ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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絶賛スランプ中の作者です。お待たせしてすみません。

いや虚数の海を漂っていたり原神というゲームに嵌ったりしてたのも原因なのですが。

とにかくこのままだといつまで経っても更新できないと判断し切りのいいところで更新することに。

いつもより短いけどご勘弁を。

では、本編をお楽しみください。


ユエとシアの大喧嘩

「これ……一体何が……」

 

 氷雪洞窟氷柱の間、そこに苦戦しつつも先ほどようやく試練の攻略を認められた白崎香織は、現れた道の先に進まず、突如大迷宮内に現れた二つの巨大な力の気配を追っている最中だった。

 

 香織もここが大迷宮である以上、ただ強大な気配が現れたとしても驚きはしない。

 

 だがそんな彼女は今動揺の最中にいた。なぜなら……

 

「ユエ……シアッッ、何があったらこんな魔力を使うような事態になるのかな、かなッ!」

 

 香織が焦っているのはその気配。この世界で出会った仲間であり友達。その二人が今、中々見ることのない全力を発揮して戦っている。

 

 しかも衝突する気配を探れば、二人が対峙しているのがわかってしまう。

 

「もうッ! 二人とも絶対無事でいてよね!」

 

 香織は治癒師として、なにより二人の親友として助けるために。大迷宮のあちこちに移動している二つの気配を辿って行った。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ユエとシア。

 

 二人の戦いの始まりは一方的な展開から始まった。

 

「がばァ──!」

 

 開幕直後、ユエの顔をシアの拳が捉えユエの首から上が弾け飛んだ。

 

 常人なら即死してあまりある攻撃を叩きこんでなおもシアの攻勢は止まらない。

 

 残った胴体も塵一つ残すまいと音が遅れて響き渡る打撃のつるべ撃ちを行う。

 

 音速を超えた拳の乱打により周囲に暴風が吹き荒れ、部屋内に存在する氷柱をへし折っていく。

 

「…………このぉッ! "雷斧"」

 

 そんな暴風の中にいながらもユエは必死に肉体を超速再生させ、雷属性魔法で反撃するも、シアはそのユエの魔法を片手で払い、接近すると再びユエの全身を粉々にし、床に叩きつける。

 

 

 直近まで続けられていたユナとの自動再生強化訓練により今のユエは数秒で全損した肉体を再生させることができるようになっていた。それゆえに何とか今のシア相手にギリギリの戦いをすることができていた。

 

 だがユエのピンチはそこで終わることはない。なぜならシアも既に幾度も粉々になるまで叩き潰してもなお死ななかったユエがこの程度で死ぬとは思っていないからだ。だからこそシアは攻撃の手を緩めることはなく、床に叩きつけたユエの身体に蹴りを放ち、吹き飛ばす。

 

「がふッ!」

 

 そのまま壁に激突したユエにシアがドリュッケンの追撃を叩きこむ。ユエの激突に加えドリュッケンの一撃が加わったことで壁は崩壊し、隣の空間までユエの血肉をまき散らす。

 

 即再生したユエはこの距離だと何もできないと判断して必死に距離を取ろうとする。

 

「”天杓”」

 

 数十個の”天杓”が生み出す雷が部屋いっぱいを埋め尽くす。

 

 逃げ場なし。神の使徒レベルの敵であろうと無傷では済まない攻撃だが、今のシアにそんなものは通用しない。シアは臆することなく雷光の海の中を突破。無傷のシアがユエの胴体を蹴り破る。

 

「”極大・蒼天槍百連”」

 

 ユエは上半身だけの状態で回復よりも攻撃を優先し、超広範囲魔法を発動する。

 

 ”極大・蒼天槍”を視界いっぱいに展開してシアに射出しそのまま直撃するも……

 

「ッッ!!」

 

 皮膚に焦げ目一つ付かなかったシアの手で零れかけた内臓を引きずり出され、振り回され、そのまま氷の壁と地面に幾度も叩きつけられる。

 

「”氷城顕現”」

 

 ユエが時間稼ぎのために”波城”と”凍柩”により作り出された鋼鉄と同等の強度を持つ厚さ50㎝の城壁を三重に展開した瞬間、壁の向こうから壁を粉々に破壊したシアが間髪いれずに出現する。

 

「”雷龍”ッ!」

 

 僅かな時間を稼いだ際に作り上げた渾身の雷龍をシアに差し向ける。

 

 重力魔法により極限まで圧縮された雷が雄たけびを上げながらシアに喰らい付かんと迫るがシアは臆すことなく拳を構え、雷龍に向けて突き出した。

 

