ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

70 / 93
第18話 黒いガンキャノン Cパート

「……何事です?」

「キシリア様、こちらへ」

 

 当然、フラウは発見され、芋づる式にガンキャノンも発見される。

 マ・クベは基地戦力をガンキャノンに向けつつも、

 

「アッザム、発進準備を急げ!」

 

 移動トーチカたるアッザムで視察を行っていたキシリア。

 彼女をアッザムで逃そうとするが、

 

「マ・クベ、アッザムの性能テストにはよい機会です。お前がやってみせよ」

「……キシリア様」

 

 キシリアの無茶振りに言葉を詰まらせる。

 

「直接連邦軍のモビルスーツを目にするのも、今後の作戦には役に立とう」

 

 と、自らもアッザムで出ようというキシリアに覚悟を決め、

 

「は、キシリア様。必ず」

 

 そう答えるのだった。

 

 

 

「うわあっ、ああっ。……こいつ!」

 

 先制を許してしまったガンキャノンは、基地の砲台や前進してきたマゼラアタック部隊の物量戦に苦戦する。

 

「このっ、このっ!!」

 

 ビームライフル、そして両肩の240ミリ低反動キャノン砲を駆使して倒していくが、マゼラアタックは車体を撃破されると飛行砲塔、マゼラ・トップを切り離し、砲撃を加えながら後方へ逃走。

 マゼラ・トップを撃墜しても脱出装置が作動し、乗員はシートごとコクピットから射出されパラシュートで脱出していた。

 高度0速度0の状態からでもパラシュートが十分開く高度までパイロットを打ち上げる「ゼロ・ゼロ射出」が可能な射出座席だった。

 

 

 

「マゼラアタックの運用変更に関する通達? ガルマ、なんだこれは」

 

 自分の不在時にガルマが行っていた業務を確認していたシャアは、ようやく軍病院のベッドから解放されたガルマにたずねる。

 左足のギブスも外すことができたガルマは、杖の補助を使えば自力で歩けるほどにまで回復していた。

 

 なお使っているのは大仰な松葉杖ではなくロフストランドクラッチ。

 つまり通常の杖に、腕を通して固定するサポート機構が備えられているもの。

 ミヤビの前世、西暦の時代でも欧米の医療機関で主流になっていたものだ。

 

 そしてガルマはうなずくと、こう答える。

 

「ああ、それか。入院中、時間ができたので、かねてからの疑問にメスを入れてみたのだ」

「かねてからの疑問?」

「うむ。マゼラアタックを見て、この兵器はおかしい。開発者は何を考えて作ったのかと思ったことは無いかい?」

「……それは今さらだろう?」

 

 マゼラアタックは変てこな戦車だ。

 形も、その運用方法も。

 

「マゼラ・トップとマゼラ・ベースから構成され、マゼラ・トップのみを分離して飛行させる事が可能。マゼラ・トップは上面装甲の薄い地上戦力を上空から攻撃できるほか、着弾観測機的な役割も果たす」

 

 それだけを聞くと大変優れた兵器に思えるが、

 

「しかし飛行時の命中精度は極端に低下し、主砲の有効射程…… この場合は戦車大の目標を狙って命中させることができる距離、になるが600メートルほどとも言われる。また、飛行時間は5分と短く戦闘中の再合体は不可能。つまり大仰なスペックを謳っているが、実際には制限がありすぎてそのとおりには運用が難しいという典型だ」

 

 シャアの言葉には、ガルマもうなずく。

 

「この難しいというのがポイントだな。例えばマゼラ・トップの再合体だが、スペック上はできることになっている」

「なに?」

「もっともやるには操縦者の熟練を要するし、そもそも戦闘中ではマゼラ・ベースを安定させるのも難しいだろう。テストパイロットが試験において一定速度を走行中のマゼラ・ベースとの合体に成功した、という限られた条件での成功例をもって可能と謳っているだけだ。そして初期の戦車隊で「スペック上できるのだからできるはず」と猛訓練の果てに職人芸的神業で可能としてしまったことも話を複雑にする」

 

 どこにも職人気質のバカ(誉め言葉)は居るものである……

 

「当然、兵員の消耗で練度の落ちた…… というかできるほうが異常なのだが、現在の戦車部隊では無理で、普通は後方で専用の設備を使って再接続させる」

 

