ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第21話 さよなら、リュウさん…… Dパート

「うわあーっ」

 

 ホワイトベースを攻撃していたザクが背後からガンキャノンの脇腹目掛けヒートホークを叩き込んだ。

 さらにマゼラトップから加えられる攻撃。

 

「上から? できるか?」

 

 位置、モーメント、動力系の切り替え。

 

「ええーい」

 

 ヒートホークを振りかぶるザクの胸板に、身を沈め、低い位置から肘打ちを叩き込む。

 それによりザクの踏み込みをも利用して上方にかち上げ、その機体をマゼラトップからの砲撃に対する盾とし、そのままぶつけることでマゼラトップも撃破。

 

 

 

「ガ、ガンキャノン、二人のパイロットを同時に討ち取るとは。さすが、私が見込んだ坊やだけのことはある」

 

 驚愕の表情を浮かべるハモン。

 ミヤビの前世の記憶でもマンガ『機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画』にてランス・ガーフィールド中佐はグフカスタムのスパイクでF2ザクをすくい投げていた。

 そしてガンキャノンの肘には、このスパイクの代わりになるもの、エルボージョイントアーマーがあった。

 肘関節を保護するための装甲で、丸みのある形状は砲弾を受け流すために考案されたもの。

 腹部に腕を回せばシールドの代わりにコクピット部を守ることもできる。

 ミヤビの記憶の中でも後にジム・コマンド系の機体にも採用されていたやつだ。

 アムロは突き出したエルボージョイントアーマーの先端を支点としてザクをかち上げて見せたのだ。

 

「しかし……」

 

 ハモンは笑う。

 

 

 

「し、しまった」

 

 アムロは焦る。

 ハモンのマゼラトップがガンキャノンの背後に回り込んだのだ。

 

 

 

「いくら装甲の厚いガンキャノンといっても、これだけ近ければ持ちはすまい。そしてガンキャノンとカーゴの爆発力は木馬をも」

 

 マゼラトップの砲が動けないガンキャノンの背部を狙う。

 ただ、「これだけ近ければ」という言葉には疑問が生じる。

 それは……

 

 

 

「ハ、ハモンさんか?」

 

 ニュータイプの勘か、相手を悟るアムロ。

 

 

 

「ほんと、好きだったよ、坊や」

 

 ハモンがトリガーを引き絞り、マゼラアタックのZIM/M.T-K175C、175ミリ砲がガンキャノンのランドセルに炸裂、爆炎を上げる。

 そう、赤い爆炎が見えるのだ。

 これはミヤビの知る史実でガンダムの背に回されたシールドを砕いた時も同様である。

 

 砲弾の種類には色々あるが、対装甲物用には凄いスピードで物理でぶち抜く運動エネルギー弾か、火薬が生み出すメタルジェットで装甲に穴を開ける成形炸薬弾(HEAT弾:High-Explosive Anti-Tank)のような化学エネルギー弾かのいずれかが使用される。

 

 ここで問題になるのは運動エネルギー弾のうち、徹甲弾の中に炸薬を入れて装甲貫通後に爆発させ破壊する徹甲榴弾(APHE)はミヤビの前世、旧21世紀でも過去のものになっており、代わって使われている装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)は、ダーツのような細長い棒状に加工されたタングステン合金や劣化ウラン合金などの重金属の弾体を撃ち込むもの。

 炸薬は込められておらず、爆発しないのだ。

 

 ではハモンが使ったのは成形炸薬弾(HEAT弾)なのか、というと火薬が生み出すメタルジェットで装甲に穴を開ける成形炸薬弾は、貫通力が弾速には影響されない。

 つまりハモンの言う、

 

「いくら装甲の厚いガンキャノンといっても、これだけ近ければ持ちはすまい」

 

 というセリフとは矛盾するのだ。

 

 ハモンが砲弾の種類に詳しくなかったか、宇宙世紀の凄い技術で装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)に代わる爆発する運動エネルギー弾が開発されたか。

