二次創作でさえ、よく死ぬ男剣士。
一度死んだ彼は、どう生きるのか。
「ゴブスレ二次での男剣士君の生存率の低さよ。
マンボウより生存率低そうですね」
これに着想を得て、勢いで書き上げました。
それでは、どうぞ。
俺たちは、ゴブリン退治に来たはずだ。
最弱の、あの
はじめての
ゴブリンどもを叩き斬って。
もらった報酬で、ちょっとした宴会を開く。
そうなるはずだ。
だって、それが『冒険者』なんだから。
ゴブリンなんて楽勝だ。
俺は、村に来たヤツを追い払ったこともある。
だから、四人もいれば負けることはない。
それが当然だと思っていた。
けれど。
そうは、ならなかった。
巣穴に乗り込んで、まっすぐ奥に進んだ。
後ろから
そのはずなのに、来た。
気づいた時には、女魔術師が倒れていた。
おのれ。よくも。
そう言って、剣を振り回す。
あの
問題なんてないはずだ。
そうしているうちに、一匹、二匹と殺していく。
やった。倒した。やったぞ。
「さぁ、どうした!来い!」
やっぱり、
倒せる。倒せるんだ。
俺がゴブリンなんかに、負けるわけがない。
近くにいた、もう一匹に迫る。
こいつらは、体は大きくない。
頭も、そんなに良くない。
俺よりも、弱いんだ。
だから倒せる。倒せるんだ。
剣を横に振る。
ゴブリンが、それをしゃがんで避けた。
おのれ、ちょこまかと。
すると急に。
足に、激痛が走った。
「ぐ、あぁぁ!!」
左の太ももに、短剣が突き立てられたのだ。
痛い。痛い。くそ。痛い。
この野郎!
怒りに任せて、剣を振るう。
目の前の
くそ。まだ痛い。
でも、大丈夫だ。
これくらい、ゴブリンくらい、どうってことない。
俺は、こんなところで負けない。
俺は、騎士になるんだ。
見れば、もう三匹、こちらへ来ていた。
「じゃ、まだァッ!!」
叫びながら、その方向へ突っ込んだ。
いける。
そう確信して、剣を大きく振ろうとして。
ガイィン。
と、音がした。
なんだ、と思う前に。
剣が、手から落ちていた。
ただ、それだけのこと。
俺が、そんなことに気づいたのは。
俺を
短剣や棍棒でめった打ちされて。
だんだん意識が遠のいていく、その時だった。
あぁ、ごめんな。
暗くなっていく視界の中で。
遠くに見える幼馴染に、心の中でそう呟いて。
それから、たぶん、俺は死んだのだろう。
ーーー
ーーー
風が、頰を撫でる感触がした。
なんだろう、と思って目を開く。
寝転がる俺の前に、草原が広がっていた。
風が、少し気持ちいい。
へぇ、これが天国か。
あの世、っていうのはよく聞くけど。
結構、平凡なとこなんだなぁ。
ちょっと呑気に、そんなことを考える。
でも、あれ。
なんだかこの景色、懐かしいような…
見覚えが、あるような。
「あーっ!こんなとこにいた!」
不意に、後ろから声がした。
聞き覚えのある声だ。
何回聞いたかもわからない。
でも、いくらか幼い印象のその声は。
「ちょっとー!今日はお昼からお手伝いでしょ?」
俺の、幼馴染の声だ。
なんで、と言う前に。
思わず身体を起こしてから気づいた。
視点が、低いのだ。
いや、視点が低いというよりも。
これじゃあまるで、子どもみたいじゃないか。
そう思いながら、前を見ると。
まだ小さかった頃の、
「おとーさんたち、カンカンだよ?はやくっ!」
呆然とする俺の手を引いて、彼女は走り出す。
なんでだ。俺は、死んだはず。
だんだん、わけがわからなくなってきた。
その後のことは、あまり覚えていない。
ーーー
あれから数日、熱を出して寝込んだらしい。
だけど、少し頭の中を整理する時間ができた。
ここは、俺の生まれた村だ。
家族も、近所も、何も変わらない、俺の村だ。
森も、川も、畑も。
