ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第23話 シーマ隊救出作戦 Bパート

「シャア、グフカスタムのフィンガー・マシンガンを排して代わりに用意された3連装35mmガトリング砲って要らないんじゃないのか?」

「何を言うんだガルマ!」

 

 ガルマとシャアのモビルスーツ談義は今日も絶好調。

 モニターに映し出される開発されたばかりのグフカスタムの仕様。

 ミヤビの前世の記憶にある『機動戦士ガンダム MS IGLOO2 重力戦線』にてオデッサの戦いに参加していたように、すでにこの機体、グフカスタムは完成しているのだ。

 その従来のグフに装備されていた5連装75mmフィンガー・マシンガンを通常のマニピュレータに戻し、その代わりに左前腕部甲へ取り付けるという3連装35mmガトリング砲の資料を前にシャアはガルマに持論を語ろうとするが、

 

「――ガルマさま(旦那様)が嘘を仰っているとでも?」

「っ!?」

 

 ついでにイセリナのヤンデレぶりも絶好調。

 

(嘘とは言わんが、間違うことだってあるだろう!?)

ガルマさま(旦那様)の仰る事なら…… 嘘以外は、すべて信じておりますわ!)

(ええい、このガルマ至上主義のストーカー女め!)

(ストーカーではありません。「隠密的にすら見える献身的な後方警備」です。このわたくし、愛に生きる女です故)

 

 金縛りにあったかのように動けないため、ニュータイプ特有の電波通信で反論するシャア。

 悲鳴交じりだが……

 

 シャアのニュータイプ能力は地味に上がっている。

 研究ではニュータイプ能力発現には心身に強いストレスを受けることが必要とされているが、こうやって毎日イセリナの脅威にさらされていたら、それは覚醒もするだろう。

 シャアにとっては、

 

(冗談ではない!)

 

 という話だが。

 ともあれ、

 

「ガルマ、確かに以前の検討で5連装75mmフィンガー・マシンガンにも一定の利があるということは私も理解している」

 

 何とか仕切り直し、そう語るシャア。

 背中にはびっしょりと冷や汗をかいてはいたが。

 

「そして欠点とされる、左手マニピュレータの機能低下による手持ち武器の制限、汎用性の低下も実は無かった、というのも分かっている」

 

 ザクの使える武器は大抵グフでも使える。

 実際、ミヤビの前世の記憶の中でも第22話ではグフがザクマシンガンを持って登場し、劇場版ではジャイアント・バズを携行したグフがジャブローに降り立っている。

 これらの機体を通常のマニピュレーターに換装したもの、とする意見もあるが定説となるまでには至っていない。

 そもそもランバ・ラルのグフも、登場した第12話では左手でシールドのグリップを、そしてザンジバルへの引き上げワイヤーを握っているし、第19話ではヒートサーベルを握っているのだから。

 マシンガン、バズーカなど右手で構えるようにできているザク等、ジオンのモビルスーツ用火器のフォアグリップ程度、掴むことができないはずもない。

 

「だが、依然として弾倉が内蔵式で装弾数が少なく、戦闘中の給弾も不可能であるという問題がある。また、指に砲身を内蔵したことによる強度や整備性の問題はあるだろう?」

 

 そう語るシャア。

 

「このグフカスタムの3連装35mmガトリング砲はそれらを解決する優れた方法だと思うが」

「本気で言っているのかシャア……」

 

 呆れたように言うガルマに、シャアは仮面の下、眉をひそめると話し出す。

 

「人型兵器の真の利点は歩兵の"拡張"という点だ。例えば森や山を踏破する、現地に合わせて擬装する、罠や陣地を構築する、ミサイルや機関銃を撃つ。このユニットが、戦闘車両並みの火力、装甲、速度、積載量を持ったら? そういうことだ」

 

 そういった見方からすると、

 

「人間と同様にマニピュレータに武器を装備し、扱うことができる。それは利点だろう?」

 

 ということ。

 しかし、

 

「そうだな、君の言うことは一つの解だとは思う」

 

 うなずくガルマだったが、彼はこう語り始める。

 

「シャア、航空機やヘリ向けの武装として外付け機銃、ガンポッドがあるのは知っているだろう?」

 

