いよいよ大災害レギオンとの戦いも佳境を迎えます。
そして今回、フレイヤが久しぶりにアレを使いますが、その際以前募集させていただいた意見を利用させてもらってます。
それは、ある前線の監視塔から始まる。
「嘘だろ……」
正直に言えば彼らは油断していた。
もちろんこの重要任務に志願してから常に警戒を怠らず外部に意識を張り巡らせていた。なぜなら今王都を攻撃している魔物のほとんどは自分達ではどうしようもない、まさに災害と言えるような怪物揃いなのだ。自分達の連絡が少し遅れるだけで大惨事に繋がることは想像するにたやすいと言える。
だが同時に今現在、レギオン進行が始まって以降、王都では大した被害が出ていないのも確かなのだ。なぜなら必ず蓮弥達がそれらの怪物達を撃破し、被害を防いでいたから。
そんないい意味でも悪い意味でも感覚が麻痺してきた頃にソレは現れた。
「だ、大至急王宮に報告をッ!!」
「観測系アーティファクトをありったけ稼働させろ!! どんな些細なことでもいいから情報を送るんだ!!」
「はいッ!!」
自分達にできることをやるしかない。その威圧感から崩れ落ちてしまいそうな身体に鞭を入れながら必死に情報を集め、通信用アーティファクトを用いて転送を開始する。
「なっ、アレから高密度魔力反応観測。魔力値……計測不能!」
「情報転送はまだか!!」
「今全力で行っています!!」
監視塔にいる監視隊のメンバーは悟っていた。何が原因かわからないが、自分達が上空にいるアレに目を付けられたこと。そして……自分達にもう助かる見込みはないこと。
一番危険な仕事だった。この場に覚悟ができていない人間はいなかったが、アレの情報を王宮に送る前に死ぬわけにはいかない。
上空に光が溢れる。空中に浮かぶそれの腹の部分から突き出ている砲身から桁違いの魔力反応を感知している。そしてほどなくして、それから滅びは降ってきた。
監視隊の隊長は光に包まれる直前に確かに見た。大規模通信用アーティファクトに転送完了というメッセージが浮かんでいる光景を。
良かった。
自分達は最期に任務を全うすることができた。
後は祈るしかない。この世界の未来を託すに値する、異世界から来た若者たちに。
「彼らのこれからが、自由の意志の下にあらんことを」
最期の最期。彼らに対し、エヒト教にて禁忌だと言われる文言を口にした隊長は、光に包まれ消えた。
監視塔は塔を中心とした半径数百メートルを巻き込んで丸ごと消滅した。
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「帝国や公国と通信を繋いで直接連絡を取り合えッ、緊急事態だ!!」
世界崩壊まで残り三日。いよいよ間近に迫る世界の終わり。だがまだ三日あると必死に思い、生き残るため恐怖に震えそうになる身体に鞭を入れ、命がけで駆けまわる人々をあざ笑うかのように。その脅威は突然やってきた。
「なんだ……これは……」
「こんなもの……いったいどうしろというのだ……」
キッカケはライセン大峡谷を監視している部隊からの連絡だ。現在その部隊はもちろん戦線を大幅に下げることになっているが、魔人族の脅威を常に見張り続けておきながら王都へ素通りさせてしまった負い目があったのだろう。危険だが、王国を守るために是非レギオン監視の任務をやらせてほしいとその部隊員全員の志願が上がった。
現在最高指揮権を持っている宰相とリリアーナは悩みつつも、決してレギオンに不用意に近づいたり攻撃しないことを条件に許可した。
そしてそれが功を成した。彼らはこの世界の存亡を揺るがすような光景の通信データを送り届けてくれたのだ。……その命を犠牲にして。
「まずは落ち着きましょう。……彼らは真の英雄です。最前線で散った彼らにしばしの黙祷を……」
少しの黙祷を行う。作戦司令部の人間はその成果もあったのか、混乱一歩手前の精神状態から持ち直す。
そしてその後、王宮は監視部隊が最後に送ってきた情報を改めて精査する。
