ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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筆が乗ったので早めの更新。
目指すは正田卿に倣って半月に一回ペース。

4か月以上もオリジナル主人公も原作主人公も登場しない小説があるらしい……本作です。
というわけで前半にて少しだけハジメと蓮弥の登場です。



断罪の魔光

 少し時間は遡り、神話大戦前夜。

 

 神話大戦作戦本部にて、ハジメが作ったクラスメイト専用のアーティファクトの授与式のようなものが開かれていた時のこと。

 

『ほらよ。お前らの専用装備だ。悪魔への切符(デビル・チケット)と併用すれば、神の使徒とも戦えるはずだ』

 

 ハジメにより渡されたアーティファクトを前に、近藤礼一はすぐに受け取ることができなかった。

 

『あん? どうしたんだよ、お前ら。揃いも揃って間抜け面して?』

『いや、あの……』

『……えーと』

『……あのさ』

 

 同じ立場である中野信治と斎藤良樹が顔を見合わせてくる。その顔には一つの決意が込められていた。

 

 否、決意などという高等なものではない。

 

 これは単にケジメというやつだろう。

 

『多分お前は気にもしてないんだろうけどさ。けどやっぱり筋は通さないといけないと思うんだ。だから……』

 

 仲間二人と顔を見合わせ、ハジメが正面に見える形で横に整列し、そして……

 

『虐めてごめん!』

 

 その言葉と共に三人は深々とハジメに向けて頭を下げた。

 

 ちなみに周囲にはクラスメイトの他に、シア達やリリアーナ達もおり、意外と大きな声で叫ばれたので、何事かと一斉に注目し始めたのがわかる。

 

 そして、周囲の反応を見たハジメは顔を思いっきり引き攣らせていた。

 

『……なんのことだ?』

 

 正直ハジメとしてはそのあたり触れてほしくはない過去なのだ。ここにユエはいないが、それでもシアなどのこの世界の、さらに言うなら奈落に落ちる前のハジメを知らない者がこの場には大勢いる。

 

 最期の試練にて、過去の自分とも向き合うと決めたハジメだが、それでもあまり掘り返してほしくない黒歴史だってあるのだ。

 

『蓮弥さん、一体なんのこと言ってるんですか?』

『あー。それはな。リリィからしたら弱いハジメなんて想像もつかないと思うが、この世界に来る前のハジメは虐めら……もとい、弄られキャラだったというか……まぁそんな感じだ』

『まぁ、南雲さんにそんな過去が。なるほど、人に歴史ありですね』

 

 早速蓮弥が異世界のお姫様にハジメの過去を暴露し始めていた。この世界の住人がハジメの方を見て信じられないといった表情を浮かべ始める。

 

『俺、この世界で思い知ったんだ。地球にいた頃の俺は、()()()()()して自分が強くなったようになってるだけの、だっせぇ奴だったって』

『俺も()()()()()()()()もっと上を目指そうとも思わない、ただ日々だらだら生きてるだけの、向上心の欠片もない奴だった』

『だけど()()()()()お前が奈落の底から這いあがって、地球にいた頃からは考えられないくらい強くなった時思ったんだ。人は変われるんだって』

 

 近藤達は反省して良いことを言っているようだが、ハジメにはかつての自分を貶されているように感じていた。ハジメの顔がどんどん引き攣っていくのがわかる。

 

『お前のアーティファクトを貰って強くなるのは簡単だ。だけど過去の清算はきっちりしとかねぇと。だから……』

『虐めてごめん、本当にごめん!』

 

 

 目の前で頭を下げる近藤達を前に、ハジメは冷静になるように努めた。

 

(落ち着け……こいつらに悪気は無いんだ。無いんだが……どうやら思い違いをしているみてぇだな)

 

 既に被虐種族代表であるシアあたりから同情の視線を感じ始めていたハジメは、周りの奴らの認識を変えることにする。

 

『謝る必要はねぇ。なぜなら俺は……虐められてねぇからな』

 

 そのハジメの言葉を聞いたクラスメイト達──頭を下げる近藤達以外──は審議を始める。

 

『ねぇ、シズシズ。今の発言どう思う?』

『えっ、そうねぇ……確かに嫌がらせに対して毅然としてはいたけど……』

『ま、だらしない奴だったし疎まれてたのは確かだな。今と比べたらよくわかるけどよ』

『流石に虐められてないは無理があるんじゃない? 確かに卑屈にはなって無かったけど、あの時の南雲は居心地悪そうだったし、その割には助けも求めず孤立してたというか……』

 

 雫はそのように評価したが、周りは龍太郎や優花の意見に賛同しているようだ。

 

『ハジメ……辛いとは思うけど過去は受け入れるべきだと思うぞ』

 

 止めに蓮弥がハジメに対してそう忠言すると、ハジメの目が坐り始めた。

 

『そうか……なら俺が虐められていなかったという証拠を教えてやる。虐めというのは本来弱い奴に対して行われるものだ。だから……』

 

 

 近藤達に向けて、ささやくように言葉を告げる。

 

『隠しフォルダの三番……タイトル『アイドルと出来ちゃった結婚計画』』

 

 ビクッと斎藤良樹が頭を下げつつ、震えた。

 

『PCの鍵付きフォルダー……最強の俺がオタ芸でハーレム作ってみた』

 

 ビビクゥッと中野信治が頭を下げつつ、震えた。

 

『……”紳士の嗜み”』

 

 ガバッ、と近藤礼一が勢いよく顔を上げる。その顔には困惑と畏怖の表情。

 

『な、何で……それを……』

 

 ガタガタ震えながらハジメを見ると、久しぶりのサド増し増しの顔でハジメが告げる。

 

『これが何かって。バレたらお前たちが学校にいられなくなる隠しフォルダーの中身だが何かッ? 

