駆逐艦の妹たちとクリスマスを過ごしたいだけの人生だった……

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連載の方が年内に続き書けるか微妙だったので、息抜きに書きました。


重桜幼稚園沿岸クリスマス空襲戦

⚓ 12/23 正午 重桜幼稚園寮舎

 

睦月「みんなーことしもクリスマス、だね! サンタさんになにおねがいするか、きめた~?」

如月「き、きさらぎは、だいすきなみんなといっしょにしちめんちょーやケーキたべられたら、すっごくうれしいな……」

三日月「……たいやきもたべたいー。たべきれないくらい、おっきいやつ」

水無月「ふっふっふ~、わたし、サンタさんがプレゼントいれるくつしたにイタズラしちゃお♪」

卯月「あわわわ、サ、サンタさんにおねがいするにはくつしたがいるんだっけ? わたし、きょねんはまちがえて、てぶくろおいちゃったよぅ……」

文月「およ? そういえばねぇ、アークロイヤルさんが……」

 

⚓ 12/24 深夜 重桜幼稚園沿岸

 

サンタ?「……そして貴艦は、いたいけな子どもたちに『一日中履いている脱ぎたての靴下を枕元に置けば、欲しいクリスマスプレゼントが貰える』などというデマを吹聴し、今晩、その靴下を回収しようとしている。罪状に間違いはないか、アークロイヤル」

アークロイヤル「そこを退いてくれ、エンタープライズ! 何もかもが間違っているぞ!」

エンタープライズ「エンタープライズではない! 私は†サンタクロース†だ!」

アークロイヤル「真に迫った顔で言うな、なんか怖いぞ! 私はただ、愛おしい駆逐艦の妹たちの靴下に染みわたったそのミルクのような甘く芳醇な香りを鼻腔いっぱいに吸い込んだ後靴下の中に詰められたその覚えたてのところどころ間違えていたり歪みながらも一生懸命にサンタさんに宛てて書いたサンタさんにお願い❤メッセージカードを隅から隅まで舐めるように見回しその内容の尊さに涙を流しながらこの肩に背負っている大袋からおもむろに☆アークロイヤル特製☆クリスマスプレゼントをおもむろに取り出した後駆逐艦の妹たちの愛くるしい寝顔に心奪われながらそっと枕元にプレゼントを忍ばせクールに去るだけだ。邪魔をするな!!!」

エンタープライズ「うわぁ……。妙に早口なのが気持ち悪いな……。よし、有罪だ、そこに直れ。自由と正義とサンタクロースの名の下に、このドーントレスが貴艦に鉄槌を下すだろう」

アークロイヤル「クッ……! ユニオンの連中はいつもそうだ。己が身勝手な正義を振りかざし、悪と断定するものを容赦なく叩き潰す。ソードフィッシュ、発艦! 何故だ、何故……! 駆逐艦の妹たちを愛している、それだけのことを何故、お前たちは許容しようとしない!?」

エンタープライズ「子どもたちを愛するのはいい。問題は、そこにいかがわしい感情を含むからではないか」

アークロイヤル「ぐっ……エンタープライズ、貴様ーーーッッ!!!」

エンタープライズ「言い逃れできないからといって勢いで話を進めようとするな、アークロイヤルーーーッッ!!!」

 

ドカーン

 

アークロイヤル「わたしは死んだ。クリスマス(笑)」

エンタープライズ「フッ……志は対極にあるとはいえ、好敵手のよしみだ。貴艦の用意したプレゼント、検閲の末、子どもに悪影響を及ぼさないものなら渡しておいてやろう。ふむ、これは……」

アークロイヤル「……それは睦月ちゃんに渡すアークロイヤル謹製☆アメさん積み合わせセットだ。選べる味は驚異の21種、そして全てのアメにはこのアークロイヤルの柄が描かれている。睦月ちゃんに、わたしの全身をくまなく舐め回して欲しい……」

エンタープライズ「うわぁ……」

アークロイヤル「それは如月ちゃんに渡す睦月型駆逐艦たちの1/7スケールフィギュアだ。心優しい如月ちゃんが、大好きなみんなといつでも一緒にいられるようにとの計らいだ。なお、実際にみんなが身に着けている下着の柄まで忠実に再現している」

エンタープライズ「うわぁ……」

アークロイヤル「それは卯月ちゃんに渡すピンクの可愛い携帯電話と24時間アークロイヤルサポートのフリーダイヤルとパンフレットだ。いつもドジやミスをしてしまう卯月ちゃんを24時間体制でサポート。探し物も、迷子の時も一報があればこのアークロイヤル、いつでもはせ参じる所存だ」