 ミヤビの前世の記憶にある書籍資料類の中でも、マゼラ・トップの再合体はできるという説とできない、専用の設備が無いと無理という説があった。

 マゼラアタックの資料は少ないため、Wikipediaあたりの記載も「できない」とされたり、その記述が削除されたりと一進一退の編集攻防が繰り広げられていたが。

 

「そこで私は何を思ってこんな仕様にしたのか、実際に開発に携わった技術者に聞き取り調査を行った。すると意外な事実が浮かび上がったのだ」

「ほう?」

「まぁ当時のことに関しては、不明瞭な部分もあり足ない部分は推測も混じるが、大まかのところは間違っていないだろう」

 

 そう前置きをしてガルマは語る。

 

「元々マゼラアタックは、高価で数をそろえることが難しいモビルスーツを補うための陸戦兵器だ。30倍以上の国力を持つ地球連邦に対し、圧倒的寡兵で重力戦線を戦い抜くには従来兵器に無い発想が必要だ」

「それが飛行攻撃能力の付与か?」

「実は…… それは開発決定の裁可を受けるために付け加えられたセールストークに過ぎなかったとしたらどう思う?」

「何だと?」

「開発スタッフはこう考えたのだ。地球連邦軍の主力戦車61式に対し撃墜対被撃墜比率、キルレシオを上げるのは当然だが、一番優先されるのは人的資源の保護だ。そもそもモビルスーツの不足を補うのに二名以上の定員が必要な戦車を使うのは不合理だ。ゆえに1名でコントロールできる仕様とし、その1名も分離飛行、自衛も可能な脱出ポッドで保護する。そしてこのコンセプトを通すために、脱出ポッドは状況次第で空中からの立体的な攻撃にも使える、着弾観測機的な用途にも使えますよ、としたのだ」

 

 つまり人的資源の保護が主目的で、分離飛行攻撃能力はあくまでもおまけでありメインでは無かったのだ。

 

「だがこのおまけのコンセプトが開発陣の予想を超えて上に受け、独り歩きするようになった。そのせいで本来不要だったマゼラ・ベース側にもコクピットを設け、分離行動を可能とする、などといった本末転倒な仕様を盛り込む羽目に陥る」

 

 ミヤビの前世で有名だった『顧客が本当に必要だったもの』で知られる風刺画みたいなもので、新しいものを作る場合はこの手の混乱、迷走は大小あれ、つきものではあったが。

 

「まぁ、現場では人員不足で多くが1名でコントロールされる運用が成されたがね」

 

 ミヤビの前世の記憶でも、マゼラアタックの乗員は2名であるとする資料もある一方、1名であるという資料も存在するのは、このあたりの経緯が影響しているのだろう。

 映像作品でもマゼラ・トップ側の乗員しか描かれておらず、マゼラベース側のコクピットの描写があるのは独自アレンジの多い近藤和久氏のマンガ『機動戦士ガンダム オペレーション:トロイ』など少数だった。

 

 なお、グラスルーフ式のコクピットの耐弾性に不安を抱いたのか、マゼラ・トップ側のコクピットにカメラセンサーを取り付け、マゼラ・ベース側のコクピットで操縦を行うという仕様に改造された車体もあったというから、完全に無駄とも言えないらしい。

 

「だから私はマゼラ・トップによる無理、無駄のある攻撃を控え、あくまでも本来の設計どおり、脱出ポッドとして活用するように通達を出したのだ」

「なるほど……」

 

 ルウム戦役を終えた時点ですでにレビルに「ジオンに兵無し」と言われたほどに人的資源は枯渇、払底してきている。

 圧倒的寡兵で連邦と戦わなければならないジオンには、ガルマの指示はかなり有効だろう。

 

「そもそも戦闘が優位なら、戦場に残されたマゼラ・ベースは後から回収できる。不利でもマゼラ・トップが回収できれば色々と使い道がある」

 

 マゼラ・トップをカーゴやモビルスーツトレーラー、サムソンの荷台に載せ移動砲座とするなど、ミヤビの前世の記憶にも色々と活用法が見られたものだった。

 そしてガルマはモニターにマゼラアタックのZIM/M.T-K175C、175ミリ無反動砲をモビルスーツの手持ち武器として使えるよう小改修をしたものを映し出す。

 

