ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第9話 翔べるの? ガンキャノン Aパート

「アムロ、食事よ」

「アムロ、ショクジヨ」

 

 フラウ・ボゥは丸いペットロボット、ハロを連れてアムロの部屋を訪ねたのだが、

 

「アムロ?」

「アムロ」

 

 ノックに応答が無いのをいぶかしく思い、ドアを開けると、

 

「ミヤビさん、あまり近づかないでください。僕、シャワー浴びてないから汗臭い……」

「そう?」

 

 恥ずかしがるアムロを気にも留めない様子でミヤビはアムロの胸元に顔を寄せ、

 

 すうっと、

 

 匂いを、かぐ。

 

「私はアムロの香り、嫌いじゃないけど」

「……っ!?」

 

 一瞬で顔を真っ赤に火照らせるアムロ。

 

「あ、ごめんなさい。不躾だったわね。一緒に運動するとミライがいつも汗の匂いを気にしていたのをこうやって安心させていたものだから」

「い、いえ、そんな……」

 

 ミライの名誉のため、彼女は汗かきというわけではない。

 普通だ。

 しかし姉のミヤビは冬生まれのためか汗をかくことが少なく、しかも常にしれっとした顔で運動もこなすので、その対比で気にしているだけだ。

 ミヤビと違って乙女心が発達しているから、前世が男性であるが故、男の体臭すら気にしないミヤビの方がおかしいともいう。

 

 そして、

 

「ふ、フケツ……」

 

 ミヤビとアムロのイチャイチャ(まったくの誤解)を目にしたフラウは愕然とした様子でつぶやく。

 一方ミヤビはというと、きょとんとして、

 

「そう? 普通でしょ」

 

 と平然とした様子で言い放つ。

 もちろん彼女は、

 

(フケツって…… 男なんてこんなものでしょ。起き抜けにシャワーが必須なんてことも無いし。それともフラウのように年頃の女の子は潔癖になるのかな?)

 

 と、フラウの言葉をまったく違う意味でとらえているだけなのだが。

 そしてその様子がますますフラウの誤解を呼ぶ。

 ついでにアムロの頬も赤い。

 

 男性だった前世を持つミヤビは、異性に対する距離感がおかしい。

 妹のミライには危険だと散々注意されているのだが、自分の美貌と性的魅力に無頓着(というか意識すると死にたくなるので考えることを止めている)な彼女には自覚は無く。

 アムロもそんな年上の美女が無防備に距離を詰めてくるのだから、たまったものでは無かった。

 まぁミヤビは元日本人、現日系人種ゆえ、欧米人のような大げさに思えるボディタッチやスキンシップは無いため、他人とのふれ合いに慣れていないアムロでも拒絶感は無い。

 無いのだが、少しアムロの方から詰めれば触れてしまえるという意味で、非常に危険な、思春期の少年の理性をガリガリと削っていくような絶妙の距離となっているのだからタチが悪かった。

 ともあれミヤビは、

 

「アムロ、一緒に食事に行きましょう」

 

 と、彼を促す。

 ミヤビはアムロのメンタル状況を気遣って、彼を食事に誘いに来たのだ。

 彼女の知る史実だとこの時期、彼は非常にギスギスして消耗していたので。

 

 その行動が幼馴染ヒロインであるフラウの役目を横取りし、彼女を不機嫌にさせるのだが。

 ついでに言えばアムロに対しヒロインポジションで行動していることになっているのだが。

 一つのことに集中すると他に目が行かなくなるきらいのあるミヤビは気づいていなかった。

 

 

 

 なお、ミヤビの言っていたミライと一緒の運動とは例のアレだ。

 ミライの胸を育てるためのもの。

 妹のためにとミヤビは日ごろの運動に付き合っていたのだ。

 まぁ、同じメニューをこなしてもミヤビの方はちっとも育たなかったが、それは体質だろう。

 そもそもあんなに育っていたら今頃ミヤビは首を吊りそうになっているはずだし。

 

