ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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勇者無双の後編です。

では、お楽しみください。


勇者無双 後編

「どうやら君達に掛けられた悪の誘惑は相当深いみたいだ。これは先に悪を排除しないとダメかな」

 

 その言葉と共に、光輝の姿が消えた。

 

「ガッ!!」

 

 エリクシルによる思考加速を行っているハジメでさえ視認できない速度でハジメにボディーブローを叩きこんだ光輝はそのままハジメを吹き飛ばす。

 

 亜音速にて樹々を薙ぎ倒しながら吹き飛ぶハジメに対し、即座に追いついた光輝はそのまま魔剣にてハジメを地面に叩きつける。

 

「まだまだ!」

 

 光を纏う拳を振り上げた光輝はそのままハジメの腹部に連打を叩きこむ。

 

「がはぁっ、てめぇ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

 

 血を吐きながらハジメが手を合わせ瞬間錬成を発動する。錬成されたシュラーゲンA・Aが光輝の頭に付きつけられ光輝の頭を吹き飛ばすために火を吹いた。

 

 だが、その弾丸が射出されたと同時にシュラーゲンの砲身が吹き飛ぶ結果に終わる。

 

「なッ!」

 

 ゼロ距離攻撃のシュラーゲンA・Aの弾丸が直撃と同時に跳ね返ったが故の現象だと瞬時に見破ったハジメだが驚愕は隠せない。

 

「無駄だ。もうお前の攻撃なんて効かない!」

「だったら、俺の攻撃ならどうだ!」

 

 光輝とハジメに追い付いた蓮弥は創造を展開し、光輝に斬りかかる。その攻撃に対し、余裕をもって魔剣を返し、蓮弥の神滅剣による攻撃に対処する。

 

 剣と剣が衝突するのと同時に、発生する世界の揺らぎ。概念と概念が鬩ぎ合うことで発生するこの現象が、光輝が概念魔法を使っていることの証明になる。

 

 蓮弥はハジメから距離をとり、光輝と高速の乱撃戦を開始した。剣と剣がぶつかり合い、火花を散らしながら戦場を彩る。

 

「ユナ、あいつの展開した概念は一体なんだ!?」

 

 概念破壊能力をぶつけているのに魔剣に傷がないということは真っ当に鬩ぎ合いが発生しているということで間違いない。なら接触した瞬間、ユナなら相手の渇望を見抜けるはずと蓮弥はユナに声をかける。

 

『……感じます。自分の正義を貫きたいのに、思い通りにいかないという彼の嘆きが。世界に蔓延る悪に対する義憤の想いが。彼の発現した概念は二つ。『光輝は絶対の正義である』、そして『正義は必ず悪に勝つ』。彼が悪だと認識する者に対して絶対に勝つという結果を齎す能力です』

 

 絡め手を用いた卑劣な能力なんていらない。勇者とは正々堂々と王道を往き、真っ向勝負にて悪を断罪する者であるという光輝の理想を体現した絶対正義という概念。

 

「ははは、どうした藤澤。随分息が上がってるじゃないか。俺はまだまだ本気じゃないぞ!」

 

 その宣言と共に光輝が纏うオーラが増し、その動きがさらに素早くなり攻撃の重さが増していく。

 

 蓮弥の渇望とて光輝の人の身を外れた理不尽な行動に反応して高まっていく。だが強化速度が光輝の方が圧倒的に早いのだ。一撃一撃ごとに力が増していくその剣に、いつの間にか守備に徹しなければならないことに気付いた蓮弥は、丹田に力を入れ、気合と共に押し返す。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ──ッッ!!」

「重力剣!」

 

 吹き飛ばされた光輝がお返しとばかり次元が歪むほどの超重力を圧縮した斬撃を放つが、それを概念破壊能力で現象そのものを破壊して周囲への影響ごと対処する。同じ領域同士せめぎ合いの末、概念破壊自体は通じるのはいいが、蓮弥は現状、自分の方が分が悪いことを察していた。

 

「蓮弥!!」

 

 ハジメの叫びと共に、蓮弥が弾かれたように後ろに下がる。光輝も先ほどの攻撃を思い出したのだろう。そうはいかないとばかりに攻撃しようとするが、ハジメは既に準備を終えていた。

 

「丸ごと焼き尽くされろ!」

 

 天空が輝き、光の柱が降りてくる。昇華魔法を組み込むことでさらに出力が上昇した太陽光集束レーザー兵器”バルス・ヒュベリオン”が光輝に直撃した。

 

 

「無駄だよ」

 

 だが、光の柱が斬り裂かれそこに無傷の光輝が現れる。魔物群を丸ごと薙ぎ払える大量殲滅兵器であるバルス・ヒュベリオンは魂魄魔法を使わずとも多数の魂を抱えることによる魂の障壁に対して有効な攻撃だ。

 

 局所核兵器とも言えるだけの出力の攻撃を受けても傷一つ付いていない。この時点で自己強化という点では蓮弥よりも優れている可能性があることを蓮弥達は認識する。ハジメは続けて周囲に展開した武装で光輝を連続攻撃し続けるが、未だに光輝は傷一つ負わない。

