1万5千字あります。過去最長かも。
アレーティアの想いを、ハジメは最後まで黙って聞いていた。
ようやく知ることができた。
アレーティア──いや、ユエが背負ってきた三百年という時間を。
彼女がなぜあれほど静かだったのか、なぜ過去を語ろうとしなかったのか。その理由が、ようやく理解できた。
血命の騎士団。
彼らは間違いなく英雄だった。世界を敵に回しながら、一人の少女を未来へ繋いだ。あの戦いがなければエヒトは完全復活を遂げ、この世界は終わっていたのかもしれない。命を賭して王を守り抜いた忠臣。誰が見ても誇るべき騎士たちだ。その事実だけはハジメも否定しない。
だが──。
「なるほど」
発せられたのは静かな声。それなのに、その声には怒気が滲んでいた。
「血命の騎士団ってのは……」
ハジメはアレーティアではなく、映像の中の騎士たちを見据える。
「とんだ負け犬集団だったってわけだ」
ハジメの言葉に、アレーティアは思わず絶句した。あまりにも予想外の言葉だったのだろう。だが、次の瞬間にはその表情から驚きが消え、代わりに鋭い怒気が浮かび上がる。
「取り消しなさいッ! いくらハジメでも、彼らへの侮辱は許さない!」
「嫌だね!!」
ユエの怒気に対してハジメは即答だった。
「負け犬に負け犬って言って何が悪い! どいつもこいつも雑魚ばっかりじゃないか!」
「なっ……!」
「どうして誰も神代魔法の一つも使わない!? 力が足りないなら世界中を巡って大迷宮を攻略すればいい! それすらできないなら魔物を喰らって力をつければいい! 魔物を喰えばステータスを強化できる。そんな方法がある世界で、何を諦めてるんだよ!」
ハジメの声が響く。それは血命の騎士団を侮辱するための言葉ではなかった。少なくとも、ハジメ自身はそう思っていない。
彼らがどれほど強かったのかは見てきた。どれほどの覚悟を持ってアレーティアを守ったのかも知った。自らの命を捨ててまで一人の少女を未来へ送り届けたことも理解している。
だからこそ、許せなかった。
「しかもお前らは吸血鬼だろうが!」
ハジメはアレーティアを指差す。
「元から血を吸って力に変えられる種族だ。だったら他の連中よりよっぽど強くなれる余地があったはずだ! 魔物の肉だって、吸血鬼なら適性があったんじゃないのか!? それを試したのか? 限界までやったのか!?」
「それは……」
「言い訳は許さない!」
アレーティアの言葉を遮る。
「非戦闘職の平均ステータスがたった十しかない僕が、一年もかからずにここまで来たんだぜ? 本気でやればなんだってできる証拠じゃないか!」
ドクン。
ハジメの言葉に呼応するように、アレーティアの感情が大きく揺れ動く。そして、それに呼応したのは彼女の感情だけではなかった。映像の中に存在していたはずの騎士たちが、ゆっくりとハジメへ視線を向ける。先ほどまでアレーティアの記憶として存在していた彼らが、まるで意思を持ったかのように動き始めた。
そして──明確な殺意が、ハジメへと向けられた。
──よろしい。
声が響く。
──よくぞ我らに対して吠えて見せた。
それは、かつてアレーティアを守った騎士の声。
──我らは軍人。業腹ではあるが、貴様の理屈はよく分かる。
ハジメの前方で、何かが身構える。
──だが……口先だけ達者な奴など、我らは認めない。
ハジメに向けて閃光が走った。
「ぎっ、がぁッ」
ハジメの左腕を半分ほど食いちぎった何かが姿を現す。
白銀の毛並み。鋭い牙。そして片方だけが赤く輝く、隻眼。現れたのは一頭の狼。そしてそれは人狼族の血を引く、血命の騎士団最速の戦士。
シグルド・ヴァルガ。
──我らが主君が選んだ男よ。言葉ではなく、実力でもって我らを納得させろ。
次の瞬間には、その姿が消えた。
「……ッ!」
ハジメが反射的に身を捻る。音すらまともに捉えられない。ただ風圧だけが頬を撫で、その直後には背後から殺気が迫る。今のハジメでは、完全に捉えられない速度。
シグルドは一度目で警告した。次はない。二度目は喉笛を食い破る。その意思を明確に示すように、白銀の狼が再びハジメへ迫る。
「舐めんじゃねぇぞ……!」
ハジメの口調が変わる。
「犬畜生がァッ!!」
迫る牙を前に、ハジメが取った行動は常軌を逸していた。自らの意思で、辛うじて繋がっていた左腕を引き千切る。そして、その腕を──。
「ッッ!」
全力で叩きつけた。
それは白銀の狼にとって予想外の行動だった。まさか自分から腕を捨て、それを用いて反撃に出るなど想定していなかったのだろう。ほんの僅か。ほんの一瞬だけ、白銀の狼の動きが止まる。ハジメは、その一瞬を見逃さなかった。
「捕まえたぞ……!」
次の瞬間、ハジメはシグルドの首筋へと喰らいついた。牙が肉を裂き、血が噴き出す。そして白銀の狼の首が、食い千切られた。
