Fate/Grand Order 色彩の物語   作:夜雀

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ようやく時間ができたので更新します。
どれだけの方が待ってくれたのかはわかりませんが、どうぞよろしくお願いします。


合流、そして急転

瓦礫を越え、燃える街をマスターを抱えてひた走る。

 

「マスター。仰るとおり、魔力の流れを辿ってますが……どうやら、どこかに魔術的な陣が設置されたようです。そこに向かいますか?」

 

「うん、頼めるかな。バーサーカー」

 

「では、しっかりと捕まっていてくださいね?あと、喋ると舌を噛みますので」

 

 

 

◆◇◆◇

『……いないと思ったら君までか。しかし、君のレイシフト適性はそんなに高くなかったはずだよね?』

 

レイポイント(とは少しずれていたが)に急行し、『オルガマリー・アニムスフィア』所長、あの爆発から唯一生き残り、マスター適性を有していた一般候補生の少年『藤丸立香』、そして彼と契約したカルデア元スタッフにして今は半英霊(デミ・サーヴァント)となった『マシュ・キリエライト』と合流した琴葉は、立香の通信機を借りてカルデアにいる上司『ロマニ・アーキマン』に事情を報告していた。

 

『果てはマスターにまで…契約した英霊のクラスは?真名は?』

 

「……バーサーカーですけど理性は失っていないように見えます。真名は、まだ教えてくれなくて」

 

ちらり、と背後に視線を投げる。視線の先ではちょうど教室内で話をしている所長と立香、マシュ、立香たちと同行していたキャスターと名乗った男性がちょうど教室を出ていくところだった。なんでも、マシュの特訓をつけるとかなんとか。

そして、すぐ傍にはバーサーカーが霊体化して控えている。

 

「とりあえず、私をマスターとして指示は聞いてくれるみたいなので…さっきも助けてくれたし」

 

『…分かった。こちらでも信頼しよう』

 

「…カルデアの、状況は?」

 

『ひどいものだ。生き残ったスタッフも20人に満たず、マスター候補生たちはさっき全員所長の指示で凍結保存に入ったところさ。――柄じゃないけど、その中で一番階級が高いのが僕だから、こうして指揮をとっている』

 

「……そう、ですか」

 

きゅっと手を握りしめる。

カルデアで過ごした時間は対して長くもないが、もしかしたら犠牲者の中には自分の知っている人も含まれているかもしれない。

いつも当たり前にそこにあった日常ほど、一瞬で崩れ去った時の衝撃は大きい。

 

『……いろいろと不安だろうけど。とりあえずは、無事に帰っておいで。未来を憂うのは、それからだ』

 

ドクターの言葉が胸に沁みる。

感傷に浸る心に蓋をしながら頷く。

 

「また、危なくなったら連絡します。カルデアの方も、気を付けて」

 

『うん、分かった』

 

通信を切ってほう、と一息つく。

 

「―――琴葉さん」

 

「月城先輩」

 

「マシュ?それに藤丸君も…特訓は、終わったの?」

 

ひょこっと顔を出した二人に向けて笑顔を浮かべる。

マシュ・キリエライトは『とある事情』により、医務室に来ることも多く琴葉も顔なじみだ。先輩として慕ってくれることや、共に読書好きという共通点もあってよく話をしていた。

 

「はい。無事に成果も出たので、今はキャスターさんと所長は結界の点検を。私たちは、休めと言われたので」

 

「それなら月城先輩と交流を深めたほうがいいかなって、思ったんで」

 

マシュと立香の発言になるほど、と頷く。

円滑な連携を図るためにも、交流は悪いことではない。

 

「じゃあ、マシュは知っているけど、藤丸君には改めて。月城琴葉です。琴葉と呼んでくれると嬉しい、かな。

本来は医療班でDr.ロマンの補助をしています。まだ見習いだけど一応、医学の心得もあるから怪我とかしたらすぐに言ってくれれば応急処置するから」

 

―――人と交流するのは、正直なところ苦手だ。

だから、淡々と要点だけを絞った自己紹介にしたのだが。

少し、素っ気なさすぎただろうか。

 

「じゃあ、オレも。藤丸立香です。一応、一般人だけどマスター候補と言うことで…よろしくお願いします、琴葉先輩」

 

ぺこりと頭を下げつつ、スッと差し出される手。…かなり、人当たりの良い少年の様だ。

少しぎこちないと自分でも思うようなぎくしゃくした動きで手を取る。

―――久しぶりに触れた人肌は、思っていたより温かく感じた。

 

「琴葉さん。先輩の髪は黒で、瞳は綺麗な青空の青です」

 

