キン肉マンⅡ世~完璧超人始祖編~   作:やきたまご

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苦渋の悪行!!の巻

 ところかわり超人KO病院。先に完璧超人にKOされたイリューヒン、バリアフリーマンがハンゾウの試合をTVで観戦していた。二人はかつて共に悪魔種子に立ち向かった同士の活躍を喜ばしく見ていた。

 試合会場は、特設水面リング。両者は激しくにらみ合っている。

 

「ト~トトト、カジキ野郎よ、オレの妖腕刀で貴様を三枚おろしにしてやるぜ~~!!」

 

「ピョ~ピョピョ、変に良心のある超人では精神的にやりづらいところもあるが、お前のような無慈悲な男なら思い切り殺れるというわけだ!」

 

 マーリンマンはロープへと飛んだ。

 

グイン

 

『マーリンマン! ロープのリバウンドを利用した攻撃に出るぞ!! 上あごの梶木通しをまっすぐに突き立てて飛び出した――――――っ!!』

 

「フライングソードフィッシュ!!」

 

ザッ

 

『ハンゾウ! 初動が遅れ、腹部に切り傷を負った!! すかさずマーリマン! キックターンで再度ハンゾウを襲う!!』

 

「完璧超人というわりには、展開を読むことに関してはど素人のようだな」

 

『ハンゾウ! マーリンマンの攻撃に合わせ妖腕刀を振り上げた――――――っ!! 』

 

キィィン

 

 マーリンマンの梶木通しとハンゾウの妖腕刀が衝突した。

 

『両者の武器の威力は互角だったようだ――――っ!!』

 

「ト~トトト、なかなか頑丈な梶木通しのようだな~~!」

 

「おまえこそ、なかなかの硬度の刀を持っているようだな~~」

 

「オレはこの闘いでお前の完璧超人としての誇りを粉砕するために来た。ならば陸でお前を倒しても意味は無い!」

 

 ハンゾウは自ら水中へと飛び込んだ。

 

バシャーン

 

『ハンゾウ自殺行為か――――――っ!! 自らマーリンマンの得意な水中戦へと持ち込んだ――――――っ!!』

 

「半端な実力を持った下等超人というのは、身の程以上に調子に乗るようだな!」

 

バシャーン

 

『マーリンマンも水中へと飛び込んだ――――っ!!』

 

 マーリンマンは水中でハンゾウをみつけるとすぐさま攻撃にしかけた。

 

「このマーリンマン様相手に同じ土俵で闘おうとはドあほうってもんだぜ!! 水中ではオレの方が有利だ! フライングソードフィッシュ!!」

 

『マーリンマン! リング上で見せるよりも素早い動きを見せる!! ハンゾウ一歩も動けない!!』

 

 マーリンマンの攻撃がハンゾウの喉をとらえる寸前であった。

 

ガゴォン

 

 マーリンマンの両サイドから重い打撃が加えられた。

 

「ピョガァ!」

 

「ト~トトト、オレが策もなしに無謀な水中戦に持ち込んだと思うか?」

 

『あ――――――っ! 分かりづらいですが、水中に二人の人形が存在しています! その人形同士がエルボーでマーリンマンを挟みこむように攻撃していた――――――っ!!』

 

「ハンゾウ流極意! 傀儡水人形!!」

 

「馬鹿な!? お前のその技は水中では使えないはず! それに同時に二人も出せるなんて!!」

 

「オレがただ檻でのんびりと過ごしていたと思っていたのか? オレもフォーク・ザ・ジャイアント同様、憎き奴の再戦に備えて自身の技を磨き上げてきた! お前にはオレの練習台となって貰おう!!」

 

「練習台だと! 完璧超人を舐めるなよ!!」

 

『マーリンマン反撃だ! 自身の両脚をハンゾウの肩にかけ、両手で首をとらえた!!』

 

「ピラニアンシュート!!」

 

『マーリンマン! ハンゾウを岩盤に叩き付けるつもりだ――――――っ!!』

 

「さっきも言ったがお前は展開を読むことに関してはど素人だ」

 

がしっ

 

「ピョッ!? 手応えがないだと!?」

 

『あ――――――っ! ハンゾウの作り出した傀儡水人形二体が、ハンゾウの身体を岩盤に叩き付けられる前にとらえ、技の威力を最小限に抑えた――――――っ!!』

 

「それ以上生臭い身体をオレにくっつけるな!」

 

どが

 

 ハンゾウは両脚を使って技をかけているマーリンマンを突き放した。

 

「おのれ~~、一対一で正々堂々と立ち向かわずに卑怯な!!」

 

「卑怯? ならばお前のリクエストに応えて、技を真っ正面から受けてやろうではないか?」

 

『ハンゾウ! 無防備状態でマーリンマンの技を受けるつもりだ――――――っ!!』

 

「調子にのりすぎたようだな! 今度こそお前をこの一撃で仕留めてやる!」

 

 マーリンマンが助走のため、ハンゾウから距離をとる。そして梶木通しをハンゾウの心臓にめがけ、勢いよく飛び出した。

 

「完刺スピアフィッシング!!」

 

『マーリンマン! この試合で一番速い動きを見せた!! マーリンマンの技の衝撃で周りを泳いでいる魚がふっとばされ、岩が砕け散る!!』

 

「ハンゾウ流極意! 河童変化!!」

 

にゅぅ~

 

 ハンゾウの手足に水かきが産まれた。

 

『ハンゾウ! 得意の忍術でなんと河童のごとき手足になった!』

 

「これでお前と一緒に水中でお遊びができるぜ!!」

 

 

