ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第9話 翔べるの? ガンキャノン Cパート

「コア・ファイター、出るぞ」

 

 コア・ファイターで次々に発進するリュウとハヤト。

 

 

 

 ガウ攻撃空母ではガルマ自らノーマルスーツを着用し、ドップにて出撃しようとしていた。

 

「ガルマ、君が行くこともなかろうに」

 

 と、シャアは自重を促すが、ガルマは苦笑すると、

 

「私には姉に対しての立場だってあるんだよ。家族のいない君にはわからない苦労さ」

 

 そう言って自分の機体、茶褐色に塗られた専用機に向かう。

 

「手を出すなよ、見てるんだシャア。私が見事仕留めてみせる」

 

 そう念を押すガルマに、説得もここまでかとシャアはあきらめた様子でうなずく。

 

「見せてもらうよ、君の攻撃のお手並みをな」

 

 そしてガルマはドップのシートに着き、

 

「出撃するぞ、各員……」

 

 と言いかけたところに、警報。

 

「どうした?」

 

『敵の戦闘機です』

「なに?」

 

 リュウたちのコア・ファイターをガウの側でもキャッチしたのだ。

 

『ガルマ、発進は中止だ。戻れ』

 

 そう促すシャアに、ガルマは、

 

「このまま出撃して撃ち落してみせる」

 

 と意気込むが、あくまでもシャアは、

 

「戻るんだ、ガルマ」 

 

 と引き留める。

 

 

 

『リュウさん、なぜ攻撃しないんです? せ、せっかくガウを見つけたっていうのに』

 

 リュウに対し、そう訴えるハヤトだったが、それは無謀というものだ。

 

「ええい、コア・ファイターがあと六機もあればガウを攻撃するんだがな」

 

 と、歯噛みするリュウだったが、そういうことだ。

 

 

 

 シャアは不承不承戻ってきたガルマに説明する。

 

「30秒前の映像だ。ただのパトロールだ。だとすれば木馬はかなり焦っている」

「焦っている?」

 

 シャアはガルマにうなずいて、

 

「木馬がパトロールを出すなど初めてだ。弱点があるからこそ我々の動きを知りたがっているんじゃないのか?」

 

 シャアはホワイトベース側の内情、そしてブライトの焦りを正確に洞察していた。

 実際、ブライトの指示は思い付きに近いし、何もできないからできることに飛びついた、と思われても仕方がないところがあるし。

 

「なるほど。小物を相手にせず本命を叩けばいいという訳か」

 

 ガルマは納得すると、部下たちに指示する。

 

「よし、敵のパトロールを追え!」

 

 

 

『よーし、ガンキャノン、ガンタンクの出撃、急げ!』

 

 リード中尉の指示により、カイはガンタンクへと走った。

 

「また棺桶入りかよ」

 

 とぼやく。

 

『いらっしゃい、カイさん』

 

 ガンタンクの腹部コクピットではサポートAI、サラスリーがそう言って迎えてくれるが、

 

『あれ、セイラさんは? それにガンキャノンのアムロさんは?』

 

 と、首をかしげることに。

 カイは苦笑する。

 

「いや、それが何だか揉めていてよう」

 

 

 

 話は少し前まで遡る。

 

「セイラさん、ガンタンクに操縦方法の手引書ってあるんでしょ?」

 

 そう言ってブリッジでセイラたちを捕まえているのはフラウだった。

 

「えっ?」

 

 セイラには、フラウが何を言いたいのか分からない。

 

 ミヤビの取った様々な対策によりアムロのメンタル状況はかなり改善されているが、一方で割りを食っているのがフラウだった。

 アムロは「君は強い女の子じゃないか」などと言っているが、実際には彼女はサイド7で家族を失った15歳の女の子でしかない。

 その精神状態は良くなく、だからこそ史実では幼馴染のアムロの世話を焼くことで安定を保っていた面がある。

 それをミヤビが奪う形になってしまったのだ。

 

