どうやら私はいろんな世界に転生するみたいです   作:夜紫希

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復活しちゃいました☆ 

更新頻度は遅いかもしれませんが、頑張って行こうと思います。

さて、今作は何年かかるんでしょうね?


プロローグ
プロローグ


―――父親(オトン)のことは大っ嫌いです。

 

 

何故嫌いなのか? ではお聞きします。あなたは大勢の女性と浮気する男性と友達になれますか? もしくは恋愛感情を抱けますか?

 

私は無理です。圧倒的に無理。いくら多くの女性と交流している青春ブタ野郎でも、一途に先輩のことを思う人の方が好感を持てます。

 

名付けるならウチのオトンは、浮気鬼畜野郎。いつも()()()()()()の鉄拳がオトンの顔にめり込んでいました。私もオトンの顔に千回は蹴りました。殴った回数は数え切れないほど。

 

―――オトンの奥さんは七人もいます……いや、本当に七人なのでしょうか?(困惑)

 

……こほん、これでお分かりいただけたと思います。私のオトンがどれだけ浮気鬼畜ゴミ虫野郎百回死んでもっかい死ねという名を付けるくらい嫌いなのか。

 

だから、私はずっと納得できない。

 

―――どうして母は、あんなに幸せそうな顔をしているのか。

 

 

###

 

 

 

「―――それで、家出したのか?」

 

 

「はい」

 

 

小柄の男は煙草を吸いながら呆れる。身の丈に合わないブカブカの白衣を羽織り、ゴチャゴチャになった机の上にマグカップを置く。私に飲んでいいとコーヒーを入れてくれた。

 

白髪が何本も混じったボサボサの黒髪に未成年どころか子どもにも見えそうな男は白い煙を吐きながら話を聞くのを嫌そうにしている。それでも私の顔を見て口を開いた。

 

 

「……理由は?」

 

 

「オトンが帰って来るみたいなので」

 

 

「泣くぞ、アイツ」

 

 

「そのままショック死で死ぬ可能性って無いですか?」

 

 

「アイツに死亡する概念があればな。一応理論上可能だが、絶対に死ぬことは無いと断言する」

 

 

彼の名前はガルペスさん。ガルペス=ソォディアと外国の方っぽい名前だが、全くそんな感じはしない。むしろ日本で生まれて過ごして生き来たような雰囲気だ。

 

苦いコーヒーを飲みながら周囲を見渡す。床は紙の書類で埋まり、棚は本が乱雑に置かれ、とても汚い。しかし、慣れた光景でもあった。

 

 

「娘を溺愛(できあい)する親バカだが、ここまで嫌な顔をするのはお前くらいだぞ」

 

 

「お母さんの血のおかげですね。真面目な性格に育ったので」

 

 

「その母親は旦那に惚れているがな」

 

 

虫唾の走るような言葉を聞いて思わず顔を歪めてしまう。ガルペスさんはタブレットを操作しながら面倒だと思いながらも私と話をしてくれる。

 

 

「確かにお前の言う通り、アイツの浮気は呆れるほどだ。まぁほとんどが騙されて不可抗力なのは知っているが、性格上、人を見捨てるという真似はできないんだろう。昔からそういう男だった」

 

 

「でも―――」

 

 

「だが一線は一度も越えていない。本当に愛している女性はお前の母親たちだけだ。これだけは断言しておく」

 

 

「……じゃあガルペスさんはもし奥さんが他の男性とデートしていたら許すんですか?」

 

 

「許すわけないだろ。その男は絶対にブチ殺す」

 

 

「えぇ……」

 

 

言っていることが無茶苦茶で私は思わず肩から力が抜けてしまう。私を納得させたいのかさせたくないのか、分からない。

 

「火(あぶ)り程度じゃ生温い。地獄に落として俺が直々に罰を下す」とガルペスさんは苛立ちを露わにしながら煙草の火を消したあと、話を続けた。

 

 

「ただ、アイツのくぐり抜けて来た修羅場はお前の想像を越えるほどだ。あまり口にしたくないが、俺はアイツらの関係性を認めれる」

 

 

「……………」

 