 ミヤビの前世、旧21世紀のロボットアニメオタクなら『超時空要塞マクロス』シリーズの主役メカ、バルキリーが使う銃器が思い浮かぶだろうが、その元ネタは現実の航空機やヘリに外付けで機銃を搭載できるようにする同名の武装、ガンポッドである。

 

「うむ」

「ガンポッドを装備することで機体の内部容量を圧迫することなく火力の増強が容易に可能であり、さらに作戦に必要がなければ飛行前に取り外すことで機体重量を軽くすることができる」

 

 この辺はモビルスーツの手持ち武器と同じだ。

 

「また、搭載しているレーダーのような精密な機器類が、発射時のガスや反動の影響を受けずに済む離れた位置に固定できる」

 

 これはシャアが懸念する、指に砲身を内蔵したことによる強度や整備性の問題に対する外付けの3連装35mmガトリング砲の優位性に類似の効果だ。

 それらを総括しガルマは、

 

「君の主張するモビルスーツにおける手持ち武装と同様の利点がある」

 

 とうなずく。

 だが、

 

「しかし現実にはガンポッドは内蔵機銃に劣るとされている。それには主に三つの欠点があるからだ」

 

 つまりシャアが言う内蔵武器より手持ち武器、という主張に対し、ミヤビの前世、西暦の時代でも現実に運用されていた兵器では逆だという現実があるということだった。

 

「まず第一に、ガンポッドはその外付けという構造の性質上、反動による振動が大きくなるため内蔵機銃に比べ命中精度に劣る」

「それは……」

 

 グフカスタムの外付け3連装35mmガトリング砲は小口径化されているとはいえ、その反動は馬鹿にならない。

 西暦の時代、アメリカ空軍が使っていたA-10 サンダーボルトII攻撃機はGAU-8 アヴェンジャー30ミリガトリング砲を搭載していた。

 そのGAU-8に関する都市伝説には、撃つと反動で飛行速度が低下する、終いには機体が後ろに進みだすというものがあり、その反動の強さを物語っている。

 そして今回の話はそれより大口径の35ミリガトリング砲三門であり、反動は強力。

 

「シャア、君は拳銃射撃におけるハイグリップという手法を知っているだろう?」

「ああ、銃のリコイル(反動)はバレル(銃身)の位置で発生し、発射時に手首を支点にして銃が跳ね上がるマズルジャンプが起こる。マズルジャンプを最小限に抑えるには、バレルから支点までの距離が短くなければならない」

 

 ミヤビの前世、グロックなどは軽量な樹脂フレームを持つ故に跳ね上がりが大きくなることを考え、対策として極限まで低い位置にバレルをセットしていたものだ。

 そして、

 

「ゆえに拳銃を構える場合はグリップを可能な限り高い位置で握る必要がある」

 

 これがハイグリップと呼ばれる手法。

 逆に言えば、低い位置で握るとバレルまでの距離が大きくなり、てこの原理で反動による銃身の跳ね上がりが大きくなってしまうわけだ。

 それと同様に、

 

「通常のグフのフィンガー・マシンガンはこのバレル位置が腕と一直線となるから、反動を抑え込むことが容易になり75ミリ弾5門の連射が可能なのだ。逆に左前腕部甲へ取り付けるという3連装35mmガトリング砲は射撃軸が腕からかなり離れるためテコの原理で跳ね上がりが激しくなる」

「それゆえに75ミリから35ミリへ大幅な小口径化、5連装から3連装へ、砲門数の削減を行ったというのか」

「それとフレームのアームレスト化だな」

 

 強力なパチンコ、スリングショットにはアームレスト、前腕部に沿う支えが付いているが、3連装35mmガトリング砲では手首で固定するだけでは射撃が安定しないため、弾倉を支えるパイプフレームに同様のデザインをし、反動を支えるようにしているわけだ。

 まぁ、それでも命中精度では内蔵式に負けるわけだが。

 

「第二の問題が空気抵抗だ」

「ふむ?」

「宇宙空間での運用では関係ないし、地上でも二足で走行する分にはそれほど問題とはならなかったが、ド・ダイYSで空中戦を行う、それほどのスピードとなると馬鹿にならない問題が生じる」

