とある場所で「血、血、血、血が欲しい」と発言が出たところ、「吸血鬼、蚊、ヒル」などの血を吸う生物に混じって「鼻血を幾度となく吸った布団」という意見が出た(というか出した)ので書いた話。

昨今の日本人はだいたい萌えの擬人化させるから布団も擬人化しただけの話である。

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タグ、何をつければいいんだろうかこれ


布団が幼女になっただけの話

 ーー目が、覚める。

 

 見慣れた天井なのだが、今日はどこか普段に比べて違うところがあるような……

 

「……だれ?」

 

 今、気づいた。おかしいのは天井ではない。天井そのものは普段と全く同じだ。ただ、視界に異物が入り込んでいるせいで、天井に違いがあるように見えていただけで。

 

スースー

 

 それは、俺の体に重石のように乗っかっていた。

 見た目としては『お人形のような』という形容がよく似合う。

 そんな5、6歳程度の少女が、俺の体の上に乗って寝息を立てていた。

 

「えっと、俺の布団は……? そしてこの子は一体誰……?」

 

 誰でもいいから、今すぐ俺の上からどいて、この冬の寒さに凍える哀れな人間に暖かい恩恵(布団)をもらいたいのだが。

 なんてことを思っていると、あることに気がつく。

 

「って、そんなに寒くない?」

 

 この少女が乗っているあたりが一番暖かいことに変わりはないが、腕の周りなども微妙に暖かい。

 まるで布団に覆われているかのような感じがするが、布団の代わりにこの少女がいるだけだし……

 

「ん……おはよー。おにいちゃん、今日は珍しく早起きだねー」

 

「あ、うん、おはよう……」

 

 そうこうしていると少女が目覚めた。

 先ほどまで閉じられていた縞瑪瑙(オニキス)の瞳は、俺のことを映している。

 いきなり見知らぬ少女と至近距離で顔をあわせることになったので、相手も動揺するのではないか、あるいは叫ばれて誰かが入ってきた結果お縄になるんじゃないかと言った疑念は、向こうの俺を知っているらしき反応によって霧散した。

 が、そうなると今度は俺の知らないこの少女がなぜ俺のことを知っているのかという疑問が出てくる。

 

「おにいちゃん、いつものアレちょうだい」

 

「……アレ?」

 

「もー。アレって言ったらアレだよ」

 

「いや、だから。……そもそも君は一体誰?」

 

 その言葉は俺からすれば至極当然の言葉なのだが、少女からすれば憤慨ものだったらしい。

 もー、なんて怒り気味の言葉の後、彼女はまず『アレ』が何かを明かすのだった。

 

「いっつもあたしのことを使ってるくせに、姿形がかわったらすぐにわからなくなるんだ。いつもみたいに血をちょうだいって言ってるの!」

 

「えっと……」

 

 責め立てるような言葉なのだが、本当にわからない。

 少女はここまで言ってもわからないの、というような目をしてからため息をついて俺にその正体を明かす。

 

「あたしは、おにいちゃんのお布団だよ!」

 

 ……その正体は、到底信じられるものではなかったが。

 

「ほら、正体説明したしもういいよね! いっただっきまーす!

 

「え、ちょ、まっーー」

 

 固まった俺の鼻に自称俺のお布団が噛み付いてきた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 どう考えても頭がおかしくなったとしか思えないが、確かに彼女が俺の布団だというのなら「血をくれ」というのも理解できないわけではないのだ。

 俺の特徴に、『朝起きるとなぜか鼻血が出ている』というものがある。それも自分の家の布団限定で。

 そして、その鼻血はだいたい俺の布団にかかり血まみれになっている。

 そういう意味では、彼女は毎朝俺の血を摂取しているといってもおかしくはないのだ。

 

「で、本当に俺の布団なの?」

 

「うん、そうだよ!」

 

 信用できないが、そのあとに彼女が口にし出した俺の宝物の隠し場所をはじめとしたこの家のこと、そして俺がこの布団を買った頃のことまで口にされてしまったことで信じるしかなくなった。

 

 俺の鼻に噛み付いたせいで血まみれの口元を拭うこともせずに、ニコニコしながら俺の上に乗ったままの少女。

 このままだと大学に向かうこともできないので退いてもらいたいのだが……

 

「あたしのこと、置いてっちゃうの?」

 

 上目遣いで悲しそうな目で置いていかれることに対する不安を見せてくる少女に、これまでの布団に対してであれば抱くことのなかった罪悪感がにじみ出る。

 それでも、行かないといけないことに変わりないので、心を鬼にして伝えると

 

「それなら……」

 

「え?」

 

 手をまっすぐに伸ばして「抱っこ」を要求する姿勢に。

 

「あたし、お布団だから。おにいちゃんが自分でどかさないとダメだよ?」

 

「ええ……」

 

 喋って動いて噛み付くくせに、そういうところだけは普通の布団のままなのか。

 そんなことを思いながらも抱っこしてどかす。

 

「うん、それじゃいってらっしゃい。待ってるから早めに帰ってきてね」

 

「う、うん……」

 

 どかして、これまでは一人暮らしだったのでリビングで普通に着替えていたのだが、少女が追加されたこともあって洗面所にまで出てから着替える。

 玄関から外に出るとそこにはいつも通りの光景。できれば全世界で同時に布団が少女に擬人化していたりすると気分が楽だったんだが、そこまで世の中甘くなかったらしい。

 

「これ、どうなるんだろう……?」

 

 とりあえず、今日は大学に泊まって少し頭を冷やしてみよう。幸いなことに実験もあるので、そこまで大学に泊まることには違和感はない。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 翌日の朝。

 

 恐る恐る家に帰ると、くすんくすんと泣く声が聞こえてきた。

 

「え、えっと……」

 

 部屋に入りづらいのだが、入らざるを得ない。というか明日の用意もあるので入らないという選択肢はない。

 

「た、ただいま……」

 

『おかえり、おにいちゃん』

 

「…………ん?」

 

 今、何か一つ多かったような。

 

 急いで部屋に向かうとそこには昨日いた自称布団の少女の他にもう一人、枕の代わりに少女が……

 

「勘弁してくれ……」


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