その直後、左腕を失ったハジメの身体に変化が起こる。失った腕から流れ落ちる血をものともせず、全身の筋肉がさらに膨れ上がり、細身だった身体はより強靭な戦士のそれへと変貌していく。そして黒かった髪が一気に白へと染まった。そして左腕の代わりにあるのは鋼の義手。
トータスの世界を生き抜いた錬成師、南雲ハジメの姿がそこにあった。
次の瞬間、二本の槍を携えた白髪の吸血鬼が地面を蹴った。
左右から繰り出される二槍が、ハジメの身体を挟み込むように迫る。どちらか一方を躱せば、もう片方が確実に命を奪う。それだけではない。ヴァイスの武器に触れれば、吸血鬼の技能によって生命力そのものを奪われる。
だが──。
ハジメは退かなかった。いや、正確にはヴァイスの間合いに入ろうとすらしなかった。触れるだけで生気を吸い取る技能を持つ相手に、わざわざ近接戦闘を挑むほどハジメは馬鹿ではない。
「錬成!」
叫びと同時に両手を合わせる。激しい光を伴う錬成反応と共にハジメの両手に二丁の拳銃が現れる。
魔法科学式電磁加速機構搭載拳銃──ドンナー、そしてシュラーク。
それは錬成師・南雲ハジメが、この世界で戦うために生み出した最初のアーティファクトだった。
これまで幾度となくハジメの命を救い、数え切れないほどの強敵を撃ち抜いてきた二丁の拳銃が、再びその力を解き放つ。
轟音。
音速の三倍に達する弾丸が、ヴァイスの認識を遥かに超える速度で撃ち出された。
ヴァイスには反応する暇すらなかった。
次の瞬間、その身体が弾丸の直撃によって大きく吹き飛ぶ。二発、三発、四発。続けざまに撃ち込まれた弾丸が吸血鬼の身体を容赦なく破壊し、その巨体を地面へ叩き落とした。
「まだだッ!」
だが、ハジメは追撃の手を緩めない。懐から取り出した焼夷手榴弾を投げつける。爆炎がヴァイスの身体を呑み込み、傷口から侵入した炎がその肉体を内側から焼き尽くしていく。
吸血鬼の再生能力すら許さないほどの火炎。やがて炎の中から、ヴァイスの姿は完全に消え失せた。
「俺だって、最初から強かったわけじゃない」
ハジメは二丁の拳銃を下ろし、燃え尽きていく炎を見つめながら呟く。
「何度も死にかけた。何度も諦めそうになった。それでも這い上がった」
視線が、消滅したヴァイスのいた場所へ向けられる。
「……なのに、お前らは何百年も生きられる吸血鬼で、王国最強の騎士団まで持っていて、それでもエヒトに負けた」
怒りが滲む。
彼らが弱かったわけではないことなど、もう分かっている。それでも、ハジメには許せなかった。彼らが死んだことではない。彼らが死んだ結果、ユエが三百年もの間、誰にも真実を知らされないまま孤独の中に取り残されたことが。
続きの言葉を発しようとしたハジメの側を何かが過ぎる。何かが空気を裂いた次の瞬間。鋼の糸がハジメの四肢へと絡みつく。
そこにいたのは、針金のように細身の男だった。
血盟の騎士団十番隊隊長、アラフニ。
その身体は他の隊長たちと比べてもあまりに細く、正面からの戦闘を得意としているようには見えない。だが、その手から伸びる無数の鋼糸には、細身の肉体からは想像もつかないほど強烈な意思が宿っていた。
──逃がさない。
どれほど強大な存在であろうと、一度捕らえたなら決して逃さない。その一点だけを極限まで突き詰めた男だった。
四肢を拘束されたハジメが鋼糸を睨む。力任せに引き千切ろうとしても、糸はびくともしない。それどころか、無理に動けば動くほど肉へと食い込み、身体を締め上げていく。
だが──アラフニの背後から、さらに巨大な影が広がった。
人の姿をした影。その影から姿を現したのは、一人の女だった。長い髪を揺らし、静かな表情でハジメを見つめている。
リオナ・シャリテ。
かつてアレーティアの側に仕え、そして最後の瞬間まで彼女を守り抜いた専属侍女。影魔法の使い手であり、同時に数多くのアーティファクトを操る騎士でもある。
そんな彼女が両手を広げる。次の瞬間、彼女の足元に広がった影から無数の武器が姿を現した。剣、槍、魔導杖、砲台。形状も用途も異なる兵器が次々と空間を埋め尽くし、その全てがハジメへと照準を合わせる。
次の瞬間、それらが一斉に火を噴いた。無数の砲撃と魔力弾がハジメへ殺到する。だが、ハジメは逃げなかった。
「アーティファクト展開……
展開されたハジメのゴーレム部隊が一斉に攻撃し、轟音が響き渡る。
一斉に放たれた弾丸と砲弾が、リオナのアーティファクト群を正面から食い破る。リオナが展開した兵器が次々と撃ち落とされ、その向こうにいた彼女とアラフニまでもが凄まじい火力に呑み込まれていく。
リオナはなおも影から新たなアーティファクトを呼び出そうとする。
