ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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Ω Ewigkeitを聴きながら執筆しました。


使徒と使徒

「はじめましてアンノウン。私の名はフレイヤ。我らが主の命により、それをいただきにまいりました」

 

 いきなり現れたフレイヤと名乗る女はこちらに語りかけてくる。蓮弥は警戒する。どう考えても只者ではない。

 

「意味がわからないな。いきなり現れてなんのようだ?」

 

 蓮弥はフレイヤの目的を探る。それとはなんのことか。

 

「あなたが連れている人型アーティファクトのことですよ。主は彼女のありように大変興味を示しておられます。よってそれを提供しなさい。それだけで主の役に立てるのだから大変名誉なことでしょう」

 

 話の内容から察するに狙いはユナらしい。まるで自分が言うのだから喜んで差し出すのが道理だというような態度だ。しかも明らかにユナをアーティファクトという道具扱いしているのも癇に触る。

 

「主というやつは交渉もできない程度の低いやつらしいな。それじゃまるで強盗だぞ。まあ、もっとも何を持ち出そうが渡す気はないけどな」

 

 

 挑発してみるが無表情無反応だ。まるで古い機械と話している気分だ。フレイヤは銀色の魔力を纏い始める。

 

「あなたに拒否権はありません。主が望んだということはそれはもう主のものなのです。それに、主が興味を示したのはその少女のみ。あなたに関しては何も命ぜられてはおりません。……渡す気がないのなら、渡したくなるようにするまで」

 

 

 相手も戦闘状態に入ったことを悟る蓮弥。この中でただ一人ついていけない清水が狼狽えているのが見える。

 

 

 それを察したのかフレイヤは清水の方に顔を向ける。

 

「あなたはあなたの成すべきことをなさい。主はあなたの行動にとても期待されております。せいぜい主を落胆させないよう努めなさい」

 

 その言葉に清水はフレイヤが味方だと判断したようでわかりやすいくらい調子に乗る。

 

「や、やっぱり俺が主人公なんだ。主人公のピンチに颯爽と現れる美少女ヒロインなんてテンプレだし。やれる、俺ならやれるぞ、はは、今に見てろよ」

 

 清水が町に向けて進軍を再開する。させるかとばかりに蓮弥は剣に纏わせていた雷を清水に向けて放つ。

 

 

 激しい轟音と共に清水に向かうが、間に割り込んだフレイヤに掻き消された。やっぱりあの程度の攻撃では効かないらしい。

 

 

 どうやら本腰いれないとダメのようだ。魔物の群れはハジメに期待するしかない。いや……

 

「お前をさっさと倒して、魔物を食い止める!!」

 

 異世界にて使徒と呼ばれるもの同士の戦いが始まった。

 

 

 蓮弥はユナの術にて、フレイヤは背中に生える羽にて自在に空を滑空する。どちらもすでに亜音速領域に突入しており、並みの人間ではまともに戦闘を見ることすらできないだろう。

 

 

 蓮弥は剣を振るう。唐竹、逆風、袈裟斬りと攻撃を繋げる。これを両方の剣、そして4つの背中の十字剣によって行う。

 

 隙間のない連続攻撃だったが、フレイヤは両手にした大剣にて余裕をもってさばく。

 

「抵抗は無意味です。私は可能な限りそれを無傷で回収したい。早く渡したほうが身のためですよ」

「それはこっちのセリフだな。とっとと帰って主とやらに伝えとけ。うっとうしいから関わるなってな」

「意見の相違ですね。では、遠慮はしません」

 

 フレイヤが光の羽を飛ばしてくる。四方八方に飛び散るそれは、こんな状況でもなければ美しいといえたかもしれないが、当然風情を楽しむ状況ではない。

 

 

 蓮弥は上下左右飛び回り避ける。避けきれないものに対しては剣により斬り落とす。

 

 お返しとばかりに風の刃を幾重にも放つが、同じく大剣にて切り伏せられる。

 

「なるほど、どうやらあなたに”分解”は通用しないようですね。それに当たった攻撃に対してダメージを受けていない。大した装甲性能です」

 

 周りを見回すと、細かい粒子の粒が光に反射してキラキラ光っている。どうやら当たった物質を分解する能力があるらしい。だがこちらにあたっても効かないし、向こうの攻撃は霊的装甲によって防御できる。もちろん過信はしないが鎧が機能しているのとしていないのでは取る行動も変わってくる。例えば……

