「お前……喋れるのか?」
ヒカルドが質問しながら、起き上がってきた。
「ああ、急成長超人だからな!」
「グロロ~~、ようやく成長したようだなピークアブ―!」
モニター越しにストロング・ザ・武道がピークアブ―に話しかけてきた。
がしゃん
モニターにガラガラが放られて壊れた。ピークアブ―が投げた物であった。
「あ~あ~また壊しおって、また買いに行かなくてはな~~」
観客席にいたガングロギャルのたまきが反応を示す。
「あっ、そういえば西松屋でバイトしていた時に、筋骨隆々の巨漢の男がガラガラを買っていた事があるわ! まさかそれがストロング・ザ・武道だったなんて……」
ピークアブ―の表情にストロング・ザ・武道への怒りがこめられている。
「だったら、試合が終わる度にいちいち成長をリセットさせるんじゃねえよ!」
「いいやならんっ!!」
ストロング・ザ・武道が血走った目で威圧的な声を出す。
「お前が完恐たる理由は赤ん坊のごとき成長の早さにある! お前自身の強さを捨てる気か!」
「お前がその気ならこっちにも考えがある! ヒカルドよ! もっと強力な技をじゃんじゃんとだしな! それともこれでお前の闘いは終わりか! お前に技を教えた師匠とやらも高々知れているな!」
ヒカルドがその言葉を聞いて表情が変わった。
「俺がなんのために闘っていると思う?」
「さぁな?」
「俺はな……師匠殺しの罪を背負って闘っているんだ! ここで俺があっけなく倒れたら、バシャンゴ師匠に申し訳ねえ!」
『意外や意外! ヒカルド! 悪行超人出身ながらも自身が殺したバシャンゴ師匠の事を悔いていたようです!!』
「自分が殺した相手に申し訳なく思って闘うというのか? 俺には到底理解できない考えだな」
「理解できなくてもいい。でもな、それが俺の存在意義なんだ……正義超人でもない、悪魔超人でもない俺が……何のために……どうして闘うのか……それ以外理由がねえんだよ!」
「それは違うぞ!!」
ヒカルドにむかって、モニター越しにネプチューンマンが叫んだ。
「お前の存在意義はそんなんじゃねえ! お前自身が魅力溢れる超人だからこそ存在意義があるんだ! 例え、この世の誰もがお前の魅力を認めなくてもな、このネプチューンマン様だけはお前を認めるぜ! その証拠を見せてやる!」
ぐわきぃ
『ネプチューンマン! ストロング・ザ・武道の上半身に飛び乗り、アームロックと三角絞めを決めた!』
「あ、あの技は!?」
「グロロ~~!!」
ストロング・ザ・武道がネプチューンマンの関節技に耐えている。その技は、かつてヒカルドがジェイドとの闘いで使った技である。
「アラーニャクラッチ!!」
「そう、こいつはお前とのスパーリングで身につけたものだ! 俺は力には自信のあるパワーファイターだがストロング・ザ・武道はおれ以上のパワーファイターだ! だからこういった関節技が非常に役に立つ! そう、お前が師匠から受け継いだ技が俺を助けているんだ!!」
「ネプチューンマン……」
「罪を背負って闘うだ? 開き直れよ! 俺なんてお前以上の罪を背負って闘っている! だがな、罪を背負ったからこそ強くなれたし、反省してより好きな自分に近づけたんだ! お前が罪だと思っている師匠殺しは、いわば師匠越えだ! 批判する奴がいても堂々と胸をはれよ! バシャンゴ師匠とやらも、もしかしたら亡霊として応援しているかもしんねぇぜ!」
ネプチューンマンの激励で、ヒカルドの顔に生気が戻ってきた。
「吹っ切れたぜネプチューンマン! これがあんたへの礼だぜ――――っ!!」
ヒカルドがウェスタンラリアットをかましにいく。
「
ドゴォン
「ぐわっ!」
『お――――――っ! ヒカルド! まさかのネプチューンマンの得意技の喧嘩ボンバーでピークアブ―を吹っ飛ばした――――――っ!!』
「これで終わりじゃねえぜ!」
ヒカルドがすぐにピークアブ―のバックをとった。
