ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第10話 ガルマ入籍す Dパート

 そしてシャアたち。

 シャアのザクは威力が高く、敵が遮蔽物の陰に隠れようとも吹き飛ばせるバズーカを。

 部下のザクたちは即応性の高いザク・マシンガンを。

 そして市街地での近接戦闘に備え、ヒートホークを装備している。

 

 ミノフスキー粒子によるレーダーセンサーへの障害に加え、ガウの絨毯爆撃によりそこかしこで火災が発生し熱源センサーも当てにならない状況では、本当に目視による確認でしか敵を捉えることはできない。

 彼らはそれぞれ分担してビルなどの障害物の影を確認(クリアリング)しながら前進。

 相手に位置を気取られないよう無線封鎖しているためハンドシグナルで意思疎通しつつ相互に連携を取る。

 モビルスーツのマニピュレータが人の手を模した五指を備えていると、こういう使い方も生む。

 人型兵器の利点のうちの一つだ。

 

 

 

 アムロは極力物音を立てないよう気を付けながらガンキャノンを前進させる。

 ガンタンクは置いてきた。

 カイとセイラの腕は上がっているが、ハッキリ言って市街地での戦闘にはついてこれそうもない。

 逆に射界の開けた、そして自身が遮蔽を取れる地点に居た方が安全だからだ。

 

 前方に立ちふさがる障害物、高架橋を、アムロはロケットエンジンを吹かしながらジャンプでクリアーする。

 敵に見つからないよう高さを抑えてぎりぎりを乗り越えるが、しかし着地点の足場が悪かった。

 体勢を崩し、大きな音を立ててしまう。

 

「見つかった!?」

 

 アムロはガンキャノンに穴の開いたシールドを掲げさせ、身構えるが攻撃は来ない。

 

「妙だ…… いや居る。敵は近い」

 

 アムロは遮蔽物に身を寄せると、動きを止め敵の気配を探る。

 音響センサーが感知するザクの足音。

 

『アムロ、ザクよ』

 

 サポートAI、サラツーの報告どおりザクの姿を認める。

 アムロはビルの陰からマシンガンでそれを狙うが。

 

 

 

「銃身が丸見えだ」

 

 シャアはすかさずバズーカを撃ち込む。

 素人は遮蔽物があるとそれにべったり密着して銃口だけ出して撃とうとするが、それではこうやって敵に発見されてしまう。

 実際には一歩引いて銃身、さらには地面に落ちる自身の影が覗かない程度に遮蔽物から距離を置き銃を構えることが必要だった。

 まぁ、それをこの時点のアムロに求めるのも酷というものだったが。

 

 

 

 至近でバズーカの弾が爆発し、それに吹き飛ばされるガンキャノン。

 

「しまった!」

 

 コクピットで衝撃にシェイクされながらもアムロは歯噛みする。

 そして位置を晒し体制の崩れたガンキャノンに、シャアの部下のザクがマシンガンを放とうとするが、

 

「バァルカンッ!」

 

 アムロの音声コマンド指示を受けたサラツーが頭部バルカンで牽制。

 この辺の制御は教育型コンピュータとサポートAI『サラツー』の経験値が溜まってきたおかげでとっさの場合の対応も任せることができるようになっていた。

 ザクがひるんだ隙に素早く起き上がり、遮蔽物の陰に逃げ込む。

 だが、

 

「うわぁっ!」

 

 息をつく暇もなく撃ち込まれたシャアのザクのバズーカが、身を隠したビルごとガンキャノンを吹き飛ばす。

 

「シ、シャアだ。あれに当たる訳にはいかない」

 

 そしてガンキャノンが体勢を崩した隙に障害物を乗り越え前進するシャアのザク。

 ガンキャノンへの射線が通った瞬間にまたバズーカが撃ち込まれ、アムロは転がるようにそれを回避した。

 そして正面にシールドをかざして身を守るとマシンガンで反撃する。

 サプレッサー、減音器を装備しているため射撃音は小さく、発砲炎(マズルフラッシュ)もまた目立たないぐらいに抑制されていた。

 これにより射撃位置を派手にさらし集中砲火を受ける、などということは避けられるのだ。

 そのための武器選択だった。

 

 

 

 シャアはジャンプでガンキャノンからの射撃を回避、物陰に身を隠す。

 

「モビルスーツめ、やるようになった」

 

 戦闘技術自体はまだまだつたない所があるが、そういった点を突いても大きく崩れない。

 あまつさえ、反撃すらしてくる。

 隙が少なくなってきているのだ。

 

 

 

「迂闊なやつめ!」

 

