とても懐かしい夢を見ている。
最後に残った世界でたった一人の人狼である自分が、機械仕掛けの少佐に誘われ、多くの戦場を駆け抜けた昔の頃の夢。
数えきれないくらい敵を殺し、それ以上に部下を殺された。
殺したり殺されたり、死んだり死なせたりした素晴らしい時間。
トランプを愛用した伊達男、鎌を携えた入れ墨の女、まるで似ていなかった二人兄弟、狂った科学者、最後までよくわからなかった准尉、魔弾の射手、世間から見れば変わり者たちで溢れた組織に属し、ロンドンを死都へ変貌させて心躍る闘争を繰り広げ、最期の最期、あの吸血鬼となった女に敗れ死ぬ瞬間まで本当に楽しかった時間。
「・・・ナ。・・・・・・・・よ。」
そこで終わりのはずだった。夢見心地で死んだはずだった。
「おはよう!ヨナ隊員!!いい加減目を覚ましたまえ!世界は君を待ってはくれないぞ!刻一刻と変化するのだ!」
耳元で叫ばれ、目を開けてまず視界に映ったのはプラチナブロンドの髪と薄い碧眼を持ち、顔に笑顔という仮面をつけた白人の女。腰の位置まで伸びている髪を、あの吸血鬼たちの主人のようになびかせている。
「珍しいこともありますね。ヨナ君がこんなに熟睡していたなんて」
その横から顔をのぞかせたのは、黒髪で右目に医療用の眼帯をつけた女。
「なんだなんだ?ヨナ坊がどうかしたのか?」
「おいおい、そんなにはしゃぐなよ・・遠足じゃねぇんだぜ?」
何がそんなに珍しいのか、続々と仲間が集まってくる。金髪の白人、煙草を銜えた壮年の白人、丸メガネの黒人、浅黒い肌のアジア人、白人の大男、眼鏡をかけた日本人、イタリア人、あまり共通性がない点では前にいた組織も今いる組織も大差ないことに気づき、夢のことも相まって少しだけ懐かしさを感じた。
「あっ!今ヨナがちょっとだけ笑った!」
「そうだったか?俺には全然そうは見えなかっイタタタタタタッ!姉御勘弁!マジでアイアンクローは洒落になってないからああぁぁ!」
「ココが嘘を言ったとでもほざくんですか?ココが言うことはいつも正しいんです」
「おいおい、程々にしとかないと死ぬぞ~」
金髪の白人が黒髪の女に頭を割られそうになってもがき、それをしり目に周りは一層騒がしくなってきた。大好きな殺し合いにも事欠かないし、そうでない時も飽きることはない、居心地も悪くない。何故かやたらと身体的接触、所謂スキンシップを行ってくるボスのことは無視しつつ、一度死んだ自分が今いる組織は中々に良い場所だと、銀髪で浅黒い肌の少年はひとり感慨にふける。
これは、元人狼でかつては’大尉’と呼ばれていた少年が武器商人と旅をした話