 175ミリなどという化け物砲なら旧式な徹甲榴弾でも効果があると採用されていた、というのは8インチ砲などマゼラトップ砲以上の大口径、長砲身の艦砲における徹甲榴弾の貫通力を考えると無さそうで。

 まぁ、『機動戦士ガンダム第08MS小隊』に登場したマゼラアタックが、陸戦型ガンダムの脚部を損傷させた装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS、作中ではペネトレーター弾と呼称。着弾の閃光は上がっても赤い爆炎は見られず)とHEAT弾を使っていたことからすると、やはりハモンの理解不足という説が有力だろうか。

 

 

 

『ミヤビさん、最悪の状況です!!』

「まだよ!! あきらめないで!!」

 

 ミヤビのドラケンE改が疾走する。

 

 

 

 続けざまにマゼラトップ砲を叩き込むハモン。

 

「これでおしまい」

 

 ガンキャノンに止めを刺そうとするが、

 

「……ああっ!」

 

 そこにコア・ファイターが突っ込んでくる。

 

 

 

「リュウ!?」

 

 目を疑うミヤビ。

 

 コズンをメッセンジャーにした。

 ラルの命だって助けた。

 リュウも負傷していない。

 ガンタンクも史実同様立ち往生しているが、サラスリーの機転で戦い続けられている。

 カーゴの弱点を突いてエンジンを一つは潰した。

 自分がダメでもアムロが何とかしてくれるはずと、ガンキャノンだってちゃんと修理し用意した。

 

(こ、これだけやってもダメなの? 死神の力、歴史の修正力でも働いているの!?)

 

 ミヤビは自分をこの宇宙世紀に転生させた『機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線』登場の死神の関与を疑う。

 

 

 

「うおぉぉーっ!」

 

 武器を使い果たしたリュウは、コア・ファイターで特攻をかける。

 ミヤビの知る史実とは違い、この機にはサポートAIであるサラシックスが載っている。

 リュウは、それだけは済まないとは思うが、しかし、

 

『さよなら、リュウさん……』

 

 リュウは見た。

 モニターの片隅で別れを告げる、サラシックスの頬を伝う一筋の涙を。

 次の瞬間、コア・ファイターの脱出装置が作動し、リュウは座席ごとコクピットから射出される。

 

「サラシックス―っ!!」

 

 

 

「ああっ!?」

 

 ハモンもまたマゼラトップの脱出装置により座席ごと射出。

 もつれるように墜落するコア・ファイターとマゼラトップを眼下に、パラシュートが開き安全に降下する。

 

 史実とは違い彼女が助かっているのは、覚醒ガルマの指示で出された人材保護の観点からの『マゼラアタックの運用変更に関する通達』によるもの。

 つまり従来の運用では万が一の誤動作を嫌いかけられていた自動脱出装置のロックが解除されていたからだった。

 

「うっ……」

 

 着地の衝撃にうめくハモン。

 そして彼女は近くに着地した連邦兵、リュウの姿を認め護身用の拳銃を抜くが、

 

「サラシックス!!」

 

 ハモンには目をくれようともせずに燃え盛るコア・ファイターに駆け寄ろうとするリュウを見て、

 

「お止めなさい! 死ぬ気ですか!?」

 

 思わずそれを引き留めてしまう。

 

「ウソだと言ってくれよ…… おい…… サラシックス……」

 

 がっくりと膝をつくリュウ。

 

「すまん…… すまん…… 俺は、俺はぁ……」

 

 その頬をとめどなく涙が伝う。

 

「これからどうすりゃいいんだ…… ミヤビさんやお前の姉妹になんて言やいいんだよ……」

 

 男泣きに泣くその姿に、ハモンは毒気を抜かれたようにただ立ち尽くす。

 ラルの遺志を継ぐ。

 ラルの仇を取る。

 そのためにこそ戦ったはずだったが、それがこのような悲壮な結末を呼ぶものだったとは……

 分かっていた、いや、分かっていたつもりだったが、敵の、仇のこんな姿を見たくはなかった。

 

