ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第17話 サラツー脱走 Bパート

「素人どもめ。碌な身体検査もしないで」

 

 コズンは独房内で笑うと奥歯の義歯から超小型爆弾を、そしてトランクスの紐から起爆コードを取り出そうとするが、

 

「今日もお話を聞かせてもら……」

 

 そこにミライが銃を構えたリュウとハヤトを従え、尋問を行う部屋に移動させるために入ってくる。

 その眼の前には、ずり下げられたズボンにパンツ1枚で何やらやらかそうとしている男の姿があった。

 

「っ!?」

 

 ミライは真っ赤になって顔をそらす。

 そして正義の怒りをぶつけるハヤト!

 

「セイラさんに手を出しただけでは飽き足らず、ミライさんにまでセクハラを!」

「なっ、ちが……」

「今日の尋問、覚悟しておけよ!」

 

 一同から変態の烙印を押されてしまうコズン。

 

「ふ、二人とも、この人を取り調べ室まで連行してちょうだい」

「了解」

 

 あまりのことに動転したミライは二人に捕虜の扱いを任せると、耳まで赤くなった顔を見られたくなかったのか慌ててその場を走り去る。

 

 

 

「下手なことはしないでくれよ。セイラさん…… 女性パイロットに手を上げたってことで、ただでさえ評判が悪いんだからな」

 

 リュウはコズンに対する警告、そしてまだ怒りに燃えるハヤトをなだめる目的でもそう口にする。

 

「俺はモビルスーツと戦っただけで……」

 

 そこに唐突に廊下に面したドアが開き、ミヤビが顔を出した。

 

「み、ミヤビさん!」

「ああ、リュウ?」

 

 慌てた様子のミヤビが、リュウの姿を認め安堵の息を漏らす。

 しかし、それよりも、

 

「どうしたんですミヤビさん。タオル一枚で廊下に顔を出すなんて」

 

 そう、ミヤビはバスタオルを身体に巻きつけただけの刺激的な恰好でドアを開けたのだ。

 

「アムロとの模擬戦でかいた汗をシャワーで流そうとしたら、蛇口が壊れてしまって」

 

 言われてみると部屋の中からは水音と湯気が立っていた。

 

「ミヤビさんなら直せるんじゃ?」

「そうね。でも技術屋としては屈辱的なことなんだけど、腕の力が純粋に足りなくて」

 

 前世から通して技術一本で食べているミヤビにとって、たかが蛇口の修理ぐらいお手のものなのだが、この手の修理ではずっと操作していなかった元栓が固着して動かない、故障したバルブのネジ山が渋くてクソ固い、などといった困難があり。

 十分な工具の準備なしには今の非力な女の腕ではどうにもならないのだ。

 ミヤビも機械いじりをすることから握力など女性としては力がある方なのだが、純粋な筋肉量では男性にはやはり負けるのだった。

 

「だからコズンさん、でしたっけ。直してくれます?」

「俺ぇっ?」

 

 ミヤビは驚くコズンに話を振った。

 偶然とはいえ捕虜と接触できたのだから顔をつなぎたいという意図もある。

 彼を密かにランバ・ラルへのメッセンジャーに使えないかと考えているのだ。

 

「ななな、何で俺が」

「リュウたちがやったら、誰が捕虜の監視をするのかって話になりますから」

「そ、そりゃそうだが……」

 

 そしてコズンは覚悟を決める。

 

「何で俺が……」

 

 ブツブツ言いながらも、カニ歩きで律儀にミヤビに背を向けたまま、バスルームに入る。

 

「元栓は?」

「そこのメンテナンスハッチの奥に」

「げっ、何でこんな位置に…… しかも固ぇっ!」

 

 ハッチの奥、床に這いつくばって手を伸ばさないといけないところに、小さなハンドルの元栓が付いている。

 無論、こんな姿勢ではろくに力が入れられないし、ハンドルが小さければさらに回すことが困難になる。

 これでバルブが固着した日にはバルブ開閉工具のウィルキーをよこせ、とエンジニアなら誰でも思うだろうが、この場合は狭くて入らないし、ハンドルがちっちゃくてかけられないし、仮にかけられたとして、軸をねじ切ってしまう恐れがある(ミヤビも前世でやった)

 

「っ、確かにこりゃ、女の力じゃ無理だ」

 

 そう言いつつもやはり鍛えた兵、それもランバ・ラル隊のたたき上げだ。

 コズンは何とか元栓を回し、壊れた蛇口からあふれていた水を止める。

 

