Fate/Grand Order 色彩の物語   作:夜雀

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三話目です。
いろいろひどい。


狂戦士の戦

「■■■■■■■■■■■■!」

 

声と認識はできない雄叫び…否、叫び声をあげながら斧剣を振り上げ、叩き付ける。

剛速にして激烈、大地そのものまで叩き割る様な重厚な斬撃が降ってくる。

下手に受け止めようものならそのまま受け止めた武器ごと砕かれかねない。

 

「乱暴ねぇ…」

 

そんな斬撃を、バーサーカーは跳躍し、受け流し、剣で弾きかえす。

決して正面から打ち合いはしない。正面から受けなどしたら間違いなく押し潰される。

だからこそ、剣速の加速のタイミングを見極め封じるように自分の剣を捻じ込む。

暴風のような勢いで振るわれる斧剣。跳躍し飛び退り、身を低くして避け、大地を転がる。

生前の偉業により狂化をねじ伏せているとはいえ、バーサーカーの性か少しばかり思考が狂暴化している。

それでもなおこの身のこなしができるということは…バーサーカーの体、本能にまで染みついた技であるということ。

『狼狂の血脈』…狼の如き本能で戦闘に対する最適解を「本能的に」割り出し動かすスキル。

使えば使うほど狂化が進む諸刃の剣で、普段は絶対に使わないが……出し惜しみなんかすれば死ぬわね、とバーサーカーは苦笑する。

 

「ふふ…あははっ!」

 

闘争の喜悦に身を委ねる。こらえきれぬ笑い声と共に理性の浸食を受け入れる。

叩き付ける様な剣戟を姿勢を低くして掻い潜り、こちらからも剣を振るう。

手応えあり。銀の剣光が奔り、深々と巨人の腹を抉る。

 

「あら…そういう英雄なのね?」

 

巌のような手応えに、致命傷には程遠いと警鐘を鳴らす直感。

剣を振り抜いた状態のバーサーカー。その避けようもない体勢に、音速で何かが捻じ込まれる。

 

「かはっ!!」

 

ドォン!と大気に波紋すら残し、砲弾のような勢いで炸裂したのは―――拳。

咄嗟に衝撃に合わせて後方に下がっていなければ、魔力で編まれたこの体が千切れ飛んでいたかもしれない。

血反吐を飲み込みながら蜻蛉を切って追撃の斬撃を躱す。垂れてきた血を拭い、不敵に微笑んでみせる。

 

「確実に致命傷にしたのに死んでない。その不死身の肉体に、その武芸―――さぞや高名な英霊なのでしょうね」

 

呼吸を整えつつマスタ―の気配を探す。

念話での打ち合わせ通り、逃げてくれたのか。気配はするが、姿は見えない。

そのままうまく逃げるまであと少し時間を稼げばいいか、と。

完全に呼吸を整え、剣を構える。

 

「さあ、続けましょう?この闘争を、もっと………もっと」

 

我は狂戦士、戦に果てるなら本望。

艶やかな笑みを浮かべながら、バーサーカーは再び地を蹴り、嵐へと立ち向かう。

 

 

◆◇◆◇

「これが、英霊の戦い……」

 

目でかろうじて追えるスピードで斧剣と剣が幾度も交差し、火花を散らす。

跳躍したバーサーカーが牽制として繰り出した回し蹴りは腕で受けられ、返す拳をバックフリップで躱す。

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

僅かに空いた間合い。それを咆哮と共に詰める巨人。

豪風と共に振り下ろされた斧剣を横っ飛びで躱し、転がりながら拾った石を投げつける。

神秘の宿らない石にはサーヴァントを傷つけることはできない。しかし、牽制程度になら使える。

琴葉の目から見ても、バーサーカーは使えるものをすべて使ってもギリギリで拮抗している。

それはすなわち―――何か一つでもしくじれば、この拮抗状態は即座に崩れてしまうということに他ならない。

せめて、自分が何か手助けできればいいのだが……

 

「…英霊同士の戦いに踏み込むことは、自殺行為」

 

サーヴァントとは、人類史に残った様々な英雄、概念、偉業。それらの星の情報を霊体として召喚した影法師。

その戦いに―――半端に魔術を使える程度の人間が、何をできるというのだろう。

答えは明白だ。何もできない。

否、何かできたところで……戦況を変えうるようなものにできるわけがない。

 

「………だから、これでいい…」

 

隠れて傷を癒し、迅速にこの場から逃げ出すこと。

バーサーカーの示した作戦案に従うのが、最適なはずだ。

傷の方は琴葉が得意とする呪術と霊的治癒魔術によって治癒済み。

あとは、頃合いを見て逃げるだけ。それまではひたすら隠れてやり過ごす。

 

「………」

 