 

 ということ。

 

「グフの内装武器は、その辺でも有利と言うことだ。ザクでも空輸して地上に投入、ということはできるが、高速の空中戦には対応できまい」

 

 実際、今まさにマ・クベの元からド・ダイYSに乗って出撃したグフはミヤビの知る史実どおりシールドも手持ち武器も持たなかった。

 これがザクの場合、マシンガンのような長物は空気抵抗が大きく姿勢制御に影響が出るうえ、空中での射撃にもブレが生じる。

 グフと違いシールドも固定だし、まっ平らな胸、本体から離れて張り出す足の動力パイプなど空気抵抗という点では大変に不利なのだ。

 逆にグフの張り出した胸や細身の足は空気抵抗を十分に考えたデザインであるとも言える。

 

「君が姉上から指示を受け運用を開始したマッドアングラー隊に配備される水陸両用モビルスーツだが」

 

 シャアはキシリアからの命令で中佐に昇進の上、マッドアングラー隊を運用するよう指示されている。

 現地へは近日中に宇宙に上がりララァをフラナガン機関へ預けてから向かうことになるが、既に遠隔で出した指示によりオデッサ作戦に従事するために回された連邦艦を沈めるなど戦果を上げていた。

 

「どの機体も武器がすべて内蔵式だろう? これは水の抵抗が問題となったからでもある。それと同様というわけだ」

 

 そういう意味ではグフ飛行試験型が両腕ともフィンガー・マシンガンとなっていたこと。

 時代は進み『機動戦士Zガンダム』にて非変形でモビルスーツの単独飛行を成立させたバイアランが手持ち火器を持たずメガ粒子砲を両手の手のひらに内蔵したのもこの空気抵抗を嫌ってのことかもしれない。

 

「それに、そもそも戦闘機の旋回銃座は第二次世界大戦時点で進行方向に敵機を置けば撃墜できる固定銃にまったくかなわないとされていた。ド・ダイに乗ったモビルスーツの射撃は旋回銃座に相当し、以前、君とも話した射撃訓練を受けていない者でも普段当たり前に行う動作、手で、そして指で物を指し示す行為、それをするだけで照準が付けられ撃てる……」

「『グフが指さすだけで相手は死ぬ』か」

「そう、それぐらいでないとドッグファイト、空中格闘戦では当たらないだろう」

 

 ということだった。

 

「第三の問題はステルス性だ」

 

 ミヤビの前世、旧21世紀のステルス機でも機銃やミサイルはすべて内蔵式、ウェポンベイに納められていた。

 例外的にF-35のB型とC型では機外搭載オプションの1つとしてステルス性を備えた25mm機関砲ポッドが用意されていたが、しかしこれを使うとステルス性は低下するという。

 

「まぁ、ミノフスキー環境下のモビルスーツの運用では当たらないと思うが……」

「そうでもないぞ、ガルマ。マッド・アングラー隊にはアッガイというステルス機が配備されている」

 

 そうシャアは語る。

 

「これはアイアンネイルを収納式としてまでステルス性能を追求しているからな」

 

 残りの問題についてだが、

 

「あとは君が言う、指に砲身を内蔵したことによる強度や整備性の問題への危惧も理解できるが、あまりに過大に見積もりすぎてはいないか?」

 

 ガルマはモニターにフィンガー・マシンガンの構造図を表示して説明する。

 

「まず第一に、グフの左手マニピュレーターは大型化と大幅な簡素化が行われている。指関節の数を一つ減らして簡略化した上、指自体もシンプルで応力が分散し強度の高い単純な円筒状の外装だ」

 

 砲口という開口部がある分、強度が落ちる、という主張もあるが、パイプ状の構造物は西暦の時代からあらゆるマシンに使われており、その端が塞がれているか否かなど、単に人が触れてケガをしないためや、汚泥や水が入って支障が出るようなことが無いための末端処理。

 塞いだからと言って強度が劇的に上がるということでもない。

 そもそも人間が扱うライフルだって銃口は開口部であり、銃剣を着剣しての格闘で銃口の損傷を気にする者など居ないということを考えれば分かるだろう。

 例えはアレだが、史実でのシーマはメガビーム砲の砲身に乗機を串刺しにされ、そのまま射撃を浴びて機体ごと爆発四散していたのだし。

 