「まずは蓮弥さん達を大至急招集してください!」
「はっ!」
数分後、リリアーナの一声で蓮弥パーティー、ハジメパーティー、勇者パーティー、その他クラスメイトを含めたパーティーが招集されたが、その映し出された光景を見てほとんどの人間は唖然としていた。
「これ……映像がおかしいとか目の錯覚とかだよね」
「いや谷口。残念ながらこれは事実だ」
谷口鈴が現実逃避しようとするが残念ながら事実だと蓮弥は告げる。
それは外見で言うならクジラに近い形をしていた。横に長く手足も生えているが陸上生物というより海中生物だと言われた方がしっくりくるフォルムをしていた。
だが、実際は陸でも海でもない。その生物は空を飛んでいた。そして何より目を見張るのはその巨体。
この映像は監視塔から撮影されているが、レギオン眼下の町と大きさを比較するとどう考えても全長千メートルを超えている。それが悠遊と空を泳ぐ光景は絶望を超えて思考停止するレベルだった。
誰もが思考停止する中、冷静に判断するのは一度大災害の脅威を味わった者達。
「これは、どう考えてもエリセンでの悪食クラスだな」
「…………流石に大きすぎ」
「どうやら今までと格が違うようじゃの」
ハジメ達が冷静であることが幸いし、パニックには至っていない。蓮弥は今できることを考える。
「これは……王都から目視できる範囲まで来られたら負けだな。蓮弥!」
「わかってる。フレイヤッ、一緒に現場まで行ってもらうぞ!」
「はいはい。わかったわよ」
どう考えてもアレ……戦艦レギオンとも言うべきものが王都で目視できるレベルまで接近したら負けだ。守るにしろ倒すにしろ周囲の破壊が確実に王都を巻き込むレベルになってしまう。
「蓮弥ッ!」
「雫……今回お前は王都に残ってくれ。あいつは何かやばい感じがする」
「…………わかった。気を付けて」
「ああ」
「大丈夫です、雫。私と蓮弥は必ず帰ってきますから」
心配そうに見つめる雫を背に蓮弥は飛び立つ。
蓮弥には守らなければならないものがある。そのためならいかなるものでも倒して帰還する。
もう二度と雫を泣かせるつもりはない。その想いをもって、蓮弥は戦場へと全速力で向かう。
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約1時間後、蓮弥とフレイヤは王都南約二千㎞地点の上空に浮かんでいた。
「これは……」
「あは、何あれ。通り道には何も残ってないわね」
蓮弥が悲壮な顔を浮かべ、フレイヤが喜色の笑みを浮かべる。
蓮弥とフレイヤの前方約数百メートル地点に戦艦レギオンは飛行していた。悠遊と空中に浮かぶ戦艦レギオンの背後は……悲惨な光景が広がっていた。
通り道の人の気配がある場所を虱潰しで攻撃したのか、後方はいくつもの爆撃の後が広がっている。
もちろんレギオン発生地点であるライセン大峡谷に近い町や村には緊急避難勧告が出ている。大半の人は避難済みだろう。だが、それも全てではない。
移動が困難な者。この土地を失えば生きる糧が無くなる者。もしくは緊急避難勧告が出ているにも関わらず、それを真面目に受け取らないでこれ幸いと空き巣などを行うような小悪党も存在していたかもしれない。
だがおそらくそれらに生き残りはいない。今までのレギオンは彼らをスルーしていたが、どうやら今回の戦艦レギオンはそういうわけではないらしいとわかってしまう。
「藤澤蓮弥……まさかとは思うけど……怖気づいたんじゃないでしょうね」
それは揶揄うような声色だった。それは自分の認めた男がこの程度で怖気づくわけがないという確信からくる、単なる確認作業だ。そして蓮弥は拳を握りしめて答える。
「もちろん……そんなわけないだろ。急いで来て正解だった。ここより北は、まだ避難の完了していない区域があるからな」
ここからわずか北東約百㎞地点には中立商業都市フューレンがある。流石に大都市ともなれば完全に避難できるわけもなく、現在は街の結界を最大限発揮して籠城の構えを見せている。
