とても遅くなりましたが続きを書きました。
楽しみにしていた方々、本当に申し訳ありません。
次回投稿は未定ですが、今月中にはもう一話投稿したいと思っています。
矛盾や疑問があるなら是非教えてください。
返信します。
「ここを突破して大将に花道を開くんだっ!!」
軽装の鎧をきた者達が剣や盾、弓を持ちながら、森の中を疾走していた。
その眼前には異形の者達がいる。
”紅世の徒”だ。
疾走していた者達は”フレイムヘイズ”。
今この森は戦場となっていた。
「喰らえっ!」
フレイムヘイズ達は一斉に徒達に攻撃を仕掛ける。
しかし・・・。
「何っ!」
その攻撃は木々に阻まれる。
よく見れば、その木々はまるで石のような色をしている。
「石の木・・・だと。っ!”碑堅陣”かっ!!」
「くっ!」
「敵はどこだ」
フレイムヘイズ達は木々に囲まれ、徒の姿を見失ってしまった。
(成る程・・・。この大戦を迎えるにあったて、即席の雑兵ばらにも我が偉大なる力を周知させている、と言うわけか)
そんな右往左往しているフレイムヘイズ達を木々に紛れ込みながら見ている者がいる。
”九垓天秤”の一角、先手大将“焚塵の関”(ふんじんのせき)ソカルだ。
彼は石の木々による防御陣の自在法”碑堅陣”の使い手だ。
人格面では”九垓天秤”内でも際だって評判が悪く、見栄っ張りかつ嫌味であるが、戦闘面における周囲からの信頼は厚く、ゾフィーに「奢って当然の戦上手」と言わせる程に戦に長けている、 負け知らずの将である。
「くっく。しかし、ただ知ったところで我が”碑堅陣”を破ることなどできはせぬ」
そして、いつの間にかフレイムヘイズ達は徒に囲まれていた。
追いかけていたのが、まんまとおびき寄せられていたのだ。
「いつの間にこんなっ!退路も絶たれて・・・」
「それなら空はっ!」
何人かの者達が上を見上げるが、そこには飛行している徒達がいる。
「ッッッ!!!」
「殺せぇぇぇぇぇ!!」
動揺していたフレイムヘイズ達は瞬く間に徒達に殺され、徒達の勝利の咆哮が響き渡る。
「うぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ソカル様万歳!」
「万歳」
「万歳!!」
戦闘が起こった後方では、一人のフレイムヘイズが腕を組み、苛立ちながら立っていた。
「ちっ。また呑まれたか」
そのフレイムヘイズは髭を生やし、西洋甲冑を着た青年で、殺されたフレイムヘイズがいた森を険しい相貌で見つめていた。
彼は”極光の射手”カール・ベルワルド。
彼はフレイムヘイズ兵団で、副将を勤めており、ベルワルド集団を率いている。
契約している王は破暁の先駆”ウートレンニャヤと“夕暮の後塵”ヴェチェールニャヤという一つの体に二つの人格があるという珍しい王だ。
そんな彼らの意思を表すのは鏃型の神器”ゾリャー”。
「大喰らいの枯れ木野郎め」
カールは忌々しそうに、森を睨み付け、副官に指示を出す。
「第四波は揃ってるな?突撃だ」
その指示に副官は難色を示す。
「ですが大将、三度の突撃で誰一人として戻ってきません。いくら規定の作戦とはいえ、真正面から”焚塵の関”にかかるのは」
「まだ足りん」
「は?」
副官の警鐘をカールは遮り、言う。
「この作戦はやつの防御陣を突破する、最短の距離と機会を捉えるためのもんだ」
ソカルは深い森に”碑堅陣”を敷き、潜伏中だ。
森の背後には、なだらかな山々からなるハルツ山地があり、その山地の中でも一際、大きな波として膨らんでいる、主峰であるブロッケン山。
その山頂にある台地に”とむらいの鐘”の本拠地であるブロッケン要塞が築かれている。
つまり、ソカルを抜くことができれば、敵の本拠地まで一駆けで行くことができる。
本来であればソカルの背後には中軍主将である”九垓天秤”の一人、“天凍の倶”(てんとうのぐ)ニヌルタがいるのだが、彼は5日前に大戦の発端となった宝具争奪戦のなかで討滅されている。
「前衛を磨り潰すつもりで出方を見、最新の注意を払って動静を探る。それがゾフィーの命令だったろう?」
カールがそう言うと、腰につけている矢筒に入っている二つの矢からウートレンニャヤの艶っぽい女性の声とヴェチェールニャヤの軽くはしゃいだ少女の声がする。
「この防御陣を崩すには森の奥に潜む一匹を見つけてぶっ殺しちゃう以外にないでしょ?」
「それもあの森が押し寄せて私たちの戦列を崩壊させる前にね。多少の人死ににビビってなんかいられないわ」
「は、はぁ」
「だが、確かに・・・」
カールは鎧をトントンと指で叩きながら思案する。
「これじゃ、埒があかねぇな」
そして、カールはある作戦を思い付く。
「いっそのこと、全部ぶつけるか。・・・ん?名案じゃねぇか」
「ゾフィー総大将の作戦はっ?!」
副官はカールを止めることはできず、全軍で森に突撃を開始したのだった。
「はぁぁぁ。心配です」
エレノアはため息混じりにそう言った。
ここはベルワルド集団が展開していた地域から数キロメートル右方に離れた場所にある、総大将ゾフィー・サバリッシュが率いる、サバリッシュ集団がいる天幕だ。