俺が、農家の次男坊だってことも変わらない。
そんでもって、俺は今、完全に子どもだ。
つまりは。
そういうことだろう。
唯一、変わっているものがあるとすれば。
それは俺だ。
俺は一度、死んだ。
夢かもしれない、とも思った。
だけど。
足に刺さるナイフの感触や。
体を、くまなく棍棒で叩かれた記憶は。
吐きそうなほどに、リアルだった。
それに俺には、これから先の記憶がある。
15になるまで、家の手伝いをして。
街へ出て、冒険者になって。
すべて、覚えていた。
ひょっとしてアイツも、と思って聞いてると、
「…?だいじょーぶ?まだ熱あるの?あたま、おかしくなったんじゃない?」
と答え、心配された。
小馬鹿にしたように、その顔は少しにやけていた。
あんにゃろう。
…まぁ、その話は置いといて。
いろいろ落ち着いた後に、最初に思ったのは、
『強くならなくちゃいけない』
ってことだった。
いずれにせよ、15になったら村を出る。
一度殺されて感じたのは『怒り』だった。
ゴブリンへの怒りもある。
だが、それ以上に。
自分への怒りのほうが大きかった。
ほぼ何の準備もせずに。
アイツらは雑魚だからと、慢心して。
あっけなく、死んだ。
どう考えても、
俺が、あいつらを死なせたんだ。
俺がもっと強くて、頭が回っていれば。
受付嬢さんの、忠告をしっかり聞いていれば。
あんなことには、ならなかったかもしれない。
だからこそ、強くならなくちゃいけない。
これから先で会う、仲間を守るためにも。
それから、行動に移すのは早かったと思う。
でも、それじゃあ足りない。
何を、すればいいか。
考えた結果、たどり着いたのは。
農民として、頑張ることだった。
冒険者になるのを諦めたわけではない。
農村の仕事は、そのほとんどが重労働だ。
基礎体力づくりにはピッタリなのである。
畑を耕し、家畜の世話をして。
家族からは、急にどうした、と驚かれたが。
とにかく、働きまくった。
数日後、俺は過労で気絶した。
ーーー
そうして、二ヶ月が過ぎた。
重労働にも慣れてきた頃、ある人の存在を思い出した。
村で唯一、『戦い方』を知っている人物。
思い立ったが吉日。
俺はアイツの家まで走った。
この村に、剣の扱いを心得ている者はいない。
それなら、格闘術でも。
別に、武闘家になりたいわけではない。
体の正しい使い方が知りたかったのだ。
思い返せば、
喧嘩で勝てたことも、一度もなかったのだ。
ならば、それを教えてもらおう。
強くなれるなら、なんだってやってやる。
そんな気持ちだった。
結論を言うと、親父さんは
…そこまでは、よかったんだ。
教え子が増えたことが、よほど嬉しかったのか。
修行は、次第に激しさを増していった。
早朝の走りこみに始まり、畑仕事の合間は全て修行。
腕立て伏せや腹筋はもちろんのこと。
崖登りや滝行など、その種類は多岐に渡った。
この間も、家の手伝いを休むことはできない。
疲れ果てて家に帰り、泥のように眠る日々が続いた。
アイツは、こんなことをずっとやっていたのか。
メニューは俺と同じだ。
それに加えて、アイツは組手もしている。
なのに、いつも涼しい顔をしていた。
修行中に思わず、
「バケモンだな」
と呟くと、
俺は気絶した。
ーーー
そんなこんなで、半年が過ぎた。
毎日の修行にも慣れてきたころ。
親父さんに、今日から型を教えてやる、と言われた。
どうやら、第一段階はクリアしたらしい。
実際に、それを見せてくれた。
曰く、体の軸は真っ直ぐに。
曰く、呼吸のリズムは一定に。
多くの言葉で、表現されるそれを。
毎日、毎日体に染み込ませる。
暇さえあれば、繰り返し練習した。
とはいえ、そのうちに試したくなってくる。