「蛇口の取っ手は、どうしたんだ?」

「ああ、洗面器の中です」

「うん? おお、コレか」

 

 コズンは取っ手を蛇口に取り付け、絞めつける。

 そうして一回操作したことで動くようになった元栓を開けてみて、水漏れの無いことを確認。

 

「助かりました。もう完全ですか?」

「いや、後でちゃんと確認した方がいいだろう」

 

 そしてコズンはようやく自分のペースを取り戻すとわざといやらしい顔を作って見せて、

 

「見物料としちゃ安すぎかもしれんが俺にできるのはここまで……」

 

 そう言いながら足早にその場を離れようとするが、

 

「リュウ、ハヤト、捕虜の移送はどうし……」

 

 気持ちを立て直し、リュウたちを探しに来たミライがバスルームに顔を出し、そして絶句した。

 

「なっ……」

 

 ほっそりとした、しかしネコ科の動物を思わせる魅惑的な柔らかさを示す肢体をバスタオル一枚で隠しているミヤビ。

 蛇口の修理のため、びしょ濡れになっているコズン。

 

「そう、律儀に南極条約に則った扱いをしてあげようとした私たちがバカだったってことね。私にセクハラしただけでなく、姉さんにまで手を出そうとするなんて……」

「いいっ!?」

 

 何やら誤解して怒り心頭に発している様子のミライに、コズンの顔が真っ青になる。

 

「ま、待て、誤解だ!」

「この状況で? アニメやマンガじゃあるまいし、そう何度もエッチなシチュエーションが起こるものですか!」

「そ、それはそうだが……」

 

 ミライの怒りを受け、後ずさるコズン。

 そして、

 

「み、ミライ?」

 

 例によって自分が女性であるという自覚に薄く、この状況がミライから見てどのように取られたのか分かっていないミヤビ。

 妹のあまりの剣幕にビビって声をかけるが、

 

「もう大丈夫よ、姉さん。悪い虫は処理するから」

「わ、悪い虫って」

「大丈夫、熱々のおでんをごちそうしてあげるだけだから」

 

 熱々のおでんを冷まさず無理やり食べさせるって、それは拷問だろう、と猫舌のミヤビは思う。

 

「熱々おでんは捕虜の虐待を禁止した南極条約に……」

「あら、私ったら」

 

 うっかりしていたわ、というようにミライは朗らかに笑って見せ、

 

「関東炊きなら南極条約には引っかからないわよね」

「ひぅっ!?」

 

 ダークサイドに堕ちたような悪い顔をするミライに固まるミヤビ。

 なお、関東炊きとは関西におけるおでんのこと。

 何も変わらないじゃないか、という意見もあるだろうが、実際には関東炊きには関西風のダシの効いた薄口醤油を使った透き通るような汁が使われるので厳密に言えば別物である。

 いや、それ以前に、

 

(捕虜に熱々おでんで拷問って『トニーたけざきのガンダム漫画』のネタじゃないの。どうしてミライが……)

 

 ということだが、話は簡単。

 例によって寝ぼけたミヤビがベラベラとしゃべったのをミライが聞いて覚えていただけである。

 しかしもちろん、それを知らないミヤビは、

 

(ここってもしかして『トニーたけざきのガンダム漫画』の世界なの!?)

 

 と思い悩むことになるのだった。

 

 

 

 一方、ランバ・ラル隊は失ったザクの補充を受けていた。

 

「このザクとてかなり使い込んであるやつだ。クランプ、大丈夫なのか?」

 

 ボード上の書類に記載された累積稼働時間を前に渋面を作るラル。

 それに対し副官のクランプは、

 

「はい。オーバーホールの状態はいいようです。関節部分は新しいのに替えてありますし」

 

 と答える。

 地球上ではモビルスーツはその自重を支え、動くための関節、特に脚部のものが消耗しやすいが、この機体はその辺がしっかりと整備されていた。

 古い機体とはいえ、きちんと手が入っているところはキシリアの命を受けて動くマ・クベの地上部隊の組織の充実具合を思い知らせてくれる。

 

「うむ」

 

 ラルは納入されるザクと、それを運んできた大型輸送機を見上げると、納得した様子で、

 

「ファットアンクルは帰還していい」

 

 と命じる。

 敬礼を返す輸送部隊の責任者に、

 

「ご苦労」

 

 とクランプも声をかけた。

 

「その後の木馬の動きはどうなっている?」

 