エンタープライズ「うわぁ……」

アークロイヤル「それは三日月ちゃんに渡すたいやきだ。とってもデカイぞ。もちろん、人魚っぽい感じのこのアークロイヤルが生地に描かれている。水無月ちゃんに食べられるのなら頭からでもお尻(尻尾)からでも構わないが、できれば首筋から優しく齧りついて欲しい所だ」

エンタープライズ「うわぁ……」

アークロイヤル「それは水無月ちゃんに渡す『サラトガちゃん完全監修☆魔女っ子アイドルステッキ☆彡』だ。水無月ちゃんがイタズラの先輩として懐いているサラトガのステッキを模したオモチャだ。衝撃を加えると砲の部分が光ったり、「お姉ちゃん、ダイスキ♥」と喋る(サラトガの声で)」

エンタープライズ「うわぁ……」

アークロイヤル「それは文月ちゃんに渡すフワフワ帽子付きパジャマと枕だ。いつも天然でフワフワの文月ちゃんは、フワフワしたものが好きだからな。なお枕は定番のYes-No枕となっており、Yesが表だった時は合法的に文月ちゃんのベッドに潜りこむ所存だ」

エンタープライズ「うわぁ……」

アークロイヤル「……貴様には分からんのだ。萎縮するユニオンの者たちに真顔でプレゼントを配り困惑させる貴様には、真に†真心†の籠ったプレゼントというものが」

エンタープライズ「いや、全く分からないし、分かりたくもないが。……えっ、私、ユニオンのみんなを困らせてたの?」

アークロイヤル「だが……わたしが沈むとあらば、頼りになるのは貴様だけだ……。駆逐艦の妹たちの靴下を嗅ぐことは叶わなくとも、せめてわたしのプレゼントで、子どもたちを笑顔に……」

エンタープライズ「いや、どう考えてもドン引きなので、検閲の結果、全部処分だぞ」

アークロイヤル「えっ」

 

アークロイヤルは沈没した。

 

⚓ 12/25 午前 軍港居住スペース 大広間

「「「「「「アークロイヤルさーーーーーーん!!!」」」」」」

 大広間に飾られた巨大なクリスマスツリーに、失意のあまり一晩中もたれかかってアークロイヤルの耳に、なんとも愛らしい駆逐艦たちの声が届いた。突如現れた地の文と子どもたちにアークロイヤルは困惑する。

「あ、ああ、どうしたんだい、可愛い駆逐艦の妹たちよ。無事にクリスマスプレゼントは届いたかな?」

 そう彼女自身が口にした言葉には陰があった。エンタープライズの妨害により、自身が用意した渾身のクリスマスプレゼントは届けられなかった。恐らく、サンタ扮するエンタープライズにより、プレゼントは無難なものに差し替えられたのだろう……そう思っていた。

「あ、あの、あの。ことしのクリスマスプレゼントはサンタさんがくれたんだけど、プレゼントといっしょにおてがみはいってて、その……」

「アークロイヤルがプレゼントつくるのてつだってくれたから、おれいをいってほしいってかいてあったの!」

 おどおどしながら説明する如月の後を継ぎ、元気よく補足する睦月。

「もぐもぐ……だからあのたいやき、アークロイヤルさんのえがかいてあったんだね」

 咀嚼しながら話す三日月は、その小さな身体いっぱいで巨大なたい焼きを抱えていた。首筋に当たる部分に齧った後が残り、黒い餡子が覗いている。

「あの……その……これ、睦月ちゃんたちにそっくりで……いつもみんなといっしょにいられるみたいで……えっと、たいせつに、します……!」

 上目遣いでアークロイヤルを見上げながら、ぎゅっと6体のフィギュアを抱きしめる如月。

「じゃあみんな、いっくよー。せーの……」

「「「「「アークロイヤルさん、ありがとうーーーー!!!」」」」」

「……およ? あ、ありがとうございますー」

 のんびり屋の文月がワンテンポ遅れてお辞儀をする。早速着替えた、おニューのパジャマを揺らして。

「……サンタに助力したトナカイへの、わたしからのささやかなプレゼントだ。メリークリスマス、アークロイヤル」

 水無月にぺしぺしと叩かれ「お姉ちゃん、ダイスキ♥」を連呼させられているアークロイヤルを離れた場所で見遣りながらエンタープライズが呟く。クリスマス・イルミネーションに彩られたツリーの前。アークロイヤルは子どもたちの無邪気な笑顔に囲まれながら、あまりの尊さに灰になって溶け、轟沈した。

 

 

                    Merry Christmas!

 


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