ギューン

 

 ハンゾウはマーリンマンに向かって、勢いよく泳いでいった。

 

「ピョォッ!? まさかこっちに向かってくるだと!!」

 

『ハンゾウ! 妖腕刀を突き出しながらマーリンマンにアタックだ!!』

 

がきぃぃぃん

 

 ハンゾウの妖腕刀とマーリンマンの梶木通しが激突し激しい音を鳴らした。

 

『両者の最大の武器が激突した! はたしてどちらが勝ったか!!』

 

ピシィ バキィ

 

 マーリンマンの梶木通し、そしてハンゾウの妖腕刀にヒビが入り、使い物にならなくなった。

 

「ま、まさかそんな!?」

 

「相打ちか、まぁいい。お前の得意な水中戦で下等超人相手に互角に渡り合ってしまった気持ちはどうだ?」

 

「黙れ!!」

 

ぶぉん

 

 マーリンマンはハンゾウを岩盤に投げつけた。

 

「ぐおはぁっ!」

 

「確かに俺の梶木通しはぼろぼろだが、お前をこの一撃で仕留めれば問題ない!!」

 

『マーリンマン! 再度アタックをしかける!!』

 

ぶつん

 

 突然、水中モニターの画面が写らなくなってしまった。

 

「おいどうした! 写らねえぞ!」

 

「超人委員会何やってんのよ!」

 

『どうやらマーリンマンの技の威力で水中カメラも壊れてしまったようです! これでは水中で何が起きているのか全く分かりません!』

 

バシャア

 

 水面からマーリンの顔が見えた。

 

『マーリンマンが浮かび上がってきた!! これはハンゾウがやられてしまったというのか!!』

 

じわぁ

 

 水中から出ているマーリンマンの顔付近の水が赤く染まっていく。

 

バシャア

 

 マーリンマンの顔をつかむハンゾウの腕が現れた。その瞬間、マーリンマンの顔面がそぎ落とされた事実に観客が気付いた。

 

「きゃあああああ!!」

 

「うわあああああ!!」

 

 会場は阿鼻叫喚の渦。観客の悲鳴が鳴り響く。

 

「ト~トトト!!」

 

 ハンゾウが水面から出ると、誇らしげにマーリンマンの顔面を高々と上げた。

 

カーン カーン カーン

 

『なんということだ! ハンゾウがマーリンマンの顔面を剥いでKO勝利です!! 一体水中でどのような残酷な事が行われていたのでしょうか!!』

 

ぶつ ぶぶぶ

 

 モニターが映し出された。

 

『これは補助で設置されていたTVカメラの映像のようです! こちらでリングの惨劇の真相を知りましょう!! あっ、マーリンマンのスピアフィッシングが決まるところです』

 

 マーリンマンの技がハンゾウに決まる直前、両者の身体が消えた。

 

 

『これはどういう事だ! 両者の身体が消えてしまった!!』

 

ボワ

 

 そして、両者の身体が現れ、技のかけ手と受け手も入れ替わっていた。本来マーリンマンの攻撃がハンゾウの心臓を貫くところ、ハンゾウの妖腕刀がマーリンマンの心臓を貫いていたのだ。

 

「ま、まさかこんな事が起きるなんて!?」

 

 大阪の串カツやで試合を観戦しているサンシャインがハンゾウの使った技に注目した。

 

「あの技を使える超人はもう亡くなっている! なぜにハンゾウが!!」

 

「死者に敬意を持たないお前にとっては、オレがこの技を出すことは全くの想定外だっただろうなぁ」

 

「どこかで見たことある技かと思ったが……そういうことか……ピョガハァ!」

 

 マーリンマンは血反吐を吐き、すぐに息絶えた。ハンゾウは自身がかつて殺したザ・ニンジャの襟巻きを握りしめた。

 

「やれやれ、お前も酷な道を選ばせるもんだな……まあ、それがオレの罪滅ぼしでもあるか……」

 

 ハンゾウは誰かからメッセージを受け取ったような事をつぶやいた。

 

「完璧超人にとって、自害なき敗北こそ誇りなき死! しかし、それ以上の誇りなき死をお前に与えてやろう!」

 

『ハンゾウ! 妖腕刀を振るった!』

 

「お面頂戴!」

 

スパァ

 

 マーリンマンの顔面がハンゾウの妖腕刀によって削がれた。

 ここでモニターの映像がとだえた。

 

『これが試合の真相か!! ハンゾウ! 悪魔種子との闘いで正義超人に目覚めたと思いましたが、また、元の凶悪な悪行超人へと戻ってしまったようです!!』

 

「トートトト、次なる試合のために妖腕刀を研いでおかんとな~~!」

 

「帰れ悪魔め!」

 

「お前なんか一生牢獄にとじこめられていればよかったんだ!」

 

 観客からハンゾウに向けて罵声が飛んでくる。

 

ピラピラ

 

 ハンゾウの身体から写真が一枚落ちた。TVがたまたまその写真を写しだす。写真にはハンゾウ、ケビンマスク、スカ―フェイス、バリアフリーマン、イリューヒンの姿があった。その写真が何かを分かったのはイリューヒンとバリアフリーマンであった。

 

「あれは! 悪魔種子との闘いの前に、わしが女子盗撮用に買ったカメラで撮った集合写真じゃ!」

 

「あいつ、いまだに肌身離さず持っていたのか……」

 

「むむむ、試合は惨劇そのもの。ハンゾウが悪行超人と思割れても仕方ない。しかしわしらは信じよう。奴にも正義の血が流れていることを!」




血連托生の絆は忘れてない!!

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