 そして爆発がその場を薙ぐ。

 史実どおりにアムロによってカーゴが破壊されたのだ。

 

「投降、してくれますねハモンさん」

「あなたは……」

 

 ようやくドラケンE改で到着したミヤビを認め、ハモンは気抜けした様子で銃を取り落とす。

 ミヤビはハモンとも交友を持っていたのだ。

 

「ラルさん、生きて保護してます。私の方で手をまわして悪いようにはしませんから」

 

 そうささやかれ、瞳を見開く。

 

「作戦終了、投降の合図を」

 

 ミヤビは信号弾と一緒に、アーマーマグナムを渡すのだった。

 そして、戦場に終わりを告げる信号弾が打ち上げられる……

 

 

 

「ミヤビさん……」

 

 肩を落とすリュウに、ミヤビは言う。

 

「サイド7襲撃時にも多くのサラシリーズが失われているんですよね。そんな風に」

 

 サラシリーズに欠番があるのはそのため。

 当時はまだミヤビもその存在を知らなかったのだが。

 

「運のない子たちだった…… もっと生きて欲しかったわ……」

 

 本当に、そう思う。

 

「サラシックス…… 私にとっても妹みたいな存在だった。その子がこんな最後を選ぶなんて、本当にマスターであるあなたを大切に想っていたのね」

「ミヤビさん、俺は……」

『ありました! ミヤビさん、ブラックボックスです!』

 

 未だ炎を上げるコア・ファイターの残骸を漁っていたサラが単独制御するドラケンE改が、フライトレコーダー、ブラックボックスとも言われるメモリーユニットを見つけ出す。

 

「運のいい子ね。コア・ファイターの予備機に搭載された未セッティングの教育型コンピュータにインストールすれば再セットアップもできる、か……」

「やった! 助かるんですねサラシックスは! 良かった! 良かったなあ!」

 

 リュウはドラケンE改の精密作業用三本指につままれたブラックボックスを前に顔をほころばせるが、

 

「喜ぶのは早いわ。問題はその後よ」

「え……?」

「確かにこの子は生き返る、そう言ってもいいわ。元の、サラシックスと呼ばれる存在に」

 

 だが、

 

「でもあなたはその時、人生において最大の苦しみを知ることに、なるのかもしれない……」

 

 そうミヤビは予言する。

 静謐な、『ヤシマの人形姫』と呼ばれるにふさわしい表情で。

 

 

 

次回予告

 サラシックスを失い意気消沈するリュウ、過労で倒れるブライト。

 その隙を突くかのようにマ・クベの包囲作戦が行われた。

 一方ランバ・ラル隊はシーマに導かれ、新たな任務に挑む。

 傭兵団、それもジオン外注の独立重駆逐部隊……

 地球連邦軍の試作型モビルスーツ運用艦を密かに乗っ取り、RX-78ガンダムと呼ばれる最新鋭モビルスーツたちを運用する極秘の教導部隊とは一体?

 次回『マ・クベ包囲網の陰で』

 君は生き延びることができるか?




 サブタイトル回収。
 この展開は予想できた方もいらっしゃるでしょうけど、お約束ですよね。
 次話もこのお約束が続く予定です。
 しかし次回予告のとおり、ランバ・ラル隊の方がメインなお話になりそうな気がしますが……


> まぁ、『機動戦士ガンダム第08MS小隊』に登場したマゼラアタックが、陸戦型ガンダムの脚部を損傷させた装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS、作中ではペネトレーター弾と呼称。着弾の閃光は上がっても赤い爆炎は見られず)とHEAT弾を使っていたことからすると、やはりハモンの理解不足という説が有力だろうか。

 砲弾の種類はミリタリーマニアの方々がこだわるところなので、08小隊ではその辺、力が入ってましたね。
 今回のお話を書くにあたり改めて見直して確かめましたが、なるほどと唸らされます。


 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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