だが、それすらも許されない。新たに出現した兵器が、その瞬間には撃ち抜かれて爆散する。アラフニの鋼糸も同様だった。ハジメの周囲を縛り上げていた鋼糸は次々と焼き切られ、拘束の力を失っていく。
そして最後には、二人の姿そのものが爆炎の向こうへと消えた。
だが、戦いはまだ終わらない。次の瞬間、無数に展開されていたアーティファクトのいくつかが雷撃によって次々と撃ち落とされ、爆発の余波すら置き去りにする速度で、
その中心に立っていたのは、一人の女騎士だった。
血盟の騎士団第五番隊隊長、ベラトリクス・レスター。雷を操る彼女は、目にも止まらぬ速度で戦場を駆け抜けながら、ハジメのアーティファクトを一つ、また一つと正確に破壊していく。
だが、そこで終わりではなかった。
破壊されたアーティファクトから黒い影が溢れ出す。無数の悪霊だった。それらはまるで最初からそこに潜んでいたかのように
それを操っていたのは、血盟の騎士団第十一番隊隊長、リナ・ファルトナー。降霊術を操る魔女であり、悪霊をゴーレムへ憑依させることで、通常のゴーレムとは比較にならない戦闘能力を引き出す異質な術者だった。
そして、その二人の後方に立つ女がいた。
血盟の騎士団第九番隊隊長、ロベリア・フォン・イシュタル。
炎魔法を扱わせれば当時のアレーティアすら上回る火力を誇っていた女傑。彼女が魔法陣を展開するだけで周囲の空気が焼け、戦場そのものが灼熱へと変貌していく。
三人の戦闘は明確な役割分担によって成立していた。ベラトリクスが前線で敵を翻弄し、リナが悪霊とゴーレムによって相手の動きを封じ、その隙をロベリアが圧倒的な火力で焼き払う。
連携によって完成された、血盟の騎士団でも屈指の戦闘陣形。対して、ハジメが選んだのは正反対の戦い方だった。搦め手も、長期戦も必要ない。ただ、圧倒的な火力を一撃に叩き込む。
ハジメの背後に、巨大な砲身が出現する。
超兵器──荷電粒子砲、セイレーン・ブラスター。
それに対してロベリアもまた、周囲に無数の仮想砲台を展開した。収束していく炎は周囲の大気すら歪ませ、彼女が持つ最大火力を一つの砲撃へと集約していく。
互いに一歩も引かない。
次の瞬間、二つの極大火力が正面から激突した。
拮抗は、ほんの一瞬だった。
ロベリアが放った煉獄の炎を真正面から喰らい、さらにその炎すら押し潰しながら、荷電粒子砲撃が突き進む。
三人の隊長が同時にその光に飲み込まれた。轟音と共に大地が抉れ、灼熱の爆風が戦場を駆け抜ける。そして、三人の姿はその圧倒的な光の中へと消えていった。
「だからさ……」
ハジメの声から怒気が消えていた。だからこそ、その言葉は重かった。彼らを否定するための言葉ではない。彼らが成し遂げたことを理解した上で、それでもなお受け入れられないという、ハジメ自身の意志だった。
「ユエを守るって決めたんなら、最後まで勝てよ」
その言葉を、配下たちとハジメの戦いをただ見つめることしかできなかったアレーティアは聞いていた。赤い瞳が揺れる。これまで彼女が抱えてきた罪悪感も、彼らへの憎しみも、その根底にあった思い込みすらも、ハジメの言葉によって少しずつ揺さぶられていく。
「死んでも守る? 命を懸けた? そんなのは当たり前だろ。ユエを守るってのは、ユエが生きている限り、自分も生きて隣に立ち続けるってことだ。ユエの心を守らないと意味ないだろうが」
その言葉に反応するように、一人の男がゆっくりと前へ出る。
これまで配下たちとハジメの戦いを、ただ静かに見つめていた男。血命の騎士団第三番隊隊長にして、騎士団長──ウバルト・ロウ。
彼が最後にハジメへ差し向けたのは、血命の騎士団の中でも単純な近接戦闘力だけなら最強を誇る男だった。
魔族の中でも屈指の膂力を持つ鬼人族の血を引く戦士、ベルガルド・グランツ。
巨大な肉体に見合う大剣を手にすることもある。だが、多数を相手取る戦場で彼が最も頼りにしていた武器は、何よりも己自身の拳だった。
鍛え抜かれた拳には、ただ一つの祈りが込められている。
──目の前にあるものを、一撃で砕く。
それだけだった。
ベルガルドが構える。対するハジメもまた、一歩前へ出た。逃げるつもりはない。遠距離から撃ち抜くこともしない。今のハジメが選んだのは、真正面から拳をぶつけ合うことだった。
「俺は、お前らとは違う」
その言葉に、一切の迷いはなかった。
「絶対にユエと生きることを諦めない。どんな化物が来ようが、邪神が来ようが、どれだけ絶望的な状況に追い込まれようが関係ない。最後の最後まで、勝つことを諦めない」
ハジメはベルガルドを見据える。
そして、静かに言い切った。
「ユエは俺が守る。必ずユエを連れて、世界を超える」
近接系技能、全て全開。
昇華魔法『極天解放』発動。
限界突破・覇潰発動。