 

『無駄です、ハジメ。今の光輝は絶対正義という名の概念によって守られています。その概念上、光輝が悪だと認識する攻撃は一切効きません。増して蓮弥とハジメは光輝が特に敵視しているようなので……』

「その力もより強固になるってか。おい、蓮弥ッ。なんであいつが概念魔法を使える!? 使うためには渇望だの極限の意思だのが必要なんじゃないのか!」

「……渇望にも色々あるってことだよ。何も前向きな感情だけが極限の意思じゃない……」

 

 ハジメの疑問は光輝という人間が極限の意思の結晶とも言える概念魔法が使えることに対するものだった。

 ハジメにとって光輝とは何でもできたがゆえに挫折を知らず、子供じみた感情をそのまま持て余してしまったガキという印象だ。今となってはハジメも人のことを言えないと考えているが、それでも光輝が概念魔法を使えるほど強い意思を持っているとは到底思えなかった。

 

 一方蓮弥はハジメとは違い、光輝が概念魔法を使うこと自体に疑問を持っているわけではない。

 元々適正はあったのだ。幼少時代から持つ歪さを孕ませた正義感、優れた才能、そして一度思い込んだら絶対に他人の話を聞かない性質。どれもこれも蓮弥が、かつて羨ましく思った非常識になるための素質だ。幼少の頃出会い、外れていると思った光輝がそのまま悪い方向に進化した結果がこの力。

 渇望とは、前向きな感情だけではない。中には認められない現実から徹底的に逃避することを極めることでその領域に至ることだってあり得るのだ。

 

「簡単に言うとな。概念魔法(俺達の領域)は現実から目を逸らして、自分にとって都合の良い妄想にどっぷり浸れる才能がある奴ほど適正があるってことだ!」

「なるほどな。そう言う意味ではあいつは最初から適正ばっちりじゃねぇか」

 

 ハジメは舌打ちする。遺憾の想いでいっぱいだが、今の自分では光輝に勝てないことがわかったが故の行動。

 

 概念魔法使い”到達者”とそれ以外には天と地の差がある。未だ神代魔法の領域で留まっているハジメでは今の光輝には何をしても傷一つ付けられない。

 そして同位階にいる蓮弥も相性がいいとは言えない。光輝が常識を外れたとはいえまだ人間のカテゴリーにいるからだ。フレイヤ戦を十割と仮定するなら、光輝相手だと蓮弥の創造は最高八割くらいしか力を発揮しないと言うのが今戦った蓮弥の感覚だった。

 一方ユナ曰くハジメと蓮弥が相手だった場合、通常以上の力を発揮するという光輝は未だにどんどん出力を上げていく。今の光輝はハジメのアーティファクトによる攻撃を歯牙にもかけずに堂々と歩いてくるだけだが、その一歩ごとに力を増しているのだから始末に負えない。

 

 さらにここにきて、蓮弥は悪い情報を仲間に告げなくてはいけなくなった。

 

「ハジメ、悪いニュースがある」

「……言ってみろ」

「正直今のあいつと戦ってお前がまだ殺されてないっていうのが引っ掛かってな。そこで思い出したんだ」

 

 正直今の光輝の攻撃を何度も受けているハジメはとっくの昔に死んでいてもおかしくないというのが蓮弥の見解だ。だが現実は交戦してそれなりの時間が経過しているが、ハジメは存命どころかまだ継戦能力さえある状態だった。

 そこで蓮弥はその原因に思い至り、懐から巻物を取り出す。それはかつて、ホルアドにて蓮弥と光輝が一対一の決闘の果てに結んだ聖約が記された聖約書。

 

「あいつはまだ俺達との聖約下にいる。だから俺達相手に本気で攻撃ができてないんだ」

 

 ”天之河光輝は蓮弥達の言動を常に尊重し、金輪際その言動を否定してはならない”

 

 今の光輝は蓮弥が掛けた聖約に引っかかっている状態であり、それゆえに未だに本気を出せていない状態だと蓮弥は分析する。それは一見朗報のように見えるがそうではない。先ほどからハジメが山ほど叩き込んでいるアーティファクトの攻撃を歯牙にもかけず、蓮弥と同等の近接戦闘を行った光輝がまだ本気じゃないことの証明になってしまうからだ。

 

 そして悪いニュースは続く。

 

「そしてもう一つ。もう……聖約がもたない」

 

 蓮弥の言葉と共に、聖約書に亀裂が入るのがわかる。当時眠っていたユナではなく聖術を使いこなしていない未熟な蓮弥が行使した術だ。綻びがあって当然であり、その綻びゆえに増大していく光輝を縛り続けることができなくなっている。

 

 この聖約が破壊されたと同時に、縛りが解けた光輝はさらなる力を発揮し、蓮弥達に襲い掛かってくる。それは中々厳しい未来の光景だった。

 

