ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第15話 宿命の闘い! ククルス・ドアンの島 Dパート

「わあーん」

 

 子供たちの泣き声が聞こえる。

 炎に包まれる街。

 

「ああっ」

「うわあっ、ザ、ザクだ」

 

 ザクの姿に怯える子供たち。

 それをコクピットでカメラ越しに捉えたドアンは……

 

「うわああっ」

 

 叫び、ベッドから跳ね起きる。

 夢?

 いや違う。

 あれは過去にあった現実だ。

 

 ドアンは起き上がり、寝室を出る。

 

「うん?」

 

 床に雑魚寝していたアムロの姿が無い。

 ミヤビもだ。

 ドアンは思い立って外に出ようとするが、そこで人の気配に気づく。

 

「ん? まだ起きていたのか」

 

 ロランだった。

 

「どうするの?」

 

 彼女の問いに、ドアンは答える。

 

「うん。あの少年のことか。今のままにしておく訳にはいかないさ、近くに本隊がいるだろうからね。彼がその気になってくれなければ面倒になる」

 

 そしてロランに向け詫びる。

 

「こんな不安におびえる生活、できることなら私も早く抜け出したいが。すまん」

 

 しかしロランは、

 

「あたしなら平気よ」

 

 と静かに答えるのみであった。

 そんな彼女に見送られ、ドアンは外へと歩き出した。

 

 

 

 満天の星空の下、アムロは膝を抱えて座り込んでいた。

 

「どうすれば……」

 

 そんな呟きを耳にし、ドアンは胸を突かれる。

 それはアムロの内心の吐露であり、同時にドアンの心のうちの迷いでもある。

 ドアンは声をかけるため歩み寄ろうとするが、そこで気付く。

 月光を水のように浴びながら幽玄とたたずむ女性。

 

「明鏡止水……」

 

 ミヤビの姿を。

 

「曇りの無い鏡のごとく、静かにたたえた水のごとき心。わだかまりや、やましさのない澄んだ心。それが明鏡止水」

 

 その声はアムロに語り掛けているようでいて、

 

「それが人に己を超えた力を持たせることができる……」

 

 ドアンにも、そして自分自身にも向けて言っているような響きがあった。

 

「明鏡止水、か……」

 

 その言葉は悪夢によりささくれだったドアンの心を鎮めてくれる。

 そんな作用があるようだった。

 

 

 

 ホワイトベースのブリッジ、朝日と共にリュウは目を覚ます。

 彼はアムロたちから連絡があったら即座に対応できるよう、通信機の前のシートで毛布をかぶって横になり待機していたのだ。

 

「お互い、よく眠れなかったようだな」

 

 そう言って、熱いコーヒーを渡してくれたのはブライトだ。

 二人で夜明けのコーヒーを飲み干すと、リュウは立ち上がる。

 

「捜索に出る」

 

 しかしそこにオペレーターを務めるオスカが報告する。

 

「未確認飛行物体接近、かなりのスピードです」

「こっちに向かっているのか?」

「いえ、ポイント305方面に向かってます」

 

 身支度を終え、ブリッジにやってきたミライが、

 

「コア・ファイターを発進させましょう」

 

 と進言する。

 ブライトはうなずき、指示を出す。

 

「よし、ホワイトベースも発進だ」

「はい」

 

 

 

「あれは!」

 

 接近する機影を認め、ミヤビは目を見張る。

 ドアンの島に接近していたのはルッグンの翼にマニピュレーターでぶら下がったザクだった。

 ルッグンの推進機は底面にあるスリット状のベクタード・ノズルで、垂直離着陸可能なVTOL機としての機能も持つ。

 推力にはかなりの余裕があり、これを利用すればザクを懸下しての短距離輸送が可能なのだった。

 

 そして島の上空に達したところでザクが降下し、ルッグンのエアカバーの元、進軍してくる。

 

「ドアン、ガンキャノンを返してくれ」

 

 ドアンに訴えるアムロ。

 しかし、

 

「おっ」

 

 ザクがこちらにマシンガンを向け、

 

「危ない!」

 

 アムロは逃げ遅れそうになった子供を抱えて伏せる。

 そこに砲撃!