今この瞬間に出せる、ハジメの最大の強化。
対するベルガルドもまた、己の拳を握り締める。
一歩。
二人が同時に踏み込んだ。
「俺はッッ──」
ハジメの拳とベルガルドの拳が激突する。
「ユエをッッ──愛しているッッ!!」
大地が砕けた。
ベルガルドの拳に込められていた、あらゆるものを一撃のもとに打ち砕くための祈り。それを真正面から受け止め、ハジメの拳がさらにその先へと突き抜ける。
巨大な身体が吹き飛んだ。
そして、静かに地面へと落ちる。
「だから、アンタ達はもう休んでくれ」
ハジメは消えゆくベルガルドを見つめながら、そしてその背後にいるウバルトへ向けて言葉を続ける。
「アンタ達の想いも、魂も。俺が引き継ぐから」
しばらくの間、ウバルトは何も言わなかった。ただ静かにハジメを見つめ続ける。やがて、その表情がほんの僅かに緩んだ。それは、かつて自分たちが守ろうとした少女を託すに足る男を見つけた者の顔だった。
そして──血命の騎士団団長、ウバルト・ロウの姿が静かに消えていく。
まるで、自らの役割はここまでだと言わんばかりに。
三百年の時を越えてなお残り続けた騎士の想いは、ここでようやく次の世代へと託された。
そして、目の前にいるのは愛しい少女が一人。
「……ハジメ」
ゆっくりと、ユエは口を開く。
「私は今でも、自分が王に相応しかったとは思えない。私は……王になるべきじゃなかったと思う」
「どうでもいいよ。そんなもん」
ハジメは迷いなく答える。
「別に、王族だからユエに惚れたわけじゃないからな」
ユエが僅かに目を見開く。
「きっとこれからも、私はいっぱい迷惑をかける。私は……ハジメが思ってるより弱い女」
「そのために俺がいるんだろ」
ハジメは笑う。
「むしろ、惚れた女を守れるなんて男冥利に尽きるってもんだ」
「……私……」
ユエの声が震える。それは、三百年もの間、決して口にすることのできなかった問いだった。
「幸せになっても……良いの?」
その問いに、ハジメは微笑んだ。
「当たり前だろ」
迷う理由など、どこにもない。
「嫌だって言っても、俺が幸せにしてやる。覚悟しとけ」
その言葉に、ユエの瞳が揺れる。だが、ハジメはそこで少しだけ表情を変えた。
そこでハジメが昔の自分を少し出す。
「……けど」
「?」
「僕も、そこまで強いってわけじゃない」
かつてのハジメを思わせる、少しだけ弱さを含んだ言葉だった。
「だからユエにも、僕を守ってほしい」
惚れた女に対して、自分を守ってほしいと言う男。それを世間がどう評価するかなど、ハジメには関係なかった。それは自分の弱さを晒すことでも、情けなさを認めることでもない。
むしろ逆だ。
自分一人ではどうにもならない時があることを認め、それでもなお相手を信頼して隣に立つ。かつて一人でなんでもできると思い上がっていた少年が、異世界での冒険で手に入れた新たな強さだった。
「俺がユエを守る。ユエが俺を守る。それで俺達は最強だ」
ハジメは真っ直ぐにユエを見つめる。
「全部なぎ倒して、世界を越えよう」
かつてオルクス大迷宮で誓った言葉。あの時は、ただ二人で生き残るための誓いだった。けれど今なら、その先まで言える。
「愛してるよ、ユエ」
ハジメは、もう一度その名を呼ぶ。
「俺の側に、ずっといてくれ」
ユエは何も言わなかった。
ただ、ハジメの言葉を胸の奥まで受け止めるように、両手を胸の前でぎゅっと握り締める。
そして──
これまで決して崩れることのなかった無表情が、ゆっくりとほどけていく。まるで花が咲くようにユエは笑った。三百年もの孤独の中で失われかけていた少女の笑顔を浮かべながら、ハジメの胸へと飛び込む。
「はい」
その身体を、ハジメはしっかりと抱きしめた。
「私も、ハジメのことを愛しています」
その声には、もう震えはなかった。
「ずっと……ずっと、あなたの側にいさせてください」
己の全てを晒した二人の影が、静かに重なる。
互いの過去も。
互いの弱さも。
互いの絶望も。
その全てを知った上で、それでもなお共に生きると決めた二人。
そして二人は、そっと唇を重ねた。
誓いの口付け。
それは、ただ互いの愛を確かめるためだけのものではなかった。最後の大迷宮以降、幾度となくすれ違い、断ち切られていた二人の時間を、今度こそ繋ぎ直すための新たな契約だった。
「私も覚悟を決める。ハジメの特別は私だけでいい。もう、誰にも渡さないから」
「おう」
短い言葉を交わし、二人は顔を見合わせる。そして、どちらからともなく笑った。
その瞬間だった。
二人の周囲に、七つの光が浮かび上がった。
生成魔法。
重力魔法。
空間魔法。
再生魔法。
魂魄魔法。
昇華魔法。
変生魔法。
それぞれが異なる輝きを放ちながら、二人の周囲を静かに巡っている。
