ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第13話 ミヤビがママになるんだよ!? Cパート

『ではパワー戦で押し切りましょうか』

 

 と、サラ。

 ドラケンE改の左腕、肘から先が二つに割れる。

 

「なにっ!?」

「かっ、カニのはさみっ!?」

 

 ドラケンE、そしてドラケンE改が標準で備えている二重下腕肢マニピュレーターは先端に付いた精密作業を担当する3本指ハンドとは別に肘から先がカニのはさみのように二つに割れて大きな荷物をつかめる機能を持っているのだ。

 

『ギガンティックシザース!』

 

 サラは以前、ミヤビが口にしていた単語の中から拾った、適当な名前を出して威嚇する。

 元ネタは『機動新世紀ガンダムX』登場のゲテモノガンダム、ガンダムアシュタロン・ハーミットクラブの武装である。

 今回は対人なので相対的にはそれぐらいのインパクトはあるが……

 

「ひっ」

「うわああぁぁぁっ!」

 

 銃を放り捨て、全力で逃げ出す兵士たち。

 ライフルなどドラケンE改には通じないから妥当な行動か。

 

 そして、

 

「あ、アムロかい? 娘の、コミリーの友達だったアムロかい?」

「おばさん……」

 

 兵士たちに絡まれていたのは、アムロの昔のご近所さん。

 友達のお母さんだったのだ。

 

 

 

「生き残った兵隊さんは本部から見捨てられちゃってね。仲間が助けに来ないもんだからあんな風になっちまって。やだねえ、戦争って」

 

 そうこぼすおばさんに、アムロは思いつめた表情でうなだれる。

 

「そうか、コミリーは死んだのか」

「娘だけじゃないよ、主人もね。あたしだけ生き残るなんて因果なもんさ」

 

 それが戦争の現実だった。

 

「お母さんには会ったんだろ?」

「いえ」

「おや、手紙もらってないのかい? お母さんなら避難民キャンプでボランティアやってるよ」

 

 それでようやくアムロの表情にも生気が戻る。

 

「え、い、生きてるんですね?」

「ほら、教会があるのを憶えてるかい? あの丘だよ。コミリーとよく遊びに行ったろ」

 

 アムロはうなずくと駆け出す。

 

「おばさん、ありがとう」

「気をつけて行くんだよ」

 

 その声を背にアムロはドラケンE改に乗り込み避難民キャンプへと向かうのだった。

 

 

 

 ジオンの偵察機、ルッグン二機が編隊を組んで飛んでいる。

 

「敵さん、完全撤退したな」

 

 その機体に装備された可動式のレドームは下側に回されている。

 つまり地上の索敵を行っているのだ。

 

「戦闘機一機もお出迎えなしじゃ機銃が錆びつくぜ」

 

 と、コ・パイロットを務める兵士は言うが、そもそも敵に航空機戦力が無いと分かっているからこそ、自機も僚機もそろってレドームを地上へ向けて哨戒を行っているわけで。

 

「これも任務さ」

 

 と同僚に言われ、肩をすくめる。

 

「こちら、ルッグンスリー。304地区、異常なし」

 

 基地へと報告。

 

 

 

『各員艦内に戻れ、艦内に戻れ。敵機発見、対空戦闘急げ』

 

 ブリッジに詰めているオペレーターのマーカーから警告が発せられる。

 

 

 

 ブリッジで対応するブライトたち。

 

「敵か?」

「はい、味方の識別信号を出していません。海上10キロをこちらへ向かっています」

 

 マーカーの報告に、ミライは、

 

「ホワイトベースを発進させます?」

 

 とブライトに指示を仰ぐ。

 しかしブライトは首を振った。

 

「いや、かえって発見させやすくするだけだ」

 

 ミライも「そうね」と同意する。

 

「敵の本隊に連絡されては面倒になる。先手を取って叩き落す」

 

 

 

 リュウ、そしてハヤトのコア・ファイターが発進準備を整える。

 

「コア・ファイター発進準備完了」

『OK、発進路クリアー。コア・ファイター発進、どうぞ』

「了解。行きます!」

 

 次々に飛び立つコア・ファイター。

 

 

 

「な、何か来るぞ」

「敵か?」

「いや、戦闘機の様だ。い、いかん、うしろにまわられた」

「な、なに?」

 

