ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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前回 69話
ビッグ・マムの訃報が世界経済新聞によって報じらされ
バルディゴにいる革命軍はバージェスとクラハドールの手引きでやって来た海軍の襲撃で本部は壊滅するもドラゴンたちは脱出していた。しかし、それは海軍にとっては予想のうちだった。 
カライ・バリ島にいるバギーはカイドウを狙うことを宣言
一方、ルフィたちはグラン・テゾーロにて戦いの疲れを癒し、ルーミアと電伝虫で連絡を取る。


70話 悪巧み

 

 

【グラン・テゾーロ】

 

 

 電伝虫でのルーミアとの対話を終えた後のこと、腕を組んで何か難しいことを考えているような表情が堅い顔でルフィは誰に言うわけでもなく唐突に呟いた。

 

 

「なんかよくわかんねえけど、たぶんアイツは──

 

 “カイドウを倒してみせろ”

 

 ……って言いてえと思うんだ」

 

 

 途中、ルーミアの真似のつもりだろうか、意地の悪そうな顔でそんなこと宣う。その後もルーミアの言動に対してルフィたちは思うところがあり仲間内で話し合おうとしたが……

 

 

「ここでうだうだ考えたって答えはそう簡単に出ねえだろうし、どうにもならねえんだ。だったら先を急ごう」

 

 

 ……という船長であるルフィの案により彼らは『ワノ国』へ進むことを決定した。

 

 

 

 

 やがて麦わらの一味が巨大豪華客船グラン・テゾーロでの物資の補給と船の補強が一通り終わり出航した後、彼らが出航していくのを見届けたエースがグラン・テゾーロを離れる際、見送りに来たテゾーロに向けて周囲に誰もいないのを確認した上で彼は言った。

 

 

「ティーチは命に別状はないけど、見るも無惨な姿になっちまってる。

 ……まあ、いずれは会わせるけど、今はダメだ。

 こちらが落ち着くまで待ってもらえないか?

 首に縄を引っ掛けてでも会わせるからさ?」

 

 

 申し訳なさそうに頼み込むエースの姿にテゾーロは苦笑いを浮かべつつも了承し……

 

 

「正直な話、君はこれからどうするつもりなんだい?

 無論、答えられる範囲で構わないが……」

 

 

 そう尋ねるテゾーロにエースは軽いおつかいでも済ますような軽い感じで答えた。

 

 

「ちょっと兄弟を止めに行こうと思ってる」 

 

 

 

  

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 2年ほど前の頂上戦争後、七武海に任命されたルーミアがシャボンディ諸島を支配するようになってからその島々の一角にはいつの頃か「港」と呼ばれるようになった場所がある。

 

 そこにはコーティングを施してくれる職人や船等を牽引する海獣とそれらを管理している魚人などが集まり、さらには魚人島、あるいは他の島へと向かう船とその乗組員たちが集まるようになり、そこがさながら「港」のよう見えることから、いつしか「港」と呼ばれるようになりシャボンディ諸島の玄関口とも言える場所になっていった。

 

 そんなある日、港でいつもとは違う喧騒が起きていた。

 

 

聞こえなかったのか!!

 ルーミアを出せと言ってんだ!!!

 

 

 身長が2mを超すのがざらにある魚人たちよりもさらに倍近くの体格を持った大男──ゲッコー・モリアが港へと続く大通りで騒ぎを起こしていた。

 

 

「うるせえぞ!! モリア!!

 お前は自分の手下にママの遺体と悪魔の実を奪わせるためにうちに潜り込ませただろう!? ふざけるな!!」

 

 

 ちょっとした人だかりになっていた大通りを二つに割ってモリアの前に現れたのは先日の戦争で敗北し、ルーミアの傘下に下ったビッグ・マム海賊団のペロスペローだった。

 

 彼はルーミアの指示で妹のブリュレとともにシャボンディ諸島に来ていた。

 

 目の前のモリアが手下に死体泥棒させた元凶なだけに敵対心を剥き出しに食って掛かるペロスペロー。モリアを睨みつつ自分がここに至るまでの経緯とビッグ・マム亡き後の兄弟たちとのゴタゴタを思い返す。

 

 

  

 

・・・・・・・・・・

 

 

ママが倒されるなんて

 誰も思わないだろ!?