 不用意にビルの窓、開口部の前で立ち止まって周囲を探るザクに、その陰に隠れマシンガンを構えていたガンキャノンの銃撃が直撃する。

 歩兵戦でもそうだが、ドアや窓の前には身を晒してはいけないのだ。

 増してやそこで立ち止まるなどもってのほか。

 そういう敵が潜んでいそうな開口部には手榴弾を放り込むなり銃撃を加えるなりして黙らせておかなければならない。

 そして、

 

「効いてる!」

 

 倒れ伏すザクに安堵の息を漏らすアムロ。

 この新型マシンガンには減音効果があるが、射程は短く威力には不安があるのだった。

 

 音速以上で弾が飛ぶと衝撃波によって大きな音が発生する。

 そのため射撃音をより抑制したかったらただサプレッサーを取り付けるだけでなく、初速が音速を下回る亜音速(サブソニック)弾を併用することが必要になってくる。

 サブソニック弾は弾頭を通常弾より重くすることで弾速を下げるものだが、一方でこのような特殊弾は兵站に問題を発生させ、戦場での運用に負担を強いるというデメリットがある。

 そのため、この新型マシンガンは機関部から先の銃身部を丸ごと内装タイプの減音器、インテグラルタイプのサプレッサーと交換してある。

 サプレッサーに覆われた砲身には小さな穴がいくつもあけられており、砲口だけでなく砲身の穴からも発射ガスをサプレッサーの中に拡散させることによって消音効果をより高め、同時に砲弾の初速を音速以下に落とすわけだ。

 ミヤビの前世の記憶にあるサブマシンガン、H&KのMP5SDタイプと同じ構造である。

 

 ただし、当たり前だが初速が低下すれば有効射程も威力も低下する。

 サブマシンガンに使われる拳銃弾ならまだ問題は小さいが、モビルスーツに使われるサイズの火砲である場合、当然ながら装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)などといった速度を高めて運動エネルギーで貫くタイプの徹甲弾は使えなくなる。

 必然的に火薬の力が産み出すメタルジェットで装甲に穴を開け内部を焼き尽くす弾頭、成形炸薬弾(HEAT弾:High-Explosive Anti-Tank)を使用することになる。

 音を立てずに撃破する、ということはできなくなるが、モビルスーツなど装甲物を破壊して音を立てません、などという真似はそもそもできない。

 であるからして射撃位置を悟らせないという効果さえ上げられれば良いと考えるべきだった。

 

 問題があるのは、成形炸薬弾の威力は弾速に左右されないが、火薬量、つまり弾頭の大きさに比例するということだ。

 ザクマシンガンは120ミリだが、これは初期にザクIが使っていたZMP-47Dの105ミリ弾では威力不足と考えられたために採用された経緯にある。

 そして宇宙での使用を考え低反動な低速砲となっているザクマシンガンが使うのもまた成形炸薬弾であり……

 つまり今回ガンキャノンが使用している新型マシンガンの100ミリの成形炸薬弾は威力にも不安があるのだ。

 

 そしてそこにシャアのザクからの攻撃が加えられる。

 一度、二度と砲火を交し合う二人。

 

『アムロ、上!』

「はっ!」

 

 サラツーからの警告に、アムロは頭上を見上げとっさにシールドをかざす。

 シャアのバズーカによる砲撃を牽制に、ヒートホークを振り上げたザクがジャンプで斬りつけてきたのだ。

 モビルスーツの大質量を斧に乗せた攻撃に、一撃で掲げたシールドが叩き割られる!

 

「うわああああっ!」

 

 その威力に戦慄するアムロ。

 

 

 

「止めだ!」

 

 部下のザクの攻撃に怯えすくむアムロのガンキャノンにシャアが止めを刺そうとした瞬間、

 

「なに!?」

 

 不意の砲撃がシャアのザクの近くに着弾する。

 とっさに回避行動を取るシャアだったが、

 

「どこからだ? いや、これは間接射撃か」

 

 敵の姿が見つけられない。

 その間にも砲撃は続き、

 

「ええい、ミノフスキー環境下の、しかもこの暗闇の中でこれだけの正確な射撃。いったいどういうからくりだ!」

 

 そうこうしている間に、部下のザクがガンキャノンの反撃を受ける。

 幸い、そのマシンガンは威力が低いらしく致命的なダメージとはなっていない様子だったが。

 

「……ガルマを逃れさせられるだけの時間は稼げた。ここが潮時か」

 

 ぎりっと歯を噛みしめ、シャアは通信制限を解除。

 

「撤退するぞ!」

 

 

 

『ふふっ、ザクが逃げていきますよ』

 

 夜の静寂のハイウェイ、きらりと光る5連式多目的カメラモジュールで高架上から見下ろすのは両手を地面に付けるほど姿勢を低くした赤い異形の姿。

 もちろんそれはミヤビのドラケンE改だった。

 

