らない。
>「パワードスーツじゃない、搭乗型のコンパクト機には乗り込む人の足をどう収納するか、という問題が付きまとうわ」
これの一つの回答ですね。
士郎正宗先生のギュゲスとかパワードスーツはボリュームたっぷりなフトモモに脚を入れてましたけど、それをジ・Oのあのスカートに収めたら、というお話でした。
機体の小型化という視点では、もう一つ案がありますので、形になったらまたお届けしたいと思います。
あと、モビルスーツでTPS視点の再現。
「君はニュータイプを感じたことがあるか? 私は無い。」
みたいな人でも疑似的にニュータイプ的視点を得られるシステムとして考えてみましたが、いかがでしたでしょうか?
それではまた。
みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
今後のお話作りの参考にさせていただきますので。