 

 その言葉で、周囲もようやく、近藤達が震えている理由を察した。

 

『俺はお前達なんてどうでも良かったんだけどな。でもあんまりにもお前達が調子に乗って鬱陶しくなった時のために、お前達の端末にハッキングかけて情報を抜き取ってたんだよ! いつでも実名付きで暴露できるようになぁ!』

『『『どうしてそんな酷いことができるんですか!!?』』』

 

 思わず敬語で叫ぶ三人。

 

『これでわかったか? 実はどちらが強者で、どちらが相手の命運を握ってたのかを。良かったなぁお前らぁ。もしトータスに来なかったら、今頃鬱陶しいからそろそろお前達には、俺の周りからいなくなってもらおうかなと思って暴露してたところだぞ』

『ひ、ひぃぃぃ』

 

 一体どんな秘密を握られているのか。三人はすっかり怯えてしまっていた。流石に可哀想になったので蓮弥が諫める。

 

『ハジメ。その辺りにしておけ。誰しもバレたくない秘密と言う物はあるんだ。それを無理やり暴き立てようとするなんてどうかと思うぞ。というか一応ハッキングは犯罪だからな、今後は自重しとけ』

『そうね。蓮弥にだって見られたくない隠しフォルダーの一つや二つあるものね』

『え”っ』

『冗談よ。きっと地球に帰った後調べても、何も出てこないと信じているわ』

 

 この時蓮弥は、雫の言葉を受けて地球に帰ったら潔く、色々整理しようと心に誓ったという。

 

『というわけだ。そんな過去のことなんか今更気にもしてないぞ。それに帰ったら保存してある弱みもちゃんと消すし、もう二度としねぇ。思い返せば、地球時代の俺の態度にも問題があったと今となってはわかってるしな。お互い自業自得ということで水に流そう。それにだ……』

 

『もし仮に謝りたいなら、一番俺に謝らなきゃいけないやつがここにいないだろ?』

 

 そこで、浮ついた雰囲気が引き締まったように変化する。

 

『一応封印する手はずは整ってるが、この先の戦いであいつが出てきても容赦してやれねぇ。……だけどもし、あいつを生きて捕えられて、喋れる理性が残ってたらお前達に会わせてやる。そしてその時は……お前達が俺の元まであいつを引きずってこい! あいつに頭を下げさせるためにな』

 

 謝罪に興味がないというハジメの言葉は、最後にあいつを説得するのはお前達の役目だという、ハジメなりの不器用なエールという意味で近藤達に伝わった。

 

 そして今の檜山大介を止めるには力がいる。

 

 だからこそ、近藤達三人は、決意を籠めてハジメが差し出してきたアーティファクトを手に取ったのだ。

 

 そして、親友を止める役割は彼らの予想とは違い、直接回ってきた。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~

 

 

 

 さらに巨大化した触手の怪物は、その巨体だけで並みの脅威を凌駕する。

 

 流石に大災害クラスとはいかなくても、全長数十メートルの巨体から生える六本の触手が真っすぐこちらに叩き落される様はトータスの冒険者では太刀打ちできないだろう。

 

 

 だが、少なくともここにいるメンバーに関しては今更この程度の攻撃で怯む者はいない。

 

「やべぇっ、けど……避けられる。まじで凄ぇなこの紙。一体どんな成分が入ってるんだ?」

「教えてあげてもいいけど。……本当に聞きたい?」

「いや、辞めとく。後悔しそうだし」

 

 近藤は自身のレベルを大幅に上げている舌の上のアーティファクト『悪魔への切符(デビル・チケット)』の効果を実感する。

 

 

 檜山大介の凶行、それに伴う異形化。それらを前にした檜山の友人であった三人は以前にも増して精力的に修行に励んでいた。

 

 

 そのおかげで魔力操作は実戦で使えるレベルまで成長したし、能力だってそこらの魔人族には負けないレベルにまで達した。

 

 だが同時に彼らは神代魔法を一つも習得できておらず、最前線にいる者達と比較して弱いのも事実。

 

 それを補うのが、ハジメと香織が作ったアーティファクトだ。

 

「いける。これなら誰にも負けねぇぜ!」

「それ、わりと言っちゃ駄目なフラグだと思うんだけど……まぁ、けどそんなにやる気なら頑張って貰おうかな。ほら、準備が終わったみたいだよ」

 

 質量を大幅に増した触手の怪物は、今までと違い全身の触手から無数の眼を生やしていた。

 

 ぎょろぎょろ動き回るそれが、香織達を捕えた時、目から闇色の魔弾を大量に吐き出す。

 

「こっちは魔法がほとんど使えないのにッ」

「任せろ!」

 

 無数に迫る魔力弾に対して、近藤礼一は槍を振り回し、確実に弾丸を振り落としていく。

 

