ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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お知らせです。
コメントにも主人公の覚醒回なのに薄味すぎて味がしないとか、蓮弥簡単に折れすぎじゃねとの指摘がありまして、読み直したところ確かにそう感じたので前話を大幅加筆修正しています。おかげで初の1万字越え。具体的にはミレディ相手に蓮弥が折れたところと再起。そして後半のミレディ戦。現状蓮弥ができることのお披露目とちょっとだけミレディが本気だします。一応結末は同じなので今話が読めないわけじゃないのですができれば前話を読んでから今話を読むことをお勧めします。


繋がる希望

「どうやら終わったみたいだな」

 

 辺りにもうもうと粉塵が舞い、地面には放射状のヒビが幾筋も刻まれている。あたりに散らばるブロックの一つに胸部から漆黒の杭を生やした巨大なゴーレムが横たわっていた。

 

「やりました、ハジメさん。私、やりましたよー」

 

「ああ、良くやったシア。見直したぞ」

「……ん、頑張った」

 

 シアがへたり込みながらも歓喜に震えていた。魔力を使い果たし、疲労困憊の筈だがその顔には喜色が広がっていた。

 

 

 今回シアが切り札になると予想した蓮弥だったが、見事その役割を果たした感じになった。肝心のシアは普段適当に扱われているハジメからの優しい態度に目を丸くしながら頬をつねったり、ユエから優しく抱きしめられながら労われて感涙していた。

 

「あのぉ~、いい雰囲気で悪いんだけどぉ~、そろそろヤバイんで、ちょっといいかなぁ~?」

 

 

 蓮弥達が振り返ると、ミレディゴーレムの目の光が戻っていた。蓮弥が視てみるが、()()()()()が薄くなっている。もう長くは持たないだろう。実際警戒するハジメ達にその旨を伝えると、ミレディは最後の力を振り絞るように語り始める。

 

「今回の試練はクリア。君達の勝ちだよ。けどこれだけは忠告させてほしい。今回手に入る神代魔法が目当てのものでなくても、必ず七つ全ての神代魔法を集めること。それが君達の望みに必ず必要になる」

 

「全部ね……なら他の迷宮の場所を教えろ。失伝していて、ほとんどわかってねぇんだよ」

「あと得られる神代魔法についても教えてくれ。ハルツィナ樹海の時みたいに空振りは避けたいからな」

 

「よくばりだなぁ……わかった……一度しか言わないから良く聞いて」

 

 ミレディ・ライセンは語る。

 

 砂漠の中央にある大火山 "忍耐の試練" "グリューエン大火山""

 得られる神代魔法は空間魔法

 

 西の海の沖合周辺にある "狂気の試練" "メルジーネ海底遺跡"

 得られる神代魔法は再生魔法

 

 教会総本山 "意志の試練" "神山"

 得られる神代魔法は魂魄魔法

 

 東の樹海にある大樹ウーア・アルト "絆の試練" "ハルツィナ樹海"

 得られる神代魔法は昇華魔法

 

 南の果てのシュネー雪原 "鏡の試練" "氷結洞窟"

 得られる神代魔法は変成魔法

 

 

「以上だよ……頑張ってね」

「……随分としおらしいじゃねぇの。あのウザったい口調やらセリフはどうした?」

 

 今までのミレディ・ライセンとは違い、今にも消えてしまいそうな儚さを感じる。蓮弥はとりあえず空気を読んで黙っていることにする。

 

「……戦うよ。君が君である限り……必ず……君は、神殺しを為す……それに……」

 

 ミレディが蓮弥に意識を向けたのを感じる。

 

「そっち側にも……色々事情があるらしいしさ……」

 

 蓮弥が一瞬の接触により、ミレディから様々な知識を得たように、ミレディにも永劫破壊(エイヴィヒカイト)以外にも何か伝わったのかもしれない。

 

 

 ミレディゴーレムの光が失われつつある。どうやら限界らしい。

 蓮弥は空気を読んで黙っている。

 

「……さて、時間の……ようだね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

 

