この残酷なゴブリンだらけの世界に祝福を! 作:wisterina
「♪~ばっくれつ、ばっくれつ、ランランラ~ン」
「♪~ばっくれつ、ばっくれつ、ランランラ~ン」
穏やかに晴れた日、今日はいい天気とアクアは川へ洗濯に。ダクネスは文字の勉強に、俺とめぐみんはギルドへクエストを受注して爆裂散歩に行きました。
のんびりのんびり歩いていますと、ゴブリンが巣くっている洞窟があるではありませんか。
「おや、これはいい場所ですね。さっそく打ち込みましょうカズマ」
「おやおや、そうですなめぐみんや。早く打ってくれ」
「気が早いですねカズマは。《エクスプロージョン》!!」
俺がけしかけるとめぐみんは爆裂魔法を唱えました。
さっきまでゴブリンが巣をつくり、付近の村に危害を加えていた洞窟は…………
なんということでしょう。めぐみんの爆裂魔法できれいさっぱり、洞窟ごと消し飛ばしてしまったではありませんか。おかげで、働きたくないカズマさんは苦労せずゴブリン退治のクエストを達成することができました。
めでたしめでたし。
「カズマ、いつものお願いします」
「はいはい、お前はこっちでも俺がおぶってやらないといけないのか」
とまあ冗談はさておき、依頼されたゴブリンの巣の討伐をめぐみんの爆裂魔法であっという間に済ませると俺は元の世界と同じように、めぐみんをおぶってゴブリンの巣だったところを散策し始める。一応補足しておくと、事前に敵感知スキルで冒険者や囚われた人がいないか見てみたので、人的損害もないという完璧なクエスト達成なのだ。
爆裂魔法で吹き飛んだ洞窟は、スプーンで抉られたかのように地面に穴をあけている。そこに生き物の反応もなく死臭すらない焦げたにおいだけだ。全部が爆裂魔法で吹き飛ばしたのだから、死臭に群がるハエ一匹も近寄らない。ゴブリンは全部跡形もなく吹き飛んでしまったようだ。あまりにも見事な吹き飛ばしっぷりに、俺は思わずうなってしまった。
「う~ん見事に木っ端みじんだ。ゴブリンの死体が何匹かわからんほどにな」
「ふん、そりゃそうですよ。この世界では爆裂魔法は正真正銘の最強の魔法ですから、ゴブリンの足の小指すら残っていませんよ!」
「最強なのはいいが、どれだけゴブリンを退治したかを報告しないといけないんだぞ。こんなに粉微塵だとどれだけいたか数えられねえし」
俺の背中でイキっているめぐみんを、黙らせておいた。まあ敵感知スキルでおおよその数は把握できているから報告の上では大丈夫だけどな。
山砦の戦いの後、俺はより効率的に収入を得るための方法を編み出した。まず、朝方にめぐみんを連れてゴブリン退治のクエストを受けて特に問題がなかったら爆裂魔法で粉砕し、報酬を得る。昼は危険な討伐クエストは避けて、街の工事現場でアクアとアルバイトをする。その間にダクネスとめぐみんが、より安全かつ高額な報酬が見込めるクエストを探せるようにギルドで文字を覚える。
ゴブリン退治は、毎日のように依頼が来るから途絶えることもないし、工事も幸いなことに雨の日以外は仕事がある。支出が多くなければ安定した収入が得られるのだ。そう、支出が多くなければ……
ほかに敵もいないことを確認して、俺たちが帰路を征くと俺はため息をついた。
「カズマ、なんでため息なんてついているのですか? いつものように、ゴブリン退治も私の爆裂魔法で簡単に済んで楽に報酬が儲けられてラッキーというはずなのに」
「そりゃな。嬉しいちゃ嬉しいよ。けどな、めぐみんやダクネスにアクアはこっちの世界に来てここの世界の人にちやほやされているのに、俺はこっちの世界でも相変わらずの評価。むしろスキルも発動条件があって制限されているんだぜ。俺もさ、こっちではかっちょよーく活躍できると思ったのに……」
俺以外のパーティーはこの世界に来て、かなり謳歌してやがる。ダクネスはあのただでさえやばいゴブリンにくっ殺せができて幸せそうで、アクアは相変わらず能天気で、めぐみんなんか元の世界ではネタ魔法であるはずの爆裂魔法で大魔法使いと持ち上げられている。