今までは大都市ならではの蓄えと徹底した籠城を行うことでレギオンの被害に遭わずに済んでいたが、今回の戦艦レギオンは人の気配があれば虱潰しに攻撃している気配がある。進路コースからは少し外れるとはいえ、フューレンの人口が人口だ。もはや安全地帯とは言えないだろう。もっとも、このレベルの怪物が闊歩するようなトータスに最早安全地帯があるかどうかは不明だが。
「ここで食い止めるぞ。ハジメッ! 聞こえてるな」
『ああ、音声、映像共にちゃんと届いてる。どうやら問題なく機能しているみたいだな』
この空域には既に無人偵察用アーティファクト『オルニス』が蓮弥の手によって無数に展開されている。以前のハジメなら一機しか飛ばせなかったが、アーティファクト『ヘファイストス』と接続させることで多重操作と情報処理を可能にした。
オルニス自身にも強化が施されており、魂魄魔法を付与することで魔物の情報を調べるといった使い方もできる。
「さて、始めましょうか。どうやらあいつも気づいたみたいよ」
フレイヤの言葉通り、戦艦レギオンの姿は少し変わっていた。全身にある紅色の模様が発光し、側面の穴らしきものから小型の魔物が大量に飛び出してくる。
「行くぞ、フレイヤ。一応言っておくが無茶な行動はするなよ」
「あら、心配してくれてるのかしら?」
『調子に乗らないでください。あなたがいなくなると単純に戦力の問題があるだけです』
フレイヤの言葉にユナが反論している間にレギオンが動く。
「まずは雑魚散らしだな」
「学習能力に乏しいのかしら? こんな雑魚を何千体向けてこようが無駄よ無駄」
「"
フレイヤが五体の龍を召喚し、雑魚を一掃し始める。五つの属性が宿る龍が縦横無尽に駆け巡りレギオンに喰らい付く。
「ついでにあんたも喰らっときなさい!」
あらかた殲滅を終えた龍はそのままの勢いで戦艦レギオンに襲いかかろうとするが、エラと思わしき場所から放出された無数の魔力砲撃により撃ち落とされる。
その結果を受けてもフレイヤは落胆しない。むしろ関心したような表情を浮かべる。
「へぇ、流石にあいつは雑魚じゃないってわけね」
「あいつはおそらく戦艦だ。闇雲に攻撃しても迎撃される」
今までと同じように行く気がしない。どう攻めるのが一番いいか。それを蓮弥が考えている時、ハジメから通信が入る。
『蓮弥、聞こえてるな。オルニスが観測したデータを見てわかったことがある。こいつのメインコアは中心にある一つだけだ。代わりにそれを補助するためのサブコアがいくつも存在してる』
ハジメより無数のオルニスの観測結果からヘファイストスにより解析された情報が伝えられる。どうやら同時に壊すのではなく順番に壊さなければ中核には到達できない仕組みらしい。これも今までの戦いの経験から進化したといえるだろう。全体攻撃でコアを丸ごと破壊できない仕組みが作られている。
『まずは尻尾の方にあるコアを破壊してくれ』
「了解! フレイヤッ、俺は後方に回るからお前は周囲の魔物群を潰してくれ」
「いいわ。やってあげる」
ハジメの言葉を受け、蓮弥がレギオン後方に回るために高速飛行を開始する。
現在進行形で戦艦レギオンから飛行タイプの黒い魔物は排出され続けており、それの一部が蓮弥を襲う。生産性が上がっているのか襲い掛かってくる魔物はフレイヤが倒しているにも関わらず軽く百を超えている。
『
「悪いが雑魚に構ってる暇はないッ。丸ごと消し飛べ!」
風の聖術を付与された蓮弥の神滅剣が飛行タイプのレギオンを薙ぎ払う。だがその直後、技の発動後のわずかな硬直を狙うように戦艦レギオンの側面から黒い波動砲が蓮弥に向けて放たれる。
「くっ!」
蓮弥は身体を無理やり捻ることで回避するが、狙いが正確だった。雑魚を一掃することを見越した上でタイミングを合わせた攻撃。
「こいつ……賢い」
『側面からも砲撃が打てるように進化してる……まさに要塞ね。今からやるのは要塞の攻略よ。藤澤君、油断しないで』