 そしてミライの胸についてはこんなエピソードがある。

 遡ること数年前、いい加減ミライの胸は大きく育っていたのだが、毎日一緒に居るミヤビには今一つ、そういう認識が無かった。

 子供の成長なども久しぶりに会う親戚には大きくなったと驚かれるが、毎日顔を合わせている家族には実感が無いというやつと一緒だ。

 まぁ、それでもEカップを超えFに、ともなると普通に考えれば簡単にわかる。

 こんなでかいヤツは、そうそうないってことぐらい……

 

 その日も日課の朝のジョギングをしていた二人。

 ミヤビはふと隣を走るミライを見て驚愕した。

 

(揺れない……)

 

 姉の視線に、姉妹ゆえの理解で何を言いたいか察したミライ。

 彼女は苦笑して説明する。

 

「気を付ければ揺らさず走れるの」

「技術……? 技術なの?」

 

 なお、Fカップともなると、その重さは片方1キロを超える。

 両方合わせて2キロ超過のそれをぶら下げて揺らさないとはどんな超絶テクニックかとミヤビは戦慄する。

 

「高さを一定に保つ足運びが肝心かしら」

「ああ、陸上競技選手なんて、フォームを見るとほとんど体幹が上下しないものね。軸がぶれないし」

 

 その時、ミヤビに電流走る。

 これだ!

 と。

 

 そのころミヤビはドラケンE改の歩行について行き詰っていた。

 ドラケンE改の原型機、ドラケンEでは歩行時の衝撃が酷すぎるため巨大なダンパーをかかとに装着して誤魔化していた。

 人型マシンの二足歩行における上下振動は激しく、標準のモビルスーツサイズになると走行に人間が耐えられないのではと心配されていたほど。

 その3分の1以下の全高であるミドルモビルスーツでもやはり振動は酷く、ドラケンEでも問題となっていたのだ。

 

 それに対しドラケンE改ではかかとにダンパーの代わりにローラーダッシュ機構が入れられている。

 

【挿絵表示】

 

 ローラーダッシュ機構にはスイングアーム式モノショック、バイクのリアサスに用いられることが多い、タイヤを保持するアームの根元に1本のダンパーを設置しているタイプのサスペンションが組み込まれ、またタイヤの弾力もあってある程度までは代わりとなるが、十分とは言えなかった。

 

 そんな時にミヤビに天啓をもたらしたのが妹、ミライのオッパイなのだ!

 マンガ『頭文字D』で主人公が車のカップホルダーに水の入った紙コップを置き、こぼさないように運転することでドリフトテクニックを磨いていたが、それをミライがオッパイを揺らさず走ることに置き換えたようなもの。

 ミライが知ったら、

「姉さんは人の胸を何だと思ってるの」

 と呆れられただろうが。

 

 そして……

 恥ずかしがるミライにピッチピチのサンプリング用スーツを着せて、あらゆる角度からその走行フォームを撮影するという究極の羞恥プレイをお願いするミヤビ。

 おまえは何を言っているんだ、であるが、姉には弱いミライなので、彼女は顔を真っ赤に火照らせながらも協力した。

 しかし鬼畜な姉は非道にもそのデータをメカニカルアーム、機械義肢の権威であるディック・ルムンバ氏に持ち込んだのだ。

 いきなり「何も言わずこれを見てください」と言われてオッパイを見せられたルムンバ氏も災難である。

 最初は『ヤシマの人形姫』がついに狂ったかと正気を疑われたらしい。

 ミヤビの中に居るはずの常識さん、仕事してください。

 

 なお、ディック・ルムンバ氏とはあの人だ。

『機動戦士ガンダム0080』でガンダムNT-1、アレックスの開発責任者だった車椅子の男性。

 劇中、モビルスーツは必要悪とも言うべきものであり、しょせんは人を幸せにすることなど出来ないと言い切った彼がどうしてオッパイに魂を売った…… じゃなくてミヤビに協力したのかというと、ドラケンE改は平和利用が主眼の作業機械であったこと。

 そしてミヤビのこんな説得からだった。

 

「自主規制に意味は無いのでは? 人類すべてを規制できるなら分かりますけど、ジオン公国って外国ができてしまった以上、連邦がやらなくてもジオンがやるだけですし」

 