 次に向け動き出すラルを、しかしハモンが止める。

 

「あなた」

「ん?」

 

 ハモンは改めてラルに聞く。

 

「今後の作戦、どういうおつもりで受けたのです?」

 

 ラルは表情を崩さず、声を荒げたりせずに、

 

「不服なのか?」

 

 と反対に聞く。

 

「いえ」

 

 瞳を伏せるハモンに、ラルは語る。

 

「お前の言うとおり、今度の作戦はザビ家の個人的な恨みから出てはいる」

 

 つまり軍事的にはあまり意味は無いのだ。

 

「しかしだ。この戦いでガルマさまを負傷させ退けた木馬を沈めてみろ、わしは二階級特進だ。わしの出世は部下たちの生活の安定につながる」

「兵たちのため?」

 

 ラルは、そして彼の部隊はゲリラ屋を自称するように不正規戦に強さを発揮する。

 それはそれで軍には必要な能力ではあるし、上の人間、ドズルからすると使いやすく貴重な人材ではあるのだが、正統派の軍人からは偏見を持って見られるところがある。

 また決別したとはいえラルの父が狂信的な旧ダイクン派だったということもあった。

 ラル自身はそんな色眼鏡で見られることを跳ねのけられるような剛直な軍人だが、部下たちはそこまで強くは無いし、またラルに対してものを言えない分、部下たちに当たる連中も居る。

 だからこそラルは部下たちのためにも出世したいと考えるわけだ。

 そして、

 

「お前のためでもある。ザビ家により近い生活ができる」

 

 そういう面もある。

 女のために稼ぐ。

 古風(クラシック)な、しかし彼らしいシンプルで男らしい価値観だ。

 命を懸けて戦う男にはそういう原初的な動機付け、雄としての己を突き動かす何かが必要なのかもしれない。

 

「………」

 

 無論、ハモンは自分のことなどよりラルの無事の方が大事と思っている。

 しかし愛する男の気持ちを無にすることもまた彼女にはできない。

 

「まあ見ていろ」

 

 そう言って歩き出すラルの背に、

 

「信じております」

 

 ハモンはそう伝えるのだった。

 

 

 

「当分出られると思わないでちょうだい」

 

 どんな尋問を受けたのか……

 唇を真っ赤にして独房に戻るコズン。

 

「うう、ダメだ。こ、このままだと殺されてしまう。逃げなくてはダメだ、逃げなくてはダメだ……」

 

 そう、逃げなくてはダメだ。

 幸い小型爆弾と着火コードは見つかっていない。

 ドアのロックにそれを取り付けコズンは鍵を破壊、独房を出る。

 

 

 

『それでは本日のディスカッションです。司会、進行はこの私、サラがお送りします』

 

 ブリッジでは一日一回、30分に区切ってフリースタイルの討議を行う。

 参加者は、主張したいことがある人物と、聞きたい人物と、聞いてもらいたいと指定された人物。

 またブリッジに居なくても艦内通信で聞けるし、発言もできる。

 

 発案者はミヤビで、記録はサラが担当し、その場で要約された議事録が承認され、回覧されるシステムになっている。

 これは行き違いからギスギスしたりトラブったり、誰かが先走って酷いことになる前に話し合いましょう、という趣旨のもの。

 史実のホワイトベースを知るミヤビが事前にトラブルの芽を摘むために行っているものである。

 今日の題目は、パイロットの運用について。

 

『セイラさんが動けない現在、どのようにパイロットを回すかですけど……』

 

 前回の戦闘ではガンタンクの操縦をアムロ、砲手をカイが務めたわけだが、これだとガンキャノンをどうするかという問題が出る。

 しかし、

 

「ジョブだっていいし、オムルだってシミュレーションはやらせてある」

 

 ブライトの主張。

 

「リュウにガンキャノンを任せても良いだろう」

「そんな!」

 

 アムロは思わず反発するが、

 

「なんだアムロ。敵によってはガンタンクの機動力と火力で十分に対抗できる、そう言ったのはお前だろう。なんでもかんでもガンキャノンで戦わせればいいってものじゃないと」

「それはそうですが、僕が言っているのは兵器の特性に合わせた用兵が必要だということと、ガンキャノンの稼働率が高過ぎて消耗が激しい、整備を間に合わせるのが大変だという話で」

「消耗についてはパイロットも同じだろう?」

「そうですが……」

「まぁまぁまぁ」

 