こちとらなんの謝礼もなく、帰ったら工事現場でアルバイトして馬小屋で寝ると昔の生活となんら変わんない。これが毎日続くとなるとそりゃ元気もなくなる。
「大丈夫ですよカズマ。私だって爆裂魔法を一発だしたら、がらりと周りの評価が変わったんですよ。カズマも何かスキルや魔法で見せつけたら、かっちょよーく活躍できますよ。私がそうなんですから」
「だといいがな。あーあ、俺もいっそ爆裂魔法でも覚えて活躍してみよっかな~」
「動機は不純ですが、カズマも爆裂魔法を覚えるというなら、このめぐみん先生が直々に喜んで教えて差し上げましょう。と、あれはゴブリンスレイヤーといっしょにいる神官さんではないですが」
めぐみんが見る方向には、街の入り口で手を腰に当てて仁王立ちしている女神官ちゃんがいた。もう少し歩み寄ると、神官ちゃんは頬を膨らませて怒っている様子だが、めぐみんと同じ体型でしかも美麗で可愛らしい容姿だから、怖いという雰囲気は醸し出せてなく、可愛いが勝ってしまっている。
「どうしたんだ神官ちゃん?」
「カズマさん! めぐみんさん! お話があります」
女神官ちゃんにギルドにつれていかれると早々に、俺たちはテーブルに座らせられて彼女にお説教を受けていた。
「いいですか二人とも、あんな魔法を使ったら森や山がかわいそうです。ほかの方法で討伐してください。地母神を崇拝する身として放置しておけません」
「いやでもね神官ちゃん。めぐみんの爆裂魔法で吹っ飛ばした方が一番効率が良くて安全」
「ですから、もっと周りに配慮したやり方をですね! もう、ゴブリンスレイヤーさんもそうですけど、どうしてそういう発想しかできないのですか」
ぷんすかという擬音が聞こえてきそうな説教で女神官ちゃんは怒るが、別に俺はそれしか思いつかなかっただけじゃないんだぞ。ただ、楽に報酬が得られて危ないゴブリン退治を楽にできる方法がこれしかなかっただけなんだよ。
しかし、俺がどれだけ言い訳をしても神官ちゃんは全く聞き入れてくれなかった。やれやれ、これじゃ工事のバイトに遅れるな、アクアに叱られるぜとわざとらしくすかしてみる。
「あの、俺たちこれからバイトに行かないといけないんでそろそろいいか?」
「だめです。ちゃんと他の方法を提示してからでないとお放ししません」
「カズマ、意外とこの神官強情ですね」
めぐみんが耳元でこっそりと彼女のことを耳打ちする。しかし、まだまっとうな方ではないか。 怒る仕草まで可愛くて、強情な性格だなんてカレーの隠し味にチョコを入れるぐらいのいいアクセントだ。
それに比べて俺の隣にいるロリッ娘含めたうちの女性陣は、全員性格的にも性能的にもポンコツ三昧だ。先ほどの例であげるなら、カレーの中に鮒ずしとシュールストレミングをぶち込むぐらいの隠しにもなっていない酷い味だ。
延々と神官ちゃんのお説教が続くと、ギルドの入り口にダクネスともうバイト入りしているはずのアクアが入ってきた。
「カズマまだバイトに入ってなかったのだな。先ほどギルドから 昇格検査のために二階に上がってくれと言われて探していたんだ」
おぉナイスタイミング。さすがの神官ちゃんでもギルドからの命令とあれば引き留めるわけにもいかないだろう。ここから退散できる大義名分を得た俺は、めぐみんをしょいこんで、そそくさと二階に上がっていった。
「というわけで、神官ちゃんのありがたいお話はまた今度というわけで、さらばだ!」
「カズマさん、めぐみんさん待ってください、まだお話は終わっていません! もぅ」
俺たちが二階へ駆けあがっていく際、階下で神官ちゃんの空気が抜けた風船のようなむくれた声が後に残った。
「どうぞお入りください」
「は、はい。失礼します」
ドアをノックすると、扉の向こうで受付嬢さんのピンっと張った声が聞こえて、俺は背中をピシッとしないといけない焦燥に駆られて上ずった声を上げた。なんだろう、俺は就活なんて体験したことはないがこういう場面ではこういう態度をしないといけないといけない気がする。日本人特有の社畜魂が俺の中にも眠っているということか?