 何とか被害は無かったが……

 

「ドアン!」

「ついて来い!」

 

 そうして彼らは走り出す。

 

 

 

 逃げ出したドアンたちを探し、滝つぼへと迫るザク。

 その時、滝の向こうから銃撃が加えられる。

 そしてザクがひるんだ隙に、ガンキャノンLが、そしてドアンのザクが滝を割って飛び出してくる。

 ここがドアンのザクとガンキャノンLを隠した場所だったのだ。

 

「ミヤビさん、砲撃をお願いします!」

 

 アムロはガンキャノンLの姿勢を低くすると、砲手であるミヤビに両肩の120ミリ低反動キャノン砲での攻撃を依頼する。

 しかしそこに、

 

『アムロ、ルッグンが!』

 

 サラツーからの接近警告。

 そして、

 

『危ない!』

 

 ガンキャノンLはドアンのザクに突き飛ばされる。

 そこにルッグンの底部弾倉から爆撃が加えられた。

 それはドアンのザクに直撃こそしなかったが、

 

「うわっ!?」

 

 爆発的な炎が辺り一面に広がり、ドアンのザクを覆い尽くした。

 

「ナパーム!?」

 

 焼夷弾が一帯を焼き尽くす!

 

「ドアーン!」

 

 ロランの、そして子供たちの悲痛な叫び。

 しかし、

 

「ザクの装甲は超硬スチール合金製で、熱には弱いわ」

 

 ミヤビは語る。

 仮に破壊されなくとも、鋼は熱を受けると焼きなまされ、劣化する。

 火災を起こした戦闘車両が再生不能になるのはそのせいだ。

 

「増してやザクは装甲がフレームを兼ねるモノコック構造、残念だけどドアンはもう……」

 

 しかしその時だ、

 

『はああああ…… せいっ!!』

 

 気合一閃、炎を割ってドアンのザクが現れる。

 

 金色に輝くその姿が!

 

 息を飲むアムロ。

 

「明鏡止水……」

『アムロ?』

「曇りの無い鏡のごとく、静かにたたえた水のごとき心。わだかまりややましさのない澄んだ心。それが明鏡止水」

 

 昨晩、月光の下でミヤビが語ったあの言葉。

 

「それが人に己を超えた力を持たせることができる……」

 

 アムロは今、まさにそれを目撃していた!

 

 

 

(いやいやいやいや、何で明鏡止水のハイパーモード? ナンデ?)

 

 無論、昨晩寝ぼけてアムロたちの前で明鏡止水について語ったことなど記憶にないミヤビは呆然とする。

 眠らないと駄目な彼女は夜に弱いのだ。

 

(そりゃあ『SDガンダム Gジェネレーションアドバンス』だとククルス・ドアンがドモン・カッシュの激励で明鏡止水に目覚めて、乗機のザクが金色に輝くハイパーモードになったけれども!)

 

 ここは宇宙世紀、アニメ『機動戦士ガンダム』の世界なのだ。

 今にも『機動武闘伝Gガンダム』のBGM『我が心 明鏡止水~されどこの掌は烈火の如く~』が聞こえてきそうな展開だが、番組が違う!

 

 そんなミヤビは置いてきぼりで、敵のザクへと徒手空拳のまま駆けだすドアンのザク!

 

『教えてやる、少年たち』

 

 ザクを操りつつドアンはアムロたちに向かって語る。

 

『子供たちの親を殺したのは、この俺さ』

「えっ?」

『俺の撃った流れ弾のためにな』

 

 それを告げるドアンの声は、重かった。

 

『ジオンは子供達まで殺すように命じた。だが、俺にはできなかった。俺は子供達を連れて逃げた。俺の命に代えてもこの子供達を殺させはしない』

「ドアン」

『俺は…… 俺は…… 俺は、子供達を殺させはしない!』

 

 ザクの砲撃を受けながらも、それをものともせずに突き進むドアンのザクの姿に、

 

「いけーっ!」

 

 子供たちが。

 

「ドアン!」

 

 ロランが。

 

「とどめを」

 

 アムロが。

 

「「「「撃て!!」」」」

 

 皆の声が唱和する!