 

ガルペスさんと同じように周囲の人間は、オトンたちの関係を誰も咎めたりしない。むしろ認めて喜んでいるのだ。

 

それが、私にはどうしても理解できなかった。

 

 

「……お前はもう17歳か。こういうことには難しい年頃か?」

 

 

「4歳の頃からくたばれって思っていましたけど」

 

 

「……赤ん坊の頃から誰よりも愛を注がれた子だと思えないな」

 

 

「多過ぎて毒に変わったのですよきっと」

 

 

苛立ちを抑えながらコーヒーを飲み干して立ち上がる。学校のカバンを手に取り、コートを羽織る。

 

 

「もう帰るのか?」

 

 

「本当は嫌ですけど、イライラしているので殴ってスッキリして来ます」

 

 

「お前の父親はサンドバックか何かか?」

 

 

 

###

 

 

 

 

私の通う学校は普通だ。普通過ぎてつまらないくらい普通の学校だ。

 

優秀で学年主席の私は屋上で弁当を食べていると、誰かが走って来た。

 

 

「さっき俺と同じ顔をした男が来なかったか!? 」

 

 

「十人から数えていません」

 

 

「そんなに来たの!? 本当にお前はネタに合わせてくれないよな!?」

 

 

「バッカモーン!」と一人でネタを続ける眼鏡をかけた騒がしい人の名前は(いん) 修一(しゅういち)。小学校一年生からずっと同じクラスの人だった。

 

誤解しないで欲しい。「俺たち、もしかしたら運命の糸で―――」「死んでください」と言い合う関係だ。幼馴染というより腐れ縁。

 

溜め息を吐きながら彼の方を向くと、既に隣で購買で買って来たパンを口に咥えていた。

 

 

「静かに独りで食べたいのですが?」

 

 

こんひゅうのへんすらひた(今週の転スラ見た)?」

 

 

「人の話を聞いてください。ぶん殴りますよ」

 

 

「いいじゃねぇか別に。一緒に食おうぜ」

 

 

「嫌です」

 

 

「本気で?」

 

 

「本気です」

 

 

「……まぁ、本当に嫌がっているならやめるけど」

 

 

そう言って彼は悲しそうな顔をする。うっと言葉が詰まってしまう。

 

肩を落としながら立ち上がり、トボトボと帰る姿に私は引き止めてしまう。

 

 

「ほ、本当に嫌なら口は利きませんッ。居たいなら居ても―――」

 

 

「はいツンデレ乙!! やっぱ俺のことが大好きだよなお前! いつまでもボッチ飯したくな―――!」

 

 

「フンッ!!!!」

 

 

「ごふぁ!!??」

 

 

ぶん殴った。加減は一切しない。

 

黒ブチの眼鏡が宙に舞うが、壊れてはいない。弁償なんてしたくないから。

 

購買から買って来ていたデザートのプリンを奪い取り、弁当を食べ始める。修一は顔を抑えながらまたパンを食べ始める。

 

 

「痛てて……んで、転スラ見た?」

 

 

「……見ました」

 

 

 

###

 

 

 

 

―――放課後。帰って溜めたドラマでも消化しようと考えていると、

 

 

「パチンコに行こう」

 

 

「あなた学生なの分かっています?」

 

 

「馬鹿にしてんのか。学年どころかクラス、出席番号まで覚えているわ」

 

 

「その解答の仕方が一番馬鹿ですよ。一人で行ってくださいパチンカス」

 

 

「新台の演出が凄いんだって! こうシュンッって光が消えた一瞬消えたあとにビビビギュィーン!って来て、キュイキュイキュイィン!って回り出して―――!」

 

 

「本当にうるさいので土に帰ってください」

 

 

帰り道はずっと隣で修一が話を続けていた。しかも全く興味のないパチンコの。

 

将来はロクな人間にならないなぁとか話を聞き流していると、

 

 

バタンッ……

 

 

急に修一はその場に倒れてしまう。

 

また何かのネタかと呆れてしまう。しばらくジッと様子を見ていると、

 

 

バタンッ……バタッバタッ……

 

 

「え?」

 

 