 その槍捌きに澱みはない。見ただけで今に至るまでに彼なりに研鑽を積み、ひたすら槍を振り続けてきたのだとわかった。

 

 前衛ができた香織は、後方にて触手の怪物を観察する。

 

 以前より巨大化した胴体。新たに生えた四本の触手。そして身体中についている無数の眼。

 

 現在魔力弾を絶え間なく吐き出している眼は魔力の放出口になっているらしい。ならば……

 

「わかりやすい、弱点!」

 

 魔力弾が止まった隙を突いて、香織が銃撃する。真っすぐ飛んだ弾丸は目玉を破壊し、大量の血と共に魔素が噴き出すのがわかった。

 

「近藤君ッ、どうやら眼が弱点みたい。だから眼が開いたら積極的に狙っていこうッ」

「おう、これなら楽勝だぜ。槍でも鉄砲でも持ってきやがれ!」

 

 自分でも戦いに貢献できている。その事実を確信し、やる気に満ち溢れる近藤。

 

 そしてそのやる気に反応したのか、二つ目の眼が開き、身体中から槍のようなものを上空に打ち出した。

 

 

「なら、あれも頑張って防げる?」

「えっ?」

 

 上空に打ち出された触手の槍は重力を味方にし、香織達目掛けて落ちてきたのだ。

 

 

 全長5メートルはあろうかという巨大質量はもはや槍が落ちるというよりミサイルが落ちてくるようだった。

 

「いや、待て待て待てッ、あれは無理だって!?」

 

 弾丸ならおとせてもミサイルは落とせない。そう宣言した近藤を縛光鎖で引っ張りつつ、空を滑空しながら回避する。

 

 

 触手ミサイルが砂浜に着弾した時、周囲に爆発音が鳴り響く。

 

 大量の魔力を集めて作られた触手は文字通りミサイルだったらしい。一発で半径十メートルのクレーターができる触手ミサイルが、まだ無数にこちらに向かってきているのがわかる。

 

「ごめんッ、あんまり飛んでいられない! 自力で避けてッ」

「つまり全力ダッシュだなこんちくしょう!」

 

 続けざまに爆発が起き、その度に美しかったエリセンの海岸の地形が変わっていく。

 

 ミサイルはどんどんこちらに向けて降り注ぎ続けており、とてもではないが反撃している余裕などない。

 

 

 どうしようかと香織が考えた時、この場に存在する残りの仲間が動き出す。

 

「”緋槍”」

「”翠槍”」

 

 火と風の槍が触手ミサイルを次々撃ち落としていく。

 

「信治ッ、良樹ッ!」

 

 少し離れた崖の上にて、中野信治と斎藤良樹が無数の魔法陣を展開し、香織と近藤を援護していた。

 

「ごめんッ、この環境だとッ、これが精いっぱいみたいだ!」

「めっちゃしんどいけどッ、前線では戦えないけどッ。礼一と白崎の足手纏いには絶対にならないッ!」

 

 

 ライセン大峡谷以上にまで発展した魔力分解エリアの中で魔法を使うということは、それだけ多くの魔力を使うことになる。

 

 事前にタンクとして用意した魔力石をたっぷり持ち込んでいるとはいえ、魔力を操る精神力の方は回復できない。

 

 それでもなお、途切れることなく香織達に魔法支援が行えるということは、彼らもまた、この世界に来て精神的に成長したということ。

 

 地上に着弾する触手のミサイルを何とか避けつつ、香織は開いている眼に向けて銃弾を撃ち込む。

 

 ドパンッ

 

「ギィィィィィィ──!」

 

 

 二つ目の魔力器官の破壊は、流石に聞いたのか周りに蠢いていた触手が地面に向けてしな垂れてくる。

 

「やったか!?」

「やってないッ! 次来るよ!」

 

 香織が使い切った弾倉を入れ替えている間に、今度は大口の辺りに大きな眼が開く。

 

 そして眼がこちらを向いた時、いつの間にか香織と近藤は吹き飛ばされていた。

 

「ッ、きゃあぁぁぁぁ──ッッ!」

「おわぁぁぁぁ──ッッ!!」

 

 なんとか吹き飛ばされた先で体勢を整えた香織だが、巨大な触手の怪物が眼の周りに魔法陣を展開し、膨大な魔力を集めていることがわかった。

 

「あれッ、この辺りが吹き飛ぶかも!」

「マジかよッッ、クソッ、全然近づけねぇ!!」

 

 砲撃か、または他の攻撃手段か。それはわからないが、集まっている魔力から悲惨なことが起きることを予感した香織は、なんとか近づこうとするも、衝撃波の影響で近づくことすらままならない。

 

「クソッ、こっちも駄目だ!」

「すまん。俺達はもう全然魔法が使えない!」

 

 周囲の魔力を根こそぎ奪い取り、力を蓄えるその能力はあらゆる魔法的防御手段を奪い取る。

 

 どうすることもできない絶望。

 

 まさかそんな展開が檜山相手に起こるなんて誰が考えただろう。

 

 卑怯者の小物が弱いとは限らない。それを証明するかのように、力がどんどん増していく。

 

「このままじゃ……」

 

 相手を甘く見ていたわけではない。

 

 香織なりに檜山の状況を推察して対策を練り、現在進行形でその対策を行なっている最中だが、思うように効果が現れない。

 

 檜山大介の力は香織の想像を超えていた。だが、だからといって諦めることはできない。

 

「一か八か!」

 

 ここで香織は自らの天運に掛けることに決めた。

 

 

”光となって、永劫を駆け抜けよ──”

 

 

 ギリギリの攻防。そんな極限状態にて、触手の怪物がチャージを終えたのと……

 

”時よ止まれ、お前は美しい! ”

 

 

 ──香織が詠唱を終えるのは同時だった。

 

 

「オオオオオオオオオォォォォ──ッッ!!」

──”摩訶鉢特摩(マカハドマ)”ッ! 

