ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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ある男のありふれた日常の物語。
視点が前半後半で別れます。

グロ注意


ありふれた世界

 ある男の話をしよう。

 

 

 ■■■■はたいして特徴もない一般家庭で育った。

 

 

 父親は日々の生活に支障のないレベルの収入を得ていたし、母親は厳しくも優しい人だったのを覚えている。

 

 

 そんな家庭で育った■■も当然世間的にありふれた日常を謳歌しながら成長していった。

 

 

 小学生時代は勉強が他の生徒よりできたのでクラスメイトによく頼られた。そこで当時の若い女性教師に対して初恋を経験し、彼女の結婚と共に失恋するというほろ苦い思いを経験した。

 

 

 中学生時代では剣道部に入部し、そこで全国大会まで進むも、二回戦で負けてしまう。今思えばその来世にて、自身を鍛えるのに剣道を選んだのもこの経験が関係しているのかもしれない。それ以外でも一番バカをやったのがこの時代だったといまさら思い返す。大人になって振り返ってみると、まさに社会を知らない糞ガキだったと思わず身もだえてしまいそうな経験だって複数存在したが、それもいい経験だったと思う。

 

 

 高校生時代では一転して勉強に力を入れることになった。普段はあまりとやかく言ってこない母親が不況に喘ぐ社会に不安を持って、有名大学への進学率が高い名門の私立に■■を入れようとしたのだ。

 

 

 ■■としては幸いにも勉強が苦だと思ったことがなく、成績もそこそこ良かったからたいして反発せずに母の言う学校に入学した。勉強漬けの日々になるかと思ったが、要領よくやればたいして苦ではないことに気づき、それなりに青春を謳歌したのだ。

 

 

 そして高校にて初めて恋人ができた。相手は一つ上の先輩であり、相手から告白してきた。特に断る理由が思いつかなかったので付き合い始めたが、先輩が学校を卒業すると共に自然破局した。ひょっとしたら面白みのないやつだと思われていたのかもしれない。

 

 

 だからだろうか、大学生時代はある意味はっちゃけてしまった。オタク趣味に目覚めたのである。せっかく有名大学に進学したにも関わらず、勉強そっちのけで趣味に没頭する生活。幸い生来の要領の良さで単位を落とすといったことはなかったが、成績は過去最低レベルにまで落ち込んだ。この頃からオタク趣味を満喫するためのお金を稼ぐためにアルバイトを始めた。コンビニ店員や、引っ越し屋、その他色々やったのを思い出す。

 

 

 大学生生活を満喫している最中、運命の人に出会う。大学生活ではうまくオタク趣味を隠しているつもりだったのだが、ある同級生女子にそれがばれてしまう。原因はその当時嵌っていた神座万象シリーズで藤井蓮が身に着けていた水星のネックレスをつけていたことだった。限定生産のレアものだったし、他の物より身に着けていたとしてもたいして違和感はないだろうと思ってそれをつけていたのだが……

 

「それ、練炭のネックレスだよね。買えたんだ、いいな~」

 

 講義で隣になった女子大生にそんなことを言われたので当時は焦ったのは覚えている。

 

「ああ、隠さなくてもいいよ。実は私も神座万象シリーズのファンなんだ。パラロスのBDBOXも全部そろってるし」

 

 ■■は素直に驚いた。神座万象シリーズとは、元ネタはエロゲーだからだ。そのシリーズの二作目であるDiesiraeのアニメ化が大ヒットしたことにより、その手の人種にとってはそこそこの知名度を誇る作品群ではあるが、元ネタが元ネタだけに男子のみの知名度であると思っていた。しかも大ヒットした二作目とは違い、その世界観とは裏腹に地味な印象があるPARADISE LOSTのBDBOXをコンプリートしている辺りにわかではない。

 

「私、□□□□。人文学部の一回生。もしよければ、お友達になりませんか」

 