周囲の人たちが、連鎖するようにその場に倒れ始めていた。

 

学生も社会人も、元気に遊んでいた子どもたちも道に倒れている。突然の不可解な現象に息が止まる。

 

 

「しゅ、修一君? ねぇ! 起きて! ッ!?」

 

 

何度も体を揺らして気付く。地面との衝突で壊れた眼鏡と一緒に、血が出ており―――

 

 

 

 

 

「し、心臓が……動いてないッ……!?」

 

 

 

 

 

―――人の生命活動が、終わっていた。

 

顔から血が引くような恐ろしい現象に膝から崩れ落ちてしまう。修一の頭を自分の膝に置き、ポケットに入れたハンカチで血を拭き取る。

 

何をどうすればいいのか全く分からない。完全にパニック状態に陥っていた。

 

 

「きゅ、救急車は!?」

 

 

急いでスマホを取り出す。番号を打ち、耳に当てるが「ツーツーツー」という音が続くだけ。

 

 

「何でッ」

 

 

今度はガルペスさんの電話番号に掛ける。しかし、今度は通じた。

 

 

『家に来い』

 

 

「もしも―――え?」

 

 

『遺体は見捨てろ。死んでいるわけじゃない。とにかく家に来い』

 

 

「ちょっと!?」

 

 

だが内容はとても短く、簡潔だった。しかも見捨てろと言われた。

 

 

「……絶対に帰って来ますッ」

 

 

自分のカバンを枕代わりにして走り出す。大勢の人が倒れた道を、駆け抜けた。

 

 

 

###

 

 

 

バンッ!と勢い良く扉を開く。ガルペスさんの部屋を見ると、そこには床に倒れたガルペスさんがいた。

 

先程の光景を見たあとだ。彼もまた―――!

 

 

「……床の紙だけは片付けることにしよう」

 

 

「転んだだけですか!?」

 

 

「当たり前だ。この俺が【罪背負い(シン・プレッシャー)】に負けるわけがない」

 

 

「し、シン・プレッシャー?」

 

 

「状況を説明する。まずは落ち着け。世界の人々は死んではいない」

 

 

ガルペスさんの言葉に脳がついていけない。世界の人々があんな状況になっている!?

 

落ち着けと言われても落ち着けない私にガルペスさんはドンッと少し強めに心臓のある胸を押した。

 

 

「生きている。全員な」

 

 

それだけで何故か震えていた足が止まる。不思議なことに乱れていた呼吸が整えるようになる。

 

 

「……セクハラですよ」

 

 

「絶対にアイツに言うなよ? 殺される。頼む」

 

 

「土下座するくらいなら違う方法で落ち着かせてくださいよ……」

 

 

額を地面に擦りながら謝罪するガルペスさん。しかし、取り乱した自分も悪いのだから許す。

 

Dカップになった胸を隠しながら深呼吸する。言われた状況を飲み込んだ。

 

 

「それで、どうして私は倒れなかったのですか?」

 

 

「お前の父親の加護だ。文句は言うな」

 

 

その一言で私は思わず下唇を噛んでしまう。だが、今はそんなことを気にしていられない。

 

 

「ッ……オトンのおかげでその、シン・プレッシャー? という物から守られたのですか?」

 

 

「ああ。ずっと抱え込んでいた問題が、最悪な形で問題を引き起こした」

 

 

ガルペスさんは机に置いたタブレットを私に投げ渡す。そこには【七つの大罪】と書かれていた。

 

人間一般の想念として現れたのが起源。キリスト教の西方教会———カトリック教会における用語だ。

 

罪に導く可能性があると仮定された欲望、感情のことを指している。別名『七つの罪源(ざいげん)』とも呼ばれている。

 

 

「少し昔、オリュンポス十二神のポセイドンがゼウスたちを裏切った。自分が世界の王になる為に。だがその野望は()()()()()が砕いた。邪神もろともな」

 

 

「……私の境遇が普通じゃないことくらいは知っています。続きを」

 

 

「そのポセイドンが隠し持っていた物が逃げ出したのだ。慎重に事を進めていたが、失敗した」

 

 