 

 放たれる砲撃、それが香織達に直撃する前に、香織は……時間を停止させた。

 

 

 時空間干渉魔法──『摩訶鉢特摩(マカハドマ)

 

 

 空間魔法、再生魔法、昇華魔法の深奥と干渉魔術を組み合わせて発動する時空間魔法の奥義であり、最大五秒間、香織以外の世界の時間を停止させることができる。

 

 時間が止まればあらゆるものは影響を失う。それは魔力阻害効果すらも例外ではない。

 

 そんな何もかもを停止させる最強の能力にも見えるが、それは場合による。

 

 今のタイミングで時を止めたとしても全員離脱することはできないからだ。

 

 だからこそ香織は、即座に縛光鎖を伸ばし、放たれた砲撃に干渉魔術を行使する。

 

 

 一秒経過。

 

 魔術の干渉開始。放たれた魔法は光属性砲撃魔法に相当することを確認。

 

 

 二秒経過。

 

 

 干渉を続ける。構造と強度は平凡なれど、規模が甚だ巨大。時間との勝負だと判断。

 

 

 三秒経過。

 

 

 時間停止と干渉を同時に使うことによる過負荷による激痛が香織に襲い掛かるが、気合で耐える。

 

 

 四秒経過。

 

 

 後少し──

 

 

 五秒経過、そして時は動き出す。

 

 

「干渉掌握ッ、曲がれぇぇぇぇ──ッッ!」

 

 

 かつてユエとのじゃれ合いで雷龍を制御したのと同じように、香織は触手の怪物が放つ砲撃にギリギリのタイミングで干渉、操作することで照準を遥か上空に替える。

 

「うおおおおおお──ッッ!!」

 

 途中で曲がって頭上ギリギリ上空を通り過ぎる砲撃を前に近藤が叫び声を上げるが、香織は術式行使のフィードバックで傷ついた肉体に鞭を打って”情報看破”を行使する。

 

「近藤君ッ、私が言うタイミングに合わせてあそこに突っ込んで!」

「マジで言ってるのかッ!?」

「いいからッ、私を信じて!!」

「ああっ、もう。こうなりゃヤケクソだ! どんとこいや──ッ!」

 

 砲撃を操り、上空に打ち出し続ける香織。

 

 そして、間もなく砲撃が途切れようとしたタイミングで香織は命じる。

 

「今だよ!」

「槍術──”刺突槍(ジャベリン)”!」

 

 近藤は砂浜を蹴り、回転を加えながら弱まった砲撃に突っ込む。

 

 ハジメの作ったアーティファクトの穂先に集中した近藤の魔力が光の砲撃を切り裂き、その先に合った巨大な眼に突き刺さる。

 

「オオオオオオオォォォォ──ッッ!!」

 

 巨大な眼が弾け、膨大な魔素(マナ)が解放される。すかさず回収した魔素の大部分を自分に、一部を廻聖を利用して近藤、中野、斎藤に分けられた。

 

「今だよッ、今なら魔法が使えるから、畳みかけて!!」

「ッ、おっしゃあ、大技見せたるわ──ッ!」

「俺達も、合体魔法で!」

「行くぞ!」

 

 眼が破壊された一瞬は魔力阻害効果が薄れる。まさにここがこの戦いの勝機。

 

 

「魔力を喰らって刺し穿て──」

『合体魔法──』

 

 

 それがわかった三人は各々自らの最高の力を発動した。

 

ゲイ・ボルク! 

爆裂旋風(ウィンド・エクスプロージョン)

 

 

 近藤の槍が放つ具現化した槍状の魔力が放たれ、真っすぐに触手の怪物の胴体を貫き、風と炎属性の合体魔法が全身を燃やし尽くす。

 

 そして──

 

魂魄具現化(オーバーソウル)──斬り裂けッ”魔女ノ闇剣”! 