 ■■としても彼女は地味な印象を受けるが、よく見れば可愛い女の子なので二つ返事で了承した。可愛い女の子と縁ができるというのもいいが、オタク趣味を共有できる人を得られるということがうれしかったのだ。

 

 

 それから彼女との日々が続く、彼女は神座万象シリーズ以外にも色々手を出しており、割とヘビィなオタクだったがなかなかその趣味をわかってくれる友達ができなかったらしい。そんな彼女と共にゲームをやってみたり、某夏と冬の祭典に出てみたり、ある意味現代日本人としてはありふれているかもしれない日常を謳歌した。

 

 

 そしてそんな関係が一年続いたある時に■■から告白して、晴れて恋人同士になった。恋人ができたからかわからないが、今までうまくいかなかった就活すらうまくいくようになった。

 

 

 そこで社会の厳しさを知り、世間の荒波に揉まれ、大学時代からの付き合いの恋人にプロポーズしてOKをもらうことになる。

 

 

 仕事も軌道に乗り始め、まさに人生の絶頂期。そして翌日に結婚式、ついでに数日後にDiesiraeのアプリゲーの配信日を控えていたある日。

 

 

 

 

 その幸せは……なんの前触れもなく奪われた。

 

 

 別に転生するトラックに轢かれたわけでもなく、突然の心臓発作などで死んだわけでもない。

 

 

 

 明日に備えるために就寝していたはずの■■■■は……目を覚ますと周り一面が白い空間に浮かんでいた。

 

 

 

 身体は拘束されているわけではないが、指一本動かせない。

 

 

 ”ゲーム『 Dies_irae 』、永劫破壊(エイヴィヒカイト)再現実験01を始めます”

 

 

 その言葉の意味が理解できるより前に……空間を引き裂くような悲鳴が響き渡った。

 

 

 意識が破裂する、どこか遠くで声が聞こえるかと思えば近くにあるように感じる。そしてそれが自分の喉から出ているのだと知った時、自分という存在は粉々に爆散した。

 

 

 ”再起動(リブート)

 

 

 意識が蘇る。周りを見回しても何も変わらない。どこまでも続く白い部屋に、動かせない体。

 

 

 

 ”永劫破壊(エイヴィヒカイト)再現実験02を始めます”

 

 

 その言葉と共に、体内の血液の量が十倍以上に増えた。血管は弾け、内臓は潰れ、筋肉は破裂する。心臓は狂ったように血液を送り続け、そしてそれが脳にまで届いた時、今度は脳みそが頭蓋から飛び出した。

 

 

 ”再起動(リブート)

 

 

 意識が蘇る。周りを見回しても何も変わらない。どこまでも続く白い部屋に、動かせない体。

 

 

 ”永劫破壊(エイヴィヒカイト)再現実験03を始めます”

 

 

 末端から体がすりつぶされていく。体の端から命が流れ出し、喉から醜い音楽が絶え間なく流れ続ける。まるで下半身からミキサーにかけられているようだ。いや、人間シュレッダーといってもいいかもしれない。そして脳味噌が解きほぐされる直前には、推定70㎏のミンチの山ができていた。

 

 

 

 ”再起動(リブート)

 

 

 ”永劫破壊(エイヴィヒカイト)再現実験357を始めます”

 

 

 爆発四散した。

 

 

 

 ”再起動(リブート)

 

 

 ”永劫破壊(エイヴィヒカイト)再現実験2586を始めます”

 

 

 なんかよくわからないけど死んだ。

 

 

 ”再起動(リブート)

 

 

 ”永劫破壊(エイヴィヒカイト)再現実験45963を始めます”

 

 

 運が悪くて死んだ。

 

 

 ”再起動(リブート)

 

 

 ”永劫破壊(エイヴィヒカイト)再現実験5476923を始めます”

 

 

 普通に死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”再現完了。永劫破壊《エイヴィヒカイト》再現実験”を終了します”

 

 