 また大型化により指が太くされたことは強度に直結する。

 アルミフレームの自転車ではパイプ径を大きくすることで、肉厚を薄くし軽量化を図ったとしても剛性が向上するメガチュービングという手法が取られていたが、それと同様。

 いや、グフの指は軽量化など図られていないのだから装甲厚も十分であり、強度はますます上がるという話だ。

 

「技術の進歩によるアクチュエーターの小型化で空いた下腕部内スペースに弾倉を設け、ベルト給弾で手のひらの機関砲へ砲弾を送る。時々指が砲身そのものだと勘違いしている者も居るが……」

「居るのか? 75ミリの砲口径に対して指先の開口部は比べ物にならないくらい大きいだろう」

「いや、居るぞ。軍の高官でも、通常のマニピュレーターと比較しても強度は落ちないという説明に「中空の指とアクチュエーターだらけでも中身が詰まった指を同一視は出来ない」と強く疑問を呈した者が居たし」

「んんっ? ああ、指先開口部がそのまま砲身と考えてしまえば指が中空と思えてしまうのか」

 

 実際、分かりやすい例で言えば1/100のプラモデルなら75ミリの砲口は0.75ミリに相当する。

 マスターグレードのプラモデルを見ると指先の開口部奥にとても小さな砲口が別にあるのが見て取れるだろう。

 この小さなものが砲身であり、大型化された左マニピュレーターの指内部に占める割合はとても小さい。

 つまり左マニピュレーターの指の太さ、装甲厚、内部の駆動機構の占める容量、どれを取っても通常サイズの右手指や、ザクの指を上回るということが分かるはずだ。

 そしてシャアはミヤビの知る史実でもザクの拳でルナ・チタニウム製のガンダムの腹を殴っているが、特に故障など起こしていない。

 それ以上の強度を持つグフの左指に不安など無いはずなのだが。

 

「だったらこの指先の開口部は何か、という話だったが」

「フラッシュハイダー、消炎器だろう」

 

 シャアが答える。

 ミヤビの前世で言うなら富士総合火力演習等の動画を見れば分かるが、

 

「戦車砲レベルの火器となると発砲時に砲口に巨大な発砲炎、ファイヤーボールが発生する。これがグフのフィンガーマシンガンのように連続発射する場合にはセンサーの目つぶしとなってしまうため、フラッシュハイダーにより抑制する必要があるのだ」

 

 ミヤビの前世の記憶でも、グフの左マニピュレーター、指の先端第一節を丸々フラッシュハイダーとし、砲身は根元の一節にのみ内蔵とした資料があった。

 つまり手のひらに内蔵された機関部と可動する指内部に設置された砲身との接続部は1か所のみ。

 

「指は言わば軍用ライフルの銃身を保護しているハンドガードみたいなもので、その中に本当の砲身、細いバレルがあり、指を伸ばすとそのバレルが内部で接続し発射が可能になる」

「なるほどな。まぁ、リボルバーカノンという機関砲があるように、薬室とバレルが一体になっていない火器など珍しいものでもないからな」

 

 それに『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』登場の長距離支援用重モビルスーツ、ザメルのあの巨大で長砲身な680mmカノン砲が折り畳み式の砲身を持っていた。

 あれだけの大型砲でも砲身を途中で接続しての使用が可能なのだ。

 75ミリ程度の砲身なら問題にもならないのだろう。

 

「そして指を曲げる場合にはバレルのロックが解除される。そう複雑でもないだろう?」

「うむ」

「あとは「あんな指先に砲なんて仕込んだら1発撃つ度に指関節、手首、肘に衝撃が伝わるわけで、それが5本分とか1回出撃する度に左腕オーバーホールなんてことにもなりかねない」という話もあったが……」

「先ほどの説明どおりなら構造的に指関節には衝撃は伝わらないだろう?」

「そのとおりだ。指内部に装備された砲身はロックされるし、反動は垂直に手のひら内の機関部に伝わるだけだ」

 

 ということ。

 