バーサーカーの戦いが苛烈さを増している。

もう集中しなければ姿を見ることすらできない。時折、火花と衝撃音を捉えるのみだ・

だが。パスがつながった影響だろうか。

……バーサーカーの疲弊が、手に取るように伝わってくる。

相手の重撃を捌くだけでも疲弊し、一撃受けるごとに腕が痺れ、ダメージは蓄積する。

対して、相手は何度もいい斬撃が入っているというのに、一向に倒れる様子がない。あれではまるで不死身だ。

―――戦況が動くのは、そう遠くはない。

逃げるなら今のうちだろう。戦いが激化した今なら、労せず逃走できるはずだ。

英霊同士の戦いに人間が入れない以上、戦闘中の英霊も人間を気にすることなどない。

狂戦士ならなおのこと、戦いにだけ集中するだろう。

そうなれば、バーサーカーも自分を気にせず戦うことができて、もしかしたら盛り返せるかもしれない。

それに、宝具を使えば、あの不死性を突破できるかもしれない。

 

「……」

 

でも、動けない。

分かっている。感傷なのだということは。

自分「など」のために時間を稼いでくれる、バーサーカーを。

……ここで、見捨てていくのが嫌だなんて。

 

「……バーサーカー」

 

今も戦っているであろう彼女に、届かないとはわかっていても。

 

「『負けないで』『生きのびて』」

 

祈る。―――図らずも、その行動は一つの変化を呼び起こすことを知らずに。

その瞬間、左手の文様が赤く弾けた。

 

 

◆◇◆◇

疲弊した体は、そろそろ限界だと告げていた。

 

「不死性のカラクリが分からないうちは…宝具、使いたく、ないのだけど」

 

息を切らせながら、それでも笑う。

闘争の喜悦を楽しまなければ、私ではないと。最後の瞬間まで、自分でいるために、笑う。

だが…もう、届かない。ここが限界だと、運命があざ笑う。

 

「うふふ……だからと言って、諦めてやる義理はないけど…」

 

斧剣を振り上げる相手を前に、最後の最後まであがいて見せると。不敵な笑みで剣を構える。

そして、突撃を敢行しようとしたとき―――

 

「!?」

 

莫大な魔力が、エーテル体に流れ込む。

これは……!

 

「令、呪……!?」

 

しかも一画分とはとても思えない、莫大な魔力。

分かってしまう―――このマスターは本当に、大馬鹿者だ!

自分など放っておいてさっさと逃げてしまえばいいのに。令呪で支援するなんてどうかしてる。

しかも「負けるな」「生き残れ」など……一時の仮初の客であるサーヴァントに酔狂な命令を下すものだ!

 

「………………クス。あっはははははは!!」

 

戦闘中にもかかわらず爆笑してしまう。

少し話をした時も思ったことだが、あの少女は本当に魔術師らしくない。

道徳的な欠落もない、まっとうで、少し魔術が使えるだけの一般人にしか見えない。

 

「――ならば、ここは何としても勝ち逃げさせてもらいましょう」

 

不適な笑みが深くなる。剣に漆黒のオーラが集まり、吹き荒れる魔力が大気を震撼させる。

 

「宝具開帳―――」

 

宝具―――人間の幻想を骨子に創り上げられた武装にして、サーヴァントの切り札。

生前に築き上げた伝説の象徴であり、物質化した奇跡。

それを開放するための言霊を高らかに謳う。

 

「この剣は運命を断つ絶殺の魔剣。あらゆる戦士はこの呪いを逃れること能わず―――」

 

剣のパーツがずれ、収束していく魔力が視認できるほどの濃い呪詛の色を帯びる。

剣に纏わりついた呪詛が圧縮され、濃縮され、とてつもない規模の呪いとして顕現する。

 

「『我が剣よ、破滅の願いを謡え(×××××××、××××××)』!」

 

溢れ出た魔力を、炸裂させるように目の前の巨体に振り下ろす。

ドス黒い呪詛が巨体に絡み付き、傷と相まってその動きを縛っていく。

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

咆哮を上げ、さすがに効いたか蹈鞴を踏む巨体。

その一瞬を見逃さず、跳躍すると琴葉の傍まで一気に走る。

 

「マスター、喋らないでください、ね!」

 

「へ!?」

 

一気に担ぎ上げると跳躍し、脱兎のごとく撤退する。

瞬きほどの時間で森を抜け、街へと至り、振り返る。

―――追ってきてはいないようだ。まあ、あの剣の全霊の呪いを浴びせたのだ、そうそう振り切られては困る。

 

「舌噛んでませんか、マスター?」

 

問うても肩に担いだ少女からの応答はない。不思議に思って覗き込んでみると…

 

「きゅう……」

 

完全に目を回していた。

考えてみれば、サーヴァントが全力で移動して、対した魔術防護をする暇もなかった人間はどうなるか。

凄まじい衝撃にさらされるのは自明の理だ。

 

「あらあら…どうしましょうかねえ」

 

そっと地面に下し、負担にならないように横たえる。

とりあえず、方針を決めてもらうためにも目覚めるまで待つしかないだろう。

 

「……ありがとうございます、マスター。おかげで、吹っ切れられて命を拾えました」

 

起こさぬようそっと頭を撫で、小さく感謝を告げる。

ひとまずは。窮地を脱した自らとマスターを祝いながら休むとしよう。

そう結論付け、意識の戻らぬマスターの傍にバーサーカーは座り込んだのだった。

 




戦闘描写はやっぱり苦手ですね。致命的に!
でも頑張って書くので、してくださる方は応援よろしくお願いします。
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