ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第18話 黒いガンキャノン Aパート

 月にあるジオン公国の前進基地グラナダから戦艦グワジンが発進した。

 ザビ家の長女、すなわちジオン軍宇宙攻撃軍総司令キシリア・ザビ少将の旗艦である。

 キシリアは地球連邦軍にとってもジオン軍にとっても最も重要である資源の採掘にあたっているマ・クベの下を訪れようとしていた。

 戦いはホワイトベースと関係なく進んでいた。

 

 

 

「うう、西に向かえば鉱山基地があったはず」

 

 爆薬でエアロックごと吹き飛ばされたコズンだったが、奇跡的にパーソナルジェットが機能し打ち身以外は特に大きな怪我をする事無く脱走に成功していた。

 味方の基地に向け、河を渡って木立を抜けて歩き続けるコズン。

 

 

 

 アムロがガンキャノンと共に脱走するという事態に、ホワイトベースは前進を停止し、その場での待機を余儀なくされていた。

 実際にはアムロはサラツーに無理やり拉致られているのだが、彼らはそれを知らない。

 

「もしアムロが帰ってきたらどうするんです?」

 

 不安そうにたずねるフラウに、カイが軽薄な調子で答える。

 

「そりゃお前、脱走者は死刑に決まってらあな」

 

 フラウは信じられないとばかりに目を見張る。

 

「嘘、嘘でしょ」

 

 ブライトは、

 

「軍規ではそうなっているがな」

 

 と言うが、その表情は半ば苦笑気味。

「なっているがな」と口にしている時点で画一的に適応する気は無いと言っているも同然だったりする。

 そもそもカイの偽悪的な態度だって自分たちに危険を呼び込むアムロの勝手な行動に怒っている面もあるが、一方で自分が過激なことを言うことで他の人間がアムロのことを庇えるようにするためのもの。

 あえて悪役、憎まれ役を買って出ているのだが、しかし余裕を失っているフラウにはそんなことは分からない。

 

「今日まで一緒に戦ってきた仲間をどうしてそんなことができるの?」

 

 と詰め寄る。

 カイもブライトも自ら望んだこととはいえ損な役回りだった。

 

「必要ならばそうするってことよ」

 

 セイラがそう言ったのは、パートナーであるカイの気持ちを解さないフラウに苛立ってか。

 しかし分かっていないフラウにその言葉は過激すぎて、

 

「およしなさい、セイラ」

 

 ミライが押しとどめる。

 そしてフラウに向き直って、

 

「ね、フラウ・ボゥ」

 

 と声を和らげ語りかけるが、フラウは拒絶するように、

 

「アムロが出て行った訳がわかったわ。こんな所に呼び戻すもんですか」

 

 と叫ぶ。

 そんな彼女をなだめようとするのはやはり気配りの人、リュウ。

 

「まあ、まあまあフラウ・ボゥ、落ち着けよ。俺達は正規軍じゃないんだからそんなことはしやしないよ」

 

 しかしセイラが冷や水を浴びせかける。

 

「でもリュウ、このままアムロのわがままを通させる訳にはいかないわ」

 

 リュウは、

 

「……そ、そりゃあ勝手な行動をしたんだから」

 

 と口ごもる。

 確かに無罪放免とは行かないからだ。

 だからミライもフラウに言う。

 

「フラウ・ボゥだってそう思うでしょ?」

「それはわかりますけど……」

 

 そして黙っているミヤビはというと……

 

(これ絶対まずいわよ……)

 

 変わらない表情の下、内心頭を抱えていた。

 

 ミヤビは頑張った。

 アムロの作成していた戦闘シミュレーションの問題点もちゃんと体験として教えたし。

 ブライトとの行き違いで命令違反を犯さないよう、話し合いの場も設けた。

 しかし気付いたら何故か戦いの展開は変わっておらず、帳尻合わせで自分がグフと戦わなければならない始末。

 挙句、史実どおりアムロが脱走…… ということになっている。

 

(いや、絶対史実より悪くなってるでしょ)

 

 ミヤビはサラスリーから密かに隠れた真実を聞かされたのだ。

 ガンキャノンを降ろされる……

 いや、アムロと別れさせられると誤解したサラツーが、無理やりアムロを拉致って脱走したのだと。

 

(AIの反逆でしょ、これ。安全対策はどうなってるの!?)