「ダブルレッグスープレックス!!」
ががぁん
ピークアブーは頭からマットに勢いよく叩き付けられた。
「ウギャア――ッ! なぜだ! なぜこいつの技が読めないんだ!?」
「お前は確かに俺を上回る俺の技術を身につけた。俺以上の俺になったと認めてやる。でもな、今のお前は俺以外の他のファイターに対応できる技術までみにつけてねえんだ!」
がきぃ ぐわきぃ
「喧嘩スペシャル!!」
「ホギャ――――ッ!!」
ヒカルドが渾身の力をこめて、ピークアブーの体を破壊しにいった。
ぼきん ぐきん
「ぐはぁっ!」
ピークアブーの関節が破壊され、その衝撃にピークアブ―は失神した。
カン カン カン カン
『ヒカルド勝利! 敗北必須と思われましたが、まさかのネプチューンマンの必殺技を使うという奇策で逆転につなげました!!』
「打撃や投げは俺ほどではないが、固め技に関してはおれ以上だな。流石は関節技の芸術者だぜ」
ネプチューンマンがヒカルドの勝利をたたえた。
「ヒカルドよ……俺は全身動かせない状態ではあるが、かろうじて息はあるぜ……俺の命を完全に奪えなかったところ見るとまだまだ下等といったところだな……とはいっても俺は自害できる状態じゃねえ……だから勝者であるお前への敬意として、俺を殺させてやるぜ……」
「勘違いするな、俺は故意的にお前を殺さずに完全に動けない状態にしたんだ」
「なに、俺を殺さずにどうしようという気なんだ?」
「何もしねえよ、あえて言うなら、殺す理由もねえし、お前に自害させる理由もねえ、死なせたくねえからだ。それが俺の中にある、正義超人としての信条だ……」
その言葉を聞いたピークアブーガ和やかな表情になった。
「ははは、お前は興味深い超人だ……もっとお前の事を知りたいが、ストロング・ザ・武道が許さないだろう……俺は敗北した、だから死の運命からは逃れられないのだ……」
ばしぃん
ヒカルドがピークアブーの頬をたたいた。
「逃れられない運命だ? 逃げずに己の運命と闘いな、俺も俺でくそったれな運命から逃げずに真っ正面から闘った。そしてお前に勝つ事ができる強さを手に入れた。つまりよ、今のお前はもっと強くなるチャンスがあるってことだぜ!」
「強くなれるだと?」
「そうだ! 自害をうながすストロング・ザ・武道とやらはてめえよりはるかに強いんだろ! でもおめえは急成長超人! 死ぬ気で奴を倒せばお前が最強になれるかもしれねえんだぜ!」
ピークアブ―はそこまで話を聞いて泣き出した。
「つ……強く……なりたい……まだまだ強くなれるのなら俺はもっと……もっと強くなりたい!!」
ヒカルドがその顔を見て笑いを見せた。
「よし、俺の腹も決まったぜ! 誰かがお前を殺すっていうんなら、お前が動けるようになるまで、俺が完璧超人の相手になってやろうじゃねえか!!」
「よく言ったぜヒカルド!!」
モニター越しにネプチューンマンが褒めた。
「馬鹿もんが――――っ!!!」
会場の観客に鼓膜が破裂するような怒声が響いた。
「すっかり惑わされおって……そこにいるネプチューンマンもかつては完璧超人のエースだった男なのに、正義超人と闘って変わってしまった……ピークアブー、見せてやろう、お前がどうなるかをな!」
ストロング・ザ・武道がネプチューンマンを軽々と持ち上げて、自身の膝にネプチューンマンの頭部をあてた。
「完武・兜砕き!!」
がぎぃぃん
「ぐはぁっ!」
ネプチューンマンの頭部から大量に出血し、マスクにもヒビが入り、片目が見えるほど半壊した。ネプチューンマンはたまらず倒れた。
『ネプチューンマンダウン! ストロング・ザ・武道恐ろしいほど強いっ!!』
ネプチューンマンは力を振り絞って、立ち上がってきた。
「へへっ、俺もヒカルドに続かねえとな……見せてやるぜ! 新しい超人の生き方ってやつをな!!」
負けられない! 命を賭したあの男のためにも!!