 実際、ミヤビの前世、旧21世紀でもそういった話はあった。

 倫理観から欧米が遺伝子改変技術に規制を行っている間に、そういった縛りの無い中国がどんどん先を行ってしまうというもの。

 

「実現への道筋は見えていてあとは「やる」か「やらない」かだけ。そして人類に「やらない」という選択は無いと思います」

 

 そしてまた、

 

「あなたがまっとうに開発をすれば、非人道的な研究を減らせる。それは意味のあることだと思うのですが」

 

 ということもある。

 この世界ではどうか分からないが『機動戦士ガンダム サンダーボルト』のリユース・サイコ・デバイスなんぞ、義肢技術を使ったが、そのために健全な兵士の手足を切断するなんていう所業をしていたし、そういう者が出る可能性はある。

 それ以上の技術を開発して人類の財産として公開、共有すれば、そんな研究も防げるはずなのだ。

 

「難しく考えず、これを利用して機械義肢本来の目的である平和利用に役立つ研究ができると考えていただけると良いと思います」

 

 最後にミヤビはそう言って深く頭を下げ、ルムンバ氏はうなずいたのだった。

 そうして固い握手を交わす二人はとても真面目な良い表情をしていたが、背景の大画面モニターにはダメな例として撮影されたオッパイがブルンブルンと暴力的なまでに揺れまくっている様子が大写しになっているあたり、酷い、酷すぎる絵面だった。

 ミヤビが時に発生させるマヌケ時空に引きずり込まれたルムンバ氏にはご愁傷様と言う他ない。

 

 そうやって開発されたのが『MIRAI・歩行アルゴリズム』である。

 もちろん名称の由来は非公開。

 巨乳を揺らさず走る妹のフォームを解析しました、とはさすがのミヤビにも公言できない。

 それでも名前だけでも、と感謝の意味を込めてのネーミングである。

 ミライが知ったら羞恥のあまりミヤビを道連れに心中しようとしただろう、ものすごく余計な気遣いである。

 

 そしてこの『MIRAI・歩行アルゴリズム』、画期的なのは人間と同じく身体全体、特に足腰で衝撃を吸収するということ、機械的な仕組みとしては各関節にある動作用アクチュエーターをそのまま衝撃吸収用ダンパーとしても利用するということだった。

 別途ダンパーを入れる必要が無く機体の簡素化、軽量化が図れるうえ、ストロークは脚部の可動範囲いっぱいとダンパーを内蔵した場合とは比べ物にならないほど大きくなる。

 将来、ガンダムMk-2で実現され、第2世代以降のモビルスーツの必須条件と呼ばれるようになったムーバブルフレームと同様の機構を備え、広い可動域を持つドラケンE改の脚部ならなおさら。

 なお実装には旧世紀の日本の戦車74式、10式の油気圧サスペンション(ハイドロニューマチック)による姿勢変更機能、つまりサスペンションの伸縮を制御して前後左右に車体を傾けるというサスペンションと姿勢制御アクチュエーターの一体化技術が参考にされている。

 

「そもそも制御が完璧なら義肢に衝撃吸収用ダンパーは邪魔なのだよ」

 

 ルムンバ氏はミヤビに対してそう語っている。

 

「制御プログラムの計算が収束しなくなるからですね」

 

 と、ミヤビは納得したが、そう言えば前世の記憶でも内部構造図を比べると、RX-78ガンダムには多数あったダンパーがガンダムNT-1、アレックスでは大変少なくなっていたものだった。

 マグネットコーティングにより不要になる、という説もあったが、歩行制御技術の進歩とルムンバ氏の技術もあってのことなのだろう。

 

 

 

「それじゃあフラウ・ボゥ、また後で」

 

 ミヤビはとある一室にアムロを押し込むと、フラウに別れを告げる。

 ここから先は彼女には立ち入り禁止だ。

 

「……っ!」

 

 フラウの顔が強張るが、ミヤビはそれに気づかない。

 そして部屋の中に入った二人を迎えたのが、

 

「待ちくたびれたぜ、お二人さん」

 