「わかった」
蓮弥が少し冷や汗をかいているところにハジメと同じく支援に回ってくれている真央から通信が入り、蓮弥に警戒を促す。実際レギオンの攻撃は蓮弥でも当たればまずい。蓮弥は最小限の動きで側面を超え、尾に当たる部分に到達する。
「ッ! アレか!」
蓮弥は尾に当たる部分に赤い結晶のようなものを確認する。アレを破壊すればいいと蓮弥は近づくが、当たり前のように妨害が発生する。
飛竜タイプ、渦タイプ、そして背に翼が生えた無数の巨人レギオンが守護している。
「ちっ、鬱陶しいな」
まとめて葬るためユナが聖術の準備に入る前に通信が入る。
『魔素流入完了。空間転移……完了。環境変数入力……弾道設定完了……『バルス・ヒュベリオン』チャージ完了……南雲!』
『蓮弥、一旦そこから離れろ!!』
蓮弥が飛び退くと目の前に光の柱が落ちてくる。その光はコアの周辺に浮かんでいたレギオンを一掃し、蓮弥に道を開く。
『今香織に王都中の魔力を集めてもらっている。これで後何回かは援護が可能だ。ただしチャージする必要があるから連射は出来ねぇ。注意してくれ!』
「助かるッ!」
蓮弥は次のレギオンの増援が来る前にコアに刃を突き立てる。
「はぁぁぁぁ!!」
しばらく抵抗していたが、間もなく蓮弥の神滅剣によりレギオンコアの一つは消滅することになる。
「ハジメ……破壊したけど次はどこを狙えばいい?」
『次は…………背中だな。だがそこは待ってくれ。試したいことがある』
通信越しにキーボードを叩く音と話し声が聞こえてくる。どうやらハジメと真央が何かを相談しているらしい。
『待たせたな、蓮弥。計算した結果、ロッズ・フロム・ゴッドなら狙えそうだ。蓮弥は背中周りの魔物を掃討してくれ』
「了解した」
蓮弥は背中に着地するとコア周辺まで移動する。当然背中を走られて戦艦レギオンが何も抵抗しないわけがない。当たりまえのように背中から巨人レギオンや渦状のレギオンが湧いて出てくる。
蓮弥は縦横無尽に暴れまわり、レギオンを薙ぎ倒していく。成長するのはレギオンだけじゃない。最初は苦戦した巨人レギオンもユナが聖術にてコアを固定して集めることで広範囲攻撃を行わずとも倒せるようになっていた。渦状のレギオンも同様だ。
『待たせたな蓮弥。今から背中のコアに向けて砲撃を行う。衝撃に備えて退避してくれ!』
「わかった。フレイヤ、一旦こいつから引けッ。巻き込まれたくなかったらな」
「わかったわよッ!」
ハジメの連絡を受け取った蓮弥がフレイヤと共に一時戦艦レギオンから距離を取る。そしてその言葉と共に戦艦レギオンの頭上が一瞬輝く。巨大レギオンの背中にある核を破壊するべく放たれたのはハジメの超兵器の一つである
今回は王都から離れていたのでハジメは現在の全力で神の杖を起動する。マッハ20にも達する速度と300㎏の重力魔法付与の金属杭がレギオンに迫る。地上に衝突すれば周りへの影響を最小限にするよう考えて設計しているにも関わらず、着弾地点半径数百メートルは地面がひ裏返るほどの威力。まともに当たれば蓮弥ですら危ない兵器だが……
直撃したにも関わらず表層に触れただけで金属杭が四散して消滅した。
『なっ!?』
ハジメはモニター越しに驚愕した。既存のレギオンであればどれでも確実にダメージを与えられる一撃。もちろん魂魄魔法付与による霊的効果を付与済みだ。それでもダメージが通らない。これが意味することは何なのか。
「ユナ……どういうことかわかるか?」
『…………おそらくですが概念的な防御が働いているのだと思われます。今回のレギオンは今までのレギオンの神秘とは格が違います。だから神代魔法以下の攻撃は全て効かないのではないでしょうか』
つまり、この戦艦レギオンに本当の意味で対抗できるのは二人。到達者である蓮弥とフレイヤに他ならない。
「なるほどね。道理でさっきから手応えがないわけね。はっ、上等じゃない。大災害とかいって、来るのは雑魚ばっかりだから退屈してたのよッ。ようやくマシなのが出てきたってことじゃない!」