扉を開けると、部屋の窓側には緑髪を巻いたいつも見かける受付嬢が、しっかりとしたつくりの椅子に座っており机の正面にはここのギルドの紋様があしらわれていた。それだけで彼女の座っているものの値打ちの高さがうかがい知れる。受付嬢の隣には手に十字架を握っている女性が立っていた。受付嬢と同じ服装だから彼女も職員であることはわかるが彼女の手に持っている十字架が俺の直感で何か嫌な予感が漂ってくる。
で、なんでこんな厳かな雰囲気の中にゴブスレさんがいるんですか。しかもここでも完全武装の鎧を着こんでいるし! なんかゴブスレさんがいるだけでこの部屋の雰囲気が、一気に中世版ヤクザ部屋と化しているんだけど!
受付嬢のちょうど反対側の壁際には、木製であるが座るところにクッションが縫われた少し豪華な椅子が四脚置かれていた。そして予想していた通り、受付嬢は俺たちをそこに座るように促した。なんか本当に就活の面接みたいだなこれ。ドラマとかCMぐらいしか見たことないけど。
「それではこれより、昇格検査を行います。なおこの検査は嘘をついたらすぐに彼女によって見破られますので。それと隣の彼は立会人という立場ですので」
受付嬢の隣にいる女性が、手に持っている十字架を前に出して俺たちに見せつけるように出した。
うげっ、あれ噓発見器ということかよ。この前のセナの尋問に使われた噓発見器のことがあるからこういう類にいい思い出がねぇ。受付嬢が書類を取り出すと、小さく咳を一つすると質問が始められた。
「まずカズマさんに先にお聞きしたことがございます。ここ最近、毎日のように依頼とギルドの紹介による工事現場への従事で相当の報酬を得られているはず。ですが、見たところ装備も初めに来たときとあまり変わっていないようで」
「ああそれは、無駄にお金を使わずに貯金をしようと今貯めていて、装備を更新していなくて」
「嘘です。先ほど申しました通り、至高神を信仰している私の前では嘘はすぐに見抜かれます」
受付嬢の隣の女性が手の中の十字を再び見せつけてそう言った。
げっ! ホントにセナの使っていた噓発見器みたいな能力もちかよ。でもなあ、金がないのはほんとだけどその理由を言うのはなぁ……すると、隣に座っていたダクネスが肘で俺の脇腹を小突いてきた。
「カズマここは正直に話したほうが今後の身のだぞ」
「…………借金だよ。このポンコツアークプリーストのせいで借金ができて報酬やバイトの金が全部消えていくんだよ!!」
そう、俺が効率的な稼ぎ方を編み出したはずが未だに馬小屋生活を送っている最大の原因は、アクアがこの世界でも飲み代のツケで借金つくりやがったせいだ。おかげで稼いだ報酬もバイトも、ほとんどがアクアの借金と食費で全部消えてしまっている。
「はぁ!? なに、私のせいだっていうの? カズマさんの稼ぎが悪いからでしょ。もっとお金を稼いで私を養ないなさいよ!」
「こちとら、収入を増やすためにあくせく働いているのになんだとコラッ。そんなこと言うなら、お前が借金一人で引きとれよな!」