 というカイの言葉と、セイラ、リュウ、ハヤト。

 つまりパイロットの面々だった。

 そして彼らがつくテーブルには、暖かで食欲を誘う食事が用意されていた。

 ミヤビはいつもの変わらぬ表情で、しかしその声音にわずかに漏れ出る柔らかさを乗せて答える。

 

「お待たせ。それじゃあ皆でいただきましょうか」

 

 そう言ってテーブルに着く。

 なぜ彼らだけで食事をするかというと、パイロット同士で同じ釜の飯を食う、つまり相互理解とチームワークを深めるといった意味もあったが、他にも、

 

「どうしたハヤト、食べないのか?」

「リュウさん。僕たちだけこんなに食べてもいいんでしょうか?」

「うん?」

 

 ということがあった。

 ミヤビの知る史実ではアムロとリュウにだけパイロット向けの十分な量の食事が出され、それに対しカイがタムラコック長に文句を言う。

 避難民と一緒のテーブルで食べさせられたアムロが彼らとの食事の落差と、子供の食事を盗み食いする老人の汚さを目にし食べる気を無くすなどといったことがあった。

 それゆえミヤビはパイロットのみで集まって食事ができるよう調整したのだが。

 

 しかしとうとう、ハヤトは食事の差に気づいてしまった。

 あるいは彼自身文句を言われたのか、避難民たちの不満を耳にしてしまったのか。

 

 仕方が無いな、とミヤビは口を開く。

 彼女は口の中に物を入れたまましゃべらないようしつけられているので、少しタイミングが遅れたが。

 

「これは絶対、ここだけの話にしてほしいんだけど」

 

 そう前置きして話したのは、

 

「実際には食料は十分にあるのよ」

 

 ということ。

 

「えっ?」

 

 絶句するハヤト。

 それはそうだろう。

 ミヤビも確認して驚いたのだから。

 

「タムラコック長はプロの料理人よ。そして兵隊の食事のカロリーは作業量によって決められている」

 

 つまり、

 

「私たちのような身体をフルに使うパイロット以外は、この船に閉じ込められた避難生活でみんな慢性的な運動不足の状態に陥ってるわ。そんな人たちに適正なカロリーの料理を出すと、どうしてもボリューム不足に感じられるものになるのよ」

 

 特に避難民たちの多くはご老人。

 基礎代謝、カロリー消費は決して高くないこともあり、入院患者への病人食みたいになってしまう。

 それでもタムラコック長は懸命に工夫して、何とか満足感が得られるよう美味しいものを作ってはいるのだが。

 

 なおミライにはヘルシーでダイエットになりそうだと喜ばれている。

 重力下に降りて、その二つの巨大な質量がもたらす慢性的な肩こりに悩まされているからだ。

 ブリッジでは時々舵輪の上に乗せることでこっそり休んでいる、というのはミヤビとムッツリスケベ…… ブライトだけが気づいている事実だ。

 舵輪から飛び出ている握り棒、握把を胸の谷間に挟むことになるので絵面がとんでもないことになっているのだが、ミライはまだ気づいていないらしい。

 

 とりあえずミヤビは「それを減らすなんてとんでもない」と言っておいた。

 お約束だから。

 ミライには「お約束なの?」と微妙な表情をされてはいたが。

 まぁ、そんなオッパイの話はともかく、

 

「だ、だったらなぜそれを説明しないんです?」

 

 というハヤトの疑問はもっともだ。

 しかし答えは簡単。

 

「あると分かったら我慢できなくなるでしょう?」

 

 そういうことだった。

 

「カロリーや栄養を気にせず食事を作ることもできるわ。そうしたらタムラコック長が文句を言われることも無い」

 

 しかし、

 

「でもそれは料理人の命にかけてできないって言うのよ。文句を言われてもかまわない、陰口を叩かれてもいい。乗船した時より、船を下りるときの方が健康になっている、それが船のキッチンを守るコックの使命だってね」

 

 ミヤビも甘味など高カロリーの食事はストレスを和らげる働きがあるのでメンタル面にも配慮してほしいかな、とも思うが。

 しかし料理の分野では自分よりはるかに高い知識を持つプロに意見できるほど彼女は独善的にはなれなかった。

 