フレイヤも先ほどのハジメの神の杖による攻撃が通じなかった時点で戦艦レギオンが概念防御。つまり神代魔法以下の神秘は問答無用で無効にすることができることを把握していた。
そして、この堕天使はそれ相応の相手には全力で持って応え、そして自分の力を見せつける。だからこそ、堕天使フレイヤがとる選択もまた一つだけだった。
『これは……使徒フレイヤの魔力量が急激に上昇してやがる。おい、蓮弥。あの使徒に何があった?』
「あいつが本気を出す気になったってことだ。ハジメッ、よく見とけ。お前がいずれ辿り着かなきゃならない境地を」
その言葉と共に堕天使は歌う。自らの誓いの言葉を。
「アクセス──我が
それこそが、この世界の神秘の頂点。特権階級への入口。
「我が前に咎人が現れり──黒衣の使徒、振るわれる十字架──かの者により、我は地上へと墜落する──」
七つの神代魔法を手に入れたものだけが手にすることのできる神秘。
「崩れ落ちた我が身に何が残るのか──我が主は我を見放し、祝福を与えてはくださらない──」
そして、魂の渇望を持つものだけが、祈りを世界を理を変える神秘へと昇華することができる。
「ならばこの身に残るのは呪いなり──なればこそ立ち上がれ、呪いを衣として身に纏い、同胞たるものを腑に、骨に刻みこめば、汝が纏う呪詛の毒は、主の領域をも犯すものになる──」
かつてこの世界に降り立った光の使徒が"到達"し、解放者達があと一歩届かなかった領域。
「さあ、見届けるがいい愚昧なる民達よ、今ここに──至上の天使は降臨する──」
この異世界トータスの深奥にして奥義。神代魔法の真髄。解放者達はその魔法のことを概念魔法と呼んでいたが、実は光の使徒達の間では別の呼び名で呼ばれていた。
世界の理を限定的に塗り潰し、新たな理を顕現させる。
その神秘の事を彼らはこう呼んでいた。
黄金錬成、大いなる法、すなわち──
──アルス・マグナと。
「
ここに再び大天使は降臨する。黄金に光る三対六翼をはためかせ、堕天使フレイヤは空を滑空する。
当然戦艦レギオンは迎撃を選択。背中から無数の砲台を出現させ魔力砲撃を実行。空中に幾百の光線が乱れ舞う。
「今の私に……こんなもの効くわけがないでしょ!」
速度と精密性を増したフレイヤは空中で踊るように光線の雨を躱し続ける。それならばと巨人レギオンが無数に出現し物理的に障害となることでフレイヤを止めようとするが。
「邪魔よッ。雑魚ども!」
フレイヤが出現させた蓮弥と色違いの大剣にて一刀両断。フレイヤは戦艦以外を自身より格下と認定しているため、絶対位階により抵抗することもできず巨人レギオンは消滅することになる。
「ルシフェリア!!」
「AAAAAAAAAA──!!」
フレイヤが大天使を背後に召喚し、周囲に集まりつつあったレギオンに無数の魔法を展開して攻撃を行う。
「あれがコアってやつね。いいわ、このままぶち壊してあげる!」
フレイヤが真っすぐコア目掛けて突っ込む。そして接近し、大剣にてコアを斬り裂こうと振り下ろすが、概念障壁にて防御される。
「ちぃ、化物の分際で生意気ねッ!」
このまま力づくで叩き潰す。フレイヤが力を籠め押しつぶそうとした時、フレイヤの周囲の重力場が滅茶苦茶になる。
「!?」
すぐに姿勢制御しようとするも、戦艦レギオンの背中の一部が変形し、巨大な砲台がフレイヤ目掛けて出現する。
「このぉッ!!」
重力場はフレイヤをその場に硬直させる役割を果たし、フレイヤを足止めする。そして魔力が充填された砲台は砲撃を放つ。
「ユナッ!!」
『
突如フレイヤの前に出現した黒い巨大な手が砲撃を受け止め握りつぶして破壊する。そしてその隙に蓮弥が砲台に接近し、砲台を神滅剣で破壊する。
「一応感謝してあげるわ!」
フレイヤは自分を殺そうとした戦艦レギオンに対して青筋を浮かべながら……
「ぶっ潰れなさいッッ!!」