組手はまだ禁止されていたが。
…まぁ、言いつけは守らないとな。
結局、俺は子どもだった。
我慢できずに、アイツに頼み込んだのである。
土下座までした俺を見て、渋々承諾してくれた。
組手が始まった。
数秒後、俺は気絶した。
ーーー
型を教えてもらってから、一年が過ぎた。
もう、基本は身についている。
思えば、畑仕事やいつもの修行も、ずいぶん楽になった。
今日から、組手が正式に解禁された。
親父さんが俺を軽くあしらいつつ、要所要所で解説を入れる形で教えてくれる。
一ヶ月ほど、それが続いた。
そんな折、親父さんが申し訳なさそうにこう言った。
「その…、こう言ってはなんだが、君には、格闘技の才能があんまりないみたいなんだ」
うぐっ。
若干気づき始めていたが、やはりそうか。
基本的な型は習得できた。
だが、拳での実戦となると、途端に下手になったのが、自分でも理解できていた。
親父さんに、まともに当てたことさえないのだ。
まぁ、もともと格闘家になるつもりもないし。
別に、アイツに素手の喧嘩で勝てないからといって。
悔しくはない。
…悔しくはない。本当だ。
そのあと、またアイツと組手をした。
いくら才能がないとはいえ、前にやってから一年だ。
意地でも、一発ぐらいは入れてやる。
そう思っていた。
始まった瞬間に。
アイツが距離を詰めて。
俺の金的を蹴り上げた。
俺は気絶した。
ーーー
それから何年か経った。
もちろん、訓練その他もろもろは全て続けている。
「君は、武器を使う方が合っているんだろうな」
俺が木剣を振り回しているのを見て、親父さんはそう言ってくれた。
その結果、通常の組手の頻度が減り。
代わりに木剣を使っての
もちろん、俺も親父さんも剣術は知らない。
身につけた型を原形に、奮闘した。
アドバイスを受けながら、形を作っていく。
親父さんも楽しくなってきたようで、
「いっそのこと、新流派でもつくっちゃおうか」
と言う始末だった。
まぁ、親父さんが振った剣はあさっての方向に飛んでいくわけだが。
そして、苦節数年。
ようやく、ギリギリ『剣術』と呼べるような代物になってきたころ。
おれはアイツに、再戦を申し込んだ。
女子を相手に、男が木剣を持って。
これはどうなんだ、と思わなくもない。
だがしかし、試したいのも事実だ。
親父さんの合図の後、組手が始まった。
突っ込んでくる。けっこう低い姿勢だ。
あと数歩、というところで。
アイツの姿が、消えた。
どこだ、と思う前に。
体をさらに低くしての、蹴り。
それはもう、クッソ痛かった。
痛がれば当然、隙が生まれる。
一瞬止まった俺に、アイツが仕掛ける。
俺の顔面に、回し蹴りが撃ち込まれた。
俺は気絶した。
ーーー
それから少し時間が経った。
現在、村は賑わっている。
森の怪物の討伐に、冒険者が来たのだ。
そういえば、あったな。こんなことも。
4人組のその
中堅の中でも、トップクラスの実力者だ。
こんな田舎の村にとっては一大事だ。
仕事を終えた冒険者たち囲み、
さながら、祭りのようだった。
その中に一人、剣士がいた。
祭りには参加せず、村の入り口あたりに座っている。
鈍く光る銀色の甲冑。
剣士というか、騎士のような彼を見て、少し興奮していたのかもしれない。
「あ、あの、俺!冒険者になりたいんです!」
突拍子もない、ただの宣言のようなそれに対して。
彼は腰から短剣を取り出し、
「振ってみろ」
と言い、また少し離れた場所へ座った。
はい、と返事をしてから。
親父さんと一緒に編み出した、剣を振るう。
思えば、これを他の誰かに見せるのは初めてだった。
しばらくして、彼はやめるように言ったあと、
「筋が、いいな」
と呟いて、宿へ戻っていった。
