分割しました。
やばい、ネタが降りてこない・・・
更新がさらに遅くなりそうです・・・
アラブ首長国連邦 ドバイ
アルシロップショッピングモール 中央広場
免税かつ諸外国に比べて治安もかなり優れているこの国のこの場所は、それまでの日常とは遠く離れた空間に変貌していた。絶え間なく響くのは銃声と心底機嫌が良いと言わんばかりの男の声。
「ハハハハハ!!最高だぜチナツ!最高だ!こんな名演奏は中々お目にかかれねえぞ!」
「それは良かったのだ師匠!」
「特にあの小僧、あの野郎は特に良いぜ!ガキの癖に古風な
「たしかにあの子、すっごく可愛いのにすっごく強いよね!」
「俺ァすっかり気分が良くなっちまったよ!後世にまで残るような伝説の音楽会にしてやろう!」
「了解なのだ!」
これまでの人生で最も気分が高揚していると言っても過言ではない”オーケストラ”の二人は残弾を考える思考など頭の片隅にもなく、横槍を入れてきた警察は’チナツキャノンスペシャル’と称するH&K HK69で早々に黙らせ標的との戦闘に熱中している。
極めて高い次元となった両者の銃撃戦は、特殊訓練を受けたわけでもないただの警官たちに本能的なレベルで死を想起させもはや到着当初のような介入が誰もできなくなり、結果として彼らは命拾いをしていた。
かつては”大尉”と呼ばれた人狼であり、現在はヨナと呼ばれる少年兵という
だがその事実はこの世界の誰も知らないことである。もっとも彼の場合は知ったところで何も感じないであろう。
彼にとっては結局のところ、ボスと仲間以外は己を殺し得るか否かでしか判断していないのだから
♦♦♦♦
「ッ!!バルメ!!」
後ろにいるボスの驚愕する声で視線を向けると、左太ももに被弾したバルメの姿があった。様子から見るに、先程までそこらに集まっていた有象無象の警官が放棄したライオットシールドを使用して合流を図ったのだろうが、どう考えても悪手である。透明のポリカーボネート製か、今回のような軽量金属で作られたそれらは、暴徒の鎮圧などが主な使用方法であり火炎瓶やせいぜいが小銃を想定したものがほとんどなのだ。
”オーケストラ”の連中が盛大に撃ち続けているAKなどをまともに受けていい物ではないにも関わらず、バルメはその愚行を犯し盾を貫通した銃弾であっさりと彼女の長所を殺された。
’ソフィア・ヴェルマー’
ココ・ヘクマティアル所有の部隊内での愛称を’バルメ’
彼女の最大にして部隊内最強の武器は、母国フィンランドの
その要である足を負傷したバルメは現状においては足手まといに他ならなかった。
バルメの負傷というアクシデントにより、ココたちは更に劣勢に立たされることとなる。本来であれば、先制攻撃によるココの殺害という好機を捨てた”オーケストラ”の勝ち目はほぼ無いに等しかった。この世界屈指の戦闘経験と強靭な肉体を併せ持ち、現在は’ヨナ’という名で呼ばれる元少年兵。かつて凡そ1,000名の人工的に作り出された吸血鬼の
護衛対象であり彼が所属する組織の長であるココ・ヘクマティアルが傍にいなければ、この銃撃戦は彼の一方的とも言える勝利という形で早々に決着がついていたのだ。全盛期である人狼の時の肉体にこそ劣れど、それを良しとしない彼によって練り上げられている少年兵の体は”オーケストラ”を確殺できる力を持っていた。
それこそ、身体能力に物を言わせて弾幕をかいくぐり接近戦に持ち込めば終わりである。
だが、護衛対象のココに加え負傷したバルメもいる現状によって彼は攻勢に移ることが出来ないでいた。先手を取られたことも含め伏兵がいないとも限らず”オーケストラ”が二人組だと言う情報も過信できない。迂闊に傍を離れてその間に死んでもらわれるのは彼にとっても困るのだった。
しかしながら現状ではらちが明かないのも事実であったため、彼はココに対して指示を出した。