それは、この世界の理そのものへ干渉する七つの奇跡。
かつて神代に存在した魔法の中でも、極みにまで達した者だけが扱うことのできる力。そして今、その七つが単独の魔法としてではなく、一つの意思のもとに集おうとしていた。
七つの神代魔法。
それぞれの力は、この世界を構成する理の一端に触れるものに過ぎない。だが、それらを束ねた時、その意味は大きく変わる。世界に干渉するのではない。世界の理、そのものへと至るための道を作る。それこそが、七つの神代魔法が極みに達した時に初めて見せる真価だった。
そして今、その七つの光を制御しているのはユエだった。
かつての彼女ならば、この力を前にしても自分が何を成すべきなのか理解できなかったかもしれない。だが、もう違う。
自分が何者なのか。
何を求めているのか。
何のために力を振るうのか。
その全てを、彼女はもう知っている。
七つの光がゆっくりと重なっていく。
光と光の境界が消え、幾重もの輝きが一つへと収束していく。そしてその先に、今まで存在しなかったはずの一本の道が生まれた。
世界の根幹へと繋がる道。
あとは、そこへ己の祈りを捧げるだけだった。
「いくぞ、ユエ」
「……うん」
二人は向かい合い、互いの手を握る。
もう、迷うことはない。過去に囚われる必要もない。失ったものを悔やみ続ける必要もない。これから先、どれほどの絶望が待っていようとも。何度倒されても、何度打ちのめされても。二人なら、最後まで立ち上がれる。
共に生きる。
共に戦う。
互いを支え、互いを守り、どこまでも並んで歩いていく。
そのために──。
自分は、愛する人に相応しい自分でありたい。そして彼女もまた、自分にとって最高のパートナーであり続ける。それこそが、二人が辿り着いた答えだった。
『最高のパートナーに相応しい己でありたい』
それは、ハジメだけの願いではない。ユエだけの願いでもない。二人が同じ場所へ辿り着くために抱いた、たった一つの極限の意思。
世界を変えたいわけじゃない。神になりたいわけでもない。ただ、大切な人と共に生きるために。その人の隣に立つ自分自身に、胸を張れるように。どれほどの困難が立ちはだかろうとも、最後まで諦めず、最後まで互いを選び続ける。
その覚悟こそが、二人の祈りだった。
極限の意思は、ここにある。
そして──二人の祈りが、世界へと届く。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
トータス中で激戦は続いていた。
赤黒く染まった空から無尽蔵に降り注ぐのは、六枚の翼を持つ天使たち。彼らは例外なく地上の人類へと殺意を向け、剣を振るい、魔法を放ち、奪った魂を創世神エヒトへと捧げようとしている。
対するは、七人の解放者。そして彼らから力を託された、地上で抗い続ける戦士たちの軍勢。世界を神の手から取り戻すため。人が人として生きられる未来を掴み取るため。それぞれが己の信念を胸に、迫り来る天使たちへと立ち向かっていた。
そんな混沌とした戦場の中で、彼女が誰よりも早くその異変に気づいたのは、必然だった。
「あ、ああ……」
シア・ハウリアが、戦場の真っただ中で美しい碧眼を限界まで見開く。そして、その瞳から静かに涙が零れ落ちた。
「ッッ……香織さんッ、ティオさんッ」
自分の瞳が映す未来に、これまで幾度となく希望を与えてくれた者たちがいる。どれほど絶望的な未来であろうとも、決して諦めず、最後にはそれを覆してしまう者たち。
シアが思う。いつだって、彼らが――彼らこそが、絶望しか映さないこの瞳に、希望の未来を見せてくれるのだと。
「……うむッ!」
「……うんッ!」
シアの声と涙を見たティオと香織は、ほぼ同時に立ち上がった。まだ姿は見えないし声も聞こえないが、それでも二人にはわかるのだ。ハジメとユエが返ってくることが。ならば、その瞬間を迎える自分たちが無様な姿を晒すわけにはいかない。
そして――解放者たちとエヒトが激突する戦場、その遥か上空で異変が起きた。突如として、エヒトの胸から血の花が咲く。
「ッッ……何……だと?」
驚愕にエヒトの顔が歪んだ。
対峙していたオスカーは、その光景を見て愉快そうに口元を吊り上げる。
「ッッ……はは」
エヒトの胸を内側から突き破り、鋼の義手が姿を現していた。それはまるで、奈落の底から這い上がってきた亡者の腕のようだった。鋼の指がエヒトの胸郭を掴み、そのまま傷口を強引に押し広げる。
その奥にあったのは、三つの赤い瞳。奈落を思わせる深い穴の向こうから、二つの魂が姿を現す。そして上空で一つの人型を形作った。世界そのものが、長い旅路の果てに辿り着いた二人の姿を認識する。その魂に刻まれた、決して揺らぐことのない誓いを。