 

「はぁッ」

 

 相手が気合とともに両手の大剣を振り下ろす。それを蓮弥は両手の剣を消し、素手で掴む。

 

「っ!」

 

 そして一瞬できた隙に両手の剣を握って固定し、そのまま腰の十字剣で相手を山脈まで吹き飛ばす。

 

 フレイヤは山脈の一部を削りながら叩きつけられる。そこそこの手ごたえを蓮弥は感じていたが。

 

「無駄です。私にこの程度の攻撃は通用しません」

 

 相手を見るとまるで逆再生するように傷が癒えていくのがわかる。おそらく自動再生の類だろう。

 

「しかしわかりました。あなたはなにか特殊なフィールドで自身を覆っているのですね。なら、これならいかがです」

 

「”蒼天”」

 

 フレイヤがいきなり、直径10m規模の蒼き炎の球を展開させてこちらに放つ。

 

 放たれる炎球。その巨大な熱量の塊は存在しているだけで周りの森を発火させるほどの火力だった。

 

聖術(マギア)2章4節(2 : 4)……"崩雨"

 

 ユナによって装填された聖術で炎球を水の津波によって消し去る。ついでに森に着火した火も消すのを忘れない。

 

「がッ!?」

 

 だがそれがいけなかったのか、背後から衝撃を受ける。蓮弥が振り返ると無数の炎の槍が襲い掛かってきた。

 

「これは……”緋槍”かッ」

 

 数は数十はくだらないだろう炎の槍が一斉に襲い掛かってくる。蓮弥は飛び回り避けるが、避けた槍は方向を変えて戻ってくる。

 

 蓮弥は刃に風の術式を装填してもらい。体を回転させる。2本+4本の剣がまるで風車のようになり周りの炎の槍を一つ残らず撃ち落とした。

 

「ユナ、今のどう思う?」

『彼女は魔法陣も詠唱も行ってはいませんでした。おそらく、ユエと同一の能力かと』

 

 

 やはりかとフレイヤを見る。炎球に対処している間も彼女から目を離してはいなかったが、魔法陣を構築する様子も詠唱を行っている様子もなかった。ユエは魔力操作のスキルだけでなく、想像構成というスキルによって魔法陣なしで魔法を使えるのだという。つまり相手も同じスキル持ちであるということだ。

 

 

 そしてそこまで考えてようやく蓮弥は彼女に対して感じていた違和感の正体を知る。白を基調としたドレス甲冑を纏っている彼女は魔力光の色も銀色だ。なのに彼女の容姿はそれとはミスマッチだ。輝く金色の髪に、紅い双眼。どこかでみたことがあると思っていたが身近にいたのだ。同じ髪と目の色をした吸血姫が。

 

 

 そう思うと顔立ちがそっくりだった。彼女の見た目年齢は十代後半といったところだが仮にユエが十二歳で成長が止まらずこの年まで成長していたらなるほど、こうなるだろうという容姿だった。

 

 

「魔法も大したダメージを受けない。魔力的にも防御が働いている。いや……魂の障壁……なるほど、面白い仕組みです。なら今度はこれを……”魂装”」

 

 フレイヤがそう呟くと銀の羽を振り乱してこちらに突っ込んでくる。

 

 蓮弥は迎撃を選択する。幾度か聖術による攻撃も試してみたのだが、例の分解能力に阻まれて有効打を与えられなかったのだ。なら直接斬り刻む。

 

 そこからは高速の乱撃戦だった。蓮弥は背中の四刀と両手の剣を用いて、相手は両手の大剣を用いてクロスレンジで斬りあう。

 

 

 当然蓮弥の方が手数が上なのだが、戦闘経験値の差でそれを補われてしまっている。永劫破壊(エイヴィヒカイト)による圧倒的なスペックも相手には通用しない。おそらくステータス上にほとんど差はないのだろう。そして厳然な実力差がない以上、戦術や技巧というものは常に有効だ。

 

「まずは一撃」

「なっ」

 

 相手が銀翼を用いて、蓮弥の四刀を抑えた。そしてその勢いのまま袈裟斬りで蓮弥を攻撃するフレイヤ。

 

 剣での防御が間に合わず地面にたたきつけられる蓮弥。そして……

 

「やはりそうでしたか。あなたの鎧は物理的な防御と霊的な防御を相互作用させることで効果を高めているのですね。なら”魂魄魔法”による魂への攻撃を可能にしてしまえばあなたに攻撃は有効になる。……一つ、あなたを追い詰めましたよ」