 

 巨大な闇色の剣を携えた魔女が香織の背後に現れ、触手の怪物を斜めに両断した。

 

「これでッ!」

 

 そして、両断した怪物が斜めに崩れ落ちる前に、その断面に向けて、香織は手に持つルシフェルの弾丸をありったけ叩き込んだ。

 

 ドパンッ、ドパンッ、ドパンッ

 

 連続して放たれる弾丸が吸い込まれるように触手の肉に打ち込まれ、その甲斐あってか、触手の怪物が全身から血を吹き出した。

 

 

「今度こそ、やったよな!」

 

 確かな手ごたえを感じたのか。駆け寄ってきた斎藤と中野含めて空気が弛緩しそうになるが、香織の勘はまだ終わっていないと告げている。

 

 現に……彼らにとって信じられないことが起こっていた。

 

 

 穿たれ、焼かれ、切り裂かれた触手から新たな触手が湯水のごとく湧き上がり、失くした細胞を丸ごと補って修復する。

 

 それは再生魔法ではない、生命力に物を言わせた圧倒的な生存能力だった。

 

「うそ……だろ」

「……まさか、不死身なのかよ」

「あり得ねぇ。どうすりゃ勝てんだよ……」

 

 その衝撃的な光景に呆然とする三人にさらなる絶望が襲い来る。

 

 破壊したはずの大口の眼が復活し、周囲の魔力を片っ端から集め始めたのだ。

 

 

 あの砲撃が来る。

 

 そう考えた三人は先ほどの砲撃に対処した香織に視線を向けるが、香織は行動しようとせず、じっと怪物を見続けているだけだった。

 

「そんな……」

 

 もう、攻撃を防ぐ余力もない。そう判断した三人が膝を付きそうになる。

 

「諦めなくていいよ。もう、アレは持たないから」

 

 その言葉の真意を問う前に、触手の怪物に変化が起き始めた。

 

「オオオオ──オオオオオオ──ッッ」

 

 集まっていた魔力は霧散し、触手が痙攣して崩れ始めたのだ。

 

「意味もなく拳銃(コレ)で攻撃してたわけじゃないよ。コレの弾丸には以前メルド団長の傷から見つかったウィルスに対する抗ウィルス剤が込められているの」

 

 王都での戦いの時にメルドから採取した微生物を旅の合間に研究して、ワクチンを開発していた香織だが、完成したのはシュネー大迷宮を攻略した後だ。

 

 神代魔法である変成魔法は生物に関するあらゆる事柄に干渉できる。それならば本来そう簡単にできるはずの無いワクチンや抗ウィルス剤もできても不思議ではない。

 

 想像以上の巨体故に、思ってた以上に効果が出るのに時間がかかったが、最後のに纏めて打ち込んだ抗ウィルス剤が効いてきたのか、触手の細胞を攻撃して破壊している。

 

 

 悶える巨大な触手の怪物はその巨体を維持できなくなったのか、海に向かって倒れ込んだ。

 

 

「やった……これで……」

「まだだよ。まだ終わってない」

「……マジか」

 

 今度こそと気を緩めようとする三人に釘をさす香織。

 

 何故なら香織が開発した抗ウィルス剤は檜山を構成する触手にのみ通じる。

 

 つまり、肝心のものがまだ残っているのだ。

 

 

「これの上を渡るよ」

「うぇ、マジかよ」

「ぶよぶよして、気持ちわりぃ」

 

 文句を言う近藤に対して、光の足場を作って香織は先に進んでいく。

 

「俺は飛んでいくわ」

「俺も」

「ッ待てって。俺も連れてってくれッ」

 

 最終的に風魔法と炎魔法で飛べる二人が近藤を連れていくと言う形に落ち着いていた。

 

 

 そして、香織達はそこにたどり着く。

 

 

 硬質化した触手の絨毯の上には、脈動する瘤のようなものが存在していた。

 

 

 ドクン……ドクン……ドクン

 

 

「な、なんだよ……アレ?」

 

 近藤の言葉に答える者はいない。正確には知識だけはある香織は今何が起きようとしているのか把握している。

 

 だが今香織は返事をする余裕がなかった。

 

 

 檜山大介と戦う上で警戒していたのは、謎のウィルスによる超強化だけではない。

 

 むしろ、こちらこそが本命。これの状態如何では、絶対に下手を打つわけにはいかなくなるのだから。

 

 

 その懸念すべき最大の問題点、檜山大介と融合状態にあるとされる『聖遺物』の状態は……

 

 

 ──香織の考え得る最悪の状態になっていた。

 

 

 

 

 

 ──Briah(創造)──

 

 

 

 ──死を追う者(デスストーカー)

 

 肉の繭から帰ったものは、触手の鎧を纏った人型。

 

 右手や左手から伸びている触手に意識が向きがちだが、香織が注目したのは臀部から生えているサソリのような尾とその先端に付いている宝石のような何か。

 

 間違いなく聖遺物の核であろうその宝石は禍々しい輝きを放っていた。

 

 

 まるで爆発寸前のように。

 

 

「大介ッ、俺だッ、礼一だッ。俺がわかるか!?」

 

 

 顔の部分が檜山の面影を残していることに希望を託し、近藤が檜山に話しかける。だが香織は無駄だとわかっていた。

 

 

 今の彼には、檜山大介の意思は介在していない。

 

『大介ッ』

 

 必死に檜山を呼ぶ斎藤、中野に対する返事は……

 

「”聖絶”ッ!」

 

 両手による音速の触手の攻撃で返された。

 

「ッッ」

「今の檜山君に話しかけても無駄だよ。今の彼に意識なんてない。だから止めないといけないんだけど……悪いお知らせその1」

 

 香織が視界に入ったからか、狂気とも歓喜とも言えない叫びをあげ始めた檜山を前にして、香織は今の状況を語る。

 

「今の檜山君は聖遺物と物理的に融合してる。触手の攻撃は大丈夫だけど、サソリの尾の攻撃には気を付けて。アレには致死量を超える呪詛の猛毒が詰まってる。アレを喰らったら多分私でも救えない。そして悪いお知らせその2ッ」