 シアの溢れ出す闘気により形作られた拳圧は雷龍の命脈を一撃で断ち切る。魔法式ごと砕かれた雷龍を突き抜けてなお止まらないシアの拳圧はユエの身を捉え、壁に叩きつける。

 

「あああああああああああ──ッッ!!」

 

 壁にへばりつき無防備を晒したユエの頭をシアは雄叫びを上げながら押さえつけ、そのまま疾走を開始する。音速域の速度で頭を壁にこすりつけられたユエはその摩擦により頭部を削られ、最後に振り回されて投げ飛ばされる。

 

 蹴り潰される、捩じり切られる、えぐり取られる、叩き潰される。

 

 

 大迷宮の壁を、柱を、数多のトラップを力技で砕きながら暴れ狂うシアの暴威に晒され続けたユエは、開始わずか30秒足らずで10回以上シアに殺されていた。

 

(……考えが甘かった)

 

 ユナに施された聖術の影響か、現在ユエは心身ともに以前と変わらない状態であると認識していた。

 

 つまり現在のユエの戦闘力は昨日以前と同じであり、つい最近シアと行った模擬戦でもここまで一方的にはならなかった。

 

 ユエはユナとの修行にて近接戦闘特化の敵と戦うことを想定した訓練も行なっている。過去アヴァタール王国に存在していた頃の敵のレベルでも神の使徒のレベルでもなく、さらに上の領域の戦闘を想定した訓練は、始めた当初はユナの圧倒的なステータスから繰り出される攻撃を受けて死に続けただけだったが、それを繰り返すうちに勝てずとも抵抗することくらいはできるようになっていたのだ。

 

 そんなユエが今のシアの攻撃に対応することができない。

 

 

(もしかして今のシアは……近接戦闘力だけならユナに迫るかもしれない)

 

 

 

 ユエの予想通り、シアはこの大迷宮にて新たな力を手に入れていた。

 

 

 魂魄昇華技能”超細胞極化(スーパー・アルテマセル)

 

 

 神山で手に入れた魂魄魔法、森で手に入れた昇華魔法。その二つを使うことで使用可能になった魂の力を、気と魔力の混成エネルギー”蓮華(パドマ)”に均等に混ぜることによりさらに進化した細胞極化。

 

 その溢れ出すエネルギーは常にシアの周りに炎のようなオーラを顕現させ、その力を激増させている。

 

 

 その状態で放たれるシアの攻撃は以前よりも速いし重い。

 

 

 ただ単純にそれだけの技能だが、単純ゆえにその力の上昇率はすさまじい。

 

 

 だからこそユエは理解した。今のユエだとこのままサンドバッグになり続けるしかないことを。

 

「このぉぉぉ!!」

「ッ!?」

 

 今必要なのは時間だと判断したユエはシアの攻撃を受ける瞬間、全方位無差別に自分もろとも自爆する。

 

 流石のシアもそれは想定していなかったのか、それとも天啓視で見て止められないが大した攻撃ではないと判断したのか、ユエの思惑通り素直に吹き飛ばされてくれる。

 

 このチャンスを逃すわけにはいかないとユエは急いで魔法を構築する。

 

「"震天空中機雷"」

 

 一方的にサンドバッグになっているだけでは状況は何も好転しない。よって今のユエに必要なのは時間だ。ユエはその時間を確保するためにすかさずユエとシアの間の空間に魔法を設置する。

 

 ユエが設置した魔法は触れたら相手を吹き飛ばすことに特化した小さい”震天”だ。見えない上に触れたら即発動するトラップ群。これはシアにダメージを与えるのではなく動きを止めるための魔法。

 

契約せよ、雷鳴の王。来たれ、邪なる神を滅ぼす雷轟の波よ

 

 その間にユエは詠唱を開始。ユエの想定では十分完成までの時間を稼げるとシアが足止めをくらっている間に詠唱を急ぐユエ。

 

 

 だが……

 

「ッッ!!」

 

 シアが紅眼を見開き、行動を開始する。

 

 高速のステップでユエに向かって進むシア。その動きに迷いはない。まるでトラップがどこにあるかわかっているかのような軌道。

 

 事実、シアはユエのトラップを見切っている。正確に言えば技能”天啓視”の連続発動により自分がトラップに引っかかる選択肢を片っ端から潰した上で移動している。当然真っすぐに動けるわけではないが、その勢いは依然衰えない。

 

我らが前に立ちはだかりし、全ての巨人の走狗に

 

 しかしユエの詠唱に焦りなし。なぜならそれは想定内。だからこそ、機雷の配置を考え、いかなるルートを辿ろうと必ず機雷に接触するよう瞬時に計算して罠を設置している。いかに未来がわかろうと、それを回避する術がないのであれば意味がない。

 

 だが、今のシアはユエの計算の上を行く怪物だった。

 