 

 戦っている最中もこちらを探っているような印象を受けた。どうやら未知の術理に対してはやはり警戒するようだ。相手の解析能力の高さに蓮弥は焦りを覚える。

 

 

 現状蓮弥の戦闘スタイルは、十字剣による近接戦闘とユナの聖術だ。だが奴には聖術が分解能力か魔力無効化かはわからないがあまり効いているようには見えない。なまじ攻撃が通ったとしても自動再生で回復されてしまう。剣による攻撃も通らないことはないが、聖術と変わりない。

 

 

 なら魔力切れを狙ってみればいいかと思うが、どうやらどこからか魔力の供給を受けているようで魔力切れの傾向が見えない。今までは相手の攻撃もこちらに有効打を与えられなかったからこそ拮抗していたが相手の攻撃がこちらに通ってしまうようになるとジリ貧になってしまうかもしれない。

 

 

(せめてこっちにも一撃必殺能力があればいいんだけどな)

 

 Diesirae主人公藤井蓮は彼の能力である時間停止にばかり注意が向きがちだが、聖遺物としての能力として首を聖遺物にて斬り落とせば問答無用で即死するという必殺性能がある。これゆえに不死身の魔人相手に戦ってこれたともいえるが、蓮弥の聖遺物にはそのような能力の傾向がない。間違いなく格としては負けていないし物が物だけにそれらしい能力があってもおかしくはないはずだが、少なくとも現状では現れてはいない。

 

『わかりました、蓮弥』

 

 ここで待ちに待ったユナからの吉報が返ってきた。ジリ貧が目に見えてきた現状を打破するために、いったん術式補助を止めて相手を探ることに注視してもらったのだ。

 

『相手の胸に魔力の供給を受けている核らしきものが存在します。それを破壊できれば魔力の供給は止まるはずです』

 

「なら、相手の不死性もなくなるってことか」

 

 方針が見えたところで再度構える。ここからは紛れもなく死闘になるだろう。戦闘開始から既に数時間が経過している。あまり長い時間をかけると町に魔物の軍勢による被害が出るかもしれない。

 

 

 そう考えたのがいけないのかフレイヤは清水が去っていた方向を見る。

 

「どうやらあちらが気になるご様子。ならその不安を晴らして差し上げましょう。"天ノ加護"、"神移"」

 

 邪魔する隙も無く何らかの魔法行使を行うフレイヤ。そしてその効果はすぐに判明した。

 

「お前、まさか……」

「あの術者の能力を昇華魔法によって限界以上に高めました。これならあの程度の術者に使役されている魔物でもそれなりに強くなるはず。そして空間魔法によって町の方に転移させました。あと数十分もあれば町を襲い出すでしょう。いくらあなたの仲間のイレギュラーといえど対処できるとは思えませんが」

「お前ッ……」

 

 怒りが溢れてくる。こいつは関係ない人を巻き込むことに躊躇がない。

 

「お前、エヒト神とやらの使いなんだろ。あそこには聖教教会の教徒もたくさんいるはずだ、そいつらを巻き込んでいいのかよ」

「構いません。彼らは所詮主の所有物。多少減ったところで主は何もお困りになりませんので。それに……豊穣の女神でしたか、主を差し置いて神を名乗ることの愚かさをその身でたっぷり思い知ってもらわなければなりません」

 

 とんだ糞野郎だ。蓮弥はこの世界の神エヒトをなじった。それにフレイヤの言うことが確かならこの魔物の軍勢は愛子を狙っているという。なら手段を選んでいる余裕はない。ここで切り札の一つを切ることを決める。

 

 

「ユナ、6節以降の聖術を使うぞ」

『蓮弥、ですがあれは……』

 

 ユナの使う聖術は章にて属性を、節にてレベルを表している。高いレベルになればなるほど効果は高くなるが反面負担も大きくなる。現状、どうしても蓮弥経由で聖術を使う以上、今の蓮弥の能力では5節までが限界でそれ以上の力を行使すると魂になんらかの悪影響を受けるかもしれないと言われていた。

 

「短時間のつもりだし、それにオルクス大迷宮で試した時とは状況が違う。最悪使()()()()つもりでやる」

 

 使い潰すというのは取り込んだ魂のことである。ここで倒した数千体の魔物はもちろん。あの時取り込んだ帝国兵の分も使えば少しは耐えられるはずというのが蓮弥の考えだった。