 からくりは簡単。

 ステルス機であるドラケンE改を使って高所に陣取り戦場を観察。

 捉えた位置データをレーザー通信でガンタンクに伝え、間接射撃で援護してもらったのだ。

 重力に引かれ、砲撃が山なりの射線を描く実弾砲を備えるガンタンクだからこそできる活用方法だった。

 ミヤビたちは単に危険だからガンタンクを後方に置いたのではない。

 こうやって援護してもらうためにこそ、最前線から外しておいたのだった。

 

 なお……

 どうやっても観測から砲撃、着弾までタイムラグがあるし、シャアの腕であれば回避し続けながら戦うこともできただろう。

 しかしラッキーヒットもありえるし、部下が付いて来れるかはまた別問題。

 だからこそシャアは危険を冒さず撤退したのだ。

 逆に言えば覚悟を決められてかかられていたらミヤビの策が食い破られていた可能性は多分にある。

 接近戦に持ち込まれたら味方への誤射もありうる間接射撃は無効化されるのだし。

 そういう意味で、今回はミヤビたちの運が良かった、とも言える。

 いや、ガウに損傷を与え撤退させていた時点で勝っていた、とも言うのか。

 

 そしてミヤビはというと……

 

「おやすみなさい」

 

 と安全が確保された時点で機体の制御をサラに任せ、シートですやすやと眠りこけるのだった。

 

 

 

 結果としてガルマは左足を骨折しており、ニューヤークの軍病院にて2週間の入院が必要となっていた。

 そして、

 

「ガルマ様!」

 

 駆け付けたイセリナがそれはもうかいがいしく世話することになる。

 そんな彼らを陰から見てシャアは思う。

 

 終わったな。

 

 と。

 

 

 

 ミヤビの前世の職場である旧21世紀の日本の某重工に、とある先輩が居た。

 バイクが趣味で遊びまわり、まだまだ結婚しないと言っていたし周囲もそう感じていたその人が結婚した理由。

 それがバイク事故による入院だった。

 そのころ付き合っていた彼女は看護婦で…… その先輩が救急搬送された病院に勤務していたのだ。

 ベッドの上で動けない先輩を、彼女は勤務中も、そして勤務時間外でもそれはもう献身的に介護した。

 遠い故郷から離れて就職したその先輩、親を呼ぶのも難しく、それゆえパンツを洗うことまでしてもらった彼にはもう逃げ場はなかったのだ。

 

 そう、そのまま今のガルマに当てはまる状況である。

 

 

 

「君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ」

 

 シャアは再びそうつぶやいて、今度は本当に友を見捨てた。

 そう『人生の墓場』へと。

 

 

 

 ジオン公国を名乗る宇宙都市国家は月のむこうに浮かぶ。

 今ここに、ザビ家の末弟ガルマ・ザビの突然の入籍が急報された。

(戦争中なのでガルマは式や披露宴は後にすることにして、とりあえず婚姻届だけ出した。それで済ませられるはずが無いのに……)

 

 時に、ジオン公国の公王、すなわちガルマの父デギン・ザビは、可愛がっていた末の息子が自分に何の相談も無しに結婚してしまったことに激しいショックを受け……

 使者の前でその杖を落としたという。

 

 

 

 こうしてシャアはヤンデレストーカー、イセリナにガルマを押し付け、彼をいけにえに捧げることで自分の身の安全を図ると同時に、親の仇、デギン・ザビの精神に甚大なダメージを与えることに成功したのだった。

 

 ……まぁ、ガルマは結婚後も親友であるシャアに対する親密な付き合いを変えることはなく。

 そのために制服若妻イセリナ(ガルマの秘書官だからね)の嫉妬を買うのではとシャアは大いに恐怖することになるのだが。

 この時のシャアにそれを知る由も無かった。

 

『人を呪わば穴二つ』である。

 

 

 

次回予告

 戦いに終わりはない。

 ガルマの仇を討つべく生き残り部隊が特攻をかける。

 ……ガルマは死んじゃいないのだが。

 ガンタンクのカイ、セイラを伴ってガウを討ち取るアムロの前にサラの操るドラケンE改が立つ。

 その震える腕がアムロを『ミヤビさんの、仇……』

 次回『イセリナ、恋のあとは愛でもちろん結婚式』

 ミヤビは生き延びることができているのか?




 モビルスーツ同士の市街戦、しかも見通しのきかない夜って、本当にCQB(クロース・クォーター・バトル、近接戦闘)になりますね。
 なかなか楽しみながら書くことができました。

 そしてガルマの結婚の顛末。
 ミヤビの先輩の話は知人の実話を元にしていますが、逃げられませんよね、この状況。
 しかしシャアの復讐がこんな形になろうとは…… なんてひどいやつなんだ、シャア!

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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