「……ありがとう、マシュ」

 

色の見えない自分を気遣って先回りして教えてくれたマシュに感謝の微笑を向ける。

 

「? マシュ?」

 

「先輩。琴葉さんは、その…」

 

「いいよ、マシュ。

藤丸君。私は、光を感じるけど色を識別できないの。常にモノクロの世界にいるような、そんな感じ」

 

自分にとってはもうとっくに慣れてしまった世界。

それを聞いて自分の事のように悲しい顔をしてくれる目の前の少年は、きっととても善人なのだろう。

 

「そんな顔しないで。日常生活にそこまで不便はないし、皆いろいろサポートしてくれるから…ね」

 

「……はい。琴葉先輩は、カルデアに来て長いんですか?」

 

「ううん。私も一年とほんの少しなんだよね」

 

その期間もほとんど医務室と管制室、そして自室の行き来を繰り返していたためにカルデアを隅々まで知っている、と言うレベルではない。ほんの少し、空いた時間にスタッフとおしゃべりをするくらいで、まともな交流もなかった。交流が苦手だから、意図的に深い交流を避けていたというのもあるが。

 

「俺、いきなりカルデアに連れてこられたので正直、何するところかもまだあんまりわかってないんですよね。さっき、所長から一通り説明は受けたんですけど」

 

「え、あれ?一般枠ってそういう物なの?」

 

「琴葉さん、先輩の話を聴く限りほとんど拉致同然だったので…裁判になれば確実に負けるレベルの」

 

「あ、そうなんだ…」

 

スカウト担当、それでいいのか……。

 

「……あれ?でも、所長からマスター候補には説明会があったはず」

 

「えー、と……」

 

ポリポリと頬を搔きながら視線を逸らす立香。

どうやら、事情はあるが本人的には話したくない何かがあるようだ。

 

「マシュ?説明、お願いしていい?」

 

「あ、はい。先輩は、先ほど説明した通り拉致同然の手段で連れてこられ、慣れない霊子ダイブのシミュレートで半ば夢遊状態で通路に倒れていたのです。

そこを私とレフ教授が見つけて、説明会にお連れしたのですが…完全には目が覚めていなかったようで、説明会の最中に所長に……」

 

「………見つかって怒られて、つまみ出された。と」

 

事情を了解して若干遠い目となる。

説明会をしている最中に寝られては、さすがにオルガマリー所長も我慢は効かなかったのだろうけれど。ほとんど拉致同然で遠くまで連れてこられ、訳の分からない入館シミュレーションのせいで強制的に襲ってくる眠気と戦いながら説明会に出ざるを得なかった立香の事情も考慮するとどちらも責められない気がする。

 

「―――じゃあ、私が分かる範囲でよければ。帰ってから、カルデアを案内するよ」

 

「あ、ほんとですか!?ありがとうございます!」

 

勢いよく頭を下げてお礼を言う立香に気にしなくていいよと手を振る。

―――そろそろ、結界の確認に行った所長たちも戻ってくる頃だろう。

戻ってきたのなら、全員でこの特異点探索のための方針と作戦を立てなければ。

この特異点Fの状況―――それは、先ほど情報共有の中で立香たちの連れていたキャスターから教えてもらった。

この地で行われていた聖杯戦争―――七騎の英霊(サーヴァント)とマスターが願望機である聖杯を巡り争うバトルロワイヤルは、いつからかサーヴァントのみを残し変質した。残るサーヴァントはキャスターともう一人だけであり、倒されたサーヴァントは黒くなり特異点を徘徊している。

この特異点の異常を解消するためには、聖杯を守る剣の英霊(セイバー)・『アーサー王』を撃破し、特異点の原因となっているであろう聖杯を確保しなければならない。また、あくまで聖杯戦争は続いているため、まっとうに生存している英霊であるキャスターを守りつつセイバーを倒さねばならない。キャスターが倒され聖杯にくべられたら聖杯戦争はセイバーの勝ちと言うことで終了してしまうからだ。

……慎重に、作戦を練らなければいけない。

少々名残惜しさを覚えつつ、立香とマシュを促し立ち上がろうと…

 

【―――マスター!伏せてください!】

 

バーサーカーの切羽詰まった声が、頭の中に響く。

何が起きたのか、咄嗟に問いかけようとしたその時。

 

 

――――どこからともなく飛来した矢が。轟音と共に、教室の壁を吹き飛ばした。

 




あくまで主人公視点で進めるため、一部マシュや藤丸君のイベントが出ないことがあります。
展開もそれに沿って手を加えているところがありますがご了承ください。
感想、ご意見などお待ちしています。
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