 

『……わかりました。……できれば無茶はしないでください』

「わかった」

 

 それが無理とわかっていつつもそう答える蓮弥。そしてユナが聖術を行使する。

 

聖術(マギア)8章7節(8 : 7)……"界神昇華"

 

 蓮弥は体に光を纏う。力が溢れてくるのと同時に体の何かが磨り減っているのがわかる。魂のすり減りが思ったより激しい。これは長く持たないだろう。

 

「いくぞぉぉッ!!」

 

 蓮弥が爆発したような勢いで飛び出した。

 

「ッ!!」

 

 フレイヤはいきなり強大な力を放ち始めた蓮弥を警戒していたようだったが、まるで対応できていない。その勢いで首を跳ね飛ばさんと剣を振るう。

 

 

 流石にそれは避けたかったのか首を逸らすことでなんとか回避したフレイヤだが、背中の羽が片方斬り落ちてしまう。

 

「くぅうううっ、はぁぁ!!」

 

 攻撃を受け苦悶の表情を浮かべたフレイヤだったが、すぐに大剣を蓮弥に向けて振るう。だが今の蓮弥にそんなものは通用しない。

 

「落ちろッ!」

 

 そのままフレイヤの背中に一瞬で移動し、蹴り飛ばす。

 

 フレイヤが体勢を立て直そうとするがそれより早く斬りかかる。

 

 右の剣が、左の剣が、背中の剣が、切る斬るキル。

 

 致命傷を避けることはできているがフレイヤは防戦に回る。

 

「まだこれだけの力があるとは……」

 

 再度フレイヤを追撃しようとするが空を切る。まるで瞬間移動したような感じだった。

 

「上かッ」

 

 蓮弥はすぐに上に構えるとフレイヤが術式を構築していた。

 

アクセス──マスター

 

 それは自分ではない。偉大なる主の御力を借りた魔法。その力はまさに神の領域にある。

 

神罰執行、我が主の名の下にありとあらゆる敵を叩き潰す力を行使せん。"大天撃"

 

 その膨大な魔力を空中から地上に向ける。この方角はまさか……

 

「避けても構いませんが、その場合、町の者の命は保証できませんよ」

「くそったれッ、ユナッ」

 

聖術(マギア)7章5節(7 : 5)……"五光聖門"

 

 ティオの時にも使った多重障壁を展開する。

 

 放たれる砲撃。

 

 その光は極大の圧力を伴い、こちらに迫ってくる。

 

 蓮弥は多重障壁で受け止めるも、一撃で三枚破られた。

 

「やばいッ、このままじゃ持たない」

 

 蓮弥は仕方なく界神昇華の強化倍率を上げる。界神昇華は魔力を込めた分だけ強化倍率が上がり、それに伴い術の威力も向上する。しかしその分負担も大きくなる。魂のすり減りが激しくなる。

 

「おおおおおおおおぉぉぉぉッッ!!」

 

 永遠に続くかと思われたその砲撃が終わる。消耗が激しいが幸いダメージはない。このままいける。

 

『蓮弥!!』

 

 グシャ

 

 腹部の方で嫌な音が聞こえる。蓮弥が視線を下に逸らすと腹部に大剣が飛び出していた。

 

「ガッ、ぐっ、ごぷッ」

 

 口から盛大に吐血する。急なことに意識が追いつかない。追いつかないまま体の力が抜けていく。

 

「愚かですね。あの町の人間など見捨てて良ければまだ勝機はあったかもしれませんのに」

 

 全く理解できない。そんな思いが込められた声が後ろから聞こえてくる。

 

 腹部から刃が引き抜かれ、蓮弥は地面に墜落した。

 

『蓮弥ッ、”快癒”』

 

 ユナが焦って詠唱なしで回復術をかけ続けるが焼け石に水だった。どうやら魂レベルで腹に穴をあけられたらしい。

 

 流れ出す、血も肉も魂も。

 

「あっけない終わりでしたね。まあ当然のこと。私は他の個体より特別に強化されています。どんな相手だろうと負けることはあり得ません。さて……」

 

 蓮弥は地を這いずる。間違いなくこのままだとまずい。

 

「どうしましょう。先の様子ではあなたとそれは霊的に深く融合しているようなので取り出すのが非常に手間なのですが。……試しにむりやり引き剥がしてみましょうか」

 