「手首、肘には伝わるが、しかし75ミリ砲5発分の反動は弾頭質量から単純計算するだけでも175ミリマゼラトップ砲の半分以下、4割にも届かずだからマゼラトップ砲を両手で構えることを考えても十分許容範囲内と分かるだろう?」

「そうだな」

「マシンガンとして連射する、その総計としては激しい振動が起こりはするが、別にそれは外装式にしたところで一緒だ。むしろ先ほどの話であったとおり、外付けにした方が振動が激しくなる」

「なるほど」

「そして精密機械たる五指を備えたマニピュレータに砲撃の振動が伝わる、という話だが……」

「モビルスーツの格闘では普通にマニピュレータで殴ることも有り、それ以上のショックが生じるわけも無いか」

 

 繰り返しになるが史実でもシャア自身、ザクの拳でルナ・チタニウム製のガンダムを腹パンしているが、特に故障など起こしていない。

 それ以上の強度を持つグフの左指に不安など無いはずなのだが。

 

「殴ったショックで弾薬の暴発というのは?」

「歩兵だってザクだって、銃床(ストック)で敵を殴るだろう? それとどう違いがある?」

「それもそうか」

「そもそも殴らなければ良いのだ。人間だって実戦では繊細で壊れやすい指を備えた拳で殴ることは推奨されないのだし」

 

 軍隊における格闘術では掌底やヒジなど、自分の指や拳を痛めない打撃が有効とされる。

 

「狭い手のひら内部に機関部を押し込めたことによる整備性の問題だが、マニピュレーターを大型にしたことや各機器のユニット化などである程度緩和できるものだ」

「つまり『グフが指さすだけで相手は死ぬ』という利点と十分にトレードオフできる程度の問題だと?」

「そのとおりだ」

 

 シャアは今一度頭の中を整理し、

 

「ああ、だが装弾数と弾倉交換ができない問題が残っているぞ。内蔵式火器は継戦能力に疑問がある」

「それなんだが…… 必要か?」

「何だと?」

 

 ガルマは語る。

 

「モビルスーツは服、スーツと名前が付いているように歩兵が服を着たかのように身にまとい操ることができるもの。だから人体と同じように人間が直感的に動きを把握し、操ることができるわけだ。それゆえに射撃武器もまた人間工学的に優れたものがもっとも適していることになる」

「うむ。以前にも話してくれたことだな。それは理解できる」

「そして人間は複数の火器を同時に操ることはできない。創作物では二丁拳銃使いが登場するが、両手の拳銃を使って別々の標的に当てることなど実際にはできないし、そもそも同じ標的に向けたところでその命中率はあからさまに低下する」

「そうだな。だから二丁拳銃などといった非現実手段より、一丁の拳銃でマガジンチェンジして使った方が良い」

 

 そしてガルマは問う。

 

「ならば、モビルスーツとて一緒だとは思わないか?」

「うむ?」

「つまりだ、モビルスーツとてパイロットが精度を落とさず一度に使える武器は一つ。なら普通にマシンガンと交換用の弾倉を使えば良いだろう? 複数の火器を持つ意味が無い」

 

 そもそもだ、

 

「その昔、多砲塔戦車というものがあったが、砲塔を増やせばその分重くなり、必然的に装甲へ割り当てられる重量が少なくなり軽装甲にせざるを得ない。しかも砲塔にしても複数載せるために一つ一つは低火力、という当たり前の話から廃れた」

 

 その他にも複数砲塔があってそれぞれに射手を配したとしても、車長が把握し、攻撃を指示できるのは単一目標のみ。

 複数の目標に対するマルチアタックは難しいのだ。

 基本、一人で操作するモビルスーツなら、もっと大変なことになるだろう。

 

「逆に弩級戦艦、超弩級戦艦という言葉を産み出したイギリス海軍の戦艦ドレッドノートは中間砲・副砲を省き、その代わりに単一口径の連装主砲塔5基を搭載して当時の戦艦の概念を一変させた」

 

 これは「本艦1隻で従来艦2隻分」の戦力に相当したという。

 要するにフルアーマー・オペレーションのように多種多様な増加武装を施した機体はロマンではあるが、現実的には積載量が制限される以上、武装を絞った方が強くなるということだった。

 