そして――二人の物語が、世界へと解き放たれる。
「『創造せよ、胸に抱いた渇望を。我らは狂える愛の使徒』」
それは、一人の少年の始まりを告げる唄だった。何の前触れもなく異界へと召喚され、そこで待っていた奈落の底へと突き落とされた少年。何も知らず、何も持たず、それでも生きることだけを諦めなかった少年の記録。
「常春の日常は突如去り、異界の扉が開かれる」
「その身に宿した鉄の神威、剣を持たぬ鍛冶神は、天界より一人奈落の底へと天墜する」
その聲から伝わるのは、孤独と絶望。そして、それでも消えることのなかった胸の奥の暗い炎。
『闇が包み、静寂が彩る奈落にて、我が身を襲う慙愧の炎』
『恥を知らぬ我が身にて、願い求めた黎明は、幾年経てども現れない』
続いて響いたのは、一人の少女の終わりを告げる唄。突如として闇に封じられ、光のない世界でただ一人、長い年月を過ごした少女。何も知らないまま、愛していた者たちに裏切られたと信じ、世界を呪い続けた日々の記録。
それが、どれほどの絶望だったのか。世界に響き渡るその聲が、少女の抱えていた悲壮な想いを余すことなく伝えていく。
だが――そんな二人は、やがて出会う。
『だから私は確信する。天から降りし鍛冶神が、我が眼前に明星を齎すは運命だと』
『ああ、愛しの我が鍛冶神よ。恥知らずの私を、それでも求めてくれるのならば、どうか光に連れ出して欲しい』
少女は出会った。自分を闇から連れ出してくれる、一筋の光に。
「是非もない。奈落で輝く月の女神。闇の中でなお輝くそなたの瞳に、己は心を奪われた」
「奈落に落ちるが我が運命だというのなら、良いだろう。己はそれを受け入れる。我はそなたの全てが欲しい」
少年は出会った。闇の中にあってなお輝き続ける、美しき月に。二人は互いを求め、そして互いを守ると誓った。
「我が汝を、汝が我を守るならば、真理の錬金術師は生誕し、世界の頂へと駆け上がる」
『もはや我らに敵はなし。立塞がるもの全てを薙ぎ払い、今我らは世界を越える』
幾多の死線を越えた。幾度となく絶望に叩き落とされた。それでも二人は、互いの手を離さなかった。
そして今、二人は再び立ち上がる。
「刮目せよ。創世神話の始まりだ」
世界が震える。七つの神代魔法が一つに束ねられ、二人の極限の意思によって紡ぎ出された力が、世界の理そのものへと食い込んでいく。
それは世界を侵すための力ではない。神すらも越えて、愛する者と共に生きるための力。
「『
ここに、二人の到達者が降臨する。
自らを再定義したハジメとユエの姿は大きく変わっていた。
ハジメの姿は以前と打って変わり、白を基調とした未来技術じみたアーマースーツを身に纏っている。鋭角的な装甲は全身を覆いながらも決して無骨ではなく、白銀の装甲の隙間から覗く漆黒のインナーには、青白い光が幾筋も走っていた。
左腕と右目。かつて失ったはずの二つの部位も、今では存在している。だが、それはかつての腕や眼を再生したものではない。生体と機械の境界すら曖昧にする
右目に宿るのは、青く輝く異形の瞳。そこに映る世界は、もはや人間が見る世界とは異なっていた。魔力の流れに魂の構造。空間の歪みに世界を構成する無数の情報を以前とは比較にならない精度で解析するハジメが手に入れた――新たなる『眼』。
そして彼の隣でユエは、その豊満な肢体を黒いアーマードレスで包み、静かに宙へ浮かんでいた。
「どうするハジメ?」
「そうだな。まずは……鬱陶しい羽虫から駆除するか」
ハジメが右手を掲げた瞬間、天を裂きながら創造の光が駆け抜けた。
「――ユエ。弾道計算と位相アライメントは終わったか?」
「……ん。並列光子回路、全領域展開。全神の使徒の未来回避行動パターン、ならびに量子振動数を補正・確定完了。いつでもいける、ハジメ」
ユエの瞳の奥で、極光のような演算光が幾千、幾万もの軌跡を描く。彼女の脳は今や、光子による超並列演算回路そのものと同調していた。戦場に存在するあらゆる物質や大気の流れ、魔力の揺らぎから原子一つ一つが持つ量子的な振動。
その全てを演算対象とし、無数に存在する可能性の中から、敵が次の瞬間に選択する行動すら先回りし、未来を構成する可能性全てをユエは演算する。
「了解」
ハジメが口元を吊り上げる。
「全知の描いた設計図、俺の
「
瞬間、遥か衛星軌道上。その何も存在しなかった虚空に、一万本の漆黒の大型基幹弾頭が出現した。巨大な槍を思わせるそれらは、ハジメの錬金術によって一瞬で構築された超兵器。その全てが同時に姿勢を制御し、標的へと照準を合わせる。
そして――。
一万本の槍が、一斉に大気圏へと突入した。
「喰らい尽くせ」
「対神概念貫徹型・軌道投下拡散兵器――」
空が赤く燃え、大気との摩擦によって赤熱した一万本の槍が、彗星の如く地上へと落下していく。