 オスカーと同じ言葉をハジメ達に贈り、“解放者”の一人、ミレディは淡い光となって天へと消えていった。まるで昇天したように。

 

「行ってしまったんですかね」

「そうだな。ミレディは()()()()()()()()()

 

 シアの呟きに答えを返す蓮弥。

 しんみりとした空気を出すユエとシア。

 何か言いたげな目で蓮弥を見るハジメ。

 

 

 そんなしんみりした空気の中、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気が付く。気を取り直して、ブロックの一つに四人で跳び乗ると、足場の浮遊ブロックが動き出し、光る壁まで蓮弥達を運んでいく。どうやらミレディ・ライセンの住居に案内してくれるらしい。浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった。

 

 くぐり抜けた壁の向こうには……

 

「やっほー、さっきぶり! ミレディちゃんだよ!」

 

 ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。

 

「「……」」

「……蓮弥、お前知ってただろ?」

「まぁな」

 

 魂のリンクが消えただけで本体が無事なことがわかっていた。蓮弥をジト目で睨むユエとシア。空気を読んだだけなんだけどな。

 

 

 相変わらずふざけた態度で煽るミレディに対して、先ほどまでのしんみり空間の後ということもあり、ユエとシアの怒りのボルテージがぐんぐん上昇していく。

 

 

 そのうちミレディとユエ、シアが追いかけっこを始めたので蓮弥とハジメは勝手に周辺を探索することにする。蓮弥はユナを形成し、調査を行う。

 

 

「あそこに色々なものを貯めている保管庫がありそうですよハジメ」

「だってさ、ハジメ」

「ナイスだ、ユナ」

 

 その言葉を聞いたハジメが早速保管庫に入り込もうとする。

 

「ちょ!? 君ぃ~勝手にいじっちゃダメよぉ。神代魔法はあげるからさ」

「ちっ」

 

 ハジメが舌打ちして一旦物色行為をやめる。お宝を手に入れて肝心な神代魔法が手に入らなければ本末転倒だからだ。

 

「ならさっさと神代魔法よこせや」

「ねぇ、さっきから顔と言動が強盗のそれなんだけど気づいて「ああん!?」……はいはい、わかりましたよ〜」

 

 どうやらハジメはミレディ相手に遠慮する気はないらしい。まあ、この大迷宮にて受けた心的ストレスも多分に含まれているのだろう。

 

 

 展開された魔法陣の中に入る蓮弥達。今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているからなのか、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無かった。直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく感触に経験済みの蓮弥とハジメとユエはともかく、シアは初めての経験にビクンッと体を跳ねさせていた。

 

 ものの数秒で刻み込みは終了し、無事ミレディ・ライセンの神代魔法を手に入れる。

 

「やっぱり重力魔法か」

 

 ブロックが明らかに重力を無視した動きをしていたのはこの魔法のおかげだったらしい。重力というとひょっとしたら星の力とかも使えるのかも知れない。蓮弥が神代魔法の()()()にあるものに思考を巡らせる。

 

「うーん。眼帯白髪くんとウサギちゃんは適正無いね。かわいそうになるくらい。金髪ちゃんはばっちりで黒髪くんと銀髪ちゃんは……わかんない」

 

 まあ、仕様が違うから多少は仕方ないかもしれない。だが無事に習得できたならよしとしよう。

 

 

 そこでハジメが貰えるものを貰ったということで、再び保管庫の物色を再開する。どうやら受けたストレス分思い存分に貰っていくつもりらしい。

 

 

「こらこら、早速物色しないの〜まったく、やってることが強盗なんだけど」

「ミレディ・ライセン」

 

 そこで蓮弥が呼びかける。少し聞きたいことがあったからだ。

 

「ふむふむ、何かな若人よ。言っとくけどスリーサイズとか教えないからね」

「いや、悪いけど興味がない。ぶっちゃけ俺はあんたの本当の姿を知ってるけど、貧乳には興味がないしあんたじゃ勃たない、悪いな」

「おいこらまて、ぶち殺すぞ」

 