 

 ドアンの気迫に怯む相手のザクは再びルッグンに援護を依頼。

 

「邪魔するな!」

 

 アムロは頭部60ミリバルカンを連射。

 爆撃のため高度を落としていたルッグンを撃ち落とす、が……

 

「ドアンっ!!」

 

 ルッグンは墜落寸前に再びナパーム弾を落とすことに成功する!

 再び巨大な炎が立ち上がる!

 だが!!

 

「ドアンの拳がナパームの火柱を突き破って行く!?」

 

 驚きに目を見張るミヤビ。

 

『勝負あったね』

 

 サラツーはそう見切り、

 

「光り輝く…… 神の拳?」

 

 アムロは畏怖交じりにつぶやく。

 

『はぁぁぁっ!!』

 

 モビルスーツの格闘に習熟した、ドアンにしか繰り出せないパンチがザクに命中する!

 その一撃で相手のザクのジェネレーターは機能停止した。

 

「そんな、ありえないわ! 機体の性能を遥かに超えるなんて!」

 

 驚愕するミヤビに、アムロは答えるようにつぶやく。

 

「これが武闘家の魂っていうやつなのか……」

 

 よろめき、倒れ伏す敵のザク。

 こうして戦いは終わった。

 

「……本気?」

 

 やっぱりミヤビには付いていけない。

 

 

 

「ドアン、かっこよかったよ」

「やっぱり僕たちのドアンだ」

 

 興奮する子供たちをなだめ、ザクから降りたドアンはアムロたちに語る。

 

「やつらは私が生きている限り追撃の手を緩めないだろう。私がいる限り、この子供たちにも危険がつきまとう。困ったものだ」

 

 だが、アムロは首を振る。

 

「違います、あなたが居るからじゃありません」

「え?」

「あなたの躰に染みついた硝煙の臭いに惹かれて、危険な奴らが集まってくる…… そう、あなたの躰に染み付いている、むせるような戦いの炎の匂いが、追跡者を引きつけるんじゃないんでしょうか?」

「戦いの匂い?」

「ええ、それを消させてください、ククルス・ドアン」

 

 そしてアムロはガンキャノンLに乗ると、金色に染まったザクを海へと投げ捨てた!

 

「ああっ」

 

 悲鳴を上げる子供たち。

 

「なんでなんで?」

「なにするのよ、ひどいわよ」

「なにするんだ、ひどいやひどいや」

 

 沈んでいく、ザク。

 

「ああっ」

「ドアン……」

 

 ロランは心配そうにドアンを見上げるが、彼は穏やかにその光景を見つめるだけだった。

 

「あいつ、やっつけちゃえ!」

 

 そう憤慨する子供たちをドアンは抑える。

 

「こら、やめなさい。あのお兄ちゃんを怒っちゃいけない」

「どうしてさ?」

「ドアンのを沈めちゃったのよ」

 

 ドアンは首を振って、

 

「あのお兄ちゃんのやったことはとてもいいことなんだよ」

 

 そう告げる。

 そして、

 

「ロラン、なかなかいい少年じゃないか。そう思わないか?」

 

 ロランにも言う。

 

「え、ええ」

 

 ロランはうなずく。

 ドアンがここまで晴れ晴れとした顔をしたことは無かった。

 だからこれは正しいことなのだと。

 

「そうね……」

 

 今は分からないことばかりだけど。

 自分が信じたドアンを、そして彼の信じる道を進むだけ。

 そう、納得するのだった。

 

 

 

 一方ミヤビは一人、

 

「百式の、あの金色のビームコーティング技術の原型なんでしょうねぇ……」

 