 

 という話だが、実はサラツーに対する抑止力は大気圏突入後、ガルマとの最初の戦いの時にすでに外れていた。

 アムロのために、サラツーが教育型コンピュータの演算能力を使ってテム・レイ博士からの拘束を強引に突破したその時に。

 

 ぶっちゃけAIの反乱とも言えるのでかなりやばいのだが……

 マッドな研究者であるテム・レイ博士には、

 

「育てていた娘が反抗期を迎えた! めでたい!」

 

 ぐらいの認識でしかなく、そのまま放置されていたのだ。

 

 そういう経緯をミヤビは知らない。

 分かっているのは人間の脱走者が死刑であるというのなら、AIでしかないサラツーは確実に処分対象。

 凍結封印、最終的には消去されてしまう可能性だってあるということだった。

 だから、言えない。

 

 

 

「みんなに馬鹿な真似はさせないわよ。私が責任を持つから」

「俺も保証するって」

「行ってくれるわね?」

 

 ミライとリュウに頼まれ、フラウはアムロを呼び戻すべくバギーで出発する。

 変わらぬ表情の下、内心、頭を抱えてうんうん唸っているミヤビを置いて。

 なおフラウの、

 

「このままホワイトベースもガンキャノンも捨てて、アムロと二人っきりで逃避行っていうのもいいかも……」

 

 などという物騒な呟きを聞く者は居なかった……

 

 

 

 一方アムロは廃墟となった街にガンキャノンを隠し、サバイバルキットの中に入っていたガスストーブ、要するにアウトドア用の携帯式コンロで缶詰を直接温めて食事を取っていた。

 冷たい食べ物は消化に体力を浪費する。

 厳しい環境下にあった場合など、衰弱や低体温症から動けなくなり最悪死ということにもなりかねない。

 だから生き残るためにも温められるのならそれに越したことは無かった。

 砂漠地帯は昼夜の寒暖の差が猛烈で、夜はかなり冷え込むのだからなおさら。

 

 軍用のストーブというと昔アメリカ軍が使っていたGIストーブ、ガソリンストーブあたりが有名だが、連邦軍のものはガス式だった。

 ガソリンストーブは本来ホワイトガソリンを使うが、軍用品は赤ガスと呼ばれる車両用のレギュラーガソリンも使えるもの(と言ってもススが溜まるのでクリーニングが必要になるが)が採用されることが多い。

 そのため燃料切れを起こさないのが強み。

 一方、ガスストーブはガスカートリッジがどこでも手に入るとはいえず、またカートリッジにも色々あって互換性の問題が出るというものだが、何より操作が簡単だ。

 ガソリンストーブは熱で気化したガソリンを燃やすが、もちろん最初はその熱が無いのでプレヒートと言ってガソリンを少量出して火をつけあぶってやる、などという操作が必要で、知らない人間には事故でコンロが炎上している、火事だと間違われるほど。

 ポンピングで内圧を高めプレヒート不要としたものもあるが、それでも温まるまでは生ガス、気化しないガソリンが出て真っ赤な炎が上がったりするし、まぁガスのように一発着火とはいかないものだった。

 

 アムロはガスストーブに缶切りでふたを開けた缶詰を載せ、ふたの部分を取っ手にして食べている。

 ミヤビの前世、旧21世紀の日本ではパッ缶ばかりになって缶切りはほぼ不要となっていたが、スイス軍、ドイツ軍の新型アーミーナイフでも缶切りが消えなかったように、外国、特に軍隊ではまだまだ現役だった。

 軍隊が備蓄している食料の場合、パッ缶は空中投下などの衝撃で破損する恐れがあるため避けられるということもあったし。

 

「……っ」

 

 無言で傍らに置いていた地球連邦軍制式拳銃、M71に手を伸ばすアムロ。

 

 

 

 廃墟となった街で真新しい空き缶を見つけ、

 