 

 

 敵に暗示をかけられたとはいえ、自分たちの船長であるビッグ・マムを孤立化させるよう仕向けたことで兄弟たちから槍玉に挙げられたペロスペローだが、彼も兄弟たちに負けず劣らず怒鳴り返して反論する。

 

 だがお互い喚き散らしても一向に進展することがない話し合いに嫌気が差したのもあるだろうが……場が落ち着くのを見計らっていたのだろう、今まで静観を決めていた兄弟の一人カタクリが口を開く。

 

 

「俺たちはあまりにも敵を作りすぎた……

 今はルーミアの傘下に入った方がいい。

 ペロスペロー兄さんと話し合ったが、今のビッグ・マム海賊団にママに代わる戦力、象徴が必要だ」

 

 

 坦々と語るカタクリの言葉に静かに聞き入れる一同。うち一人が好奇心から尋ねた──その象徴はどうやって調達するのか? ……と。果たして答えたのはペロスペローだった。

 

 

 

「ジェルマと協力して“カタクリ”と“ルーミア”の合いの子を作る。やつらの科学なら可能なはずだ!!」

 

 

 どこか狂気を感じさせる暗い表情で答えるペロスペローにその場にいた兄弟たちがおののく。ペロスペローはそんな兄弟たちの反応など気にする様子なく語っていく。

 

 

うまくいけばママ並みの武装色の覇気と!!

 カタクリ並みの見聞色の覇気!!

 さらに二つの悪魔の実の能力を持ったママを超えた怪物が誕生する!!

 

 

 その後、自分に酔いしれたのか不気味に笑い続けるペロスペローだったが、「大変です!」と汗だくで報せを届けに部屋に入って来たであろう兵隊の一人に顔をしかめる。

 

 

ママのご遺体と悪魔の実が入った箱が消えました!!

 

 

 しかし顔を青ざめさせて報せる兵隊のその内容にペロスペローだけでなく他の兄弟たちも慌てふためいた。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 その騒動で国中が大騒ぎになったのを思い出したのか、モリアを見るその目付きはさらに険しくなる。

 

 

(──幸い、悪魔の実はニセモノにすり替えておいたし、ママの遺体も行方を晦ませられる前に奪い返せたからよかったものの……)

 

 

 件の事件の折、ペロスペローを中心に兄弟たちはあらゆる伝で下手人を捜索、その末に捕縛することに成功した。

 

 その後、また今回のように悪魔の実を奪われることを危惧した彼らはいっそのこと国内の人間に食わせることを思い付く。

 

 そこで白羽の矢が立ったのは双子の姉妹であるローラとシフォンの父親パウンドであった。ペロスペローは双子の姉妹が起こした罪を帳消しにする代わりに悪魔の実『ソルソルの実』の飲食とビッグ・マムが国内で行なった魂の徴収を命じた。

 

 そして、いずれ現れるであろう万国(トットランド)の新たな支配者にその命をもって『ソルソルの実』を渡すことも……

 

 

「ルーミアがいる場所に案内してやる。ついて来い」

 

 

 そう一方的に告げるとモリアの返事を待たずに来た道へと引き返していき、モリアもまた遅れてしぶしぶと後をついていった。その先には周囲にある建物よりも巨大な建造物が建っていて、その屋上には白い鯨を象ったシンボルが置かれていた。

 

 

 

 

 その白い鯨の形をした建物の中にはルーミア専用の部屋が設けられており、畳で敷き詰められた和風のその部屋の中央には白い涼しげな浴衣姿に白い鯨を模した帽子を被ったルーミアと足の短いテーブルを挟んで向かい合うように白いスーツと仮面を着用した細身で長身の男が正座を崩した格好で座っていた。男はCP「サイファーポール」と呼ばれる諜報機関の属する人間だった。

 

 

「わはははははー。酷いことするなー。五老星の指示かな?」

 

「……君が知る必要はない。我々は君たちの『悪魔の実』を抜き取る力に目をつけて、それを利用することに決めたのだ。

 そうすれば、わざわざ『インペルダウン』なんてものに囚人を生かしたまま放り込む必要はなくなり『悪魔の実』が手に入る。君にも我々にもメリットはある」

 

 

 そう言って立ち上がると……

 

「私はそろそろ、お暇するとしよう。

 なにやら騒がしいのが来るようだしね?」

 

 ──と別れ際にそう言い残して部屋から去った。 

 

 

 それから暫くして二人の男が言い争う声と無遠慮な足音が段々とルーミアのいる部屋へと近づくにつれ音が大きくなっていき、やがて……

 

 

オレの手下をどこへやった!?

