ヨナ大尉   作:柿の種至上主義

7 / 10
評価に感想、誠にありがとうございます。
励みになっており、大変ありがたいです。

話は変わりますが、ミリタリーに恐らく分類していいと考えます
最近発売された某有名戦闘機ゲームのネタの神様が降りてきまして、
作品化するかどうか迷っている次第です。

一応、後書きに少しネタ案を書いておきます。
アンケートを後程この第七話に載せますので、良ければ回答をお願いします。

さて、この話はこれくらいにしてそれでは本編をどうぞ。


新しいボス

消化不良な一騒動を終え、結局のところ追加注文をどうするかという話はというと、

 

「お金のことはご心配なく、とか威勢のいいこと言ってたけど私の調べだとここの軍資金はもうカッツカツ。つまるところこの紛争に勝ったら支払うってことだし、

――――――――――この私!ココ・ヘクマティアルが、後金で契約するわけないじゃん!!」

 

引き受けたフリしてさっさと逃げるという方針で固まった。

 

―――別にあの場で皆殺しにしておけば手っ取り早かった

 

「ヨナ、そんなチャイニーズムービーみたいなことはしなくていいの!ていうかヨナの場合出来ちゃいそうだからちょっと怖いんだよね・・・」

 

意見具申したせいか、やたらと深いため息をつかれてしまった。こちらとしてもそんなに深いため息をつかれるのは若干不本意であるのだが。

 

 

♦♦♦♦

 

 

ヨナの先程の行動に対してそれぞれが軽口を叩き合っている中で、レームは内心でヨナの行ったことに恐怖に近いものを抱いていた。話の雲行きが怪しくなったのを仲間の誰よりも早く感じ取り、近くにいたあの少佐の部下に気づかれないように戦闘の準備をし、周囲への警戒も怠ってはいなかった。事実、互いに銃を突きつけ合う状況になった時は隣の兵士に銃を抜かせなかった。

伏兵の可能性も考慮し、仲間の状況確認もあってあの場の全員に意識を向けていた。当然ながらヨナにも意識を向けていたし、なんだったら個人的な勘から他よりも注意していた。

それなのに奴の動きに気づけなかった。気づいたら少佐の真後ろに瞬間移動したみたいに現れて、ココの命令がなかった確実にあの男を殺していただろう。あの場にいた全員の意識の隙間とも言える場所をついたあの離れ業の恐ろしさを感じ取っているのがあの場に何人いたことか。

 

 

―――――――――ルツなんかは頼もしいとか言ってるが、俺はそれ以上に恐ろしいねぇ・・・・あいつが仮に敵に回っちまった時のことを考えると・・

 

 

心の内を全く顔に出すことなく、いつものヘラヘラした顔をしながら吐き出した煙は青く澄んだ空に消えていった。

 

 

♦♦♦♦

 

 

「・・ここがオリン峠だ」

 

落ち着きを取り戻したポルック少佐がココ一行に首輪の意味として同行させた精鋭二人に案内され、霧の深まったオリン峠まで来ていた。少佐にはHCLI本社との連絡と言ってきたココだが、先程まで連絡が繋がることのなかったトージョとバルメに虎の子の衛星電話(イリジウム携帯)で連絡を試みる。

 

「お!呼び出してる、やった~」

 

通信が繋がったことを示す呼び出し(コール)音に喜色を見せるココであったが、直後急速に近づいてくる爆音に表情を一変させた。

 

「Mi-24V ハインドE!!!ロシア軍のハインドだ!みんな車から離れろ!」

 

急いで森に走るボスに追従するが、あれの標的はこちらではないとないと伝えるべきか、ボスの安全第一だからこのままでいいか悩んでいる内に、あの少佐の部下の山岳兵に遭遇した。何やらご丁寧に戦闘ヘリの武装を説明しているようだが、こちらから仕掛けなければ今狙っている部隊を片づけて帰っていくだろう。

 

「うあああああああああああああッッ!!!」

「ッ!馬鹿野郎よせ!!」

 

そう思っていたら、山岳兵の一人が独断でFIM-92 スティンガーを発射し、見事に外した。次は自分たちだと考えて恐怖に耐えられなかったのか、はたまた同僚が殺られるのを見過ごせなかったのか、どちらにせよ今のを機にココたちを含む山岳兵の部隊を新しい標的とし、今しがたスティンガーを撃った山岳兵は真っ先に対地攻撃用の30㎜機関砲で肉片に変わった。

先にココが山岳兵の部隊長らしき男に説明していたように、センサーポッドを温度センサー(サーモ)にし、通常のLLLTV《ラドガ・F》を東欧サードパーティー製に換装して人狩り専用にしたハインドに搭乗したパイロットはココたちも見逃さなかった。

 

「これはかなりマズいかも」

 

滞空こそ可能で攻撃もその分安定性はあるが計二回発射されたスティンガーを警戒してか、常に飛行しヒット&アウェイに近い戦法で隙のない攻撃に危険を感じ、何とか打開策をと必死に考えをめぐらすも良い案が浮かばず弱音に近いような呟きをココがした直後、ヨナは動いた。

 

「ッ!!ヨナ危ない!伏せて!」

 

全員が伏せていた状況の中で急に立ち上がった隣のヨナに警告をしたココの目の前に落ちてきたのは、手榴弾(グレネード)安全装置(セーフティー)だった。

 

「何やってんのヨナ!?」

 

ヘリの騒音もあって大声を出すココを気にすることなくヨナは投擲の姿勢に入る。

何を馬鹿なこと、血迷ったか、そんなんで落とせるわけねぇ、などと口に出さずとも視線や表情で語っていたヨナを除く一同が見たのは、

 

