聖夜。クリスマス。
それは、多くの人が幸せを感じ、
多くの人が壁を殴り、縁を恨み、幸せなリア充の破綻を望みサバドを開く。
そんな素敵な夜。
とある会社の屋上に笑い声がこだまする。
「フハハハァン!」
海馬コーポレーション社長『
「……あ、あの~。海馬さん?急にどうしたんですか?」
その隣には、浦の星女学院スクールアイドル『
「フゥン!今宵はクリスマスだ」
「ゑ?た、確かにそうですけど……」
何で急に笑い出したのか聞いたはずなのに、今日がクリスマスだと返してくる海馬に曜は困惑する。
「そして我々は、今宵、サンタクロースと成りて多くのモノにプレゼントを配りにゆく」
「……は、はい」
今度は、これから行うことを海馬は語り出し、曜は自分がした質問がなにかおかしかったのではないかと不安気味になってくる。
「だからこそ、昂る!昂るぞ!!」
「…………」
海馬は、拳を力強く握りしめ、わなわなと震え出した。
「……えっと、つまり、テンションが上がったから笑い出したと?」
「フゥン」
「最初からそういってくださいよ!回りくどい!」
「フゥン。クリスマスだからで、解るだろ?」
「解りませんよ!」
一体、何処の世界に、急に笑い出した理由がクリスマスだからで解決する人がいるのかと曜は呆れた。………多分それは、遊戯王の世界の住人だと思う。
「甘いぞ‼曜!!そんな事では、伝説のスクールアイドル『
海馬が力説することに対して、最早ツッコむ気力も起きない曜であった。
「渡辺曜、なかなか気合いが入って居るではないか」
「え?ああ、制服ですか?」
一瞬海馬が何のことを言っているのか解らなかったが、自分の今着ているモノを思い出し気付く。今、お手製のサンタクロースの衣装を着ていた。可愛らしさより動きやすさを重点にしたズボンタイプで腰回りにスカートのようにパレオがついている。
「クリスマスですからね。サンタクロースの制服を着なきゃ損かなぁと思いまして」
これを衣装ではなく制服と呼ぶのが制服マニアの彼女らしいと海馬は思い笑った。
「フゥン。なかなかの強かさだ。かなり好印象だぞ」
「ありがとうございます!」
「ところで、プレゼントを配るって、どうやって配るんですか?」
今、彼女達が居るのは、海馬コーポレーションの屋上である。ヘリで行くのかと考えていた曜だが、辺りを見渡してみても、ヘリポートはあれどヘリは無い。ただ、大きなプレゼントの入った袋が乗っているソリはある。
「ヘリを使うのもインパクトが有って悪くは無いが、それでは、サンタクロースっぽく無いのでな。今回は、これを使う」
そう言って海馬はポッケから四角い手のひらサイズの箱を取り出す。
「何ですか?それ?」
「これは、千年キューブと呼ばれる
「集団思考の体現?」
「多くの人間がそうだと思っているモノを目で見える形にできる。例えば、死んでいる人物を多くの人間が生きていると考え、このキューブを使えば、生き返らせることも可能だ」
「え!そんな事ができるんですか⁉」
「いや、俺はちゃんとした所有者ではないのでそこまでのことは出来ん」
「じゃあ、意味無いんじゃ?」
「フゥン。わが社の技術を甘く見るな。そんな極端なことは出来ずとも、このキューブを解析すれば真の所有者で無くとも人を数時間浮かすことぐらいは出来る」
「え!まさか飛んで行くんですか⁉」
「その通りだ」
かなり常識はずれなことをさも当然のことのように話す海馬に、曜は驚愕を通り越して呆れすら感じていた。
「ただ、欠点が2つある」
「欠点?」
「1つは、サンタクロースを信じている者、サンタクロースの存在を願う者の所にしか飛んで行けぬという事だ」
何でもこのキューブの力を使うには不特定多数の人物の同じ思考が必要らしく、『多くの人が思い描くサンタクロースと言う概念』を正確に持っていて、それを信じている人の所にしか空を飛ぶ為の道が創れないとか。
「まあ、でも、確かに『サンタクロースは居ると信じている人の所にしか来ない』なんて言いますもんね」
「純粋な子供ならば良いが大人の中には現実を見れない腑抜けも居る。まあ、その場合はプレゼントではなく『滅びのバーストストリーム』を送るがな」
「うわ~」
曜は、現実を見ない大人もどうかと思うが、海馬の容赦のなさっぷりにも驚いていた。
「フゥン。大人で本当にサンタクロースを信じているのは『μ's』の『
「え?!『西木野真姫』ってあの?!」
『μ's』の『西木野真姫』はラブライブ優勝をした5年前で高校1年生だった筈だ。と言うことは二十歳でサンタクロースを信じていたことになる。しかも、クールキャラだと思われていたあの真姫がである。人は見掛けに依らないものだと再確認する曜であった。
「2つ目が、このキューブを使えるのが俺だけで、一緒に飛ばすモノは俺の体の一部に触れていなければならないと言うことだ」
邪な考えは海馬には無いが、年頃の少女が、男に触れるのには何かと抵抗があるだろう。
「え?どこか問題あります?」
「………何?」
「海馬さんが、そういう邪な考えを持っていないと信じてますよ」
曜は、心の中では「実際、ブルーアイズにしか興味無いだろうし」と考えていた。
「それに、何かしてこようとしたなら、男でも返り討ちにします。私、こう見えて結構強いんですよ」
そこで、シャドーボクシングをして見せる曜。素人臭い動きではあるが拳が速い。確かに、当たったら痛そうではある。
「………フゥン。流石だと言いたいが、甘いぞ‼曜!!確かに、俺のような男なら信用しても大丈夫だろうが、世の中には凡骨のような男もいる。気を付けろ」
「あ、はい!」
端から見たら、まさかここまで怒られるとは思っておらず困惑しているように見える曜であったが、実際は、この人でも人の心配するようなまともな感性があるんだなぁ~と、かなり失礼なことで驚いていた。
「実質、欠点1つってことに成りますね」
海馬の上げた欠点の内1つは、海馬の取り越し苦労となった。
「フゥン。いざとなればくキューブの力で他の所に飛べば良い。まあ、そのような腑抜けどもに遅れを取るこの海馬瀬戸では無いがな」
正直、海馬はもう1つの欠点の方に時間を割くと考えていた為、とんだ肩透かしである。
「フゥン。まあ良い。では、渡辺曜。空を飛ぶ覚悟は出来ているか‼」
「あっ、待って海馬さん」
そう言って曜は背伸びして、海馬の後ろから、頭の上に何かを付ける。
「何だ?」
「クリスマス何だからさ。はい。トナカイの付け角」
「………フゥン」
「あれ?怒んないんですか?」
「こんなことで目くじら立たせるほどちんけなプライド持ってなどいない」
「おお~」
怒られると曜は覚悟していたので少々面食らってしまったが、根は良い人なので当然かと思い返す。
「では、もう一度聞く。覚悟は出来たか」
「はい‼」
海馬の問いかけに気合い十分と言うように大きな返事を返す。
「フゥン」
その返事に満足した海馬はキューブに力を込める。
キューブが一瞬強く光ったと思ったら、その後、キューブから四方八方に淡い光のラインが出来上がっていた。これが先ほど海馬が言っていた飛ぶ為の道なのだろう。
「では、ゆくぞ‼」
「全速前進!!!!」
「ヨーソロー!!!!」
ーENDー