「これは?」

「以前から現地改修で使われていたものだな。あの連邦軍のモビルスーツにザクのマシンガンが効かない以上、それよりさらに高火力の武器が必要だからな」

「ふむ」

 

 これから放たれる装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS、作中ではペネトレーター弾と呼称)は『機動戦士ガンダム第08MS小隊』にてルナ・チタニウム製の装甲を持つ陸戦型ガンダムの脚部を正面から破壊。

 また『機動戦士ガンダム』第21話では成形炸薬弾(HEAT弾:High-Explosive Anti-Tank)と思わしき弾薬でガンダムの背に装着されたシールドを一撃で破壊し、その下のランドセルにまで損傷を負わせている。

 ガンキャノンはより強固な装甲を持つが、それでも当たり所によってはまずいし、今後予定されるコストダウンされた量産機には有効な武器となるだろう。

 

「こちらについても正式に運用するよう通達には含めてある」

 

 やはりこのガルマ、覚醒している。

 

 それが覚醒の元となったミヤビの首を絞めることになるのだが、その事実を知る者は居なかった……

 

 

 

 マゼラアタック隊を退けたガンキャノン。

 

「なんだ、今までとは違う?」

 

 その戦い方に違和感を感じるアムロだったが、

 

『アムロ、ザクだよ!』

「なんだって!?」

 

 ミヤビのもたらしたバタフライ効果のせいか、この鉱山には史実とは異なり、ザク三機、一個小隊が隠して配備されていたのだ。

 さらに移動トーチカとも言えるアッザムが後方から姿を現す。

 しかし、

 

「ビームライフルのエネルギーがもう無い!?」

 

 

 

「フフ、今までのデータで確かめてある。マゼラアタックとの小競り合いでビームを使いすぎたのだよ」

 

 笑うマ・クベ。

 史実とは違いガルマが戦死していないため混乱は起こらず、ホワイトベースとの戦闘記録は軍内に余さず伝えられている上、マ・クベ自身、ガルマ負傷の直後にキャリフォルニアベースに足を運び、データを確かめている。

 その上、ガルマからのマゼラアタックの運用変更に関する通達を受け、人的資源を保護しつつガンキャノンを消耗させる、という手段を取ることができたのだ。

 

 

 

「うわああっ!?」

 

 ザク、そしてアッザムからの集中攻撃を受け、吹っ飛ぶガンキャノン。

 ビームライフルがエネルギー切れでも、まだ両肩の240ミリ低反動キャノン砲の弾が残っていたが、これを撃つためには足を止める必要があり多数から攻撃を受けている現在、反撃は難しい。

 ザクのうち一機はガルマの通達を受けて正式運用が開始されたマゼラトップ砲、ZIM/M.T-K175C、175ミリ無反動砲を装備しており、これに当たるのはまずいということもある。

 

(考えろ)

 

 アムロは敵の攻撃を必死に回避しながら思考する。

 

(考えろ、手段にとらわれるな)

 

 腰のラッチにあるのはヒートナイフのみ。

 ヒートホークがあれば、いくらかは楽になるのだが。

 

「ヒートホーク?」

 

 有利と見て迫ってくるザクを見てアムロはひらめく。

 今までの自分は何を悩んでいたのだろうと。

 

「武器は、向こうから歩いてやってくるっていうのに」

 

 そしてアムロは膝側面ラックに収納されていた投擲型榴弾、ハンドグレネードを投擲!

 ザクはとっさに散ることで爆発を避けた。

 だが回避した先にガンキャノンが突撃!

 その腕がザクの腰アーマー部にマウントされていたヒートホークを奪い去る。

 

「おおっ!」

 

 ヒートホークの刃が過熱によりプラズマ化する。

 ガンキャノンのマニピュレータには、テム・レイ博士の手でジオン規格の給電システムと兵装コントロール装置が組み込まれているのだ。

 ヒートホークの一撃がザクを斬り倒す!