「やっぱり俺が隙を見つけてあいつを斬るしかない。そのためには……」

「私が出るわ。だから蓮弥は一度下がって」

「雫……平気か?」

「平気じゃない。けど……私にも責任があると思うから……」

 

 蓮弥の横に雫が村雨を構えて並び、同じく覚悟を決めた香織がハジメの隣に並び、ハジメの治療を開始した。

 

「光輝!!」

 

 雫が蓮弥に代わりアーティファクトの雨に晒されていた光輝の前に出て刀を振るう。

 

「雫……そうか、君はまだ悪に魅了されたままなんだね」

「意味わからないこと言ってんじゃないわよッッ。どうして……どうしてこんなことになっちゃたのよぉ」

 

 悲痛な想いと共に、雫が光輝と剣戟を交わす。

 

 今の雫の心はぐちゃぐちゃだった。

 

 以前より視野が広がり、冷静に判断ができるようになってきた光輝は変わった。その成果は大迷宮攻略にも表れており、以前までの光輝なら大迷宮を攻略することはできなかっただろうと雫は思っている。メルドという雫から見ても素晴らしい大人を目標にして、一歩一歩前に進んでいた光輝はその名の通り輝いていた。いずれ大器に至ると十分に信じられたし、幼い頃から光輝を見てきた雫は感動すらしたのだ。

 

 それなのにそれは偽物だった。本物の光輝はさらにわけがわからない存在になっており、今自分達に牙を向けている。どうしてこうなったかわからない。

 

「……雫の怒りもわかる。俺は自分が見えてなかった。今まで雫を守っているつもりで、何も守れていなかった。ああ、今の俺にはその理由がはっきりわかる」

 

 

「俺が……弱かったせいだ!」

 

 

 光輝が雫に今の自分を見せるように、剣戟をより鋭くしていく。剣術の領域では雫の方が上だが、出力が違いすぎる。雫は必死に耐えることしかできない。

 

「どうだ雫。今の俺は強いだろ? 雫は藤澤が強かったから藤澤について行ったんだし、俺が弱かったから俺から離れたんだろ? だったらもう安心して俺の元に戻ってこれるはずだ。雫は強い男が好きなんだから」

「私がッ、一体いつッッ、そんなことを言ったのよぉぉ──ッ!」

 

 雫が破段を用いて光輝の魔剣に斬りかかるが傷一つ付かない。いかなるものでも斬れる神剣でも破段では概念は斬れない。概念を斬るならさらに上の段位である急段を使うしかないが、光輝は一向に雫の急段に嵌らない。雫相手に斬られると微塵も感じていないのだ。加えて言うなら雫は光輝の弱所など見抜いている余裕もなかった。

 

 光輝に悪い意味で特別扱いされている蓮弥ではなく雫ならと攻勢に出た雫だが、光輝の強化は止まらない。光輝にとって雫はどれだけ強くても庇護する対象なのだ。よって光輝が雫より弱くなることはあり得ない。

 

「”縛光鎖”」

 

 随所で光の鎖で光輝を拘束しようとする香織だったが、それも超反射能力で鎖を切り刻まれて終わる。

 

「香織もだ。いい加減目を覚ますんだ。今君は南雲という悪に染められてしまっている。本当の君はこんなふうに誰かを傷付けたりできない、もっと清純で、真っ白で、穢れ一つない天使みたいな女の子なんだよ」

「あいにくだけど光輝君……私、光輝君が思っているような清純な女の子じゃないから……堕天楽土(パラダイスロスト)

 

 理想の香織を語る光輝に対して、あえて聖女の微笑みではなく、魔女の冷笑を浮かべた香織は容赦なく反魔力生成魔法を行使する。この魔法は魔素に干渉するがゆえに概念魔法の位階序列を無視することのできる数少ない力の一つだ。当たれば光輝とて無事では済まない。だが当然光輝は難なく避けてしまう。

 

「残念だよ。なら君を浄化して救うとしよう。少し痛いかもしれないけど我慢するんだ」

「そうはいかないよ。攻撃魔法が効かないなら、攻撃魔法以外ならどうかな」

 

 

理想の未来にたどり着くその日まで、我は永劫の円環をさ迷わん──”永劫閉界”

 

 光輝の周りに、香織によって半円状のドームが形成される。

 

「これが一体どうしたってッッ!?」

 

 光輝がその場から脱出しようと走り、剣を振ろうとしたその時、まるでビデオを逆再生するかのように魔法発動時点の位置まで戻っていく。

 

 時空間干渉魔法──永劫閉界

 

 香織が開発した新魔法であり、ある地点を起点として物事の事象を起こす前に巻き戻してしまうという神代魔法の極奥、概念魔法一歩手前の領域に至った魔法だ。

 

 行動を巻き戻すことにより、相手に一切の行動を取らせないという意味では最上級の拘束結界ではあるが、世界の理に干渉するために膨大な魔力を使用するのと相手が格上の到達者ということも重なり効果時間はわずか数秒。

 

 だがその数秒は確実に相手の無防備を突けると言う意味でもある。よって……

 