 現実問題、このホワイトベースのエースであるアムロは多忙だ。

 食事など、わずかなプライベート時間をパイロット仲間とのコミュニケーションとミヤビから受けるメンタルケアに使ってしまうと後は睡眠時間しか残らない。

 それゆえアムロを寝取られたショック(誤解)に錯乱したフラウは、このままでは同じ土俵に立つことすらできない、と、

 

「あたしもモビルスーツに乗るわ!」

 

 そう、パイロットにならなければという思考に陥っているのだ。

 短絡的だが、思いつめた女の子の思考なんてこんなもの。

 そこに合理性とか現実性とかは求めてはいけない。

 そして、そんなフラウの様子をあっけに取られて見ていたミヤビとアムロは、

 

「姉さん、アムロも……」

 

 と、遠慮がちに自分たちを呼ぶミライに、彼女の元へと行く。

 そして小声で語られた説明、フラウの誤解に驚愕する。

 

(はぁああああああっ!?)

 

 ミヤビにとってはナニソレ、である。

 呆れて声も無い。

 

 ミライにしてみれば、呆れてしまうのはこんな誤解を呼んでしまう姉の言動の方、なのだが。

 ここまで見事にはまってしまうとミライのコミュ力でも誤解を訂正するのは容易なことではない。

 実際、説明してはみたがフラウは逆に意固地になるばかりだったし、ブライトたちもどこまで信じてくれたか疑わしいものだった。

 

 というか毎度この手の騒動からミヤビをフォローしようとする度に、姉を神聖視するシスコンの妹が、

『私のお姉ちゃんがそんなエッチなことをするわけがない』

 と主張していると受け止められてしまうのはどういうことかと、声を大にして問い質したいミライだった。

 

 そんな風だったのでミライは、

 

「姉さんはそういう人じゃない。それどころかこれまでそういう経験も無かった人だって、私には分かってるけど」

 

 と力なくぼやくが、ちょっと待って欲しい。

 今、この妹、姉には経験が無かった、つまり処女だったってあっさりとばらした。

 見ろ、隣でアムロが赤くなってるし、ブリッジがしんと静まり返ってるだろう。

 どうするんだこの空気。

 そして誤解は解けていないので、アムロはミヤビとエッチしたどころか、初めてを奪った男にランクアップしてしまっているのだが。

 

 まぁ、確かに今世では恋愛とか、その先にある大人のお付き合いとかはもちろん未経験なミヤビ。

 ミヤビパパには「男がダメなら女でもいいからさっさとヤッて踏ん切り付けろ」と大変理解のある意見をあきれ顔で言われていたのだが、ミヤビにとっては拷問官に「精神的同性愛か肉体的同性愛か、どちらか選べ」と言われているに等しい。

 何その究極の選択、である。

 

 そしてアムロにしてみれば冤罪、人聞きが悪すぎる。

 慌ててフラウに弁解するが、

 

「自分のヤッたことに責任を持てない人なんて嫌いよ!」

 

 と、誤解を解くどころではない。

 なお、ミヤビの知る史実でも似たセリフを言っているフラウだったが、意味が全然違う。

 そればかりか、

 

「ミヤビさんとそういうことしといて、ヤッたのは俺だって言えないアムロなんて男じゃない!」

 

 と、責められる始末。

 ミヤビの敵なのか味方なのか分からない発言であるが、仕方がない。

 

「くやしいけど、僕は男なんだな」

 

 と、アムロが思わず嘆息してしまうとおり、こういう場合、問答無用で責められるのは男なのだ。

 

 そして、こんな混沌とした状態を打ち破るのは、

 

「あっ」

 

 パァン、と良い音を立てて叩かれるフラウの頬。

 こんなことをするのは一人しか居ない。

 

「た、叩きましたね」

 

 頬を押さえ、フラウがにらみつける先に居るのは金髪の美少女。

 もちろんセイラである。

 

「叩いてなぜ悪いの? あなたはいいわ、そうしてわめいていれば気分も晴れるんですからね」

「わ、私がそんなに安っぽい女だって言うんですか!?」

「安っぽいというか、面倒くさいから男性、特にアムロのような性格の持ち主とは合わないタイプだと思ってるわ」

 