 いったいどれぐらいの時間がたったのだろう。その間、■■は壊されては蘇り、死んでは蘇りを繰り返していた。正直、まだ考えごとができるあたりが奇跡といえた。だが、実験は終わった。ようやく解放される。そう思っていた矢先。

 

 

 

 ”続いて、神性移植実験01を開始します”

 

 

 

 さらなる絶望が、口を広げて自分が落ちてくるのを待っていたのだ。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 純白の地獄に落とされて数日か、もしくは普通の人間が生きていたら体験しないような年数が経ったような気もする。

 

 

 それは反応するのを辞めていた。抵抗しても意味はない。肉体はおろか、精神的に死んでもすぐに復元される。ならいっそのことなにも反応しないというのが唯一の反抗と言えるのではないか。そう思うようになった末期。

 

 

「■■■■■■■■■」

 

 

 それが功を成したのか。ようやくこの場所の支配者と呼べるような人物が現れた。美しいといえば美しい。だが恐ろしく人間味にかけた女だった。いや、こんなことができる以上、人間ではないのだろうが。

 

 

「■■■■、■■■■■■■」

 

 何かをしゃべっている。■■に言葉が通じていないわけではないが聞いていない。

 

 

 ”このまま話を聞いてもらえないと先に進まないから直接魂に語り掛けるけど……"

 

 

 魂を気持ちの悪い感覚が包む。どうやら耳や脳ではなく魂に刻み付けているようだ。

 

 

 ”私が言いたいことは一つだけ。ねぇ、あなたのいた世界はどうなったと思う? ”

 

 

 何を言いたいのかわからない。元の世界、いまさらそんなものに心を揺さぶられるとでも思っているのか。だがその女は続ける。

 

 

 ”流石に管理外の宇宙から魂を引き抜くという所業はなかなか荒業だったみたいでね。……消滅したよ。跡形もなくね”

 

 

 ドクン

 

 

 ”しかもいきなり消えたんじゃない。君がいなくなったことで発生した世界の穴というべきところからまるで水がゆっくり抜けていくように時間をかけて世界は崩れ去っていった。末期の人類は謎の崩壊現象を止めるために必死に頑張ってたな。無駄だったけど”

 

 

 ドクン

 

 

 ”つまりね。あなたの幸せは……幸せになって手に入れるはずだったものは”

 

 

 

 

 

もうなにも残っていないんだよ

 

 

 

 

 

 その一言で、■■■■の中のナニカが切れた。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 さて、そこにいる君はごっこ遊びをしたことがあるだろうか。

 

 

 アニメや漫画の主人公、ヒロイン、時には悪役。それらが用いる異能や、それを使う際の仕草を真似てやる遊びのことだ。

 

 

 例えば空を飛ぶ術なんかは誰しも一度は憧れただろうし、手からビームを出す技のポーズなんかを取るのは、男の子だったら一度は誰しも通る道だろう。

 

 

 そしてこれは何も異能だけではない。例えば某猫型ロボットが使う秘密道具、例えば体は子供、頭脳は大人な名探偵が使う探偵道具、もしくはデュエリストが使うカードのモンスターを具現化するディスク。それらの道具を再現してみたいと思い、見た目だけ真似てみた経験があるものもそれなりの数がいるのではないだろうか。

 

 

 それらの大半は大人になるにつれて卒業していくものだが、大人になってもそれらから離れられないものもいる。

 

 

 意識が高く、才能にも恵まれた者なら、それらの異能、もしくは道具を再現するために高度な学問を修め、研究職に就くものもいるかもしれない。今回の実験も大別すればそれに当たる。

 

 

 そう、私が外に目を向けていた時にそれを発見したのだ。

 

 ──Dies_irae

 

 正直、人間の想像力を侮っていたと言わざるを得ない。

 

 

 長年自問し続けた答えを意外なところで見つけたような気分だった。

 

 

 自分という存在は何なのか。おそらく完全ではないだろうが、この瞬間、自身の存在を定義することに成功した。だからこそ私の法則にこれらを組み込んだら面白くなるのではないかとふと思ったのだ。