広場の壁沿いに左前のあの位置まで移動。潜んでいるレームと合流。隙はこちらで作る。
「レームがあそこに・・ってヨナ!!??ダメ!」
指示を出してすぐさま彼は遮蔽物としていた花壇を飛び越え、”オーケストラ”に向けて発砲しながら突撃していく。
「最っ高だぜまったっくよぉ!!!!」
連中の注意はこちらに釘付けとなり、彼は内心でほくそ笑む。牽制と注目集めが主で、あわよくば盾ごと奴らを貫ければと考えた射撃は見事に防がれていた。テンガロンハットの女が巧みに弾丸の威力を殺している。アロハシャツの男も応戦して撃ってきた。今のこの体では全弾を避けきることはできないがその分だけ的も小さい。それでも急所を狙ったうちの一発が頬を掠めていった。
敵のレベルの高さに喜んでいると突然、真横からフックのような物が自身の足めがけて飛んできているのに彼は気が付いた。
しかし僅かとはいえ他に意識を割いた一瞬の隙を”オーケストラ”が見逃す筈はなく、
「死ねぇ!!」
アロハシャツを着た男のAKの銃口がヨナの頭を捉えた。後は引き金に掛けた指を動かすだけで、吐き出された弾丸が人狼としての生を終え少年兵として二度目の生を持っている存在に終止符を打つはずだった。
だが、何を思ったのかテンガロンの女が男の邪魔をしてくれたお蔭で離脱の猶予が生まれた。
飛来したフックを飛んで躱し、そのまま女の盾を蹴りつけてフックが飛んできた方向にジャンプする。
案の定、フックを投げてきたのはレームであった。
「・・・あ~なんだ・・・余計なお節介だったみたいだな?」
大方無茶な行動を見かねて介入しようとした辺りだろうが、あのレベルは彼にとっては無茶に含まれないし死ぬ気など欠片もないのだ。殺し屋”オーケストラ”、特にテンガロンの女は今の己を殺し得るだろうが、己の終わる場所はここではない。そう彼は直感していた。
「おい!白髪の小僧、聞こえてるか!?」
合流したボスにも抱き着かれて後ろから散々小言をもらっていると、アロハシャツの男が叫びだした。先の動きでこちらの位置はばれていないのだろう。その分、このショッピングモール全体に響き渡るような声量で話しているのだろう。
五感が常人より優れている彼にはいささか堪えるものであったが。
「お前さん最高だぜ!!これまでの演奏相手とは比べもんにならねえ程な!」
「だからこそここで終わらせるのは勿体ねえ!どうだ?俺らと一緒に最高の音楽を作っていこうぜ!チナツもお前さんのこと気に入ってるようだし、武器商人の私兵で終わるような奴じゃねえだろう?」
「私も大賛成なのだ!ねえねえ、一緒に行こうよ!」
何かと思えばまさかの勧誘である。これだけの殺し合いをしたうえで相手を仲間にしようと考え、実行するのはいっそ感心さえしそうなほどだ。度胸があるというか、大胆不敵というか、いつぞやの屋敷に強襲してきた若き執事を目の前で勧誘したあの機械仕掛けの少佐に似たことをする者がいたのだと実感し、懐かしさなどの感情が生まれた。
ふと後ろから抱き着いていたボスの腕の力が更に強くなる。頬からの出血で服が汚れるのも構わず、全力で抱きしめ絶対に離さないという意思が感じられた。服が汚れるからと自分の首にまわっている腕をタップしても、彼女は背中越しにイヤイヤと首を横に振って一向に離れない。
さてどうしたものかと考えた矢先、レームとバルメがこちらを警戒しているのと口角が少し上がっていたことに気が付いた。なるほど、奴らの提案に対する笑みだと誤解されていたのだろう。
裏切る気は微塵もないことを伝えて誤解を解けば、やっとボスも離してくれた。それでもボスは、
「いいかいヨナ、君は私のものだ。どこにも行くな、私を守れ。いいね?」
独占欲が前のボスより強いらしい。
全然ストーリーが進まねえ(悲しみ