それはやる、と言われて俺が受け取った短剣は。
少し、血のにおいがした。
ーーー
彼らが去って、数日後。
貰ったばかりの短剣を腰に提げながら。
いつものごとく、村の周りで走り込みをしていた。
すると。
がさり、と。草むらから音がした。
ゴブリンだ。
その瞬間、脳裏にあの光景が浮かぶ。
囲まれ、棍棒や短剣で滅多打ちにされた、あの時。
忘れるわけがない。
自分が殺されたことを、忘れるわけがない。
剣を持つ、手が震えていた。
たぶん構えも、ガタガタだろう。
そんな俺を見てか、ゴブリンの顔が醜く歪む。
笑っているのか。
震えている、俺を見て。
それが分かると、途端に俺は冷静になった。
…コイツは、
油断している。
この人間は殺せる。楽勝だ、と。
そんな風に、考えている。
そんなヤツなら、殺すのは容易い。
きっと俺を殺した
その後は、簡単だった。
なるべく緩急をつけ、低い姿勢で一気に近づく。
そして、
大きく斜めに、切り上げた。
これは、俺と親父さんの技。
時間にして、わずか数秒だっただろう。
俺の足元には、既に息絶えたゴブリンが転がっていた。
ーーー
あの後、村の大人たちにこっぴどく叱られた。
子どもが怪物と戦うなんて何考えてるんだ、とか。
村の外に子どもが出ちゃいかんだろう、とか。
子どもが剣を持つなんて俺は反対だったんだ、とか。
…何個かは、今さらな気がしたが。
たしかに、子どもが血まみれで帰ってきたら、そりゃ驚くか。
一通りの説教が終わって、俺は日常に戻っていた。
今日も今日とて、アイツとの訓練だ。
と、思ったが、なんだかいつもと違う。
あれは、…怒っている、のだろうか。
さては、一足先に冒険デビューした俺を
…なんか、そう思うと悪い気はしないな。
どおれ、この
なんたって、
ふふふ。
悦に入りながら剣を構えていた。
すると、一瞬で彼女の姿が消える。
しまった、と思った時には。
既に、懐に潜り込まれていた。
「こんの、馬鹿ッ!」
叫びとともに、
俺は気絶した。
ーーー
数年後。俺たちが14になった年。
親父さんが、死んだ。
彼の死に目には、俺も居合わせていた。
「娘を頼む」
俺にそう言って、親父さんは死んだ。
葬儀の間は、ずっと雨が降っていた。
アイツは、ずっと泣いたままだった。
「お前は、俺がずっと守るよ。約束する」
親父さんの、遺言だし。
それに、俺の本心であることに変わりはない。
「カッコ、つけすぎ、だっての…!」
彼女は、泣きながら。
顔をぐしゃぐしゃにして、笑っていた。
その半年後、俺たちは冒険者になった。
ーーー
場所は変わって、冒険者ギルドの中。
「なぁ、俺たちと一緒に冒険に来てくれないか?」
「ふぇっ?」
先ほど冒険者登録を済ませた、神官らしき女の子。
その
「君、神官だろ?」
「あ、えと、はい。そう、ですけど」
「ちょうど良かったよ。俺の
俺の後ろには、二人の少女の姿。
髪を束ねて道着を着た、おれの幼馴染と。
杖を持ち、眼鏡をかけた娘。
武闘家と、魔術師。
「俺の
ふたりへ視線を向ける女神官に、そう言った。
そう。
「急ぎの依頼で、できればあともう一人欲しいんだ。お願いできないかな?」
確か、こんな頼み方をしたはずだ。
「急ぎ、と言いますと……?」
そして、俺が、こう答えたんだ。
「ゴブリン退治さ!」
今度は、もう失敗しない。
薬も、松明も、人数分用意できている。
力も、技術も、格段に向上した。
もう、油断はしないし、誰一人死なせない。
俺たちの冒険は、ここからだ!
いかがでしたでしょうか。
一人称視点は初めてだったので、拙い部分が多かったかと思います。
途中に出てきた
感想や評価はお気軽にどうぞ。
続くかどうかは、わかりません。