 

『アムロ、左右からザクが!』

 

 サラツーからの警告。

 左側のザクがマゼラトップ砲を構え、撃ってくる。

 しかし、

 

「盾ならここにある!」

 

 アムロは倒したザクをガンキャノンの左腕一本で吊り上げ、砲撃を防ぐ。

 そして右側からヒートホークを抜いて突進してくるもう一体のザクには、

 

「サラツー!」

『うん、トマホゥゥゥク、ブゥゥゥメラン!!』

 

 サラツーのアシストを受けヒートホークを投げつけ、その頭部を粉砕する。

 ヒートホークはコロニー建設に用いられる作業用宇宙艇搭載の高周波誘導切断器の技術流用から作られた武器だが、その形状は日常工具や戦闘に使われた投擲も可能な片手斧、トマホークに由来する。

 アメリカ軍ではベトナム戦争で使われたベトナムトマホークを発展させたものを2000年代に入ってからタクティカル・トマホークとして採用、いざというときには投擲も可能なナイフより強い工具兼武器として使用していたという。

 ヒートホークはその流れをくむ軍用武器と言えよう。

 

「そして銃も!」

 

 アムロは空いたガンキャノンの右腕でザクからマシンガンを奪う。

 

『射撃管制装置(FCS)ドライバー認識』

 

 サラツーの報告。

 RX計画、そしてV作戦ではザクの研究も行われており、また連邦軍は実戦でも鹵獲ザク部隊を運用していることもあり、この辺のソフトウェアは解析されているのだ。

 プロテクトが施されても教育型コンピュータの演算力なら強引に突破が可能だし、それがだめでも射撃モードをマニュアルに切り替えれば射撃が可能だ。

 

「やれる!」

 

 フレンドリーファイアに動揺する左側のザクをハチの巣に。

 盾にしていたザクを捨て、最後の頭部を失ったザクも撃破!

 

『アムロ、上だよ!』

「なに!」

 

 サラツーの警告で上から接近するアッザムに気付くアムロ。

 砲撃を受けるが、しかしドムのジャイアントバズの直撃にすら耐えるガンキャノンの正面装甲はそれを弾いた。

 

 このガンキャノンは全身がルナチタニウムそのものなのだ!!

 

 しかしアッザムはそのまま直上まで移動、そして、

 

 

 

「ハハハ、上を取ったぞ」

 

 勝ち誇るマ・クベ。

 

「リーダー発射」

 

 アッザムの底部からカプセルが投下される。

 

 

 

「な、なんだ?」

 

 とっさに頭部バルカンで撃墜したガンキャノンにカプセルの中身の粉末が降りかかる。

 

「こ…… これは!?」

 

 

 

「電磁波を受けて超高熱を発するプラズマリーダーだ!」

 

 次いでガンキャノンの周囲に鳥籠状のワイヤーを展開するアッザム。

 

 

 

「そんなワイヤーの檻が役に立つものか!」

 

 ヒートナイフでも容易に排除できるはずのこれで一体何を……?

 一瞬の戸惑いがアムロの動きを遅らせた。

 

 

 

「そしてこの中に電磁波を流し込めばどうなるか! さらばだガンキャノン!!」

 

 ワイヤーから発せられた電磁波がガンキャノンの周りを包み込む!

 

 

 

「うわああああああ!!」

 

 電磁波の檻で作られた密閉空間! 

 その中でガンキャノンは高周波の加熱による灼熱地獄にさらされる!

 

 

 

「きさまは電子レンジに入れられたダイナマイトだ!! 電磁波の閉鎖空間の中で爆散するがいい!!」

 

 勝利を確信するマ・クベ。

 ガンキャノンの上半身には240ミリ低反動キャノン砲の弾薬がぎっしりと詰まっているのだ。

 これが熱により誘爆したらガンキャノンは爆発四散!

 跡形も無く吹き飛ぶことにもなりかねない。




 おや、マ・クベのようすが……

 ガルマとシャアの兵器談義『マゼラアタック編』。
 まぁ、ガルマも「不明瞭な部分もあり足ない部分は推測も混じる」と言っているとおり、彼から見た事実で。
 他の人間からはまた違った見方もできるでしょうけど。

 そして戦闘の開始ですが、テム・レイ博士の魔改造で敵の武器を奪いながら戦うスタイルが確立。
 アッシマーがガンダムMk-IIのビームサーベルを奪ったり、νガンダムがギラ・ドーガのビーム・マシンガンを奪ったりと本編でもあったことですが、それの発展形とも言えるでしょうか。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。