大天使と自身の一撃を叩きこむことでコアを破壊した。
「■■■■■■■■■■■■!!」
「くっ」
「ちぃっ」
背中側のコアを破壊されたことを感知した戦艦レギオンが体表面に衝撃波を発生させることで蓮弥とフレイヤを吹き飛ばす。
「ハジメ、次はどこを狙えばいい?」
『次は……待て、なんだこのエネルギー反ッ……』
ハジメの通信が途絶する。何が言いたかったのか、それはある意味蓮弥達の方がよくわかった。
「こいつッ」
戦艦レギオンは口を開き、魔力を溜めていた。現在レギオンが形成している権能は種別にするなら重力魔法の類なのか周囲の重力場が滅茶苦茶になり、蓮弥とフレイヤはまともに飛ぶことが難しくなる。そして周囲の環境は大地の一部が浮き上がるなどの明らかな異常現象が発生していた。
「もしかしてあいつ、ここから王都を狙うつもりなんじゃ……」
「嘘だろッ! まだ二千㎞以上距離が離れているんだぞッ! やばい、フレイヤッ。奴の攻撃を阻止するぞッ!」
「そうは言っても……ここらの重力の概念が滅茶苦茶で飛び辛いんだけど……」
「クソッ、手が届かないんじゃ俺の剣も意味がない。どうすれば……」
そして無情にも戦艦レギオンの準備は整ってしまい……
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そして、その異常は王都にいるハジメ達にも観測できていた。
「おい、蓮弥ッ。応答しろ! 蓮弥!!」
「多分一時的な磁場の乱れによる通信障害……辛うじて観測はできてるけどこれって……」
ハジメと真央はヘファイストスを操作しながら砂嵐の中映る映像を見て流石に冷や汗を流す。
「今あいつが形成してんのは超重力の塊だ。その規模……嘘だろッ、黒天窮の一万倍以上ッッ!!」
「な、南雲君……それって……どういうこと?」
鈴が恐る恐るハジメに聞くがハジメは中々答えない。いや答えない、それが一種の答えだろう。
「単刀直入に言うわ……もしあれがこちらに放たれたら……王都どころか神山含めて進路上にあるものは何もかも消滅する」
「!!」
真央の焦りを含む言葉に全員が息を飲む。
「なんとか、なんとかなるんだろッ、南雲。お前はそんなにすごい能力を持ってるんだ。だったら……」
光輝の言葉にハジメは応えることはなく、現在王都の南で戦艦レギオンにより撃ち出されていたレギオンを討伐していたユエ達に通信を開く。
『ハジメ……何が起きてるの!? 南の方からすごい魔力が……』
『そのせいであいつら逃げていって』
「……そいつらのことは放置しろ……それより……今すぐ帰ってきてほしい」
「…………わかった」
ほどなくして王都南にて戦っていたユエ達が空間魔法にて帰還する。
「ハジメ……」
「……結論から言う。アレは俺達にはどうにも出来ねぇ。蓮弥に全てが掛かってる。もし蓮弥がアレを止められなかった場合、唯一助かる可能性があるとすれば……到達者の概念魔法により守られてるこの部屋だけだ」
「そんな……」
大災害の脅威は止まらない。
彼らには祈ること以外にできないが、この世界の神は応えてなどくれないのだ。
それが示すように無情にも──
戦艦レギオンの砲撃は……放たれた──
>戦艦レギオン
全長千メートル級のレギオン。小型のレギオンを呼び出す能力や各種防衛能力。そして人の魂の感知機能を持つ動く要塞。主砲の威力は着弾した場合、神山付近半径約千㎞を丸ごと消滅させる。
見た目のイメージはニーア・オートマタのグリューン。もしくはFF10の『シン』。
>アルス・マグナ
以前概念魔法のルビを募集させていただいた時に星辰壊奏者さんが提供してくれたアイディアを採用しました。まだ読んでくれているかわかりませんが星辰壊奏者さん、アイディアありがとうございました。使わせていただきます。
もちろん他の方の香ばしい厨二病も拝見していますのでもし何かキッカケがあれば他に流用するかもしれません。
恐らく大災害レギオンとの戦いは後二話くらいで終わる予定です。