 ミレディが割とドスの効いた声を出して構えてきたので、蓮弥はすぐに降参する。()()()()()()()()()()()、万が一本気モードになられると困るからだ。ちなみにだが蓮弥は大艦巨砲主義である。相棒も幼馴染も巨乳なところでお察しな感じだ。

 

「神代魔法七つ全て集めた後の話だ」

 

 ぴくっとミレディが反応する。どうやら質問が意外だったらしい。

 

「その様子だとやっぱり伝わってるみたいだね。なんかいやな感じがすると思ったらやっぱり頭の中覗いたな〜君。えっちぃ〜」

「だからあんたには興味がないと何度も……そんなことはどうでもいい。世界を渡るにはそれが必要なんだな」

「そだね。まあ、それだけじゃダメだけど」

 

 あっさり白状するミレディ。どうやら蓮弥には隠す必要がないと判断したのだろう。もっともそれを知らないハジメに教える気があるかは微妙だが。

 

「渇望が必要なんだろ。世界を歪めるほどの」

「渇望? 奇妙な言い方するけど……たしかにしっくりくるかもね。それで、聞きたいのはそれだけ?」

「いや、神代魔法の出所が知りたくてな」

 

 無機物に干渉する魔法『生成魔法』、星の力に干渉する魔法『重力魔法』、境界に干渉する魔法『空間魔法』、時に干渉する魔法『再生魔法』、生物の魂に干渉する魔法『魂魄魔法』、存在するものの情報に干渉する魔法『昇華魔法』、そして、有機物に干渉する魔法『変成魔法』。考えてみればおおよそこれら全て、永劫破壊(エイヴィヒカイト)に備わっているものだった。

 

 

 この世界が神座世界に関係あるかはわからないが、少なくとも蓮弥をここに送り込んだものはいるわけで。なんとなくエヒトとやらではないのは感覚でわかる。つまり、神代魔法のルーツを辿れば蓮弥を送り込んだ神なるものの正体がわかるかもしれない。

 

「うーん。ミレディたんの時代でも希少だったからルーツはわからないな〜。少なくとも君の使う術式とは別のものだよ」

「そうか、悪かったな」

「およ、殊勝な態度じゃないか。いや〜感心感心。あっちの若いのにも見習ってほしいよ〜」

 

 ちなみにハジメとユエ、シアは保管庫を探るのに夢中になっている。特にハジメは宝物庫の中身で何が作れるのか早速考えているようだ。

 

「あんたの過去が見えてな、それをみれば多少は態度も変わるさ。……ところで神代魔法の先についてはハジメに言っても?」

「一応神代魔法を手に入れていけばわかることではあるし、それを知ることも試練の一つだからできれば黙っててほしいな〜」

「わかった。……そうだ……ほら、これお前にやるよ」

 

 蓮弥はポケットの中身をポンとミレディに渡す。

 

「なになにプレゼント? ミレディちゃん安い女じゃないから並みのプレゼントじゃよろこば!!?」

 

 正体に気づいたらしいミレディが驚愕しているのがわかる。

 

「こ、こ、これ、もしかして神結晶!? こんなものどこで手に入れたのさ!?」

 

 そう、蓮弥が渡したものは、ハルツィア樹海の例の場所で手に入れた拳大の神結晶だった。

 

「ちょっと寄り道してな。間違いなく天然の神結晶だ。ありがたく受け取れ」

「ねぇいいの? 本当にいいの? これミレディたんの時代でも神話扱いされてた伝説の鉱物なんだけど」

「とれるだけ神水は取らせてもらったし、どうやって使おうか迷ってたんだが、あんたにやるよ。だってあんた……相当無理してるだろ」

 

 蓮弥のその一言に沈黙するミレディ。

 

「…………どうしてわかったの?」

「もともと弱ってたのは知ってたからな。もっとも気づいたのはユナだけど」

「弱っているのにあんな無茶をやったせいでガタガタです。このまま放っておけば消えてしまいますよ」

 

 

 魂の格はすさまじいのに未だ形成どまりの蓮弥でも勝てたのだ。おそらく長年の維持で疲弊していたのだろう。多分全盛期はあんなものではなかったはずだ。

 