―――――――――鞭、そう錯覚するほどのしなるスイング。

 

常人を遙かに超える鍛え抜かれた強靭かつ柔軟な筋肉から生み出された投擲は他者の視界では手先をブレさせ、本来山なりに投げられるモノは目標へと銃弾の如く直進し、目標にめり込んだのちに爆発した。

 

胴体部分ではめり込ませるに至らないと判断しつつも、コックピットの防弾性能の面に不安があったMi-24A(ハインドA)ならともかくその後に登場し完全防弾コクピットとなったMi-24V(ハインドE)のコックピットを正確に狙って手榴弾をめり込ませた神業ともいうべき行為は周りを唖然とさせるには十分であり、そんな周りの人間を置き去りにして、彼は残るもう一機も撃墜してのけたのだった。

 

 

♦♦♦♦

 

 

危険を排除して悠々とトージョとバルメと合流し、護衛と言うよりか逃げられないようの首輪の役割だった少佐の部下を縛り上げ、たどり着いた廃屋で遭遇したのは少佐のところで会ったカリー社長一行だった。

ココが地対空ミサイル(SAM)を少佐に売ったのに対してカリーはFIM-92 スティンガーを売ったとヨナは記憶している。中古の発射機と新品の弾帯を東欧各地からかき集めたとかどうとか言い、ココを身代わり(スケープゴート)にして一足先にこの国から出たとココから愚痴を聞かされていたヨナはよく覚えていた。別に身代わり云々についてどうこう言うつもりも何か怒りを感じることも彼にはなかった。しいて言えば感じるのは懐かしさ。

 

自身がまだ”大尉”と呼ばれ、機械仕掛けの人間に付き従っていた頃からよく覚えのある作戦だった故に。第二次ゼーレヴェ作戦直前の陽動作戦として、あの本物の化け物(フリークス)だった吸血鬼を倫敦(ロンドン)から引き離すための囮となった’魔弾の射手’を思い出したくらいである。ただ、それだけなのだ。

 

 

どうやらあの男は、囮自体は上手くいったがその後のナイフだらけ女の失態で今に至るらしい。ああいう戦闘狂の類は扱いに難しいからなおのことだろう。以前もヴァレンタインとかいうあまり似てない兄弟の兄がうっとおしかった。

 

「ああ、ヨナくんであってたっけ?君も行こうよ」

「どういうつもりよ、ミルド。バルメだけなんじゃないの」

「ヨナくんにも興味でてきたんだぁ私。バルメの手にした攻撃力も叩きのめしたいけどぉ、ヨナくんもそれと同じくらい叩き潰したいなぁ。私の隙をみてナイフ奪ってっちゃうくらいスゴイしぃ」

 

何やらナイフだらけの女が声をかけてきた。どうやら勝手にマチェットナイフを拝借したことがきっかけで興味を持たれたようだ。別にあの少佐と今の体の身長差があったから長めのマチェットナイフを借りただけだったのだが、お気に召さなかったらしい。

 

「だめ!!もうヨナは今回充分活躍したからもう休ませるの!」

「随分と舐められたものですね。私に勝ってからほざいてください」

「バルメ、殺さない程度にとっちめっちゃって!」

 

 

やたらとボスが抱き着いてくるので胸元の装飾が顔に当たってくすぐったい。

ボスの意向でもう自分の出番はないらしいが、このあとやってくる少佐の追手はどうするのか。

こちらとしてはまだまだやれるのだが。

 

「いいから、ヨナはもう休んでて。私にいい案があるから」

 

後半の自分だけに聞こえるように耳元でささやかれた言葉には自信が感じられた。

 

♦♦♦♦

 

「大した数じゃねぇが囲まれてるな、どうするココ?」

 

レームの言う通り逃げ場の無いよう廃屋を囲む形で追手が布陣している。視界の妨げが多い森にさえ入れば、今の体でも己ならどうにでもできる状況ではあるが、お手並み拝見といこう。

 

 

「我が隊総員、武装解除!!弾倉を抜き、ストックを畳め!聞け山岳兵!!我らは十人!

三人は中にいるぞ!」

 

 

こちらを素通りしていく複数の気配、廃屋の中から叫び声とその直後から聞こえる銃撃戦の音。

 

 

新しいボスは中々に度胸のある大胆なことを思いつくし、仲間も信頼しているのだろう。一切の迷いなく行動していた。普通なら武装した集団に囲まれた状況でこちらが武装を解除するなんて考えない。なのに新しいボスはそれを考えついて、実行した。機械仕掛けの人間と同じだ。普通なら考えつかないようなことを平然と考えてやってのける。こういうのがいるから、存在するからこそ、

 

「みんなダァ~ッシュ!戦場(キリングフィールド)から撤退(エスケープ)だぜッ!」

 

 

――――――――人間はおもしろい




名声やら強さの証明やらでアーカードに単身で態々喧嘩売りにいったくらいだから大尉にも突っかかっていくと思いました。
まあ、独自設定です。

♦♦♦
某有名戦闘機ゲームの主人公の中身は、
某ジブリ最強の飛行機(艇)乗りだった

戦争を生き延びたほどの腕前と経験を持つ彼はどのような影響を及ぼすのか

――――カッコいいとはこういうことさ。


不評だったらやめます
あとあのハードボイルド感が出せるかどうかもかなりの課題

♦♦♦
総合ランキングにちょくちょくランクインとか
信じられないことが多くて手が震えてきた、柿の種はどこだ?

後書きのネタ案について

  • あり
  • なし

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