 偵察機であるルッグンだったが、レドームを下に向け、地上への哨戒を行っていたこと。

 そしてホワイトベースによってミノフスキー粒子が散布されていたことによりコア・ファイターの発見が遅れ、完全に後手に回ることとなっていた。

 

 

 

「遅いわぁっ!」

 

 リュウのコア・ファイターが翼下パイロンに取り付けられた空対空ミサイルAIM-77D二発を立て続けに放つ。

 ミヤビの前世の記憶では『U.C.HARD GRAPH 1/35 地球連邦軍 多目的軽戦闘機 FF-X7 コア・ファイター』で再現されていたこのミサイル。

 ミサイル、そしてパイロンを付けたままではモビルスーツに合体できないという問題があるせいか、史実では使用されていなかったものだ。

 しかしながら現状、リュウとハヤトの乗るコア・ファイターは単独運用ばかりとなっており、結果、火力増強のため装備されていた。

 

 ミノフスキー環境下で誘導があまり効かないとはいえ、すれ違いざまの至近距離からロケット弾のように立て続けに直射されては避けるのは難しい。

 AIM-77Dは見事に命中し、一機のルッグンを叩き落とす。

 

 

 

『うわあっ』

「こ、降下しろ!」

 

 僚機を墜とされ、慌てて回避行動を取るもう一機のルッグン。

 

 

 

「逃がすかあ」

 

 リュウは逃げるルッグンを追って機首に装備された2連装30ミリバルカン砲2門…… つまり4基のガトリング砲を発砲!

 しかし今度はかわされた上、後ろにつかれ逆に攻撃を受けることに。

 

「うっ」

 

 操縦桿とスロットルを操り、回避するリュウ。

 

「パ、パトロール機のくせにぃっ」

 

 

 

「ここだ、ここに母さんが」

 

 アムロはドラケンE改で避難民キャンプへと乗りつける。

 

「すげえ、本物のロボットだ」

「かっこいいなあ」

 

 子供たちが物珍しそうに騒ぐ中、

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

「えっ?」

 

 老人に呼び止められるアムロ。

 

「あんた、軍人さんじゃろ? ここへ何しに来たか知らんがすぐにあのロボットを隠してくれんか?」

「なぜです? 僕はただ」

 

 戸惑うアムロだったが、

 

「いやいや、あの山の向こうには敵の前線基地があってな、一日一回見回りに来るんじゃよ」

「それでなくても、もう敵に見つかったかもしれんのじゃ。用事ならそのあとでもよろしかろう」

 

 そう説明され、納得する。

 

「わ、わかりました」

 

 その時だ。

 

「ア、アムロ、アムロなのね?」

 

 進み出る女性。

 

「アムロ」

「か、母さん」

 

 アムロの母、カマリア・レイだった。

 

「……ア、アムロ」

「か、母さん」

 

 涙を流しながらも再会を喜び抱き合う二人。

 

「いいなあ」

 

 と言う子供はこの戦争で母親を亡くしたのか。

 そして先ほどの老人が言いづらそうに声をかける。

 

「……すまんが、あのロボットを」

「そ、そうでした」

 

 我に返るアムロ。

 カマリアも、

 

「アムロ、早く隠してきなさい。話はそれからにしましょう」

 

 と同意する。

 

「うん」

 

 アムロはそううなずいて、サラに隠れるように指示を出す。

 

 

 

 ルッグンからの銃撃を必死に避けるリュウのコア・ファイター。

 しかし、

 

『リュウさんっ!』

 

 そこにハヤトのコア・ファイターが割り込み、ついにその銃撃が機体を捉える。

 

『や、やった!』

 

 

 

「そう、あんなサイドにもジオンの空襲があったの」

 

 避難民キャンプに建てられたプレハブ造りの大型建屋。

 ベッドに横になり、毛布をかけることでアムロの着ている軍服を隠す。

 

「じゃあ、父さんはわからないわね……」

 

 いや、父さんは、とアムロが言おうとしたところで、

 

「また兵隊が来たよ!」

 

 子供が駆け込んでそう伝えてくれる。

 

「えっ?」

 

 カマリアはアムロに首まで毛布を掛け、

 

「動くんじゃないのよ」

 

 と言いつける。

 アムロは黙ってうなずくのだった。

 

 

 

 ホワイトベースのブリッジに、リュウからレーザー通信がつながる。

 