「やっとお前の願いは叶ったんだ。消えるのはまだ早い。それの魔力を使えば無茶やらなきゃもう少しとどまれるだろ」

「そっか。……正直すごく助かる。ありがとう」

 

 こいつに素直にお礼を言われるとは思わなかった。美少女の姿なら絵になっただろうに、にこちゃんマークのゴーレムなのが残念だ。

 

「それにしても神結晶か……なつかしいな。昔オーくんが人工的に作ったことがあってさ。その時はすごくびっくりして思わず投げ捨てちゃったんだよね。今はオーくんの大迷宮になっているところの奈落の底に。あれから数千年経つけど、あれどうなったのかな~」

「それって……いや、きっとあなたの希望に繋がってるよ」

「そうだといいね~」

 

 何か感慨に耽っているミレディの横で、蓮弥とユナは顔を見合わせて笑い合う。思わぬところで繋がっていたことに運命を感じた。

 

 

 その一言と共に話は中断され、保管庫を漁るハジメ達を止めることにする。

 

「こらこら、これ以上渡せないよ。そこにあるものは迷宮の修繕とか維持管理とかに必要なものなんだから」

「ハジメ、その辺にしてやれ。いくらなんでも全部持っていくのは可哀想すぎる」

「甘いぞ、蓮弥。こいつにされた仕打ちを忘れたのか。こんな大迷宮むしろ維持とかする必要がないだろ。これは後続のやつらのためでもある」

 

 どうやらハジメの中ではまだミレディは人類の敵のカテゴリにあるらしい。蓮弥のように過去を見たわけでもないし、言動を考えればミレディの自業自得とも取れる。そこでミレディは最後の手段を取る。

 

「はぁ~、初めての攻略者がこんなキワモノだなんて……もぅ、いいや。君達を強制的に外に出すからねぇ! 戻ってきちゃダメよぉ!」

 

 ミレディは、いつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイっと下に引っ張った。ガコンと音がする。

 

「蓮弥、……下に落ちます」

「だろうな」

 

 ここまでくると何が来るか予想できる。一種のお約束だ。

 

 ボッシュート。

 

 そんな声が聞こえそうな感じに、蓮弥達は水に流されていったのであった。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ほう、これは面白い」

 

 それはトータスであってトータスでない場所。神の地である神域にて見ていた。長年探していた失われたと思っていた器が見つかった時も歓喜に震えたが、こちらは昔の賢者だった時の好奇心を揺さぶられた。

 

「フレイヤよ。こちらへ」

「ここに、主様」

 

 そこで一人の女性が姿をあらわす。それはこの世の美を結集したかのような存在だった。容姿だけではなく、備わっているもの全てが神域の技によって作られたとわかる。

 

「あの銀髪の少女を我の前に連れてこい。あの者の有り様。もしかしたら我の問題をもっとよりよく解決できるかもしれん」

 

 現れつつあるイレギュラーはまだいい。現状放置して問題ないレベルだし、うまくやれば面白いおもちゃになるかもしれない。だがあの銀髪の少女は今の状況を解決する糸口になる可能性がある。

 

 

 なぜなら彼女は、肉体なしの魂単体で現世に干渉しているのだから。

 

「了解しました、主様。いい報告を期待していてください」

 

 そして、神の使徒フレイヤはユナを手に入れるため、動き始める。

 

 




第二章完結。

今章のテーマはオリヒロであるユナを知ってもらおうでした。だから彼女の出番多めでしたがいかがでしたでしょうか。彼女を気に入ってもらえれば幸いです。

さて次回三章ですがエピローグを見てもわかるようにいよいよ奴の介入が入ります。奴からしたらユナは肉体に頼らず魂単体で活動しているように見えるのでとても魅力的なのでしょう。よってこの章から原作とズレていくことになります。

ですが第三章から更新速度が低下します。今回反省したのですが早く書く代わりに薄味になっていないか現在書き貯めているものもチェックしたいので。あと個人的にFGOのバレンタインや某王国心3をやりたゲフンゲフン。

流石に1か月更新が止まることはないとは思いますが、長く停滞するようなら活動報告とかであげるようにします。

では。

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