こいつ、自分のことばっかり言いやがって! と堪忍袋の緒が切れて駄女神の口うるさい頬を引っ張ってお仕置きした。アクアも負けじと俺の髪を引っ張り、応戦を始める。こいつこっちの世界でも酒三昧しやがってからに……
「いい加減にしてください!! ここで仲間割れをするなら二度と依頼を受けさせないようにしますから」
受付嬢の鶴の一声で俺たちの喧嘩はすぐに収束して、元の席にもどった。
この人に逆らうと、冒険者どころか工事現場のバイトまでも受けられずに生活が危うくなることを見せつけられ、俺は身が震えた。鬼だ。悪魔だ。
「オホン、失礼しました。それでは続いて本日のゴブリン退治を含めてのことなのですが」
「ああ、ゴブリンの数のことだろ。いや俺も数えようとしたんだけど、どうも細かく覚えていなくておおよその数しかわかんないんですよ」
「いえ、そうではありません。問題は時間が早すぎることなんです」
「「はい?」」
俺とめぐみんが同時に声を上げた。受付嬢は、束になった書類を一枚引き抜きそれを俺たちに見せつけた。書類にはゴブリンの討伐数から場所まで事細かく記載されており、時刻の欄に大きく赤丸がつけられていた。
「通常ゴブリン退治は、少ない人数での行動は一人を除いて避けるようにしているのが基本です。ですが、カズマさんは毎日のようにめぐみんさん一人だけを連れて受注しているのです。そして数刻もかからず無傷で帰ってくる。私だけでなく、他の冒険者の方もなのですが異様に見えるとのことで……」
「なんですかそれは、私の爆裂魔法で倒した功績に疑いがあるとでも言うのですか!?」
不正の疑いがあると思われて真っ先にに憤慨しためぐみんが立ち上がった。
「止めないでくださいカズマ、これは爆裂魔法の名誉がかかっているのです。いくら私やカズマがどれだけおとしめられようとも構いませんが、爆裂魔法を馬鹿にしたことを反省させてやらなければ私の気が済まないんです!」
「誰も止めやしねーよ。それより、自分が前のめりで倒れて一歩も動けない状況を理解しろ」
めぐみんは今朝の爆裂魔法で体が動けない状態であることをすっかり失念していたようで、立ち上がった瞬間倒木のように倒れてそこから一歩も動けなかった。俺がめぐみんを抱きかかえて椅子に座らせると、「うぐぐぐ」とめぐみんは歯ぎしりを立てながら受付嬢を睨みつけていた。
まずいな、このままだと昇格できなくなるぞ。今爆裂魔法を実践しようにも、今日の分をぶっ放してしまったから俺のドレインタッチではすぐにはできないぞ。と険悪な雰囲気が立ち込め始めた時、ダクネスが手を挙げた。
「失礼だがよいか。爆裂魔法についてはそこのゴブリンスレイヤーに聞いてみるのはいかがだろうか。彼は以前めぐみんの爆裂魔法を直で見ているから参考意見になるだろう」
おおっー! ナイスだダクネス! ほんっと今日のお前は一段と役に立つなぁ!! そうだよ、爆裂魔法を目の前で見て称賛してくれた人物がちょうどこの部屋にいるじゃないか!