「
直後、ユエの瞳が僅かに輝いた。
「――接続」
光子演算によって導き出された情報が、一斉に全弾頭へと伝達される。
次の瞬間、既存の物理法則が、意味を失う。一万本だったはずの槍が、一本につき数百、数千へと分裂していた。一本一本が独立した弾頭として機能しながら、全てが一つの巨大な演算網に接続されていく。瞬く間にその数を増やした光の槍が、天を埋め尽くし、神の使徒目掛けて降り注ぐ。
的確に神の使徒のコアだけを狙い撃ちにした滅びの彗星は止まらない。神の使徒の抵抗を悉く無効にし、避けようにもまるで未来を予知したかのように
天を覆い尽くす大豪雨。その桁違いの物量と破壊力にさらされた結果、目標以外微塵の破壊をもたらすことなく、投下わずか五十二秒にてトータスに存在していた数千万体の神の使徒は一掃された。
「そんな……そんな、馬鹿な……」
その光景に、アルヴヘイトが身震いする。神エヒトの復活と共に、神の使徒の司令塔として復活させられた眷属神。彼が指揮していた軍勢が――文字通り、一瞬で全滅したのだ。
完全復活を遂げた神エヒトから預けられた神の使徒は、従来のものと比べて十倍もの性能を持っていた。さらにエヒトの加護によって、概念防壁すら備えている。解放者たちの加護があってようやく対抗できる、神の先兵たる兵器。
それが……それほどの軍勢が。たった五十二秒で、トータスから消え失せた。
「まさか、これが奴らの概念魔法かッ!」
「その通りだ」
「ッ!?」
何の気配もなかった。次の瞬間には、ハジメとユエがアルヴヘイトの背後に立っていた。
「お前、叔父様に取りついてた眷属という奴だな」
「あのミイラの寄生虫か。これはずいぶん分不相応な姿を与えられたな」
今のアルヴの姿は、エヒトによく似た美男子だった。これが寄生生物だった彼の真の姿なのかもしれない。だが、ハジメには微塵も興味がなかった。これから始まる本番の戦いを前に妙な邪魔をされるのは鬱陶しい。
ならば――潰す。
「舐めるなよ、イレギュラーッッ! 我とて、エヒト様の復活と共に真の力を与えられたのだ!」
アルヴが両手を大きく広げる。その瞬間、周囲の空間が歪んだ。莫大な神力が一箇所へと収束していく。
「
空が、白く染まった。
「
もはや余裕などないのであろう。エヒトから与えられたという概念魔法を発動するアルヴ。現れたのは直径十メートルはあろう光の砲撃。あらゆるもの分解を越して消滅させる絶対なる光。
「これを浴びて、なお存在できるものなど――この世界には存在しない!」
「いや、そうでもないだろ」
「なッ!?」
アルヴが放った光の砲撃を前に、ハジメはほくそ笑む。
「概念魔法と言っても所詮疑似概念魔法止まり。この程度、対策なんていくらでもできる」
直後、光の奔流が途切れる。その向こうから現れたハジメとユエは――無傷だった。二人の前には、淡い光を放つ巨大な障壁が展開されている。
「
ユエが淡々と告げる。
「要は、向かってくる魔力の波長パターンを計測して、最適な魔力波長を生み出して威力を相殺してるだけ」
ユエの赤い瞳が、アルヴを射抜く。
「この程度で防げる低レベルの魔法に過ぎないし、限界値を求めるのも容易い。無駄が多い術式だから――ついでに最適化してあげる」
ユエが手を翳す。その眼前に、複雑極まりない魔法陣が展開された。
「
「な――」
それは、先ほどアルヴが使った疑似概念魔法。だが、同じものではない。余分な術式を削ぎ落とし、効率を極限まで高めた、完全なる最適化。放たれた光がアルヴを飲み込む。
そして――首から下が、消滅した。
「ありえない……」
アルヴの顔が恐怖に歪む。
「ありえない、ありえない、ありえないありえないありえないッ!!」
もはや狂乱だった。
「エヒト様が使う真なる概念魔法ではないとはいえ、他者の概念魔法を再現するなど……貴様らの発現した概念は、一体何なのだ!」
答えは、既に示されていた。先ほど、ユエがアルヴの魔法を再現する際に展開した魔法陣。それはあえて見せられていた。それは確かに既存の魔法陣とは比較にならないほど複雑だった。
だが――魔法陣として構築できた。それが意味することは極めて単純。
アーティファクト――誰でも扱える『道具』による、数千万体もの神の使徒の殲滅。概念魔法の解析。魔法式――すなわち数式による、完全な再現。それらが意味するところは、一つしかない。
「はは……そうか。なるほど」
ハジメたちを分析していたオスカーが、ようやくその真実へと辿り着く。その顔に、驚愕が浮かんだ。
「まさか……そう来るとはね」
「どういうこと?」
ミレディの問いに、オスカーはハジメとユエを見つめながら答える。