「ペロ…… これは青酸カリ!!」

 

 とばかりに舐めてみて、それによりアムロの滞在を確信するフラウ。

 怖すぎる……

 

 まぁ、だから軍事行動ではごみの始末が必要なのだが。

 特殊部隊だと極力ごみを出さないようレーションの梱包まで外した上で、少なくしたゴミも残らず持ち帰るぐらいだった。

(場合によっては排尿もポリタンクに入れて持ち帰る)

 

 またストーカー対策にもゴミの始末は重要だったりするが、この場合はそちらの心配をした方が良いだろうか。

 

 そしてフラウは本当にストーカーのようにアムロの隠れている建物を突き止め押し入る。

 怯えたように銃を向けるアムロに、

 

「……ご、ごめんなさい、い、いきなり入ってきちゃって」

 

 そう謝るが、それが原因ではないように思われる。

 これまでの行動からして……

 

 フラウはバッグを差し出し、

 

「これ着替えよ。アムロの部屋を見たら、下着も持ち出していなかったようだったから」

 

 鍵をかけてあるはずの男の部屋に勝手に入り、下着の枚数まで把握している女、フラウ。

 女性の機微に鈍いアムロだからこそ、その辺の異常に気づいてはいなかったが、フラウから滲み出る狂気を本能的に察知しているのか警戒を解かないアムロだった。

 

 

 

 カモフラージュにカバーのかけられたガンキャノンに歩み寄るアムロ。

 

「みんなが心配してるのはこっちだろ?」

 

 アムロも帰るよう説得しているのだが、サラツーは頑固に抵抗しているのだ。

 しかしフラウは首を振って、

 

「違うわよ。今帰れば許してくれるって」

 

 その視線はアムロに向けられていて、彼は戸惑う。

 

「許す? なんの話だい?」

 

 罪悪感など無いのだから当然だが、能天気に言っているように見えるアムロに、フラウは思わず、

 

「だってカイさんは敵前逃亡罪は死刑だって……」

 

 と言ってしまう。

 アムロは見る間に表情を険しく変え、

 

「それがみんなの本音かい。帰れ!」

 

 と叫ぶ。

 もちろん彼は自分が対象となっているのではなく、サラツーが処分されるという意味で捉えており、だからこそ怒ったのだ。

 

「ち、違うわ。ホワイトベースのみんなはアムロの力を必要としているのよ」

 

 というフラウの言葉も、自分、そしてガンキャノンさえ戻ればいい。

 サラツーなんか消去してしまえばいいと考えられていると捉える。

 

「また逃げる気?」

 

 ガンキャノンのコクピットに身を沈めるアムロにフラウは言い募る。

 

「本当はみんなに自分を認めてもらうだけの自信がないんでしょ? だから帰れないのね」

 

 微妙に意味の通じないフラウの言葉だったがガンダム、というか富野監督のアニメでは話が通じない、すれ違うのは日常茶飯事なので、アムロはまたフラウがおかしなことを言っている、とスルーする。

 

 まぁ、現実もよく考えるとそんなもので、普通のアニメのように無駄なく会話がつながる方が実は不自然。

 だから富野アニメの会話はリアルなんだ、という主張もあったが……

 

「僕の気持ちがわかるもんか」

「アムロ!」

 

 アムロはコクピットハッチを閉じ、ガンキャノンを立ち上がらせる。

 

「アムロ……」

 

 バギーに戻りアムロを追うフラウ。

 ミヤビの知る史実とは状況がまったく異なっているはずなのに、お互いの認識がすれ違っているために史実と同様の会話を交わす二人。

 

「そういう意味で言ってるんじゃないから!」

 

 とツッコむことのできるミヤビはこの場には居なかった……




 アムロ、放浪編の始まり。
 缶詰を直接あぶったりと、サバイバルでワイルドな感じがいいですよね。
 そしてフラウがやっぱりやべーことに。
 ミヤビも頭を抱えてうんうん唸っている場合じゃないのですが、果たして復活するのはいつか。
 これもテム・レイ博士ってやつのせいなんだ……

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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