 しかしまぁ、ミヤビもホワイトベースの台所事情がこうなっているとは予想できなかった。

 前世で見た『機動戦士ガンダム』の記憶が強いのと、戦争はひもじいもの、という日本人の先入観ゆえか。

 

 実際には地球連邦軍の根幹は旧アメリカ合衆国のもの。

 そしてアメリカ軍はいいものを十分に食べていたのだ。

 戦争中の不満も、

 

 肉類がスパム(ソーセージの中身を缶詰にしたもの)ばっかりで飽きた。

 今日あたりベースからステーキが飛んで来ねぇかなぁ。

 

 とか、

 

 日本軍が鹵獲してその豪華さに目を見張ったという戦闘食、Kレーションだが、アメリカ兵たちは必要なカロリーや栄養は足りてるとは言うけどメニューは単調だし満腹には程遠いしで『恐怖のKレーション』と陰口を叩いていた。

 

 といった贅沢なもの。

 

 そして思い起こせばマンガ『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』ではゴップ議長、現在のゴップ大将が「兵士が必要だった物を揃えられたとの自負があるがね」と語り、それにヤザンが一年戦争に従軍した経験から「少なくとも小官は戦場で飢えたことは無い」と証言している。

 

 またブライトたち上位者はこの時点で武器弾薬の心配はしていても食料の心配はしていなかった。

 無論、この世界とは違い、史実では本当に食料が貧窮していた可能性もあるが、それはミヤビにも分からないことだ。

 

「まぁ、そんなだから気にせず食べましょう。食事を楽しむことも厳しい時には大切なことよ」

 

 ミヤビはそう言って、皆に勧める。

 

「どんな場合でも一番大事なことは食事が美味しく食べられるということ。美味しく食べられさえすれば、どんなにつらい状況でも最後まで気力が続くわ」

 

 そうミヤビに重ねて言われ、ハヤトは納得した様子で食べ始めるのだった。

 

 

 

 なお、アニメ制作者やファンの価値観の変化や世代交代もまた興味深いものがあるとミヤビは感じている。

 

『機動戦士ガンダム』では食料の不足を軍隊をリアルに描くために使っていた。

 しかし一方で食べ物に執着を見せる老人とは対照的に、良いものを食べられるということがモチベーションにはつながらないアムロ、つまり若者世代を描いているとも言える。

 

 さらにその後、制作された『超時空要塞マクロス』では軍隊を描くのに食料の貧窮ネタを使ってリアリティを出そうとはしなかった。

 これは河森正治氏ら制作陣が「アメリカ軍を基準にしているから」「実際にいいもの食べてるって知ってるから」と後の対談で語っている。

 

 そして『新世紀エヴァンゲリオン』ではご褒美にステーキをおごると言う上司、葛城ミサトに対し、主人公のシンジとアスカは気を使って子供らしく喜んで見せた後、

 

「ごちそうといえばステーキで決まりか……」

「今時の子供がステーキで喜ぶと思ってんのかしら。これだからセカンドインパクト世代って、貧乏臭いのよねぇ」

 

 と嘆いている。

 これは太平洋戦争と戦後の物の無い時代に育った世代の影響下にある「ごちそうと言えば肉」「逆に言えば肉抜きの食事は貧乏くさい」という価値観。

 また、いいものを食べるなどといった物質的な報酬がモチベーションにつながっている世代の価値観の押し付けに対し、「今時ハングリー精神みたいなこと言われてもピンとこない」という若者の世代を描いているわけだ。

 ベジタリアンである監督に古い世代の人間が相当に圧をかけたのだろう。

 

 娯楽作品は時代の価値観や道徳の象徴でもある。

(その価値観が良いとか悪いとかの話はまた別問題として…… というより自分の価値観を押し付けたり他人の価値観を尊重することなく否定したりする方が問題)

 そういった視点で考えると、また見えてくるものがあるのだった。




 ドラケンE改の『MIRAI・歩行アルゴリズム』開発秘話。
 そしてホワイトベースの台所事情でした。
 しかし、ここまで『オッパイ』を連呼する羽目になろうとは、この作者の目をもってしても見抜けなかった……

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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