 そうつぶやくことで、何とか自分を納得させる。

 ミヤビの前世の記憶の中ではモビルスーツ百式の金色の外装はビーム・コーティングとしての効果を持つエマルジョン塗装の一種であり、資源衛星で偶然発見された特殊材料を調合し生成された皮膜剤を用いているとされていた。

 この派手な金色のビーム・コーティングに関しては、M・ナガノ博士の強い要望によるものだという。

 

 そして百式はアナハイムに吸収されたジオン系技術者の手によるもの。

 つまり百式のビーム・コーティングの元となる技術も、ジオンに存在していた可能性がある。

 

 ククルス・ドアンはマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島』において、ジオン公国軍開発訓練Y-02小隊に所属していたとされる。

 この世界はオリジン準拠ではないが、似たような境遇にあった可能性があり、彼のザクも実験機なのだろう。

 

 ナパームの高温に彼のザクが耐えたのは、隠蔽用のジオングリーンの塗装の下に隠されていた金色のコーティング。

 おそらく百式のビーム・コーティングの元となる技術による耐熱性向上がもたらしたものなのだ。

 

 つまり明鏡止水のハイパーモードなんかじゃなかったんだよ!

 

 そういうことだった。

 

 どうしてアムロが明鏡止水などと口にしたのか、という疑問もあるはずだが、疲れ果てていたミヤビはこの世界に飛ばされて覚えた、疑問を丸ごとうっちゃるという技を使って、それを心の中のゴミ箱に投げ捨てた。

 うまく入らなかったが、その内、脳内メイドさんが片づけてくれるだろう。

 ミヤビの実家、ヤシマ家には普通にメイドが働いていたりするし、サラも気分によってはメイド服を着てくれるし……

 サラの衣装データはヤシマ重工にサードパーティ登録することで誰でも作成・販売が可能で、ミヤビもその中から目についたものを購入しているのだ。

 

 なお、少女の人格を持つサラに悪影響を与えるようなえっちぃ衣装は、ヤシマ・チェックと呼ばれる判定で弾かれるので流通は許されない。

 ただし……

 

 信じられないほど繊細で上品でハイソサエティっぽいレースをあしらった服。

 ただ、レース部分は当然透けている。

 無論、危ない部分には使われていないから大丈夫で健全なはず、なのだが、シースルーで服の下の肌がチラチラと見えるのが何とも色っぽいと評判。

 

 とか、

 

 高級感あふれるシルクの下着……

 サラは下着姿を晒すことはないので何の意味も無いはずだが、通常服の下に穿いてくれるというだけで興奮する上級者なユーザーが多数発生。

 そんなユーザーたちの邪な感情とは裏腹に、純情なサラは見えないところにも関わらず気を使っておしゃれな下着をプレゼントしてくれる自分のマスターに感激しているとか。

 純粋無垢な感謝の視線を受け、罪悪感にのたうち回る者が続出……

 

 とか、

 

 定期的に新作が出る『マスター(童貞)を殺す服』シリーズ。

 

 などといったギリギリを攻める商品が後を絶たなかったり。

 

 さらに言うと、サラとの親密度を高めるとプライベートに限り、えっちな衣装を着てくれるという都市伝説的な噂が、まことしやかに流れてはいたが。

 

 

 

次回予告

 塩どころか食料不足にあえぐホワイトベースの前に立ちふさがる敵、不味いレーションとギャロップとグフ。

 シャアが「インドの山奥で修行をして」いると聞いたセイラは、真実を求めて命令違反を犯し出撃をする。

 止めるミヤビを腹パンで黙らせて……

「時代劇じゃないんだから当身で気を失うとか無いから」

 次回『セイラやっぱり出撃』

 君は、ミヤビの涙を見る。




 お待たせしました、お約束の『機動武闘伝Gガンキャノン』回でした。
 ドアンザクと言えば、このネタは外せませんよね。
 とはいえ、そのままではアレなので少しばかり工夫はしましたが。
 バカげた展開を大真面目に理屈付けして行うのがこのお話なので。
 次回予告も相変わらず荒ぶっていますが、この方向性に変わりはありません。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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