 ”概念魔法は神秘の格の問題で神代魔法以下の攻撃は効かぬのじゃったな。なら……龍神の力による攻撃ならどうじゃ! ”

 

 真竜殲滅獄炎大砲(ドラゴニア・テオブレス)

 

 龍神はそれだけで一種の高次元の概念そのものとも言える。つまりその力の一端を担うティオのブレスであれば概念障壁を突破できるのは自明の理だ。

 

 もちろん今の光輝の力を考えればこれで倒せるとは思えない。だがそれ相応のダメージと隙を作ることができれば、蓮弥が止めを刺してくれる。

 

 その瞬間に備え、蓮弥はティオのブレスが突き刺さる光輝を見据え……

 

 

『限界突破』

 

 

 まだ自分達が勇者天之河光輝を甘く見ていることを知る。

 

「なッ!?」

 

 限界突破により3倍になった力を以て香織の魔法を無理やり破り、ティオのブレスを力技で捻じ伏せる。そしてそのままティオの元に向かい、ティオをその魔剣にて斬り裂いた。

 

 ”ばか、な……”

「ティオ!」

 

 ティオの頑強な竜鱗が剥がれ落ち、竜化したティオの巨体が落下する。辛うじて香織の天輪によって受け止められたが、その傷は深い。

 

「”絶象”……駄目ッッ、概念攻撃だから時間逆行じゃ治せないのッ!? 聖典!」

 

 時間の逆行では治せないと判断した香織はティオの生命力を用いる通常の回復魔法に切り替える。

 

「まずいッ、ユナッッ!」

『聖約更新──現状維持!!』

 

 限界突破により増々聖約が緩んだのだろう。蓮弥の持つ誓約書がきしみを上げる音が聞こえる。蓮弥とユナは聖約書が砕けないように力を注ぎ始めた。これが砕け散った時、光輝の枷は壊されて全力を発揮されてしまう。今壊されるわけにはいかないがゆえに蓮弥は行動を取れない状態になった。

 

「天之河ぁぁぁぁ──ッッ!! ロッズ・フロム・ゴッドッ!!」

 

 ハジメが手を振り上げながら超兵器を駆動させる。

 

 音速の数十倍以上の速度で迫る金属杭が遥か上空から落ちてきて光輝を狙う。だが……

 

「……嘘だろ」

「これでわかったかな。今の俺には誰も勝てないってことが」

 

 光輝はあろうことか、落ちてくる金属棒を()()()()()()()。重力魔法をつかったのか、直撃と共に発生するはずの運動エネルギーさえ打ち消し、光輝は受け止めた金属棒を適当に投げ捨てる。

 

 そしてハジメの前に瞬間移動し、ハジメの首を掴む。

 

「ぐッ、がは」

「安心してほしい。いくらお前が筋金入りの屑で悪党だとしても、俺はお前を見捨てない。お前が真人間になれるその日まで、何度でも魂の浄化に付き合ってやる。そう、何度でも……」

 

 何度でもに合わせて、光輝がハジメの腹部に拳を叩きこむ。

 

「がはっ」

「何度でも、何度でも、何度でも何度でも何度でも何度でも!」

「げほぉぉ!」

 

 拳を叩きこまれる度にハジメが苦悶に表情を歪め、血を吐き出す。

 

「何度でも更生に付き合ってやるから、善人になれるように一緒に頑張ろうな!!」

 

 光輝はまるで、不良生徒の更生に燃える優等生のような顔をしていた。

 

「お願い……もう、辞めて……光輝ぃぃ……」

「光輝……」

 

 雫は変わり果てた幼馴染の姿に嗚咽を隠せない。龍太郎は目の前の親友の凶行に対して何もできない自分に怒りを覚え、拳を握りしめる。

 

 

 どうにもならない。

 

 蓮弥は聖約を維持するために動けず。ハジメは聖約ゆえに死なない程度に苦しめられ続ける。

 

 

 ティオは血に沈み、香織はティオの治療と呪詛の毒の解呪に専念しなければならない。

 

 

 このまま悲惨な未来が訪れる。誰もがそう思った時。

 

 

 

『そこまでにしておきなさい、光輝さん』

 

 

 この場に、求められない第三者が現れる。

 

 

 その方向を見ると、背後に光る水晶を浮かべた、一人の神父の姿。

 

「……やっぱり、あんたが……ッ!」

 

 

「ダニエル……アルベルトッ!!」

 

 蓮弥の叫びを受けてなお、平然とこの場に現れた狂神父、ダニエル=アルベルトが光輝に対し、惜しみない拍手をしながらそこに立っていた。

 

「いやいや……実に見事ですよ、光輝さん。この成果には戦いを御覧になられていた我が主も大変喜んでおります。よく頑張りましたね」

「ありがとうございます、神父様。全ては俺を導いてくれた神父様のおかげです」

「いえいえ、そんなことはないですよ。全てはあなたが選び、掴みとった力のおかげです。胸を張りなさい」

「はいッ!」

 

 この場に現れた神父に駆け寄る光輝に神父に対する嫌悪は微塵もない。完全に信頼しきっていると光輝の口調だけで伝わってくる。

 