 

 手にはルシフェル。背後に黒衣ノ魔女を待機させた香織は、もう一つの絶望を伝えた。

 

「聖遺物が臨界点に近いところまで来てるッ。早く檜山君と聖遺物を引き離さないと周囲に破壊の魔力と呪詛をまき散らしちゃう!」

「ごめんッ、もっとわかりやすく言ってくれ!」

「あれは爆発寸前の核爆弾ッ。あれが爆発すると大爆発と共に周囲に放射能をばら撒いちゃうの!」

「なるほどッ、ウルトラやべぇ状況じゃねぇかこんちくしょう!」

 

 核爆弾という例えにより、この場が紛れもない死地であると悟った四人は、意を決して檜山に挑む。

 

 

 そして壮絶に笑いながら襲い掛かってくる檜山大介によって、この西の海での最後の決戦の火蓋が、切って落とされた。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

(正直、倒すだけならできる)

 

蓮華(パドマ)──”神速”」

 

 その性質上、自身が集中して狙われることを悟っていた香織が、気と魔力の合一を発動し、肉体を強化。さらに再生魔法”神速”という一つ一つの事象において掛かる時間を短縮する魔法によって疑似的に体内時間を加速することによって檜山が放つ音速を超える触手の攻撃をかわす。

 

 現在の檜山は、触手の怪物と切り離されたからか、魔力分解能力を備えていない。さらに周囲には触手の怪物が蓄えていた膨大な魔力が未使用のまま漂っており、魔素使いである香織からしたら無尽蔵の魔力源があるようなもの。先ほどと違い、非常に戦いやすくなっている。

 

「槍術──連弾突き」

「”螺炎”」

「”廻風”」

 

 さらに香織に攻撃が集中するということは、近藤達がフリーになるということ。隙を見ては檜山に対して有効的な魔法をぶつけていく。

 

 だからこそ問題は、ただ檜山大介を倒せばいいわけではないこと。

 

 ことここにきて最悪檜山を殺すことを覚悟していた香織は、その手段を封じられたことに気づいていた。

 

(聖遺物の暴走……たしか第二次世界大戦時代にアメリカが危ない実験をしてたって記録があったような)

 

 香織は戦いつつも頭に魔力を回し、過去の記憶を想起する。

 

 師匠に整理を命じられた過去の魔術事件の資料にあった事件。

 

 ──第二次フィラデルフィア計画。

 

 1930年代にアメリカが強力な磁力を用いて完全なステルス戦艦を作ろうとし、多数の犠牲を出し失敗した第一次フィラデルフィア計画にて確認された、テスラコイルを用いた人体と無機物の融合という現象を利用して聖遺物と人体を強制的に融合し、聖遺物をコントロールしようとした狂気の実験。

 

 当時の事情など香織は知らないが、アメリカは当時のドイツと日本が開発した特殊な金属(アダマンタイト)による人体の強化という成果に対して危機感を覚え、そんな無茶な実験に踏み切ったのだという。

 

 結論を言うなら、その実験は第一次計画以上の犠牲者を出したことで大失敗に終わった。

 

 元々聖遺物とは魔術界の核物質と言われている。上手く利用できれば莫大な魔力を生成でき、失われた神代の神秘すら再現できると言われていながらそのあまりの扱い辛さに、聖遺物はどこの組織でも厳重な管理を施されているのだ。

 

 一部教会などは限定的に聖遺物を利用する方法を保持していると聞くが、それでも危険であることには変わりない。

 

 第一次と同じく、第二次フィラデルフィア計画も海上で行われたらしいが、その実験を行った海域は実験によって降り注いだ呪いが渦巻き、90年以上経過した今でも呪詛に対する防壁なしでは何人も近づけなくなっているらしい。

 

(エリセンの海を呪われた海域にするわけにはいかない)

 

 そして今香織の目の前で地球で起きた過去の悲劇が再現されようとしていた。

 

 そうならないために、香織はこの戦いをいかに穏便に済ませるか触手の攻撃を避けながら思考を巡らせる。

 

(藤澤君に頼る……ううん、今からじゃ遅すぎる)

 

 まず香織が一番に考えたのが蓮弥に頼るというもの。

 

 聖遺物は人の手には未だに余る代物。だと言うのに蓮弥とユナはその力を十全に引き出しているように思う。

 

 或いは彼らこそが、かの実験に連なる聖遺物運用技術の完成形なのかもしれないが、今は関係ない。

 

「なら……取れる手段は一つだね」

 

 なぜ自分がこんなに苦労しなくてはならないのかと思わなくもない香織だが、この土地には旅にて縁を結んだミュウの故郷なのだ。その故郷を死の海にしないためにも、香織は前に出る。

 

「なッ? 白崎ッ、危ねぇって!」

「私が近づかないと、どうにもならないから」

 

 檜山の元へ進む香織だが、檜山も黙ってはいない。射程距離に入ったからか、後ろに生えていたサソリの尾が伸び、香織に向かって勢いよく飛び出す。

 

「”神速”」

 

 それを自己時間加速にて躱す香織。そして、かわした後の惨状を見て顔をしかめる。

 