 そこでミヤビが割って入る。

 

「お互い言いたいこと、というか目指したいところは分かるけど、ちょっと熱くなり過ぎよ。コーヒーでも飲んで少しばかり私の話も聞いてちょうだい」

 

 そう言ってミヤビはホワイトボードに簡単な図を描きながら説明する。

 

「いい、アムロ、そしてみんなも。ブライトさんの求めるところは安定した戦力の確保なの。ベストなメンバーが今までのパイロット配置だというのは分かるんだけど、実際、セイラさんが一時離脱しただけで支障が出ているでしょう?」

「そ、それはそうですが……」

「アムロだって、風邪をひいたり体調を崩して寝込んだりするかもしれないでしょ。その場合、予備のパイロットが居ると居ないでは大きな違いが出るということは分かるわよね?」

「……つまり、あくまでも予備のパイロットを用意するということですか?」

「理想を言うと『機体ごとに専属パイロットが居て他は予備』じゃなくて『ローテーションを組めるようパイロットを育成、当直のメンバーから出撃ごとに機体を割り当てる』という運用なんだけど」

 

 というか、普通の軍隊ならそうだ。

 個々人に割り当てられた専用機動兵器というのは運用上、好ましくは無い。

 ミヤビの前世でも航空自衛隊の戦闘機パイロットは自分の機体など持っておらず『飛行のたびに機体が割り当てられる』という形で任務に就いていた。

 

 

 

「シャア専用ザクとか要らないんじゃあないか?」

「えっ」

 

 インドから帰って来たシャアはガルマにこんなことを言われ戸惑う。

 

「いきなり何を言い出すんだガルマ」

「まぁ聞いてくれ、君の乗るザクIIS型はエースパイロット向けに、従来のF型の生産ラインを使っての制限内ではあるが、極限まで性能を追求して造られた機体だ」

 

 推力の3割増を初めとする改良でエース専用機に仕上がっているもの。

 

「しかし、パイロット一人にモビルスーツを1機割り当てるのは無駄じゃないのか? 前線では機体の稼働率を上げるために整備員が大変な努力を行っている」

「うむ」

「そんな中で専用機とは…… 例えば君が非番の時は君の専用機は倉庫で遊んだままになる。これも実稼働率を下げるということにはならないだろうか」

「……理屈は分かるがS型はかなり尖った、ピーキーな機体に仕上がっている上、推力の増大に推進剤の増強が追いついておらず下手な人間が扱えば戦闘可能時間が短縮されかねない。一部の自動制御機器も外されマニュアルによるダイレクト制御となっているしな」

 

 自動制御機器の省略はエースパイロットにはソリッドな反応を返してくれるというので好評なのだが、一定以下の技量では扱いが難しいということでもある。

 一般兵には「ピーキーすぎてお前にゃ無理だよ!」という話だ。

 

「ああ、その辺は理解している。だからこそ私もF型にチューニングを施しただけのFS型をあえて選んでいたわけだしな」

 

 FS型と言えば、頭部に4門のバルカン砲が追加されているあの機体だ。

 

「何だ、君だって専用機を持っているじゃないか」

「ああ、これまでの私は自ら戦うことにこだわっていたからな」

「……今は?」

「あの機体は私の直衛部隊の隊長機とした。その役目を果たす者なら誰が乗っても良い」

 

 それはなかなかに思い切ったものである。

 

「本当は塗装も一般機と同じに塗り替えておこうかとも思ったが、士気高揚などの目的で式典等で出番があるかとそのままにしている」

 

 いや、シャアが思った以上の思い切りの良さだった。

 やはりこのガルマ、覚醒している。

 

「そして君の言う、生半可なパイロットではS型ザクを扱いきれないという問題。特に君に合わせチューニングを施したあの機体は扱いが難しいだろうし、君にしてみれば機体に他人が触れることで変なクセを付けてもらいたくないということもあるだろう」

「まぁ、そうだな」

「だがそんなものはソフトウェアで解決してしまえば良い。ソフトウェアでリミッターをかけ、通常のF型並みの性能に落としてやればいいんだ」

「なに?」

 

 ガルマは手元のタブレット端末を操作して、病室に持ち込まれた大型ディスプレイに資料を表示する。

 

「ミッションディスク方式だ」

「ミッションディスク?」

「あのドラケンE改について調べていて分かったのだがな」

 

 ガルマは語る。

 