「概念魔法は、極限の意思によってしか発現しない。それが僕たちの常識であり、この世界のルールだ」
オスカーの視線が、二人へ向けられる。
「だけど、彼らの概念魔法は、その常識そのものを覆すことができる」
「……!」
「彼らは証明したのさ」
オスカーが、静かに笑う。
「極まった人の叡智は――神の領域を侵すんだとね」
「それって……まさか」
ミレディが、答えへと辿り着く。そして――その名を口にした。
「既存魔法法則による……概念創造能力」
厳密に言えば、ハジメとユエが『最高のパートナーに相応しい己でありたい』という求道の祈りによって発現させた概念魔法。
その効果とは――『己の才能の究極化』。
すなわち錬成師と神子。
錬成師であるハジメには、無からあらゆる物質を作り出す究極の錬金術を。
神子であるユエには、あらゆる式を解き明かす、神の頭脳を。
二人がそれぞれ持っていた才能を、文字通り極限まで引き上げる力。
「概念創造なんてものはな」
ハジメが口を開く。
「人類百万年の歴史の中で、幾度も行われてきたことなんだよ」
新たな概念を作る。それは何も特別な奇跡ではない。人類が遥か昔から繰り返してきた営みの延長にあるもの。
存在しなかったものを想像し、理論を組み立て、試行錯誤を重ね。そして――現実へと創り出す。地球において科学と呼ばれるもの。
「俺たちは、それを少し先取りすることができるだけだ」
ハジメが不敵に笑う。
「けどな」
ユエの瞳が、静かに輝く。
「なんでも作れる超高性能の
「宇宙最強の
二人の視線が交わる。
「これが直結した時、何が生まれるのか」
「その答えを今から教えてあげる」
「……な、にを――」
アルヴが震える。
その残された頭部へ、黒いアーティファクトがゆっくりと被せられた。それは悪夢へと誘うためだけに創造された、悪夢そのものの装置。
「永遠に悪夢の中を彷徨え」
ハジメが冷たく告げる。
「
装置が起動する。アルヴの顔が、苦痛に歪んだ。
「あのおっさんに拷問されてた三百年を、お前の脳内に再現した」
「試行回数は一万回」
ハジメは笑う。
「つまり――三百万年だ。たっぷり楽しむがいい」
次の瞬間、アルヴの姿は、異空間へと消えた。その空間そのものが閉じられる。もう、二度と戻ってくることはない。
そして――。
ハジメとユエは、ゆっくりと振り返った。そこにいるのは先ほどハジメが与えた胸の傷を、既に再生させたエヒト。
創世神を名乗り、この世界において絶対的な神威を振るう存在。その姿を見据えながら、ハジメとユエは不敵に笑った。
「よう、クソ野郎」
ハジメが一歩、前へ出る。
「戻ってきたぜ」
その右目に、青白い光が灯る。
「お前と同じ地平に立ってな!」
エヒトの口元から、笑みが消える。神と同じ地平へと辿り着いた二人。人の叡智を極限まで高め、神の領域すら侵す力を手にした者たち。
そして――この世界そのものを支配し、神威を振るう創世神。
最後の戦いが、今。幕を開けようとしていた。
>全知紡ぐ、奈落の錬金術師ヴァールハイト・アルケミスト
ハジメとユエが辿り着いた概念魔法。その発現形式は「求道型」。
二人が抱いた渇望は――『最高のパートナーに相応しい己でありたい』。
そして、この概念魔法の詠唱は、全世界に轟く公開ラブレターである。
発現した能力はハジメとユエの持つ才能の究極化。
ハジメであれば、錬成師という才能の到達点。かつて科学によって否定された「卑金属から貴金属を生み出す」という不可能を可能とする、本物の錬金術を行使できるようになる。魂が擦り切れない限り、無から有を生み出すことすら可能になる。
――ハジメ曰く超高性能の3Dプリンター。
ユエであれば脳が電子演算ではなく光子演算に耐えうるように進化。地球のスパコンを総動員しても何百年も終わらない計算を一瞬で終わらせる神の頭脳と化す。
――ユエ曰く宇宙最強の
ハジメとユエが合わさった結果、産まれるのは人類の叡智の極致。極限の意思によってのみ発現するとされていた「概念魔法」という奇跡そのものを、科学的に解析し、数式として理解し、そして再現する力。ぶっちゃけシルヴァリオシリーズの人奏
>>白いSFアーマーを着たハジメ
イメージの変化のモデルは3rdフォームからXthフォームに変わった.hack.G.U.のハセヲ。つまり厨二病のクソガキが数多の経験を経て厨二病の大人になったということ。厨二病は変わらない? 厨二病じゃないと概念魔法使えないし。アーマーはアーディティヤの連中みたいなの
>>黒いSFアーマードレスを着たユエ
こちらは逆に白を基調とした服から一転して黒に。これは過去を、アレーティアを受け入れた証。
>>
超凄いロッズフロムゴッド。あらゆる障壁を貫通するし、素粒子単位で計算したフォーミングがあるから逃げられないよー。