「その、逃げ出したのが【七つの大罪】ですか?」

 

 

少し悔しそうに下唇を噛みながらガルペスは頷く。

 

 

「完璧な作戦だったはずだった。だが、お前の父親がやらかした」

 

 

「ッ……一体何が―――」

 

 

ガルペスが持っていたタブレットを操作すると、持っていたタブレットに映像が流れ始める。

 

そこには父親の姿があった。見たことのない真剣な表情で物陰に隠れている父の姿。そして、次の瞬間―――

 

 

ピピピピピッ

 

 

『んだよこんな大事な時に! もしもし!? ってまたお前かい! いい加減に俺のプライベートの電話に掛ける―――は? 一大事? 騙されるか!? それを口実にデートに行くことになってしまったんだろうが! 大体そっちにはあの二人とか一緒に―――! は? 浮気じゃない、新たな恋が始まる? 始まるか!? 普通に浮気が始ま―――!』

 

 

「大事な作戦途中、奴は浮気相手と電話したせいで敵にバレた」

 

 

あまりにもしょうもない理由に、私はストレスを発散させた。

 

 

「フンッ!!!!」

 

 

バギンッ!!

 

 

「タブレットおおおおおおおおおおォォォ!!??」

 

 

地面に叩き付けて最低な父親を視界から消し飛ばす。物理的に。

 

ガルペスさんが泣きながら叫んでいるが、気にしていられなかった。

 

 

「ふぅ……すいません。父親(オトン)が憎くて」

 

 

「頼むから俺の物に当たるなッ。データは別に移してあるから良いが……」

 

 

今度は壊すなと注意されながらガルペスさんは私にもう一個のタブレットを渡す。

 

 

「だがアイツの馬鹿具合を計算していた俺はしっかりとカバーできた。周りに待機していた奴らも、呆れていたがフォローしてくれていたが……」

 

 

浮気の電話が計算されていたことに頭を抱えそうになる。フォローしてくれた方々に感謝したいところだが、

 

 

「……続きがあるのですか?」

 

 

再びタブレットを見るようにガルペスさんは視線を移す。タブレットを見ると再び新たな映像が流れ始める。

 

 

『言っておくが俺はお前らに騙されているせいで嫁に何度も何度も怒られて―――』

 

 

「まだ電話してる!?」

 

 

片手で電話を耳に当てながら刀で黒い悪魔のようなモンスターを次々と斬り裂いて行く父親に驚愕。ガルペスさんは、

 

 

「あの馬鹿は反省したかと思えば戦闘しながら電話していたな。力はあるから問題無いが……ここからだ」

 

 

敵の親玉らしきローブを羽織った人と対面するオトン。さすがの父も、電話をやめて刀を敵に向ける。

 

 

『……お前のせいでまた嫁に怒られるじゃねぇか! 覚悟しろ!』

 

 

「完全な八つ当たり!!」

 

 

「静かに見ろ」

 

 

真剣な声音でガルペスさんは続きを見せる。ローブを羽織った人の右手には、七つの火の玉が浮かんでいる。

 

赤色、青色、黄色、緑色、紫色、白色、黒色と七つの玉。それが、【七つの大罪】と呼ばれる物だと察した。

 

ローブを羽織った男が左手で指を鳴らすと、七つの玉は弾けるように飛び散り、あっという間に見失った。

 

 

『テメェ……』

 

 

怒りを露わにしたオトンに唾を飲み込む。今まで見たことのない父親の姿に先程から驚きが止まらない。

 

ローブを羽織った人はドス黒い手で指をクイクイッと挑発する。不気味な雰囲気に映像からでも背筋が寒くなる。

 

 

「敵が【七つの大罪】を放ったと同時に多くの世界に影響を与えた。その一つが【罪背負い(シン・プレッシャー)】。自分の中にある自覚した罪の数だけ人の魂を重くする影響だ」

 

 

「魂が重くなるって……それだけであんなに人が倒れるのですか!?」

 

 

「罪が身に耐えられなければ人の魂は天に還る。その(ことわり)を利用したのだろう。……どんなに些細な事でも人は罪悪感を感じる。誰でも感じることだ。善人であれば小さな失敗ですら感じるだろう。問題はその先」

 

 

罪を自覚した善人が倒れる世界の中、倒れない者がいる。それは―――

 

 

「どれだけ重い罪でも、自分の罪だと感じない―――つまりサイコパスに近い犯罪者が生き残っていることが問題だ」

 

 

「ッ!」

 

 

「今の全世界は悪人のやりたい放題になるということになる。そうならないように俺たちは動いているが……手の数が圧倒的に足りない。百正以上の自律ロボを可動させているのに」

 

 

(……正って兆の何個上でしたっけ?)