「さて……レギオンの件以来お久しぶりですね、皆さん。お互い無事で何よりです」

「あんたもな。どうやらあちこちちょっかい出してるみたいだな。よっぽど裏でコソコソ動き回るのが得意と見える」

 

 会話しつつも新たに現れた神父にどう行動するのが正解か考える蓮弥。

 

 何も考えずに斬りかかるのはなしだ。この手の人間が何の対策もなしに敵の前に現れるわけがない。

 

「あんた、天之河に何をした?」

「はて、何のことやら?」

「技能の書……今思えばあれで俺の術式を写し取ってたんだな。それを使ってまず檜山で実験した後、天之河に使ったわけだ。……一体いつから動いていた?」

 

 かつて蓮弥はダニエル神父と共に神山の深奥に入るための権限を手に入れるために、技能の書というアーティファクトを取りに行ったことがある。その際、神父が投げ飛ばした技能の書に蓮弥は触れている。蓮弥のエイヴィヒカイトの術式情報を手に入れる機会はあれしかない。

 

「いつからと言われると答えに困りますが、そうですねぇ……光輝さんがいつ入れ替わったかと言えば……王都にてあなたとフレイヤが戦った直後ですね。何しろあの時の彼は本当に無防備だった。あなた方のおかげでとても仕事が容易かったので感謝していますよ」

「そうやって、光輝を騙したってこと!?」

 

 我慢できずに雫が神父に向かって啖呵を切る。雫にとってはかつて蓮弥と旅立つ前に最期の挨拶をした関係上、気にならざるを得ない。下手をすると、あの後すぐにこの神父に光輝が騙されていたのだから。

 

「騙したなど人聞きの悪い。私は迷える子羊に救いの道を指し示しただけなのです。選択したのは全て光輝さんだ」

「よく言う。……あんただったら口先だけで、思い込みの激しい天之河なんていくらでも自分の望む方向に誘導できただろう」

 

 蓮弥は王都を立つ前、それを懸念して光輝を旅に同行させることにしたわけだが、蓮弥の認識は甘かった。とっくの昔に光輝は敵の手に落ちていたのだ。

 

「光輝ッ! 聞いて! あんたは騙されてる。その神父を信じちゃ駄目よ!」

「無駄ですよ、八重樫さん。光輝さんは私を完全に信じ切っている上に、都合の悪い言葉は聞こえていません。あなたも良く知っている彼の悪癖でしょう?」

 

 光輝のすぐそばで光輝について話をしていると言うのに光輝に反応はない。例え神父が光輝を都合の良いように誘導したと暗に聞こえる言葉を言っても聞こえていないのだ。かつてあった光輝の悪癖は、この領域まで来ていた。

 

「てめぇぇ……」

 

 龍太郎が低いうなり声を上げて神父を威嚇する。かつて龍太郎も世話になった彼だが、事ここに至って神父が敵であることを疑う余地はない。側に光輝がいなければすぐにでも飛び掛かっていきそうだ。

 

「おや、何やら皆さん怒っていらっしゃるようですが、そんなに彼のことが大切だったのですかねぇ。それにしては……ここにいる誰も、光輝さんが偽物だと気づかなかったのはいささかお粗末すぎませんか?」

 

神父の言葉に反応するのは龍太郎や雫などの幼馴染組だ。

 

「今まであなた方が共に冒険していた光輝さんは魂魄魔法と変成魔法を極限まで研究して作った私の魔法の産物でして。あなた達の言葉で言えば……魔法で作ったクローンというのでしょうか。私にとっては長期間維持できないという問題点が残る欠陥魔法だったのですが、どうやらあなた方を騙すには十分だったようだ。もっとも、藤澤さんの聖女に気付かれなかったのは運が良かっただけかもしれませんが」

 

 ユナは結局、光輝に一度も触れることがなかった。もし光輝に一度でも触れていれば霊的感応能力にて光輝が偽物にすり替わっていたことなどすぐにわかっただろう。逆に言えばそうでなければ見抜けないほど精度の高い偽物だったということ。

 

「実を言うとですね。あなた方が王都にいる間騙せればいいくらいの思いで設置した分身だったのですよ。すぐに見抜かれると思っていました。その証拠に恵里さんだけは真っ先に違和感に気付いて私に抗議してきたぐらいですし」

「恵里がッ!? じゃあ、まさか……恵里もあなたがッ?」

「残念ですが、彼女は最初から壊れていた。アレは幼少から抱えていた問題です。私が彼女を手駒にする頃には罪を犯した後だった。期待に応えられず申し訳ない」

 

 恵里の話題が出たとあって鈴が反応する。ここにきて、実は恵里も操られていた可能性が浮上してきた。だがその鈴の期待に神父は答えない。まるで申し訳ないと思っていない態度に鈴の顔も強張る。

 

「光輝さんは確かに、真剣に誰も見ていなかったのでしょう。表面上誰かを救った気になって、本当に救ってほしい人の叫びに気付かない鈍さを持っていた。確かに滑稽極まる存在ですが、結局あなた方も同じだったのでは? 誰も光輝さんを真剣に見てなどいなかったでしょう」