 今香織達が足場にしているのは硬質化した触手の怪物だがその一部が丸ごとドロドロに溶解されていた。そしてすぐさまサソリの尾が吸引を始め、溶解された肉を吸い取った。

 

「……溶解と吸収かな」

 

 香織は檜山に発言している概念をそう解釈する。もちろん蓮弥や概念魔法到達者ほどの純度はないだろうが、それでも脅威には違いない。

 

 ──愛する人をドロドロになるまで愛して、自らの物にしたい

 

 大方、聖遺物に引きずられた魂の行方(渇望)はそんなところだろう。

 

「……流石にああはなりたくないね──”縛光鎖”」

 

 空間から直接無数の光の鎖を展開し、檜山を縛っていく。

 

「ぐ、おおおおおおお──ッッ!」

 

 ただ叫び声を上げて暴れる檜山を次々に拘束していく。

 

「俺らも──”炎縛”」

「”風縛”」

 

 斎藤と中野が香織に合わせてそれぞれの属性魔法を使って檜山を拘束する。彼らとてここが正念場だとわかっているので出し惜しみはしない。

 

「周りの触手は俺に任せろ。だから白崎ッ、頼む!」

 

 拘束しきれなかった触手は近藤が次々に斬り落としていく。

 

 そして、白崎香織は、虚ろな眼をした檜山大介の眼前に到達する。

 

「”干渉”」

 

 そして香織は、己の身に刻み込まれた魔術を行使する。

 

 深く、深く、さらに深く。檜山大介の奥底にまで干渉していく。

 

 

 ”こんなはずじゃなかった”

 

 干渉している内に香織の頭に直接声が聞こえてくる。それは現状に絶望し、もうすぐ死を迎えそうな魂のか細い嘆きの声。

 

 ”俺はただ、憧れの女に近づきたかった。最初はそれだけだったのに”

 

「……愛のためだといっても、やっていいことの限度はあるよ。私()みたいな人種は、そこを弁えないと破滅する。今回はちゃんと救ってあげるから、次があれば気をつけることだね」

 

 もうすぐ檜山の奥よりさらに深く干渉できる段階まで来て、それがついに香織に牙を向いた。

 

 

アンナァァァァ──ッッ!! 

 

 それはおそらく想い人の名前なのだろう。だが想い人に向けるにしては禍々しい想いの発露と共に、身体の中心から生えた触手が次々と香織に襲いかかる。

 

「白崎ッ!!」

 

 香織を襲う触手を切り裂く近藤だが、その数は尋常ではない。いくつかは香織の身体に突き刺さる。

 

 だが、香織はそれでもうめき声一つ上げない。極限の集中力を持ってして、干渉を続けていく。

 

お前はッッ、俺の物だぁぁぁぁ──ッッ

 

 その怨念によるものか、拘束魔法にて押さえつけられていたはずのサソリの尾が伸び、香織に真っすぐ振り下ろされる。

 

 他の触手ならまだしも、これは間違いなく致命の一撃。香織もさすがに対応しようと意識の一部を向けるが……

 

 

 その前に海中から生えてきた無数の触手が、再びサソリの尾を拘束してしまう。

 

 

 

 

 

──香織お姉ちゃん、今なの! ──

 

 

 

 

(この声、ミュウちゃん? けどどうして……)

 

 

 理由はよくわからない。わからないが、どうやら自分はミュウに救われたと解釈した香織は干渉を再開する。

 

 そして、ついに聖遺物の核とも言える魂を捕えた。

 

「干渉抽出、開始──」

 

 聖遺物の核を慎重に引き抜く香織。かの聖遺物は臨界寸前。ここで失敗したら、西の海が災害に見舞われる。

 

「頼むから、いい加減終われって!」

「おしまいにしよう、大介!」

「また四人でバカしようぜ。戻ってこい、大介!!」

 

 核を刺激され暴れる檜山と聖遺物を斎藤が、中野が、近藤が必死になって抑える。

 

 それはどれくらいの時間だったのか、核爆弾の解体のような精神力を削る作業だったが、香織はその綱渡りを見事に渡り切る。

 

「抽出完了──いい加減これで、終わりだよ!!」

 

 抽出されたのは血管が脈動する中世の剣。それを取り出した香織は、魔女に手渡し……

 

「アァァァァァァァ──」

 

 

 その膂力で持って、思いっきりエリセンの上空へと放り投げた。

 

 香織は持っていた拳銃を上に投げ、それを媒介に魂魄具現化(オーバーソウル)を発動。拳銃ルシフェルは巨大な魔女が持つに相応しい大きな拳銃へと姿を変える。

 

 そして魔女はそのまま上空に浮かぶ聖遺物『狂愛の追跡者(デスストーカー)』に照準を合わせる。

 

アンナァァァァ──ッッ!! 