 うわ、バッサリ斬り捨てた。

 女性は女性に厳しいとは言うが、二度もぶってくれるブライトさんの方がよっぽど優しいと思えるほどのぶった切りだった。

 ブライトの場合、史実だと殴った後にアムロに対し「それだけの才能があれば貴様はシャアを越えられる奴だと思っていた。残念だよ」とか、ツンデレなフォローもしてたし。

 セイラは医者を目指していたように女性ではあるけど理系寄りのタイプ。

 だからこその視点だろうが。

 そして続く、

 

「比較対象がミヤビさんよ」

 

 というセイラの言葉に、「私?」というように首をかしげるミヤビ。

 そしてセイラの口から語られる、客観視した、特に男性的視点から見たミヤビについてのこと。

 

「優秀なのにおごらないし威張らない。話を合わせてくれるし男性の趣味や欠点に理解があって、未熟なところをあげつらわず、話していて急に感情的になったり、過去を蒸し返したりしないし、かといって無関心じゃなく世話焼きなくせに、過干渉しない。……あと美人、とても美人」

 

 大事な事なので二度言いました、みたいに繰り返さないで欲しいと思うミヤビは多分、現実逃避していたのだろう。

 本当に大事なのは中身なのだが、それを知っているのはこの場ではミヤビ本人と妹のミライのみ。

 そして、それ以外の周囲の人物からすると、

 

 勝てないどころか比較にもならないだろ、どーすんだコレ。

 

 という話だった。

 そう言われてみると世の男性にとって「天使か」と言わんばかりの理想の人物に思えるミヤビだった。

 当人に自覚は無いし、自覚したら首を吊りそうになるだろうが。

 

 そしてフラウはというと、

 

「駄目だわ、器が違い過ぎる。あたしなんて……」

 

 両手、両膝を床につき、まるで『機動武闘伝Gガンダム』の主人公ドモンのようにスーパー負け犬モードで独白していた。

 そしてミヤビはというと、

 

(器って何?)

 

 などとずれたことを考えているのだった。

 

 

 

 本当にどうしようもないことで揉めているホワイトベースに、ガルマ率いるドップの編隊が近づく。

 

「ははははは、シャア、聞こえるか? 木馬がなぜ焦っているかわかったぞ」

 

 ガルマは通信機越しにシャアに語り掛ける。

 

『ほう、それは幸いだな。なぜだ? 教えてくれ』

 

 返ってくる疑問にほくそ笑み、ガルマは語る。

 

「モビルスーツだ。こちらの接近は既に分かっているはずなのに出ていない。おそらく出られんのだよ」

 

 これはミヤビが知る史実での、アムロの出撃拒否より酷い状況なのだが……

 どうしてこうなった、である。

 

 

 

 フラウのゴタゴタは置いておいて、出撃である。

 というか、手に負えないので後でミライに何とかしてもらうしかない。

 まぁ、ミライにはミヤビとアムロは似た者同士、男性脳の理系タイプと分かっている。

 つまりミヤビとの付き合い方がそのままアムロへの恋愛攻略法に応用できるため、その助言はフラウにとってありがたいものになるはずだった。

 ……フラウに実行できるかどうかはさておいて。

 

 そして、そんなドタバタした状態だったから、ブリッジから退出するアムロに声をかけけてくれたのはハロだけ。

 

「アムロ、イクノカ? アムロ」

 

 しかもミヤビとえっちいことした疑惑のあるアムロ、そして周囲には「イクノカ?」という問いかけが別の意味に聞こえるから脱力することこの上ない。

 そんなアムロをドップからの攻撃による衝撃が襲う。

 

「ううっ…… シャアめーっ!」

 

 シャアは何もしていない。

 完全に八つ当たりである。

 

 

 

 対空砲とミサイル砲座、そしてリュウとハヤトのコア・ファイターの援護を受けて、アムロのガンキャノンが出撃する。

 カタパルトで射出され、荒野の地表を削り土煙を上げながらランディング。

 アレだ、ミヤビの前世の記憶にある『戦闘メカザブングル』のオープニングでザブングルがやってたかっこいいやつ。

 