「うん? しかしそれは元の内装式のフィンガー・マシンガンでも同じことではないか?」

「前提が違う。グフの内蔵武器は技術の発達によってアクチュエーター等の小型化、高出力化ができた結果、空いたスペースに入れられたものだ」

 

 そして、

 

「手持ちの武器を失っても戦える継戦能力の拡大。また格闘戦に移行する刹那、武器を抜くという動作を無くすことで機先を制する、としたものであって、それをメインの武器として固定運用することは想定していない」

 

 これは以前にも話し合ったこと。

 それでシャアも納得する。

 

「ああ、つまり内装式のフィンガー・マシンガンの使用される状況は限定的。要するに歩兵で言うメインアームのバックアップに持たれる拳銃みたいなものと考えれば良いのか」

「そうだな、バックアップの拳銃にスネイルマガジンのような大容量弾倉や予備弾倉を多数用意するよりは、メインアームであるライフル等の予備弾倉を多く持った方が戦闘能力は高くなるだろう?」

 

 そういうことだった。

 

「その意味では従来のグフに装備されていた5連装75mmフィンガー・マシンガンを通常のマニピュレータに戻し、その代わりに左前腕部甲へ取り付けるという3連装35mmガトリング砲は不要なのか。白兵戦時には便利そうなのだが」

「それだ!」

 

 シャアのつぶやきにガルマは思いつく。

 

「CQB(Close Quarters Battle、近接戦闘)を行う歩兵の特殊部隊では、取り回し等を優先して拳銃をメインアームとして扱う場合もある」

「なるほど、メインアームとしての位置づけでは内装式のフィンガー・マシンガンは継戦能力に不安が出る」

「だからグフ・カスタム向けに考案された3連装35mmガトリング砲も、その目的では役立つということだな」

 

 実際にミヤビの知る史実でも『機動戦士ガンダム第08MS小隊』における市街地戦、つまりCQBに近い近距離戦でノリス・パッカード大佐のグフ・カスタムが単騎で護衛を抜いて量産型ガンタンク3機を撃破している。

 

「まぁ、使い方としては片手でも使えるサブマシンガンかPDW(Personal Defense Weapon、個人防衛火器)とでも言うべきか?」

 

 特殊部隊ではどんな武器も片手でも扱えるように訓練する。

 これは片手で負傷した同僚や人質等を庇いながら射撃する状況に備えるものだ。

 火力や取り回しから言って、片手を空けて使える3連装35mmガトリング砲の扱いはそちらに近いかもしれない。

 

 そして逆に『機動戦士ガンダム MS IGLOO2 重力戦線』にてオデッサの戦いに参加していたグフ・カスタムは、メインアームとして3連装35mmガトリング砲を使用していたが、いいところも無く陸戦強襲型ガンタンク小隊と陸戦型ジム小隊の挟撃を受け撃破されている。

 こちらはやはり開けた場所での戦い、取り回しより純粋な火力が要求される状況には向いていないということなのだろう。

 アサルトライフルの交戦距離でサブマシンガンを持ち出してもどうにもならない。

 それと同様の話である。




 毎度おなじみガルマとシャアのモビルスーツ談義でした。
 イセリナも相変わらずですが……

 普通に考えればデメリットばかりが思い浮かぶフィンガーマシンガンですが。
 じゃあメリットは何だろう?
 少なくとも開発者はあると思ったから実装したんですよね?
 という話は以前させていただきました。

 今回は、ならグフカスタムのフィンガー・マシンガンを排して代わりに用意された3連装35mmガトリング砲と比べたらどうかというお話でした。
 ガンダムには長い歴史があり、様々な考察が積み上げられていますが、こんな考え方もありますよ、というものですね。

 もちろん逆の意見だってあるし、それを否定するものでもありません。
 考察は作品をより楽しむためにするものですから、ファンの方々がブレインストーミングのように「こんな考え方もできるよね」と意見を出し合ってより面白い議論が交わせることが大事ですし。
 そうすることで今ある様々な考察が成り立ち、そしてそれを汲んだクリエイターの方々が公式の映像作品やマンガ、小説に取り込んでさらに発展させてきているのがガンダムですから。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

 なお、次回は戦闘です。

『ミヤビさんのドラケンの反応が…… 消えた……?』

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