「モビルスーツは服、スーツと名前が付いているように歩兵が服を着たかのように身にまとい操ることができるもの。だから人体と同じように人間が動きを把握し、操ることができるわけだ。これがモビルスーツという機動兵器が人型をしている理由の一つ」

「そうだな。そしてガルマ、服というのは身体に合わせたものでなくてはならない。一般の兵ならまぁ、機体の共用運用は仕方が無いが、一人で何人分もの働きをするエースに対しては、フリーサイズの既製服を与えるよりオーダーメイドで細部まで合わせたものを与えるのが一番だろう。それが戦果の最大化につながる」

 

 シャアは言うが、

 

「だから、それを両立させるのがミッションディスクというものなのだ」

「なに?」

「ドラケンE改で運用されているこれは、個人的なチューニング、設定を各パイロットに割り当てた大容量ストレージに保存するものだ。つまり、どの機体であってもそのディスクを持ち込み、読み込ませれば個人の専用機としてのセッティングが瞬時に反映される」

 

 つまり、

 

「これからのモビルスーツ開発戦略はこうだ。エースにしか満足に動かせないワンオフ機に近いものばかり作っていても先は無い。エースでも満足できる高い基礎性能を持った機体を供給し、個々の要望についてはソフトウェアのチューニングで対応する。エースならピーキーなセッティングで固めれば良いし、新人なら扱いやすいようデチューンしてやるのもありだろう。時にはパワーが出すぎていてもだめな時がある……」

「ふむ……」

「君のようなエースパイロットにもメリットのある話だろう?」

「そうか?」

「仮に君の機体が損傷したり故障したりしたとしよう。従来ならそれにより君の出撃に支障が出るな?」

「ああ」

「ところがこの方式なら、部隊の予備機でも、部下の機体でも、何であろうとも君がミッションディスクを入れさえすれば、その機体は即座に君専用の機体として立ち上がる」

「なるほど、継戦能力が高まるか」

「一回の戦闘で複数の機体を乗り継いで戦い続けたエースなども生まれるかも知れないぞ」

「ふふ、それは民衆が好みそうなドラマチックなシチュエーションだな。さしずめ『鉄壁』か」

 

 ミヤビが聞いたら、

 

「ナイトハルト・ミュラーか!」

 

 と、小説『銀河英雄伝説』登場の軍人、乗艦を3度撃沈されながらもそのたびに乗り換えた艦を旗艦とし不退転の意志で指揮を執り続けた事から『鉄壁ミュラー』の異名で呼ばれた男を思い出しただろう。

 

 一方、笑うシャアだったが、ガルマはその仮面の下の表情を見通すように聞く。

 

「理屈では分かっても、心情的には納得できないかい?」

「私だけではないだろう。見方を変えればエースから専用機を取り上げる、と言っているようなものだぞ。士気にも関わるし、上手く行かなければ「今までうまくいっていたものを上が現場に口出しして滅茶苦茶にした」と叩かれかねんぞ」

「……まあそうだな」

 

 ガルマは肩をすくめながらも同意する。

 

「そもそもこの話は『エースでも満足できる機体』を用意しないことには成立しない。だから今すぐどうこうというわけではなく、将来的な話であり、いわば理想であり目標だな」

「それを聞いて安心したよ」

 

 と、苦笑するシャア。

 

「しかしミッションディスクは先行して導入させる。専用機を持たない一般パイロットにも疑似的に専用機が与えられるようなものだからな」

「ふむ、確かにな」

 

 こうしてジオンのモビルスーツにもミッションディスク方式が導入されることが決まった。

 従来生産されてきた古い機体にも改修キットを用意しレトロフィットにより対応させる予定である。

 これに伴ってサポートAIであるサラも一緒に採用されてしまう可能性もある。

『ガンダムビルドダイバーズ』第17話で登場した色違い、黒を基調にしたカラーリングのミラーミッションVerのサラ、瞳からハイライトの消えた通称『黒サラ』などがジオンのモビルスーツに搭載され、サラシリーズを載せた連邦軍の機体と戦う……

 そんな未来もあるのかも知れなかった。




 暗黒面に堕ちるミライ。
 私は猫舌なので熱々おでんは恐怖です。
 そして専用機運用について、ホワイトベースとジオンサイド、ガルマとシャアのモビルスーツ対談でした。
 果たしてジオンモビルスーツに黒サラは採用となるのか……
 いやそれ以前にドラケン以外の連邦軍の量産型モビルスーツにサラが採用されるかどうかもまだ確定じゃありませんしね。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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