ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第21話 さよなら、リュウさん…… Bパート

 吹きすさぶ砂塵を抜けて出撃するザク、サムソン、そしてカーゴ。

 

「錐の戦法です。昔から伝えられております最高の突撃攻撃法であります」

 

 タチの立てた作戦は単純。

 

「第一波の攻撃を敵の最も弱いと思われる所に掛けます。ほかには一切目を向けずただ一点を抜く。我々の生還は不確実でありますが、間違いなく木馬を撃破する事ができます」

 

 カーゴに装着されたマゼラトップのコクピットで、ハモンはソドンの街で会った少年、アムロのことを思い浮かべる。

 

(あの坊やが邪魔するような事がありましたら、あなた、護ってくださいましね)

 

 

 

「ランバ・ラル……」

 

 セイラはベッドに横たわるラルを見守る。

 彼はまだ、目を覚まさない。

 

 

 

 ホワイトベースは山を背に、ガンタンクを出して前方を警戒しつつ修理作業を進める。

 ガンタンクにはカイと、頭部車長兼砲手席にハヤトを乗せている。

 前回の戦闘で負傷者が多く出たため、医療を学んでいたセイラはそちらの手伝いに回されているのだ。

 ハヤトは前回の戦闘でいいところはなかったとはいえ長距離砲撃複座型ガンキャノンL、ロングレンジタイプの頭部砲手コクピットに就いて出撃した経験があるため、それを買われての臨時の抜擢である。

 

 

 

「よし、あとは磁気圧の調整だけだ」

『はい、マクシミリアンさん』

 

 エンジン整備担当の少年、マクシミリアンはサラに自動制御されるドラケンE改を助手にエンジン修理を終えようとしていた。

 

 

 

 アムロは独房で静かに身体を休めていた。

 

「お前はパイロットだ。寝るのも仕事のうちなんだぞ」

 

 かつてブライトに言われた言葉のとおりに。

 ついでにその時の、月下に映えるシーマの肉感的な美しさも夢の中で思い出したりして。

 様子を見に来たモビルドールサラに、

 

『あ、アムロさん? こ、これって……』

 

 寝起きの生理現象……

 毛布にテントを張る膨張してしまった盛り上がりを目撃されたりするのだが。

 

 

 

「絶好だ、木馬め」

 

 マゼラトップ砲を構え、ホワイトベースに向け撃ち下すタチのザク。

 

 

 

「うっ、て、敵か?」

 

 不意に響いた砲撃音に、カイは慌てて索敵。

 

「うわっしまった、うしろからか」

 

 後背の山の上からの砲撃に、急いでガンタンクを旋回。

 迎撃に向かう。

 

 

 

「敵襲だ」

「どこからだ? て、敵は」

 

 遅ればせながらブリッジでも索敵を開始。

 ザクはホワイトベースの背後に存在する山の上から攻撃していた。

 

「そ、そうか、通常の兵器なら超えられない岩山も二足歩行のザクなら容易に超えられる」

 

 急峻な岩山を背後に置くことで監視を前方に集中させる。

 その目論見を逆手に取られてしまったのだ。

 これができるのが従来の陸戦兵器に無い、人型のモビルスーツの強みの一つなのだろう。

 若く柔軟な頭を持つブライトだが、どうしても士官学校で学んだ内容、古い戦闘ドクトリンに影響を受けてしまうところもまたある。

 それが生んだ失策である。

 

 

 

「好きにさせるかよ!」

 

 ガンタンクの両手、40ミリ4連装ボップ・ミサイル・ランチャーで弾幕を張り、ザクを牽制するカイ。

 

「サラミちゃん!」

『はい、トラベリング・ロック解除』

 

 サラスリーの操作で両肩の120ミリ低反動キャノン砲を支え故障を防止するトラベリング・ロックが解除され、胸部上面装甲下に仕舞い込まれる。

 

「ハヤト!」

「分かってます! ハヤトさん、もう少しスピードを上げられませんか?」

「調子良くねぇんだ。この間の直撃食らったのがまだ直りきってない」

『あっ、カイさん!』

 

 そこにサラスリーから接近警報。

 二台のホバークラフト・サムソントップ。

 モビルスーツ輸送用トレーラー、サムソンの運転席モジュールをホバーで飛ばすものが連装機関砲二門を撃ちながら接近してくる。

 

「ザ、ザクだけじゃねえのか」

 

 カイの動揺が運転に影響したのか、異音と共にガンタンクのキャタピラが停止する。

 慌てて確かめるも、

 