 

 そう言った神父はまず雫に目を付ける。

 

「八重樫さん。私が彼に声をかける前に何やら話をしていたみたいですが、他の男に心を奪われて浮ついている女の言葉など、男にとって何の価値もないものなのですよ。それ以前に、光輝さんが異性としてそれなりに意識していたあなたから、男としてではなく弟分として扱われることに、男として屈辱を覚えているかもしれないと一度も思わなかったのですか? ……結局あなたも、光輝さんをわかった気になって、上から目線で世話を焼いていただけだ」

「そんな……私ッ、そんなつもりじゃ……」

 

 その言葉は雫の胸を抉る。言い返したいが、雫には何も言い返すことができなかった。

 

「白崎さん。あなたは本当に南雲さん以外見えていないようだ。あなたにとって他の男なんていうものは、例え幼馴染だとしてもその他大勢、路傍の石でしかないのでしょう? もし、入れ替わったのが南雲さんだったら、あなたは即座に気づいていた。違いますか?」

「…………」

 

 香織もまた、神父を睨みつけることしかできない。

 

「そして、坂上さん。あなたは結局、光輝さんに黙ってついて行くだけの木偶でしかなかった」

「……ッッ」

 

 そして龍太郎は、つい最近自覚した自分の姿を突かれ、歯を食い縛る。

 

「結局、誰も光輝さんを本当の意味で必要としていなかった。哀れな子です。だから私が拾ってあげたのですよ。私には光輝さんが絶対に必要でしたから。いまさら返せと言われても困りますねぇ……ああ、それとも……」

 

 

 ここで神父の気配が変わる。まるで心底理解できないと言わんばかりに雫達に侮蔑するかのような視線を送る。

 

「私には理解できませんが、もしあんな安っぽい偽物でよければ、また作ってさしあげましょうか?」

 

 

 この言葉は、彼らの琴線に触れるものだった。

 

「てめぇぇぇぇぇぇぇぇ──ッッ!!」

 

 真っ先にかけたのは龍太郎。流石にこの侮辱には我慢できなかった彼が周りも見ずに神父に向かって特攻を仕掛けていく。

 

「死にやがれぇぇぇぇぇ、このクソ神父ぅぅぅ!!」

 

 

 

『動くな!』

 

 

 だがその攻撃も、神父のたった一言で止められてしまう。

 

「なッ、クソッ、クソッッッ!」

「さて、準備も整ったので帰りましょうか光輝さん。ここでの回収物は……」

 

 

 

「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ──ッッ!!」

 

 

 その時、草場から出てくる人影が神父に飛び掛かる。そこにいたのは……

 

「シアッ!」

「おや、まだ動けましたか。存外しぶといものですねぇ……『落ちろ!』」

「あぐぅぅ!」

 

 その言葉によって、シアが空中で地面に叩きつけられる。見れば無茶な行動により傷口が開いたのか、身体中から血を流している。香織はすぐにティオやハジメだけでなく、シアにも回復魔法をかけ始めた。

 

「シア、お前なんで!」

「ごめんなさい。私……守れませんでした」

 

 ハジメに謝るシアの悲痛な声によって、一行はようやく、神父の背後に浮かぶ水晶の中身に意識が向く。

 

 水晶の中で目を閉じているユエの姿を。

 

「ユエ──ッッ!!」

「おや、気づかれましたか。見ての通り神子は無事に確保しました。これでこの地に用はない。では皆さん。これにて失礼いたします」

「行かせると思ってんのか!」

 ”ぐぅ、させぬ”

 

 傷を負ったハジメとティオが、その傷をおして神父に向かって飛び掛かる。

 

『動くな!』

 

 今度は全体に声が向けられる。蓮弥も対象に入ったことでこれが高度な魂魄魔法による魂への直接命令だと気づいた。

 魂魄魔法を使えるハジメ達でも解けないあたり、非常に強力な魔法だと判断する。

 

「舐めんじゃね──ッッ!!」

 

 蓮弥は魂への拘束を概念破壊能力で無理やり引き千切った。どれだけ強力でも神代魔法レベルなら概念破壊は有効だ。そのまま神父に向かって攻撃を開始する。

 

『目標を見失う』

「なッ!?」

 

 ほんの僅か、蓮弥の攻撃座標がズレたことで蓮弥の攻撃が空振りに終わった。

 

「流石に藤澤さんにはこの程度しか効果がありませんか。仕方ありません。光輝さん。しばらく相手をしなさい」

「はい、神父様」

 

 神父に攻撃しようとした蓮弥の前に光輝が立ちはだかる。とっくの昔に限界突破の効果時間は過ぎているはずだが、まだその光は消えていない。再び蓮弥と光輝の攻防が始まる。

 

『光輝、今すぐ攻撃をやめてくださいッ。元々あなたのその術式の完成度で蓮弥と互角に戦えることがおかしいのです。過ぎたる力には代償が必要。今のあなたは、剣を振るう毎に自分の魂を削っています。このままでは、あなたの魂がッ!』