「誰のことかはわからないけど完全に人違いだから。いい加減自覚しなよ。あなたの恋は……もうとっくに終わってる!」

 

神の愛は既に尽きた──失せた楽園には、罪が溢れる──

──堕天楽土(パラダイスロスト)

 

 周辺に漂う魔素をありったけ込めて生成した反魔力が魔女の拳銃から放たれる。

 

 

 放たれた断罪の魔光は真っすぐに、盲愛に狂う哀れな男に……そのまま命中した。

 

「■■■■■■■■■■──ッッ!!」

 

 声にならない悲鳴が海上に木霊する中、聖遺物の呪いの魔力と反魔力が対消滅する。残されたのは上空で炸裂する膨大な熱量のみ。

 

 遥か上空で爆発させることで被害を最小限に食い止めた香織は、周囲に呪いの形跡がないことを確認してやっと息を付く。

 

「大介、おい、大介しっかりしろ!」

 

 残ったのは、中身を引き抜かれて虚ろな表情をして倒れるクラスメイト。

 

 見た目は人間の形を残してはいるが、香織の目から見て肉体的にも魂的にも、中身はぐちゃぐちゃだった。

 

 このままではよくても彼は廃人になる以外の道はないだろう。

 

「どいて、近藤君。これから檜山君を封印するから」

「ッッ…………頼む」

 

 香織の冷ややかな声に、何か言いたそうな近藤だったが、自分にできることも言えることももはやないと悟り、香織に檜山の処遇を預ける。

 

「”無間回廊”──起動」

 

 そしてハジメから預かった封印用アーティファクトで檜山を拘束し、封印処置を施していく。

 

 この封印の中は空間停止した環境下に設定されている。死にかけの人間もこの中に入れれば死なずに済むのだ。

 

「これで良し。後は……師匠に相談しないとなぁ」

 

 命を救うことだけはできたが、現状それだけだ。それ以上を望むなら、香織は師匠に頼る以外の選択肢を持っていない。

 

 皮肉にも檜山がこの辺り一帯の神の使徒を駆逐した関係で、戦争中にも関わらず平穏を取り戻した海の上で香織は、今も戦っているであろう仲間達を思う。

 

「ハジメくん、ユエ、皆……」

 

 魔力を消耗した今、香織が他の戦場に救援に行けるのは後少し先だろう。だが、当然傷つく人は大勢いるはずだ。

 

 少しでも犠牲を減らせるように、香織はまだ安寧に浸れないと改めて気合を入れ直した。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 真・神話大戦の戦線戦況

 

 

 白崎香織&近藤礼一、中野信治、斎藤良樹 VS 檜山大介(聖遺物)

 

 勝者:白崎香織&近藤礼一、中野信治、斎藤良樹

 

 

 個別状況

 

 白崎香織:聖遺物の反撃により思わぬ負傷を受けたが、傷も呪詛も治療済み。肉体的には健常だが、魔力を大幅に消耗したので補給が必要。戦闘可能

 

 近藤礼一:香織の助っ人その1。親友の悲惨な姿を前に、香織の想像を超える戦果を叩きだす。疲労困憊だが戦闘可能。

 

 中野信治&斎藤良樹:香織の助っ人その2と3。香織と同じく魔力を多大に消耗。かつ緊張の糸が切れたのかへたり込んでしまう。治療の末戦闘可能

 

 檜山大介:ほぼ再起不能。触手の怪物から解放され、聖遺物とも香織の神がかり的な手術により解放されたが、酷い後遺症を負う。香織曰く、見た目はともかく、中身がぐちゃぐちゃとのこと。魂はマインドクラッシュ状態で廃人の体をしているが、香織は治せる可能性を捨てていない。

 

 ミュウ:香織の助っ人特別枠。戦いの最中に干渉してきたが、詳細不明。ただ海中から現れたのは邪気こそ消えているが、悪食の触手ではないかと香織は思っている。




第二形態で戦闘自体は終わって、第三形態は特殊演出バトルだと思って頂ければ。

>時空間干渉魔法『摩訶鉢特摩(マカハドマ)』
時間停止。刹那のようなものではなく、所謂ザ・ワールド的な能力。
香織の体感時間で最大五秒間、停止した時間を動くことができる。
だが使用する魔力は同系統の時空間干渉魔法の中でも飛びぬけて多く。止まった時間を動く身体への負担と合わせて連続して使える魔法でない。

名前の元ネタは大紅蓮地獄の別名。発動時のポーズはまんまエスデス様

>再生魔法『神速』
原作でも出てきた時間を短縮するらしき魔法。キングクリムゾンしてるのかとも考えたが、この作品では自己時間加速として扱う。
摩訶鉢特摩より魔力消費量は少ないが、原作とは違い頑丈な神の使徒の身体を持たない本作香織には肉体的負担が大きい。
シアも使う気と魔力の合一”蓮華(パドマ)”と組み合わせてようやく使えるが、香織はシアと比較して内気(オド)が少なすぎるので神速も使える回数に制限がある。

>死を追う者(デスストーカー)
疑似創造。発現した能力は溶解と吸収。
檜山というよりは聖遺物の性質が表に出たことで無理やり発現させられた能力。その能力自体は脅威だが、肉体的なポテンシャルは触手で補っていたので、それが無くなるとフィジカルが弱い香織でも避けるのが容易なレベルに落ちるので対応は容易。

>第二次フィラデルフィア計画
Dies_iraeの外伝で出てきた現代の魔女を作る計画。原作では黒円卓にこそ追い付けなかったが、魔術兵器としてはそれなりの成果を出しているのに対し、本作ではマッチポンプの権化であるコズミックニート研究主任がいないのであたりまえのように失敗している。

次回はシアかティオか。それとも別のクラスメイトサイドになるか悩み中。


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