サバリッシュ集団は敵の動きをよく見ることができる高台に布陣している。
「エレノア、少しは落ち着いたらどう?」
「でも、ベルベット。私は心配なんです。カールが」
「カールというよりはアイツが率いている兵たちの心配でしょ」
「ええ、そうです。またカールが突撃、突撃と言っているような気がして。一応、出陣前に言い含めておいたのですが」
「そんなことしてたわねぇ。まぁ、無意味だと思うけど」
「やっぱりそうですよね。あぁ、私も同行すれば良かった」
エレノアはカールの気性を理解し、それ故に戦果は出るだろうが、兵が多く死ぬことを心苦しく思っていた。
「貴方たちは彼らが動いた時の切り札なのですよ。もし仮にも彼らが動けば私たちでは対処できませんからね」
そこにゾフィーが苦笑を浮かべながらやって来た。
「確かに”仮装舞踏会”(バル・マスケ)が動けば全滅は免れません。でも彼らは動かないと思いますよ」
「その根拠は?」
取り澄ました男の口調をしているタケミカヅチがそう問いかける。
仮装舞踏会とは世界最大の規模を誇り、他の大集団とは頭一つ二つ抜きん出ている徒の大集団で、桁外れの規模の兵力、一騎当千の実力を持った錚々たる顔ぶれの将帥らを数多く揃えている。
彼らは”とむらいの鐘”の要請を受けての参戦であるが・・・。
「彼らの真の狙いはアシズの”壮挙”とは別にあると思うからです」
壮挙とは“紅世の王”アシズと”棺の織り手”ティスの存在を分解し、寄り合わせ、定着させることで”両界の嗣子”、簡単に言えばフレイムヘイズと”紅世の王”の子供、なる存在を誕生させる事を目指したもので、フレイムヘイズは”壮挙”を”暴挙”と呼び表していた。
なぜなら、”壮挙”が達成された場合、それを模倣しようとする“徒”が大挙出現することを恐れたためだ。
「あの三人が揃って出陣していますしね。ただ参戦するだけなら他の将帥を派遣すればいい話ですから」
「なるほど。流石、”仮装舞踏会”の好敵手。彼らの思惑は全てお見通しと言うわけですか」
「全てとは言いませんけど」
「あながち間違っていないと思うわよ」
エレノアとベルベットは確信を持ってそう言った。
一方、エレノアが言っていた”三人”もエレノアについて話していた。
「”災禍の撒き手”は本陣に籠っている・・・か」
「そのようだね」
天幕の中では漆黒の鎧に身を固めた大男と灰色のタイトなドレスに装飾品をいくつも付けた、妙齢の美女が話していた
大男は大槍を肩にかけ、美女は額の一つを加えた三眼だが、右の眼には眼帯を付けている。
「恐らく我らに対する手札として温存しているのだろう」
「だが奴も気付いている筈だ。俺たちが動かないことをな」
「そうだろうね」
二人が話している内容を聞いていた三人目である、黒材の輿の上にいる、少女がポツリと呟いた。
「彼女がこの場に・・・」
少女は白く大きな帽子とマントに着られている程小柄で、眠るような自然さで相貌を閉じ、力なく前に下げた両手で錫杖を横一文字に携えている。
「気になるかい」
「いえ。別に。ただ・・・彼女はいつか我々にとって危険な存在になるかもしれません」
少女は表情を変えず、美女にそう言った。
三人は”仮装舞踏会”を取り仕切る三柱の強大なる“紅世の王”。
一人目が”軍師”である“逆理の裁者”(ぎゃくりのさいしゃ)ベルペオル、二人目が”将軍”である”千変”(せんぺん)シュドナイ、三人目が”巫女”である”頂の座”(いただきのくら)ヘカテー。
彼ら三人は通称”三柱臣”(トリニティ)と言いい、彼らは主不在の仮装舞踏会を取り仕切っている。
「そうだね。”災禍の撒き手”はたった一人で何度も我々と相対してきたからね。仮装舞踏会の好敵手なんて言われるほどに」
「だからこそ、奴には盟主の理想を何度も伝えることができた」
「シュドナイを通して盟主の理想、いや、多くの徒達が望んだ存在の力をいくら使っても良い世界を、あの時とは別の方法で作ることを。”災禍の撒き手”をこちらに引き込むことができれば、”大命”の障害は取り除くことができるだろうね」
エレノアはフレイムヘイズ、徒の間ではかなり有名で、今まで生きているフレイムヘイズの中でも彼女は最古のフレイムヘイズの一人である。
彼女はその人生の中で様々な経験を積んできた。
徒と戦うことは勿論、フレイムヘイズとも戦ったこともあり、フレイムヘイズの使命である歪みを発生させる徒を殺す、世界のバランスを守ることを平然と破る、異端中の異端。
エレノアにとって世界のバランスを守ることは二の次だ。
彼女は今を生きている人々を徒、もしくは復讐に走り、人々に被害を与えるフレイムヘイズから守るために契約したフレイムヘイズである。
エレノアは力を持たない人々を守るためなら何だってするだろう。
そう、徒とも手を組むだろう。
彼女の前世の経験がその決断を後押しする。
「まぁ、まだまだ時間は掛かるだろうがね」
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