「一応彼は立会人という立場なのですが……まあ今回は特別に参考人として認めます。ではゴブリンスレイヤーさん彼女の言っていることは――」
「確かに爆裂魔法で、ゴブリンの巣を吹き飛ばした。ゴブリンが跡形もなくな」
「本当のようですね」
嘘を判断している彼女が少し一驚した様子で俺たちを見ている。めぐみんは自分を褒めてくれたゴブスレさんに嘘ではないことを証明してくれたためか、その大きい目をきらきらとゴブスレさん向けて輝かせていた。が、それ以上にこれで俺たちは問題なく堂々と言えるわけだ。
「ふふふん、どうですか銀等級様からのお墨付きも頂いたことだ。これで俺たちの苦労とその功績がわかったか! 毎日毎日みんなが嫌がるゴブリン退治を引き受けて、その後に体に鞭打って街の工事のアルバイトもしているんだ! どうだこれだけの功績があれば俺たちの昇格を認めて――」
「できません」
「は?」
伸びに伸びきった天狗の鼻をぽっきりと折られたかのように、受付嬢の隣に立っている女性が言葉を遮った。
「まず、以前あなたたちが受注したゴブリン退治で引き起こされた下流の農村の被害。そしてあなたたちが毎日ゴブリン退治をした場所の周辺で、突如発生した轟音により近くの農村や町で苦情が来ているのです。牛が驚いて牧場から逃げ出した。朝の睡眠を邪魔された。野生の動物が逃げて作物に被害が出たと。先ほどの爆裂魔法が本当にあるということが証明されたので、その騒音の主犯がカズマ一行のものと分かりました。あと、あなたがゴブリン退治のあと鞭打ってという言葉に偽りがあることも」
「ありがとうございます。カズマさんどんなに優れた功績があったとしても、信頼がなければ昇格することは認められませんので、今後そのことを心がけてください。以上を持ちまして、サトウ・カズマ以下四人は現状維持のままに決定します」
「そ、そんな! ゴブスレさん!」
「俺は立会人だ。それ以上のことは何も言えない」
最後の助け舟にも見捨てられて、俺はうなだれた。
「なんで、こんな目に合わなきゃなんないんだよ。ゴブスレさんだって、ゴブリンの巣を燃やしたりしているでしょうが」
「彼は確かにゴブリンを、普通の冒険者ではありえない方法で討伐していることは承知しています。ですが、それは銀等級としての信頼あってのことです。ですが、あなたたちの方法は近隣の多くの住民に迷惑がかかっています。今までの功績は確かに認めますが、昇格を目指すならもう少し丁寧な討伐方法でお願いします」
結局昇格検査は、ぼっこぼこにされた挙句、厳重注意を受けられて階級は上がらず白磁級のままに終わった。殺生権が向こうにあることを見せつけられて……
なんだよこの世界……RPGだと勇者とか主人公は、功績が大きければ何でも許されるんじゃないのかよ。ドラ〇エだって、人の家のモノを盗んでも文句言わないはずなのに、なろう系ファンタジーもだいたいのことが許されてきただろうに。なんで俺が行く世界ではこうも都合よくいかねえんだよ……
もうやだこの世界。元の世界に帰りたい、いや日本に帰りたい!!
ある街の川べりの周囲に、小さな人だかりが集まっていた。人々の視線は一堂に木箱の上に立つ吟遊詩人に注がれていた。彼らは吟遊詩人が奏で伝える辺境の英雄の物語に耳を傾けるのを楽しみにしていた。しかし、吟遊詩人が伝える物語は
吟遊詩人が手元の弦楽器を弾きならすと、物語が紡がれていく。物語は辺境の小鬼殺しによる小鬼に囚われた姫を助ける冒険譚であった。
「♪~真の銀に鍛えられ決して主を裏切らぬ。小鬼殺し、姫が小鬼の城に囚われると聞きて、子鬼殺しは子鬼の砦に乗り込む。立ち向かう小鬼を銀の剣にて切り捨て、姫を救い出した。途上にて小鬼が迫るも子鬼殺し、大樹を剣で一閃し小鬼から逃げおおせた。小鬼殺し、その眩い銀の剣を掲げ天より雷を呼び起こし、子鬼の城に天罰を下し平和をもたらした」
パチパチパチパチと拍手喝采が浴びせられると、吟遊詩人の木箱の前に置かれた籠の中に硬貨が投げ入れられて、止め度目もなく金属がこすれ合う音がその歪曲された小鬼殺しの物語の人気の高さを物語っている。
吟遊詩人が少し休憩にしようと木箱から降りると、女の声が聞こえた。
「ねえちょっと、そのオルクボルグの詩について聞きたいことがあるの」
吟遊詩人が振り向くと、そこには白緑色の髪に背中に弓を背負った容姿端麗の美女であった。だが彼女が