「ふう、無事着地か。ミヤビさん、カイさん、いいですよ」

 

 着地点の安全を確保したうえで、装甲が薄いため危険なドラケンE改と空中での動きが悪いガンタンクを呼ぶ。

 

 

 

「よーし」

 

 カイはガンタンクの底部、四つのロケットエンジンに点火。

 アムロの援護を受けながら、ガンタンクに降下を開始させる。

 

 その反対側、右舷モビルスーツデッキからはミヤビのドラケンE改が同時に凄い勢いで射出されている。

 いつものGウォームを兼ねているし、スピードがあった方が敵からの照準を避けられるからだ。

 ミヤビ当人は、

 

 でかくて遅いガンタンクが敵の目を引きつけている隙に降りちゃえ。

 

 と、割とヒドイことを考えているのだが、周囲からは、

 

「さすがミヤビさん、動きの遅いガンタンクのため囮になってくれているわ」

 

 と、セイラが言うとおり、真逆に認識されている。

 ミヤビが知ったら、

 

 ナニソレ、私どれだけ聖人君子だと思われてるの。

 

 と恐れおののいただろう。

 実際には聖人ではなく聖女と認識されているのだが。

 そしてカイはというと、通信機越しに聞こえてくる、

 

『ダメだわ…… あんな凄い人に勝てるわけなんて、ない』

 

 というフラウのつぶやきに顔を引きつらせる。

 

「いや、そんなことないと思うぜ。フラウ・ボゥにだっていいところはあるし自信を持って……」

 

 そう言ってやるが、それに対してはガンタンク内の機内秘匿通話で女性陣から、

 

「カイは気休めがお上手なようね?」

『おだてのカイさん、ですか?』

 

 などというささやきが聞こえてくる。

 セイラはどうか分からないが、サラスリーの声には焼いているような響きがあって、カイは余計に顔を引きつらせるのだった。

 

 

 

「フン、出てきたなモビルスーツめ。しかし、しょせんは陸戦兵器。ビイビ隊はモビルスーツを撃破しろ!」

 

 ガルマは戦力を二手に分け、戦闘を継続する。

 

 

 

「しかし見事じゃないか、ガルマ大佐の攻撃ぶりは」

 

 シャアはそう言いながら、通信装置のジャックに細工をする。

 引き抜いた端子を汚した後、再び差し込んだのだ。

 

「親の七光りで大佐になった、だけの人物ではないな」

「少佐、よろしいのでありますか? 我々は見ているだけで」

 

 そう進言する部下の言葉にシャアは、

 

「いいだろう。援護が必要なら呼び出すと言っていたし、下手に手出しをするとプライドの高い彼のことだ、あとで怒られるしな」

 

 と、答える。

 ガルマが「手を出すなよ、見てるんだシャア」と言ってくれたのは幸いだ。

 これでシャアは責任を回避しながらガルマを陥れることができる。

 

「この距離なら無線は使えるんだろう?」

「はあ、ミノフスキー粒子の濃度は変わりませんが、このくらいなら音声は入るはずです」

「それならいいじゃないか。私だってガルマに叱られたくないからな」

 

 そう言いくるめるシャアだったが……

 

 

「――嘘を、ついておいでですね」

 

 

 不意に背後からささやかれる声!

 

(ば、バカな。今回、彼女はこの機には乗っていないはず!?)

 

 まるで射すくめられたように、シャアは心の臓に物理的な痛みを感じ身動きどころか呼吸も困難な状態に陥る。

 しかしシャアの視界内では彼の異常に気付いている者は居なかった。

 これは幻覚か!?

 

「ガルマ様は責任を感じていらっしゃるのです」

 

 イセリナの声がシャアに語り掛ける。

 

(せ、責任だと?)