「心配してくれているんだね、ユナ。大丈夫、君も藤澤の元から解放してあげるよ」

 

 このままでは神父に逃げられる。だが蓮弥は光輝に足止めされ、蓮弥以外は神父の魔法……神言により身動き一つとれない。

 

「ま、てっ、ユエを、返せ……」

 

 それでもこの中でただ一人、神父の神言を破ったハジメが代償によってさらに血まみれになりながらも神父に這いよる。

 

「おや、流石と言いますか。南雲さんも神言を破りましたか。ですがそれでいい。我が主、神エヒトもあなたは直々に絶望の底に落としたいと申しておりました。光輝さんがあなたを殺す前に止めてよかった」

「ふ、ざ、けんなぁぁぁ」

 

 ハジメが錬成を行い、周囲の空間が歪んだ。空気の層を神父の周りに配置して押し潰そうとしているのか、この場に一気に空気が雪崩れ込む。

 

『乱れろ』

 

 だがその錬成も神父の言葉通り、乱されて拡散してしまう。そこで、ハジメのなけなしの抵抗は終わってしまったと言っていい。

 

「さて、先ほど言ったように、我が主が肉体を得た暁には直々にあなた達にお礼がしたいそうなのです。よって五日後、あなた達を魔王城に招待するとおっしゃりました。その時は是非いらしてください。愛しい吸血姫を取り戻したければね。その時は光輝さんも煩わしい聖約など外して本気で戦えるようになっているでしょう。もちろん、恵里さんやフレイヤ、そして檜山さんも待っていますよ」

 

 

 そして光輝が光の拘束魔法でわずかな時間、蓮弥を拘束している隙を狙い、神父たちの頭上に光の柱が落ちてくる。

 

 それが恐らくエヒトの本拠地に通じる場所なのだろう。蓮弥が破壊するために拘束を引きちぎって剣を構えるが遅い。

 

「ユエェエエエエエエエエエッ!!!」

 

 

 ハジメの絶叫が虚しく木霊する。

 

 

 伸ばした手には、何も掴めない。

 

 

 こうして、この世界の命運を決める最後の戦いの火蓋は、ここに切って落とされたのだった。




光輝なる絶対聖剣(アブソルートゥス・アストライアー)

光輝の概念魔法。
発現した概念は主に二つ。
・――天之河光輝は正義である
・――正義は必ず悪に勝つ

この概念魔法の恐ろしさは敵対する相手によって出力が際限なく上昇するということ。敵が強大な悪であればあるほど、正義は必ず勝つという概念に従い、光輝は無双の力を手に入れていく。仮に相手が瞬間的に光輝を上回っても次の瞬間には光輝は限界突破という形で相手を上回る出力を、敵を屠る最適な力を獲得している。
また、光輝は絶対の正義と自身を定義しているので光輝に敵意や悪意、殺意を向けた者は問答無用で悪認定されて光輝の概念の影響化に入る。
何が正義かは完全に光輝の主観によって決定され、例え客観的に見て正しいことをしている人がいても光輝が悪だと認識すればそれは悪となる。
特に藤澤蓮弥と南雲ハジメは光輝にとって許さざる悪の中の悪だと定義されており、この二人とこの二人に影響を受けた相手と対峙した場合、その出力は大きく上がる。
現状では蓮弥との聖約の効果により能力が制限されている状態であり、もし完全な形でこの概念魔法が発動した場合、文字通り絶対正義の名の下にいかなる悪でも叩き潰す概念を発揮するため、同じ位階にある到達者以外は抵抗することすらできなくなってしまう。

正義は必ず勝つ。光輝の中に残っている子供が夢見る理想の正義のヒーローを実現するための概念魔法である。

しかし、いくら適正のある光輝とはいえ、身の丈に合わない破格すぎる能力であることは間違いない。だからこそ今の光輝はその出力を発揮するために常時代償を払い続けている状態にある。


あとがき
第七章なんとか完結しました。
第七章に関しては以前に増して更新頻度が下がり、なんと完結まで約半年も時間が経ってしまいました。いつもお待たせして申し訳ありません。同時に更新するたびに読んでくれて感想をくれる人にはいつも感謝しています。

さて、第七章のテーマはベリーハードモードということで今までのありふれとは大きく違う展開になったと思います。具体的に言えば原作とは逆の展開になるように心がけました。

余裕癪癪で攻略していた人ほど苦戦し、原作で苦戦した人は案外あっさり攻略するという具合ですね。
本作主人公である蓮弥もまたどちらかというと優しい部類に入りますが、それは創造位階に到達した使徒というのは本来精神攻撃の類は効かないことが理由です。
原作Diesiraeでも描写こそありませんが、本編開始前に団員各自に精神攻撃的な試練を受けさせられているという設定があり、その際出てくる文句は全員、メルクリウス超うぜぇぇだったらしいです。
そんな狂人集団の仲間入りしている蓮弥がここで苦戦したら駄目だろうということで自分との殴り合いというある意味伝統芸をやって貰いました。これで彼の渇望の真実に近づけたらいいのですが、それはまだ先かなと思います。ユナと共に頑張ってほしいですね。