「だ、駄目だ、シャフトが折れてるみたいだ」

 

 予備の部品の在庫が無く、ホワイトベースの工作室で作ったものを修理に使ったのだが、純正品の強度には届かなかったのだ。

 旧日本帝国陸軍戦車チハが、クランク・シャフトにアメリカ製の部品を使っていて、開戦に伴い国産の加工品を使うようになったら品質が悪くて良く折れたという話に近いものだろうか。

 

「ど、どうするんです、カイさん」

「どうするったって……」

 

 ガンタンクは砲塔を持たない駆逐戦車や突撃砲に近いものだ。

 両肩の120ミリ低反動キャノン砲はわずかに左右に振れはするものの、コア・ブロック採用のため戦車の砲塔のように上半身を旋回させることはできず(とはいえ、多少はひねることが可能。ミヤビの前世の記憶でもマスターグレードのプラモデルでは再現されていた)

 それゆえ動けなくなると射界に敵を捉えることができなくなるのだ。

 しかし、

 

『こうしましょう、カイさん』

「サラミちゃん?」

 

 

 

(ジャンプキャンセル!? バーチャロンか!!)

 

 ドラケンE改で出撃したミヤビが目撃したのは、駆動装置が故障し立ち往生したガンタンク。

 それが底部のロケットエンジンを使って浮上、と思いきや空中で向きを変え敵を正面に捉えて即座に降下。

 それにより方向転換し敵を射界に捉えるという技を見せていた。

 

 ミヤビの前世にあったセガの3Dロボット対戦ゲーム『電脳戦機バーチャロン』ではジャンプするとオートで敵機を正面に捕捉してくれる機能があった。

 それゆえジャンプして敵機を捕捉させ、即座にジャンプをキャンセルすることで素早く次の行動に移ることが可能となる。

 普通に旋回するよりはるかに素早く対応できるため、このジャンプキャンセルが相手を捕捉する際の基本操作となっていたものだ。

 

 そしてガンタンクは、というかガンタンクのコア・ファイターの教育型コンピュータにインストールされたサポートAI、サラスリーは同様なテクニックで動けなくなったガンタンクを敵に向けることに成功したのだ。

 

「とはいえ、位置を変えられないのは辛いわね」

 

 そこはミヤビたちが何とかするしかなさそうだった。

 

 

 

「ブライトにアムロを出させるんだ。責任は俺が取る」

 

 リュウはメカマンの多くケガをしているためモビルスーツデッキで代役を務めているドラケンE改の予備機、その機体を単独制御しているサラにそう告げると、自身もコア・ファイターで出撃する。

 

「行くぞサラシックス!」

『はい、リュウさん』

 

 カタパルトで射出、飛び立つコア・ファイター。

 

 

 

『ブライトさん』

「サラか? どうしたこんな時に」

 

 ブライトはサラからの通信に眉をひそめ、

 

『アムロさんの独房のドアナンバーを教えてください』

 

 という続く言葉にあからさまに顔をしかめた。

 

「なんだと?」

『リュウさんに頼まれたんです。リュウさんが責任をとるからアムロさんの出動を、って。もちろん私からもお願いします』

 

 ブライトは苦虫を噛み潰したような顔で、

 

「おせっかいな」

 

 とつぶやくが、その辺、言葉遣いが荒いのも対象が信頼しているリュウに対してだからだろう。

 

「F36タイプだ」

 

 覚悟を決めてそう告げるブライト。

 

 

 

『リュウさんが開けてくれたんです。頑張ってくださいね、アムロさん』

 

 サラが遠隔操作する歩行型ミニドローン、モビルドールサラの激励を受け、アムロは、

 

「ああ、行くよ」

 

 そう言って独房から出てモビルスーツデッキに向かい走る。

 

「ああっ……」 

 

 ホワイトベースに走る衝撃によろめくが、

 

「ジオンめ、叩き落してやる」

 

 アムロの闘志はゆるがない。

 

 

 

 ガンタンク周辺に走る着弾!