「前回の敗北にあなたを巻き込んでしまった責任です」

 

 だからこそ、

 

「今回あなたに手を出すな、と言ったのはあなたを庇ってのこと。成功したならそれでよし。失敗してもガルマ様自ら単独で当たって、それでも勝てなかった。先の敗北はあなたの力不足のためではないと姉君、兄君に説明できる」

 

 出撃前にガルマが、

 

「私には姉に対しての立場だってあるんだよ。家族のいない君にはわからない苦労さ」

 

 と言っていたのはそれを暗に語りつつも、シャアに気づかせないためのもの。

 

(ガルマ……)

 

 甘いことだ。

 お坊ちゃん育ちが身に沁みすぎる。

 

 シャアはそう思うが、しかしそれは……

 

(冗談ではない!)

 

 というシャアの感情の爆発を産んだ。

 

(そんな施し、ガルマから受け取ってたまるものか!)

 

 と。

 そして再びイセリナの気配が収束し、シャアにささやかれたのは……

 

「嘘――」

 

 その言葉にシャアは痛みを覚悟するが、

 

「――ではないようですね」

 

 と、続けられたささやきに息をつく。

 

「あなたのような存在は屈折した矛盾を内包しながら自覚せず突き進むから質が悪い。あなたの場合、変に能力があるから余計に……」

 

 イセリナの声が徐々に遠ざかっていく。

 

「良く生きよ、という言葉をお贈りさせていただきますね」

 

 最後に、そういった言葉を残して。

 

「今のは……」

「どうされました、少佐?」

 

 いぶかしげにかけられる声に、シャアは今のは幻聴だったのかと疑う。

 ミヤビが知ったら、彼女をこの世界に招いた『機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線』登場の死神の力が作用したか……

 シャアが持つニュータイプ能力の片鱗が聞かせたものかと考えただろう。

 あるいはイセリナの方こそがニュータイプなのか。

 まぁ、イセリナがニュータイプになってもミヤビは驚かないだろう。

 同類のヤンデレストーカー、安珍・清姫伝説に登場する清姫は思い込みだけで竜種にまで至っているのだから。

 

 

 

 空中から襲い掛かるドップに歯噛みするアムロ。

 

「なめるなよ。ガンキャノンにだってジャンプ力とロケットノズルがあるんだ!」

 

 そうつぶやくと、スロットル全開で空中へと舞い上がる!

 

 

 

「ああっ、モ、モビルスーツが、と、飛んだ」

 

 信じられぬ光景に、目を疑うドップのパイロットたち。

 

 

 

「そこだっ」

 

 アムロはビームライフルでドップを撃ち落とす。

 

「一つ!」

 

 

 

『あ、アムロさんが…… ガンキャノンが空中戦をやってます!』

 

 サラの報告に、ミヤビは瞳を瞬く。

 

「まぁ、できるんじゃない? 足裏のロケットエンジンまで使ってるし」

 

 ガンキャノンはガンダムより重いし、ロケットエンジンの総推力も低い。

 

 しかしミヤビの記憶にある劇中では、この時点のガンダムは背中のロケットエンジンのみでジャンプを行っていた。

 足裏のロケットエンジンも併用するようになったのはジャブロー以降で、つまり教育型コンピュータの学習とアムロの腕が上がったことで制御が可能になったのだろう。

 

 一方、今飛んでいるガンキャノンは、足裏のロケットエンジンまで使用してジャンプを行っている。

 こうやって全推力を利用することができれば、背中のロケットエンジンのみのガンダムより高い推力を発揮することができる。

 ガンキャノンの方が重いので重量当たりの推力比では負けるが、そう酷い差があるわけでも無い。

 

 前回の戦闘でガンキャノンが短時間ながらスラスターだけでホバー移動の真似事をしてのけたように、サポートAIサラシリーズのおかげでガンキャノンの機体制御は史実のこの時期のガンダムを上回っている。

 それが足裏のロケットエンジンも併用した全推力を用いたジャンプにつながっているのだろう。

 

 またガンキャノンにはガンダムより有利な点がある。

 空気抵抗というやつだ。

 特異な形状の兵器をもの凄い推力に任せて無理やり飛ばしている宇宙世紀世界では割と軽視されている項目だが、現実問題これは無視できない。

 『機動戦士Zガンダム』で、アムロがリック・ディアスの改修機、ディジェに乗っていたが、そのボディはアムロの意向、

 