ハジメ達について
割とあとがきにも書きましたが、この辺りの原作から私は大迷宮攻略に適当感を感じるようになったと思います。最初の頃はそれなりに命がけの試練があったように思うのですが、原作だとおこたで鍋を食べながら余裕で攻略していたりします。それは最後の大迷宮としてはいかがなものかと思い、某大尉殿ではありませんが、本作では愛するがゆえに試練を与えて見ました。原作主人公勢に対するアンチとも取られるものだったので多少の批判も覚悟していましたが、感想を読む限り不評は少ないようなのでほっとしています。
今は落ち込んでいるメンバーもいますが、彼らは原作主人公勢。必ず華麗に復活してくれることでしょう。そろそろハジメの詠唱も考え始めなくてはならない時期にきています。


天之河光輝について
第四章の頃から温めて温めて、ようやくネタ晴らしすることができた光輝についての謎。勘の鋭い読者の中では薄々感づいていらっしゃる方もいたかもしれませんが、第五章から出ていた光輝は偽物で、黒騎士として出ていた方が本物の光輝になります。今までの光輝はものすごく簡単にいうとNARUTOの影分身みたいなもの。自分は本物だと思っていますが、時間と共に魂がすり減って消えてしまう運命を課せられた分身です。
実は彼が偽物である伏線はいくつか張ってあったりします。5章にて優れた死体を欲しているはずの恵里が光輝をジャンク(廃棄物)などと言っていたのは死体にして操ってもいずれ消えるからであり、フレイヤが散歩していた際に光輝を人間じゃないと思って攻撃できたのも、ある意味人間じゃなかったからだったりしました。

そして本物の光輝ですが、ある意味読者に熱狂的なファンがいる勇者(笑)と呼ばれる属性をさらにとがらせて改悪した形になります。
光輝は元々、思い込みが激しく人の言うことを聞かない性格であり、万能の才能マン。そして持ってる正義にどこか歪なものがある上に、原作本編では徹底的にハジメの踏み台と言う名の不遇の負け犬扱いされたことで渇望を抱きやすい。なので実はありふれの中でもトップクラスに神座世界向きのキャラクターであり、エイヴィヒカイトの適正も実は高かったりします。後は常識というブレーキを壊してやればこの通り。

現実逃避を力にするあたりはシュライバーと同じタイプになり、能力も必ず相手を上回るという点では似通っていたりします。そして、Dies原作においてシュライバーがいかに凶悪だったかはプレイ済みの方には既知の情報のように、彼もまた単純ながらも凶悪な能力を持つに至りました。

現状の光輝はまだ第三章で結んだ聖約下にあり、本気を出せていませんでしたが、それでもあの出力ということがいかにやばいかわかってもらえるかと思います。ただし、これだけの出力を得るということはそれなりの代償があり、このままだと間違いなくバッドエンド確実です。

果たして彼はこのままバッドエンドへの道を突き進んでしまうのか。そして、今まで旅をしてきた光輝(善)は本当に消えてしまったのか。
光輝の未来が道化で終わるのか、それとも勇者(真)への道へ続いているのか、その辺りも次章以降をお楽しみください。

そして次章ですが、原作でいう最終章に当たる話であり、本作でも第一部トータス編の集大成になるかなと言う感じです。

誘拐されたユエと失った力について。

エヒトの復活と神父の目的。

フレイヤとの決着。鈴VS恵里。香織への執念を見せる檜山。

そして、ありふれた職業を持ちて最強の頂に昇る者。

一部の最後についに明かされるこの世界の座と敷かれた世界法則。

などなど書きたいことが目白押しです。

けどほとんどオリジナルになるのでまた更新速度問題が浮上します。けどここまで来たらなんとか書ききりたいので何とか頑張りたいですね。

では次回、また会いましょう。









「おや、まさかあなたが迎えてくれるとは思いませんでした」

神父はエヒトの勢力圏に戻ってきた後、ある人物に出迎えられていた。

「ええ、万事うまくいきましたよ。……ええ、もちろん彼女も連れてきましたとも。主からも許可を頂いています。壊れた器に用はないと。約束通り彼女についてはあなたに一任しましょう」

彼は神父の言葉に納得したようだった。口数は少ないが元々自分達となれ合う仲ではない。

「しかしあなたもやりますねぇ、まさか主も自身が多大な力を与えた眷属がとっくの昔に内側から食い潰されているとは思わないようでしたよ。……ええ、もちろん約束は守りますとも。私には私の願いがある。だからあなたに干渉はいたしません。存分に300年に渡る悲願を成し遂げるがよろしい」

神父は目の前の人物に礼をした後、部屋から退出する。

彼らの悲願は目の前にある。今更足踏みしていられない。

間もなく運命の日がくる。その時勝つのは果たして誰なのか。

それは誰にもわからない。

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