最強の獣はどちらだ!!
『ここ二階リングではセイウチンVSポーラマンの氷点下野獣対決が行われております!! 両者獣超人として迫力ある試合を見せてくれることでしょう!!』
「うおおお!!」
はじめにしかけたのはセイウチンからであった。
『おぉ! これは珍しい!! スロースターターのセイウチンが先手をしかけた!!』
「ボフォボフォ! 下等超人の力を見てやろうか!」
がしぃ
セイウチンとポーラマンは互いに両手を合わせての力比べに入った。
『両者まずは組み合っての力比べだ!! おぉ! セイウチン!! 体格差がありながらもそれを感じさせないパワーだをみせつける!!』
両者パワーが均衡している状態に見えた。
「なるほど、まあまあの怪力ではあるな。しかしな!」
ぐぐぐぐ
ポーラマンが本気を出し、セイウチンが徐々に押されていった。
「この完力ポーラマン様相手に力比べするなんざ無謀がすぎるってもんだ!!」
『ポーラマン! 新世代超人の中でもパワーファイターのセイウチン相手にパワーで圧倒している!!』
「ぬおお!! なんという力だ!!」
セイウチンも懸命に負けじと力を出すが、力負けしてしまっている。
「これが完璧超人と下等超人の力の差だ!!」
がぁぁん
ポーラマンは組み合いの状態からセイウチンに頭突きをくらわせた。
『ポーラマン! 強烈な頭突きをセイウチンにお見舞いだ!!』
「ぐわあ!!」
セイウチンは頭部から流血しながらよろめいた。
「弱肉強食の世界をその身に教え込んでやるぜ!! ポーラネイル!!」
ざくり
ポーラマンは自身の爪でセイウチンをひっかき、セイウチンの胴体に巨大な四本線の傷をつくった。
『ポーラマンのパワフルな頭突き、そして鋭いひっかきにより、セイウチン早くも大量流血状態だ――――っ!!』
「なんの!!」
ばしぃん
セイウチンは負けじとポーラマンの右脇腹に左のミドルキックを放った。
『セイウチン! 負けじと重さの載った左のミドルキックを放った!!』
ポーラマンは平然とした顔をしている。
「ほう、そこそこの蹴りだな。だがな」
どごぉぉ
ポーラマンはセイウチンに重さの載った右の平手打ちをかました。
「ごほぉ!」
セイウチンがふっとばされ、マットに倒れた。
『ポーラマン! セイウチン以上に重さの載った打撃を返した! セイウチンついにダウンだ!!』
「なんとも手応えのないもんだ。かつて完璧超人だったネプチューンマンが見込んだ奴だからどんなものかと期待したが、ネプチューンマン、とんだお眼鏡違いだったようだな」
「ま、まだまだ! わ、わすはまだ倒れるわけにはいかない!」
『セイウチン立ち上がった! まだ闘志は消えておりません!』
ポーラマンがセイウチンの顔を見て何かを思い出した様子を見せた。
「ほう、見れば見れるほどあいつにそっくりだ」
「一体、なんのことだ?」
セイウチンがポーラマンの言葉に疑問に思った。
「ところで、お前の親父は既に無くなっているか?」
「あぁ、漁に出ている時に嵐で亡くなったとおがぁから聞いただ」
「ボフォボフォ、どうやら本当の死因は聞かされていなかったようだなぁ」
「なに、それはどういうことだ?」
「順を追って説明してやろう、かつてお前の一族であるセイウチ一族とそして俺のポーラ一族との間で争いがあった。理由は当時の北極は餌が極端に少ない状態で、より自分の一族の領地を広げようとやっきしていたからだ」
「そ、そんな話は初めて聞くだ……」
「結果的にその争いはセイウチ一族が勝ち、俺達ポーラ一族は隅っこに追いやられた。いつしか人間共まで白熊はセイウチを恐れるとか言われるようにもなってしまったのだ」
「本当の話か? 信じられねえだ……」
「お前の態度を見る限り、セイウチ一族は都合の悪い話を若い世代にはふうじてきたようだな。まぁいい、俺も当時あの争いに参加していたのだ。その時に俺が殺した男がいる」
セイウチンはイヤな予感がした。
「ま、まさかその男とは!?」
「そうだ……お前の親父を殺したのはこの俺だ!」
『なんと! ポーラマンの口からとんでもない歴史が明らかにされた――――っ!!』
「そんな! いや、なんでおがぁは黙っていたんだ!! 争いがあったこと、そしておどぉが殺されたことを!!」
鳥取砂丘の会場の特設の応援席でセイウチンのおがぁと妹のドロシーがその様子を見ていた。