『ブライト、偵察機は撃墜した。だが少してこずりすぎた。もしかしたら敵基地に連絡されてしまったかもしれん』

「なに?」

 

 ブライトは考え込む。

 

「オペレーター、敵の逃走方向から敵基地の場所は特定できないか?」

「南西方面というくらいしかわかりません」

 

 その方向というと、

 

「アムロのふるさとの方向か」

 

 ブライトは決断する。

 

「フラウ・ボウ、アムロに緊急サインを送るんだ。急げ」

「はい」

 

 

 

「よーし、みんなじっとしてろ。そのまま動くな」

 

 二人組のジオン兵がアムロの潜むプレハブ建屋に入って来る。

 

「敵の戦闘兵器らしきものがこの辺に現れたという報告も入ってる。知っている者はいないか?」

 

 周囲を見回すが、緊張した空気が流れるだけで返答はない。

 兵士は子供に近づき身をかがめると、

 

「ん、僕、何か知らないかい? おじさんにだけ教えてくれないかな」

 

 と、声を作ってたずねるが、

 

「知るもんか!」

 

 と脛を蹴られる。

 子供の力、それに兵士の脛は長靴で守られているため痛みはない。

 とはいえ、その所業に大人たちはハラハラと見守るが、兵士は暴力を振るったりはしなかった。

 

「憎まれたもんだな。チョコレートをやるよ」

 

 と、取り出したチョコレートを差し出すが、

 

「いらないやい、とうちゃんとかあちゃんをかえせ」

 

 と言い返される。

 兵士は苦笑して見せて、

 

「おーこわ。ははは、チョコレートを貰いそこなったな、坊や」

 

 と受け流す。

 酷い態度だろうか?

 いや、実際、こうするしかないのだ。

 それが戦争。

 そして暴力に訴えたり、自分たちの正しさを主張したりしない。

 相手の考えを変えさせようと強制しない。

 そういう意味でこの兵士は大人な、できた方の人間だと言わざるを得ない。

 少なくともアムロが目にした連邦軍のチンピラ兵士どもとは比べ物にならない。

 

 とはいえ、それが分かる者は多くは無いだろうが。

 そして不意に電子音が流れる。

 

「ん?」

「おっ、な、なんだこの音は?」

 

(こ、こんな時に呼び出し信号が!)

 

 アムロは焦って呼び出し音を止める。

 しかし、

 

「おい女、そこに寝ているやつは何者だ」

 

 銃を構え、カマリアに問う兵士。

 

「え? い、いえね、た、ただの怪我人なんですよ、ただの」

「見せろ」

「あっ」

 

 カマリアをどけようとその肩に手をかける兵士だったが、彼女はそれを振り払ってアムロを庇うように覆いかぶさる。

 

「私の子供です、怪我をしているのです」

「怪しいのでなければ見せろ」

「あっ」

 

 そして次の瞬間、毛布が舞い上がり、反射的にそちらに銃を向ける兵士!

 しかしそれは囮でベッドで半身を起こしていたアムロの手には化け物じみた大口径銃、アーマーマグナムが構えられていた。

 アムロは躊躇せずその引き金を引く!

 

「ぐっ!?」

 

 その場に崩れ落ちる兵士。

 アムロはフォアグリップを前後させ、排莢すると同時に次弾を装填。

 

「……ああっ!」

 

 もう一人の兵士は逃げ出したが、アムロはそれを追って建物を飛び出す。

 

「アムロ、待ちなさい」

 

 引き留める母を振り払って。

 

「ア、アムロ」

 

 逃げるジオン兵の背にアーマーマグナムをぶっ放す。

 

「アムロ……」

 

 倒れたジオン兵を診ていた老人が周囲に言う。

 

「命には別状ない、医者を呼んでくれ」

 

 それは当然のこと……

 

 

 

 今回の帰省にあたって、ミヤビはドラケンE改といっしょに自分が使っているアーマーマグナムをアムロに渡していた。

 

「お守りよ。スタン弾を込めてあるから相手を大けがさせずに無力化できるわ」

「スタン弾?」

「そう、12番ゲージのショットシェルの弾体に、スタンガンの機能を内蔵しているの」

 