 

 

凄まじい数に考え事が少しばかり妨げられるが、何をして欲しいのかある程度は察する。

 

 

「【七つの大罪】が逃げた世界は分かっている。この世界にも一つ居るが、俺が対処する。何が言いたいか分かるか?」

 

 

「……そのお手伝いですよね。この世界に居る【七つの大罪】の一つを探すことの」

 

 

「違う。俺の補助などいらない。邪魔になるだけだ」

 

 

普通に酷い。

 

 

「他の罪を追え。お前の父親は既に一つの罪とぶつかっている。残りの罪も追わなければならないが、追うことは難しい。世界に新たな影響を与える前に阻止するんだ」

 

 

ポンッと私に向かって投げたのは小さなカバン。それは私の大事な物だった。というか、

 

 

「あれッ? お、オトンはローブを羽織った人と戦っていたはずじゃないんですか……」

 

 

「アイツは三秒くらいで終わった」

 

 

「あんなにラスボス臭を放っていたのにですか!?」

 

 

「あの馬鹿が桁違いに強いせいだ。全カットだ」

 

 

それは一体何やんですか? 全カットの人じゃないですか?

 

 

「それよりも【七つの大罪】が逃げ出したことの方が何百倍も厄介だ」

 

 

何故世界が大変な状況なのに彼らが余裕な顔をしているのか少し分かってしまう。

 

物語のラスボスみたいな人が既に終わっているからだ。コ〇ン風に言うなら黒ずくめのジ〇とウォッ〇を遊園地で逮捕しているレベル。

 

 

「―――『転生』しろ。他の世界に行って、罪を追え。それが頼み事だ」

 

 

告げられた命令に、私は心のどこかで喜んでいた。

 

必要とされたこと。頼られていること。それが、心地よかった。

 

だが、一つだけ聞かなければならないことがある。

 

 

「オトンは、それを許したのですか?」

 

 

「許すわけがないだろ。加護を与える程の過保護だ。危ないことをさせているとバレたらブチ殺される」

 

 

「で、ですよね……ならどうして?」

 

 

その理由を尋ねるとガルペスさんは少し黙ったあと、

 

 

「お前の父親が歩んだ道とは違うが、似ている。『立ち止まった』お前には、良い機会だと思ったからだ」

 

 

「ッ……私は別に―――」

 

 

「それと、コイツも連れて行け」

 

 

突然ガルペスさんの私に何かを置いた。

 

野球ボールくらいのサイズに、ふよふよと手の上で浮いた物体。でも重さは少し感じる。

 

不思議な物に目が釘付けになっていると、クルリと火の玉のような物は回った。

 

 

「ん?」

 

 

―――眼鏡をかけた人のような顔が、そこにはあった。

 

 

「嫌あああああああァァァァァ!!!」

 

 

バギッ!!!

 

 

悲鳴を上げながら手に持っていたタブレットで顔の付いた火の玉を殴りつける。全力で。

 

 

「おぼおおおおおおおおおおおおおォォォ!!??」

 

 

「タブレット二号おおおおおおおおォォォ!!??」

 

 

金属が壊れる音、ベチョッと汚い音、そして聞き覚えのある低い声を出しながら床に叩き付けられる火の玉。隣ではガルペスが号泣。

 

 

「何ですかこのシャーマ〇キングのヒトダマモードに出て来そうな形をしたブサイクは……!」

 

 

「誰がブサイクだお前!? 俺は意外とイケメンな感じで……って!?」

 

 