「いつか言おうと思っていただ……あの頃は皆おかしかったんだ……当時自分達の生活がかかっていたとはいえ、一族の皆が勝つためにどんな努力も惜しまなかった……しかしセイちゃんやドロシーが聞いたらさぞかしショックを受けるだろうと今日まで黙っていただ……」
「……」
セイウチンはショックで何も言葉を発せなかった。
「ボフォボフォ、当時お前の父親と一戦交えたが、一見優男に見えながらも、戦闘になると凶暴になり、まさに野獣そのものだった。俺が今ほど強くなかったのもあるが、当時大苦戦の末に奴に勝ったぐらいだ。まあ当時一族最強の俺がしばらく闘えない状態になったために、ポーラ一族は争いに敗北してしまったがな」
「お、おらのおどぉがそんな人だったのか……過去の世界のおどぉはあんなに優しかったのに……」
「それに比べお前はひ弱ひ弱、親父がこの試合を見ていたらさぞ嘆いていることだろうよ」
「だ、黙るだ!! おどぉはそんな奴じゃねえ! それに人様の親を馬鹿にする事はタブーだと、おめぇは親から教わらなかったのか!!」
しゅたん
セイウチンがジャンプし、ポーラマンに蹴りを放った。
ぼふん
ポーラマンはセイウチンの蹴りを難なく右手で受け止めた。セイウチンは自身の蹴りの威力を和らげられたかのような感触を感じた。
「動物の肉球というものは保護のためについている。俺の肉球はいかなる打撃をも半減させる弾力を持っているのだ!!」
がしぃ
ポーラマンが右手のみでセイウチンの体を持ち上げ、マットにたたきつけた。
ががぁん
「ごはぁ!!」
セイウチンはまたもダウンした。
『セイウチン! 攻撃が全く通用しません! ポーラマン恐ろしい強さです!!』
「当たり前だ、ポーラマンは俺が唯一認めた盟友、下等超人相手に負けるわけが無かろう!」
ネメシスはスカ―フェイスと交戦中ながらも余裕のコメントをかましている。
「お前、過去の世界ではネプチューンマンと一緒に親父顔負けの野獣として暴れまくったんだろう? しかも野獣の気持ちをなくしたら今のように滅法弱くなり、敗北した。雑魚を狩っても面白くねえ、野獣としてのお前の姿を見せな!!」
「だ、駄目だ……おらは正義超人として闘うんだ……あの過ちを二度犯してはならない!」
野獣と化したセイウチンと一戦交えたジェイドがセイウチンを気にしていた。
「セイウチンには勝って欲しい…・・だが仲間としてあんなセイウチンは二度と見たくない……」
「ほほほ、よそ見をしている余裕はあるのですか?」
がしぃ
ジェイドと闘っているグリムリパーがジェイドを片手でネックハンキングに持って行った。
「ぐぅぅ、セイウチンすまない、今の俺には何もいえねえ……」
セイウチンは迷いを見せていた。勝つべきか、仲間の絆をとるか、葛藤していた。
「俺は気は長くねえ。その気が無いなら今すぐお前を殺す!」
「お、おらは……おらは……」
「セイウチン!!」
リングに向かってどこからか大きな声が聞こえてきた。その声の主はヒカルドだった。
「ヒカルド!? 急にどうしただ?」
「俺はてめえの正義超人としての姿勢が気にくわねえんだ! お前は皆にちやほやされたい、嫌われたくないとかでお利口な正義超人やってんのか!!」
「違うだ! おらは人間達を、そしておがぁやドロシーを守るために正義超人として闘っているだ!!」
「だったら迷わず野獣になりやがれ!! 俺だったら自分の正義を貫くために迷わずその道をゆくぜ! 見た目が醜くかろうが、凶悪なファイトだろうが、お前が正義超人としての魂を忘れずに勝てば良いだろうが――――っ!!」
「ヒカルド……」
「聞け! セイウチン!」
スカ―フェイスもネメシス相手に劣勢ながらもセイウチンにげきを飛ばしてきた。
「てめえがまた本当の野獣になっても、お前が誰かに迷惑かける前に俺が倒してやる!! 安心して野獣になりな!!」
ジェイドがスカ―フェイスの言葉を聞いて、表情が明るくなった。
「セイウチン! お前が野獣になりながらも優しい心を捨てていなかったのは闘った俺がよくわかる! 安心して全力をだしな!!」
セイウチンは決意した。ヒカルド、スカ―フェイス、ジェイドの声に応えると。
「皆ありがとう……おらはもう迷わねえ!!」
むくむく
セイウチンの体の筋肉が発達し、優しい顔が凶悪なものへと化していった。
「そうだ、俺が見たかったのはそれだ! さぁここからが本当の勝負だ!!」
ポーラマンは気合いを入れ直した。
起こしてはならない獣が目覚めてしまった!!