 

 

 巨大な襖を左右に思いっきり強く開け放つと同時に見るからに怒り心頭に発しているモリアがそんなことを宣いながら現れた。その後ろにはモリアの陰に隠れるような形でペロスペローの姿も僅かながらも見える。

 

 ルーミアは問い詰めてくるモリアに対して答える代わりに自分の真後ろを親指で指差す。

 

 モリアがルーミアの行動につられて彼女が指差す背後を見てみると──

 

 

「アブサロム!!」

 

 

 ルーミアの背後には巨大なモニターがあり、そこにはモリアの探していた人物が映し出されていた。

 

 薄暗い部屋の中、後ろ手で拘束された状態でイスに座らせられ、両目も目隠しされ、シャボンディ諸島で奴隷につけられる首輪もつけられている。さらに両隣には逃がさないための見張りか、顔こそ影で見えにくいものの男が二人、側で立っているのが見える。

 

 

「てめえ今すぐアブサロムを放しやがれ!!」

 

 

 足下の影から目玉のない球形の体を持ったコウモリを生み出し周囲に浮かばせるモリア。しかし、前にいるルーミアだけでなく後ろでアメを垂らしているペロスペローも気にしてるのだろう、すぐに襲うような短慮な真似はせず、その場で押しとどまる。

 

 モリアとペロスペロー、双方がいつ襲い掛かってもおかしくない剣呑な雰囲気が漂う中でルーミアはモリアに対して取引を持ちかける。

  

 

「……麦わらの一味と交戦して海底に沈んだカイドウの手下、それも大看板とその部下の遺体……」

 

 

 ──それで手を打たないか?

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 モリアが去った後、バロック・ワークスで雇っている女性店員の力を借りて和装からいつもの服装に着替えたルーミアは腕を左右に広げたポーズで機嫌良さそうに鼻歌を口ずさみながらシャボンディ諸島のとある場所に向かって大通りを歩いていた。

 

 そのルーミアの後ろには見るからに疲れた顔をしたペロスペローが彼女の後をついている。他にもバロック・ワークスのマークを服につけた人間も数名ほど見受けられる。

 

 道中、ふと気になったのか、ペロスペローは前を歩くルーミアに先ほどモリアとの間で行われた取引について尋ねる。

 

 

「おいルーミア、あのモリアのやろうはお前からの()()()を断ったがいいのか?」

 

 

 そう尋ねつつもペロスペローは内心ではジャックの遺体でゾンビなんぞ作ろうものならカイドウの怒りを買うことになり、そうなればモリアはただでは済まないことになるだろう……と考えていた。

 

 モリアもまたそうなる可能性が高いことが分かっていたから断ったことだろう……とも考えていた。

 

 

不服か?

 

!!!!

 

 

 ペロスペローから尋ねられたルーミアは急に立ち止まり後ろを振り向いて無表情でそう問い返すと、ペロスペローは慌てた様子で理由を述べる。

 

 ルーミアの怒りを買って文字通り雷を落とされたら堪ったものではないからだ。それにルーミアの雷は己の母を死に追いやったものでもある。今、彼の脳裏には雷と黒い巨大な塊が島を壊していく記憶が蘇っていた。

 

 

「“ママ”と“ソルソルの実”は俺たち『ビッグ・マム海賊団』の良くも悪くも象徴だ。それを盗んだコソ泥を無罪放免で自由にするどころかオモチャを与えるのは他の連中に舐められる上にこちらの面子が立たない! 表立って言わないが納得できない兄弟たちもいるはずだ! こっちの身にもなって考え直してくれ!」

 

 

 一気に捲し立てるように早口でべらべらと喋り出す。そんなペロスペローの様子がおかしいのか、振り向いた姿勢のままでルーミアは目を細め、口を弧の形に歪ませてから唇を動かしていく。

 

 返事を聞いたペロスペローは人の悪そうな悪どい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「……また悪巧みか……?」

 

「ホホホ。シリュウ、あなたは黙っていなさい。姫が話してる最中ですよ?」

 

 

 ルーミアとペロスペローを遠巻きにして眺めている人たちによって二人を取り囲むように出来上がっていた人だかり。その人だかりがひとりでに二つに割れて二人の大男、シリュウとラフィットが現れた。

 

 

「ウィ~ハッハッハァー!