 

 

 ならば思い立ったが吉日、私は早速やってみようと思い行動に移した。

 

 

 彼を選んだのは特に理由はない。強いて言うなら私を定義するに至った物語を知っている者の中からたまたま目に付いたというだけだ。

 

 

 実験は困難を極めた。謂わば漫画片手に漫画の異能力を再現しようという試みだ。そう簡単にはいかないとは思っていたが、試行回数百万回を超えたあたりで投げ出したくなった。もはや途中からは半分くらいコンコルド効果でやっていただけに過ぎなかったのかもしれない。

 

 

 だけど何事もこつこつやってみるものだった。なんとかその術を再現することに成功した。……もっとも最後の方には完全に自動設定まかせだったのだけれど。

 

 

 だが、それだけでは満足いかない。やるなら完成品を作りたい。よって私も身を切ることにした。

 

 

 この時、指を針で刺して血を流すのは結構痛くて怖いんだなと思った。その出た私の血を彼にたらし、ミキサーのように混ぜ合わせた。悲鳴を聞くのはそろそろ耳障りになってきたので音声はシャットアウトした。

 

 

 

 

 そこからまた気が遠くなるような試行回数を重ねてようやく私の血をなじませることに成功する。

 

 

 ここからは最後の仕上げだ。

 

 

 私は彼の前に初めて姿を現した。彼の肉体と精神と魂は壊れるたびに再構築して直し続けたはずなのだけれどすっかり折れてしまっているようだった。これではいけない。せっかく資格があってもこれでは意味がないのだ。

 

 

 だからこそ彼に語りかける。彼を観察していてわかった帰郷意識の高さを刺激してやった。

 

 

 ■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!! 

 

 

 彼に思いっきり殴られてしまった、痛い。

 

 

 しかしこれで準備は完了だ。彼の魂をこの状態で固定する。しかしこの状態では転生しても日常生活を送るのが困難であることが予想されるのでここで彼に最後の干渉を行う。

 

 

 一つ、自分は今流行りの神様のミスとやらで死んだこと。

 

 

 二つ、Dies_iraeの永劫破壊(エイヴィヒカイト)を押し付けられたこと。それが17歳に発現すること

 

 

 三つ、この空間であったことは全て忘れること。だが永劫破壊(エイヴィヒカイト)を使いこなすために行動すること

 

 

 そして最後に彼に転生術式を仕掛ける。仕掛けたところは自分の宇宙(内界)の中でもとびっきりの■■が産まれそうな世界に設定した。これで準備は完了

 

 

「そうだ。君がこの世界での記憶を取り戻したとき、変な女だのなんだの言われるのは何だか癪だから名前を名乗っておこうかしら」

 

少し考える。思えば名前を名乗るというのも初めての経験だった。どうせならシャレの効いた名前がいいと考え、姿勢を正し名乗りをあげる。

 

「メアリー・スー。私はメアリーです。では、また会える日を楽しみにしていますよ、私の超越者」

 

 そしてご都合主義の女神による物語は始まったのだ。

 




>ある男
どこにでもいる一般人。そこそこいい大学を出て、そこそこいい会社で働いていた。神様転生をした日の翌日に大学時代からの付き合いの恋人との結婚式を控えていた。

>神座万象シリーズ
ある男のいた世界で流行していたゲームのシリーズ。この世界では運にも恵まれ、ゲーム、アニメ共に無事大ヒットすることができた。現実でいうFateポジに至った作品群。

>Dies irae PANTHEON配信開始
彼がいた世界が我々の住む現実世界とは違う世界である最大の証……orz
我々には奇跡が起こることを祈るしかできない。

>メアリー・スー
ある男に思いっきり人体実験した結果、藤澤蓮弥を生み出して神様転生させた張本人。神座万象シリーズの座という概念に感銘を受け、自身を明確に定義した超常存在。御都合主義の女神

次回はユナの物語

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