「ッッ!?」

 

 思わず想像構成を崩してしまいかねない異常事態。

 

 ユエの目に映る光景は、トラップに引っ掛かりながらも何事もなかったかのように進んでくるシアの姿。

 

「ああああああああああ──ッッ!!」

 

 叫びながらユエに特攻するシアがやったことは単純にして奇々怪々。

 

 トラップに触れ、()()()()()()()()()()()()()()()場を飛び退いて回避するというでたらめな所業だった。

 

 触れたら爆発する機雷に触れ、それが爆発するその刹那の間に、どのように爆発するか肌で感じ取り、すぐさまその流れを制し、衝撃を受け流す。

 

 言葉にすれば簡単だが、それは常人の神経伝達速度を遥かに上回る超反射神経と、瞬時にゼロからマックスまで加速可能な筋肉がなければできない神業。

 

 これに天啓視を合わせれば今のシアに攻撃を掠らせることすら至難だと言える。

 

 予想以上のシアの進撃にユエもまた脳処理を加速させ、瞬時に本来必要だった詠唱を省略した術式に改善して対応する。

 

大いなる神の裁きを与えんことを

”神裁之雷ッ!! ”

 

 ユエは完成した魔法を掌に掲げ持つ。

 

 神裁之雷──

 

 それは”天空之陽”と同じくユエが強大な大軍と戦うことを想定して編み出した対大軍用殲滅魔法の一つ。

 

 その効果は”天杓”で出現する円環状に浮かぶ雷の珠を重力魔法と空間魔法を併用して循環させることでエネルギーを増幅するというものであり、通常は発生した膨大な雷のエネルギーをそのままヒュベリオンのような巨大ビームとして撃ち出すという使い方をする。

 

 

 だが今のシアに直接ぶつけて効くかと言われたら疑問だ。よって当然、その使い方は一つしかなかった。

 

(お願い!! シアを助けるためにッ、上手くいって!!)

 

 ユナからは禁止された。失敗すれば周囲に大災をまき散らす。だが、今のシアを止めるにはこれしかない。ユエは覚悟を決める。

 

固着(セキュア)──憑依(アニマ)

 

 己の魔力と強い想いを籠め、完成した魔法を固定し、握り潰す。

 

憑神覚醒(アバター)

 

 それはシアがユエのトラップ群を突破し、ユエに拳を突き刺す寸前。

 

 その直後に神ノ律法(デウス・マギア)を発動させたユエが雷光に包まれた。

 

 

 

 この魂殻霊装はユナとの修行時に完成させたものだ。

 

 そしてその姿、その能力を見た蓮弥がその魂殻霊装に名前を付けた。

 

 

 ユエの努力、そして手に入れた力とその能力。それはこの名前を付けるに相応しいと判断したがゆえに。

 

 

 光が収まり、現れたのは十七歳まで肉体が成長したユエ。

 

 黄色のチャイナドレスのような物を身に纏い、普段よりも明るく輝く金髪をポニーテールに纏め、改めてシアに向かって戦意を高めていく。

 

 ここからが、本当の勝負だと。

 

神ノ律法(デウス・マギア)──魂殻霊装

 

 

雷速拳舞・戦姫変生(トール・トーテンタンツ・ヴァルキュリア)!! 

 

 

 雷を身に纏う戦乙女が、狂獣と化した親友に向けて構えた。




>超細胞極化(スーパー・アルテマセル)
別名:超ハウリア人
元々そこに至る土台ができていた状態だったが、今回の試練をキッカケに覚醒したシアの新たな戦闘形態。
原作シアが十倍界〇拳ならこっちは超サ〇ヤ人。
技術的な意味で言うなら身体エネルギーである闘気と精神エネルギーである魔力に魂魄魔法、昇華魔法により使えるようになった魂の力を加え均等に練り上げて精製したエネルギー。一言で言えば仙術チャクラ。その戦闘力の上昇率はすさまじく。今のシアなら近接戦闘中心のユナを上回る。
もしかしたら2とか3とか神化とかもあるかも。

>雷速拳舞・戦姫変生(トール・トーテンタンツ・ヴァルキュリア)
種別:求道型
服装:チャイナドレス
髪型:ポニーテール
髪色:輝く金髪

ユエの魂殻霊装の一つ。
モデルはDies_iraeのキャラの一人であるベアトリス・キルヒアイゼンの創造であり、これはDies知識持ちの蓮弥も狙って名付けている。

ベアトリスの創造はDies作中でも自分以外に使われることが多いので採用。神ノ律法の元ネタであるネギまで言うなら雷天大壮。


次回、雷神ユエVS超ハウリア人シア。ちょっとだけハジメも出るかも、です。

更新日はモチベ次第。

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