 サブフライトシステム(ゲタ)での出撃が多そうなので、整流効果を高める流線形ボディへの変更。

 

 を満たすものだという解釈が語られていたし。

 

 そんなわけで、直線主体でエッジが立っているガンダムと比べ、丸みを帯びたガンキャノンの機体は空を飛ぶには有利なのだ。

 そしてそれ以上に違いがあるのが、ガンダムが使っていた大型の盾、ガンダムシールドだ。

 劇中では破壊されて半分になっても振り回せば生じた風でジオンのホバー・バイク、ワッパを吹き飛ばしていたし、お台場の実物大ガンダムが武装していなかったのは付けたらシールドに当たる風圧がすごくて大変だから、と後に大河原邦男氏が語っている。

 そんなものを劇中では正面にかざしたままジャンプによる空中戦を行っているのだ。

 特大のスポイラー(エアブレーキと言うと分かりやすいが正確な呼び方ではない)を全開にしながら飛んでいるようなもので、それに比較すればガンキャノンの空気抵抗ははるかに低く抑えられていた。

 

「まぁ実際、空気抵抗って本当にバカにならないし」

 

 この辺はミヤビもドラケンE改で苦労したのだ。

 例えばドラケンE改は原型機のドラケンEと部品の多くを共用している。

 ドラケンEのものとほぼ同じ精密作業を担当する3本指ハンドと肘から先が二つに割れて大きな荷物をつかめる機能を兼ね備えた二重下腕肢や、荷役仕様として用意されたパワーローダータイプの腕なんかもそうだが、しかし両肩のカバー前後に開けられていた肉抜き穴が無くなっている所が異なる。

 

【挿絵表示】

 

 この穴はドラケンEにおいて軽量化と内部機構(特に肩部放熱器)の冷却能力向上のため開けられていたものだったが、実際にはほとんど効果が無く単にデザイン上のアクセントとしてしか機能していなかったもの。

 ドラケンE改は大気圏内におけるロケットエンジンを使用したジャンプ時、頭頂部からとてつもない加速で飛んでいくわけだが、その場合両肩にも過大な風圧がのしかかる。

 その肩装甲に肉抜き穴が開いていては乱流を発生させ、振動等不具合が生じるとして廃止された経緯にある。

 副次的に防御力の向上、生産工程の省略によるコストダウンという効果が得られている。

 

 同様に腰部アーマーに開けられていた3つずつの穴も、プレス加工に変更。

 凹んでいるものの貫通はしていない仕様になっていた。

 

 ともあれ、

 

「サラちゃん、みんなに連絡。ガンキャノンの着地の瞬間を狙い撃ちされないように援護して、と」

『了解です』

 

 ゲームでもありがちだったが、ジャンプ攻撃は着地の硬直を狙うのがセオリー。

 ドラケンE改の場合はローラーダッシュがあるので着地後も地上の高速走行にシームレスに移行でき隙も減らせるが、ガンキャノンの方はそうもいかない。

 援護は必要だった。




 修羅場の本番に、たくらみをイセリナに潰されるシャア、そしてガンキャノンのジャンプでした。
 ガンキャノンはどうしようかと考えていたのですが、本編をよく見直すとそもそも…… という話で。
 実際、様々な資料本やネットの情報などがありますけど、それだけで考えていると見えなくなるものがある、映像を見直すことで気付けるものがあるのだなぁと改めて感じました。

>「優秀なのにおごらないし威張らない。話を合わせてくれるし男性の趣味や欠点に理解があって、未熟なところをあげつらわず、話していて急に感情的になったり、過去を蒸し返したりしないし、かといって無関心じゃなく世話焼きなくせに、過干渉しない。……あと美人、とても美人」

 こちらのセリフはお寄せいただいたご感想をそのまま使わせてもらっています。
 このようにいただきましたご意見、ご感想等は作品作りに生かさせてもらっています。
 お気軽にお寄せ下さい。

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