 ミヤビの前世でもテーザー社がXREP弾という名称で販売していたものである。

 低圧で撃ち出すため、ガス圧駆動のオートマチックショットガンでの使用は適さない。

 普通の散弾銃の速度で打ち出されて人体にぶつかったらそれだけでケガをするし、スタンガンの機能が壊れる可能性がある、ということでかなりの弱装弾になっているのだ。

 その点、アーマーマグナムは手動でフォアグリップを前後させ、排莢すると同時に次弾を装填するポンプアクション方式だから、問題は無い。

 

 史実では初めて生身で人を撃つことになり、そのため母親との決別に至ったアムロ。

 そんな彼を気遣ってミヤビは渡したのだが、彼女は肝心なことを忘れていた。

 

 

 

 非殺傷のスタン弾とはいえ、初めて人を撃った衝撃に、アーマーマグナムのグリップを固く握ったまま強張った指。

 それを左手で苦労して引きはがそうとするアムロに、カマリアは非難するように言う。

 

「あ、あの人達だって子供もあるだろうに、それを鉄砲向けて撃つなんて…… すさんだねえ」

 

 そう、ミヤビは忘れていた。

 確かにスタン弾は大きなケガをさせずに相手を無力化することができる。

 しかし周囲にはそんなことは分からないのだ。

 いや、むしろスタン弾ゆえにアムロは躊躇なく撃つことができていたため、見た目は何のためらいもなく化け物のような大口径銃を人に対してぶっぱなす危険人物にしか思えないのだ。

 

「じ、じゃあ、母さんは僕がやられてもいいって言うのかい。せ、戦争なんだよ」

 

 アムロもそれに気づいておらず、しかも彼は相手を傷付けずに身を守ったという認識だから、母子の想いは完全に……

 それこそミヤビの知る史実以上にすれ違う。

 

「そ、そうだけど。そうだけど人様に鉄砲を向けるなんて」

「母さん、母さんは、僕を愛してないの?」

 

 そこまで……

 言ってはいけない言葉を言わされてしまう状況に、アムロは絶望し、

 

「そんな、子供を愛さない母親がいるものかい」

 

 しかしなお、母の瞳は、言葉は自分を責めていることにうなだれる。

 

「嘘をつけ」

「アムロ」

 

 自分の名を呼ぶ母を振り切って、アムロは腕時計型の通信機のスイッチを入れる。

 

『アムロ、何かあったの?』

 

 フラウの声。

 

「いや」

『そう。緊急事態よ、ジオンのパトロール機がそちらの方向に向かったの。気をつけて。ホワイトベースも発進して合流するわ』

「了解」

 

 カマリアは言う。

 

「アムロ、私はおまえをこんな風に育てた覚えはないよ。昔のおまえに戻っておくれ」

 

 しかし彼女が嫌悪の視線を向けるアーマーマグナムは、ミヤビが肌身離さず携帯していたもの。

 それを、アムロを守るために渡してくれ、そして実際に彼の窮地を、命を救ってくれたもの。

 もしアムロがこれを持っておらず、通常の拳銃を使っていたら、彼は人を殺していたかもしれない。

 つまりミヤビはアムロの心まで守ってくれたのだ。

 

 比べてはいけない、とアムロは思うがどうしても比べてしまう。

 愛している、と口にするくせに今の自分を受け入れてくれない母親と。

 アムロをあるがままに受け入れ、守ってくれるミヤビと。

 

「今は、戦争なんだ」

 

 そうつぶやいて駆け出すアムロの背に、母の言葉がぶつけられる。

 

「なんて情けない子だろう」

 

 それを振り払うようにアムロは、高々と掲げた手でフィンガースナップ、指パッチンを行うと共に、

 

「出ろぉぉぉ! ドラケンE改ぃぃッ!!」

 

 と叫ぶ。

 その音声とジェスチャーを組み合わせたコマンド入力に応え、森に隠してあったドラケンE改がサラの制御で木々を割り、姿を現す!




 アーマーマグナムの活躍、のせいで余計こじれるアムロ母子。
「良かれと思って」という想いとは裏腹の展開でした。
 これもミヤビってやつのせいなんだ。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。


 あと、このお話をずっと書き続けていたら気が狂いそうになったので(何しろ長い!)気分転換的に新作を書いてみました。
『こあパチュクエスト3(東方×ドラゴンクエスト3)』(https://syosetu.org/novel/198740/
 東方二次創作ですが、ご興味がありましたら読んでみてください。

 ではまた。

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