 

「ううっ、ま、まだ新手がいるのか?」

 

 

 

 武装カーゴが戦場に姿を現す。

 

「フフ、木馬め。案の定自由には動けまい。ランバ・ラル隊のしぶとさ、見せてあげよう」

 

 マゼラトップで砲撃を加えつつ、笑うハモン。

 

 

 

「止まれ! 止まれ!」

 

 リュウは連続してコア・ファイター左右胴部に内蔵される小型ミサイルAIM-79を撃ち込むが、カーゴは止められない。

 

『リュウさん、ミサイルが切れます』

 

 サラシックスの警告。

 AIM-79は左右4発づつ、計8発までしか搭載されていないのだ。

 

「くっ、あとはバルカンだけか」

 

 機首左右に備えられた2連装30ミリバルカン砲、二基だけが頼りだ。

 

 

 

「ロックオンさせるとどこに当たるか分からないからマニュアルで。機体制御、渡します。ユー・ハブ・コントロール」

『機体制御、担当します。アイ・ハブ・コントロール。ミサイル誘導、渡します。ユー・ハブ・コントロール』

「ミサイル誘導、受けます。アイ・ハブ・コントロール」

 

 これでドラケンE改の機体制御をサラが担当し、ミヤビは操縦桿を使ってミサイルの誘導を手動で行うことができる。

 

「ミサイル発射!」

 

 ドラケンE改は短距離ミサイルを手動有線誘導で発射。

 ミヤビは左の操縦桿を操りドーム型のカーゴに設置されたギャロップ流用のジェットエンジンを狙う。

 

(ヤン・ウェンリーのガイエスブルグ要塞攻略か)

 

 小説『銀河英雄伝説』においてヤンは特攻を仕掛けてくる直径45kmの人工天体、ガイエスブルグ要塞に対し十二基のエンジンのうち一機を集中的に攻撃させ、破壊。

 ガイエスブルグ要塞は推進軸線が狂って制御不能の急スピンに陥り前進できなくなっていた。

 

 それと同じでカーゴも片方のエンジンを破壊すればその場で回転を始め、前進できなくなるのだ。

 史実でアムロがカーゴに止めを刺すのに使った戦法でもある。

 

 しかし……

 

「まだ!?」

 

 ジェットエンジンは左右二基ずつ設置されているが、そのうちの一基を潰しただけ。

 史実でギャロップ自体がガンダムにやられ、片側が1基だけになった状態でも十分な機動性を示していたように、これではまだ動く。

 

「もう一度!」

 

 止めを刺すべくもう一発の短距離ミサイルを放つが、

 

「なに!?」

 

 三機搭載されていたマゼラトップのうちの一機が分離上昇。

 その機体から二条の連続した火線が走り、ミサイルを撃ち落とした!

 

「同軸機銃!? 装備していたの?」

 

 戦車の主砲と同軸に装備される機銃。

 実際、史実でのこの戦いにおいてマゼラトップはガンダムに向けて二条の連続した火線を走らせ攻撃していた。

 それを受けてか『機動戦士ガンダム第08MS小隊』に登場するデザインのマゼラアタック、その主砲両側面には同軸機銃口が備えられていたのだったが。

 

 その同軸機銃からの射撃が連続でミヤビのドラケンE改の機体に当たり、装甲に弾かれ激しい音を立てた。

 

『痛い、イタイ、痛い』

 

 サラがエアーソフトガンで撃たれたサバイバルゲーマーのような間の抜けた声を上げる。

 以前、ダメージを受けていないにも関わらずどうして痛がるのか聞いたミヤビに、

 

『物が当たったら痛いに決まってるじゃないですか』

 

 と答え、

 

(知識で知ってるだけだこれ)

 

 と呆れられたことがあったが……

 

 そんなバカバカしい話より、これはまずい!

 同軸機銃が当たるということは、同時に主砲がこちらに向けられているということ。

 実際、同軸機銃であたりを付けて撃つという技法は存在するのだ。

 

「輻射波動っ!」

 

【挿絵表示】

 

 大きく開いたクローの中心、甲壱型腕ビームサーベルの先端が赤く輝き、そこにマゼラトップからの砲弾が飛来する!




 サラスリーやミヤビが頑張って細かいところでは変わってきているんですが、大きな流れを変えられるまでには至らずという感じですね。
 マゼラトップの同軸機銃なんて、今回のお話を書くために改めてTV本編を見直すまで私も気づかなかったくらいですし、ミヤビが知らなかったのも無理はありませんけど。


>「同軸機銃!? 装備していたの?」

> それを受けてか『機動戦士ガンダム第08MS小隊』に登場するデザインのマゼラアタック、その主砲両側面には同軸機銃口が備えられていたのだったが。

 ゴッグのフォノン・メーザー砲みたいなものですね。
 第26話でゴッグの側頭部から発射された光線が魚雷を迎撃しているけれど、公式にはこんな武器は設定されていない。
 そのため書籍でフォノン・メーザー砲と後付けされたのが広まった、というもので。


 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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