 お嬢! 今、帰ってきたとこだぜ!」

 

「ここでは潜入も執事のやる仕事のうちに入るのか?」

 

 

 次いで同じようにして覆面の大男、バージェスとそのバージェスが隣にいるせいで小さく見られるが周囲にいる成人男性よりは背が高い執事姿のクラハドールの二人も現れる。

 

 

……モリアは、巡り合わせが悪いな……

 ……麦わらと、出会ったばかりに……

 

「仕方あるまい。やつはそうなる星の下に生まれたのだろう」

 

 

 さらに体の弱そうな馬に跨がったこれまた体の弱そうな大男、ドクQと長銃を肩に乗せたスコープ状の片眼鏡をかけたオーガー。

 

 

「は~~~い、ルーちゃん、ご機嫌いかがぁー?」

 

「社長! 我々は特設ステージで落ち合う約束をしたはずだガネ!? 勝手に移動するのはいかがなものガネ!?」

 

 

 バレエのように爪先立ちで移動しながら近づいてきたオカマの大男、ボン・クレーと彼に苦言を呈している数字の「3」という髪型からそのままMr.3と言われているギャルディーノ。

 

 

「わはははー、せっかくだ。このまま向かうとするかなー?」

 

 

 そう言うと先陣を切って歩き出すルーミア。他の男たちもルーミアに連れて動き出す。ルーミアを中央に左右には彼女よりも体格の大きな男たちが彼女に従って歩く様は、多少の例外はあるものの名の知れた実力者はいずれも体格が大きく立派なのが多いこの世界において彼女のその小さな体は物珍しく異質であるといえよう。

 

 

「ルーミア様! ありがとうございます!

 おかげさまで妻が戻って来ました!!」

 

「出来立ての甘いお菓子がありますよ! 一口どうです?」

 

「俺たち魚人も感謝してるぜ!

 まあ、未だにここで人さらいやってる命知らずな連中がいるけどな!」

 

 

 しかし、ルーミアの恩恵を受けている島の住人たちは気にもせず好意的な声をかけてくる。ルーミアはそんな彼らに笑顔で手を振って応え、先を急ぐ。そのルーミアの行く先には彼女を待ち構えていた集団がいた。

 

 

「待っていたぞ! ルーミア!

 いくらお前でもビッグ・マムとやり合って無傷で済むはずがねえ! 

 弱ったお前らをぶちのめしてここをおれたちのシマにさせてもらうぜ!!」

 

 

 立ちはだかるのは己が船長だということを知らしめているのか海賊帽子を被った男たちの集団その数10数名ほどとその配下らしきガラの悪い男たちの軍団からなる軍勢。

 

 それが船長格の号令とともにルーミアたちに向かって駆け寄り……

 

 

「「!!!!?」」

 

 

 交差したと思った瞬間、船長格の男たちは驚愕した表情でぼろぼろの姿で宙に舞い、配下の手下たちは一人残らず足下に広がっている“闇”に呑み込まれていく。

 

 

機は熟した。

 オヤジの課題も果たした

 

 

 背後で宙に舞った人間たちと呑み込まれて消えていく船員たちを尻目にルーミアは誰に言うわけでも静かに語り出す。しかし、その声はどこまでも響き渡り、不思議と誰の耳にもすんなりと入ってくる。

 

 

なぜオヤジが海賊王にもっとも近い位置にいながら海賊王にならなかったのか……

 

 それを教えに行こうか?

 

 

 言い終えると同時に船長格の人間たちが地面に落ち、逆に“闇”に呑み込まれていた手下たちは勢いよく天に向かって噴き出し、ほどなくして地面に落下した。

 

 周囲の島の住人はルーミアたちに襲いかかった襲撃者たちが気絶して動かなくなるのを確認すると、しばらくして誰からともなく歓声が沸いた。

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…
▪️テスト用に前のおさらいを前書きにさらっと書いてみたよ。
▪️過去に書いていたボーボボでも書いてたんだよね。たぶん。
▪️心底どうでもいいが……
「おれが…「おれたちが」ガンダムだ!!」
 ──みたいにカギカッコの中にカギカッコ書く人、増えてるの何でだろ?
 言いたいことはわかるが、あれ誰が言っているのか、わかりにくくね?

ルーミアの懸賞金、どれくらいが妥当? ちなみに私は15億にしようかと思っている。

  • ルフィがエニエス脱出した時の4億
  • ルフィが新世界突入した時5億
  • ルフィがカタクリ吹っ飛ばして15億
  • 黒ひげがつけられたのは22億4,760万

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