 フレイアの足音がすぐそばまで来ている。そして蓮弥の背後で止まったかと思えば、手を蓮弥の傷口に差し込んだ。

 

「ぐぅぅ、ぎぃぃ」

 

 思っていたより痛みはなかったが何か得体のしれない感触を感じる。まるで魂を直接つかまれているような……

 

「では試してみましょう。魂魄魔法”魂魄剥離”」

 

 そのセリフが聞こえた瞬間、蓮弥の意識が花火がはじけるようが如く、広がって爆発した。

 

「ガァ、アァァァァッ、グァアァァァァァァ!」

『きゃあああああぁああぁぁぁぁぁぁ!』

 

 激痛。

 

 痛み、痛み、痛み。ただひたすら痛みが波のように押し寄せてくるイメージだった。

 

「やはりこれでは引き剥がせませんか。仕方ありません。一度”神域”まで連れて帰るしかありませんね」

 

 

 まずい。

 まずい。

 まずい。

 

 今までもそれなりの危機はあったがこれはその中でもとびきりまずい。間違いなく神域とやらに連れていかれたら終わりだ。おそらくユナと無理やり引き剥がされるだろう。聖遺物を失った使徒の運命は死だけである。ユナだって何をされるかわからない。だから立ち上がって戦わないと……

 

「無駄な抵抗はやめなさい。見苦しいだけですよ人間。少し変わった力があったところで所詮人間。神の使徒に敵うわけないでしょう」

 

 そんなことはない。立ってそれを証明しなければ……

 

 だけど…………

 

 

 だけど、今の自分に何ができるというのだろう

 

 

 何ができるの? 

 

 

 何もできない。今の俺にはそんな力は残されていない

 

 

 本当に? 

 

 

 その通りだ

 

 

 それは嘘ですね

 

 

 嘘じゃない、この状況を覆す手段なんて持ち合わせてはいない

 

 

 

 いいえ、嘘です──だってあなたは──

 

 

 

 

 

──自分の奥底に渇望()を隠しているではありませんか──

 

 

 

 

 ドクン

 

 

 本当はまだ少し早いのですが──こんなところで死なれては困ります

 

 

 ドクン

 

 

 なので、少しだけ──本当に少しだけ力を引き出してあげましょう

 

 

 ドクン

 

 

 ただし気を付けてください──

 

 

 ドクン

 

 

 これの扱いを間違えれば──

 

 

 ドクン

 

 

 死ぬだけでは──すみませんよ──

 

 

 ! 待て!! お前は!? 

 

 

 

 

 

では──

 

 

 

 

 

 それはキーボードをピアノを弾くかのように軽やかに操作し、速やかに入力を済ませる

 そしてモニターの中の彼の顔を一度見て、口元に笑みを浮かべながら──

 

 

 

 

 

最後のキー(Enter)を──────押下した

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「なっ!!?」

 

 フレイヤは驚愕した。

 

 死に体だったはずの体から、いきなり強大な魔力が吹き荒れたのだ。

 

 とっさに防御するものの勢いを殺せず、そのまま数十メートル先まで吹き飛ばされる。

 

 そしてフレイヤは目撃する。この世界で異端となる化物の誕生を────

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■」

 

 

 別に彼は()()()()()から力を供給されているわけではない────

 

 

「■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■」

 

 永劫破壊(エイヴィヒカイト)の使徒の戦力は魂の数で決まるといってもいいが、現状彼はそれほど魂を蓄えてはいない。しかし本来、彼はそれを必要としない────

 

 

「■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■」

 

 

 なぜなら、彼自身に強大な渇望()()()()()()()()()()。考えれば当たり前だろう。なぜ永劫破壊(エイヴィヒカイト)の使徒がただの凡夫だと思っていたのだ────

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■」

 

 

 だが現状、彼自身にもその渇望の正体がわかっていない。わかっていないからこそ祈りの詠唱は霞んで聞こえない。ならその力はどういった形で顕現するのだろうか────

 

 

「■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■」

 

 その答えは、目の前の哀れな生贄の前で現れようとしていた。

 

 

Briah(創造)──」

 

「■■■■■■■■」

 

 

 この異世界にて真の意味で異端の化物が誕生する。そしてそれは、世界中に轟けとばかりに────限りない産声の叫びを上げる。

 

「アアアアアアァァァァァァ!!!!」

 

 異世界に、無形の異界が出現した。

 

 




そして戦いは、延長戦へ

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