聞き覚えのある声に私の息は止まる。火の玉の正体に気付いてしまったのだから。

 

 

「しゅ、修一君!?」

 

 

「お前の近くに居たおかげか分からないが、ソイツの魂は具現化して天に還ることは無かった。この砕け散ったタブレットのように醜いが……」

 

 

「さっきから酷い言われよう! というか誰だこの子ども!? お前の弟か何かか!?」

 

 

張り付いた床からフヨフヨと浮き始める修一(不気味な物体)。会話の反応から本人なのは間違いない。

 

とりあえず説明しようとするが、ガルペスさんが先に説明し始めた。

 

 

「ガルペス=ソォディア。オリュンポス十二神、ヘルメスの一席に座っている。代理だが……簡単に言うなら―――俺は神だ」

 

 

「……………頭大丈夫か?」

 

 

「信じないなら信じないで結構。それに、()()()()()()()()()()()だがな」

 

 

「……………は?」

 

 

あまりにも酷い説明に修一の思考は停止。私は頭を抱えてしまう。

 

この人に任せていたら説明しているだけで日が暮れてしまう。

 

 

「修一君。落ち着いて聞いて。ガルペスさんの言っていることは本当のことです。自分の体を見た方が早いと思うけど……」

 

 

スマホの自撮り機能を使って自身の姿を見せる。フヨフヨと火の玉のように浮いた自分の姿に、

 

 

「お前って、シャーマンキ〇グでも目指してたか……!?」

 

 

「目指してません」

 

 

「お前たちは随分と古い名作を見るんだな」

 

 

私がそういう物に手を出したのは修一君のせいです。私は勉強の息抜きで見ている程度です。そう、貴族が紅茶を(たしな)む程度。ガチではないです。

 

普通じゃない状況だとは理解してくれたのか、話を聞いてくれる修一君。全ての話を聞いて唖然としていた。

 

 

「転生……」

 

 

「これからは彼女のサポートして貰う。ぬいぐるみや小物、小動物ぐらいなら簡単な【憑依(ひょうい)】ができる。死ぬことは無いが、痛みはあるから注意しろ」

 

 

「……憧れの転生が『俺TUEEEE!』じゃなくて『俺TAMASHIIIII!』なのか……」

 

 

「落ち込む所はそこですか……」

 

 

「俺はハーレムとかチートとか、滅茶苦茶な力で暴れたかったんだよ! 無双したかったんだよ! 正直、お前の親父とか羨ましいと思っているわ!!」

 

 

いつものおふざけが始まるが、最後の言葉だけは笑えなかった。

 

小さなカバンを胸に抱きかかえながら黙り込んでしまう。ガルペスさんが何か声をかけようとしたが、

 

 

「———近いな」

 

 

「え?」

 

 

「んん? 何だこの嫌な空気?」

 

 

睨み付けるように窓の外を見るガルペスさん。その後ろから修一君が宙を浮きながら外を眺めようとしている。

 

修一君の動きにガルペスさんは感心したのか口元を緩める。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ある程度の探知能力はあるのか。意外と優秀かもしれないな」

 

 

「もしかして、これが【七つの大罪】って奴ですか?」

 

 

「ああ、その感覚を忘れるな。それと、奴らは世界に合わせて擬態(ぎたい)しているが―――()()()()()()()()()()()()()。まずは世界に溶け込んで生活しろ。そうすれば自然と【七つの大罪】は見つけれるだろう」

 

 

ガルペスさんはパチンッと指を鳴らすと、私たちの足元に白色の魔法陣が出現する。隣では「かっけぇ!!」と修一君が興奮しているが、まだ聞きたいことは山ほどある。

 

 

「ガルペスさん! まだ聞きたいことが―――!」

 

 

「成長しろ。転生した世界の中で、見つけれなかった物を見つけろ。俺が言えるのはそのくらいだ。それと」

 

 

最後にガルペスさんはペンダントを私に投げる。ダイヤモンドが埋め込まれた綺麗な十字架だ。

 

 

「見つけたらそれを握って祈れ。絶対に【七つの大罪】に戦いを挑むな」

 

 

「うおおおおおおォォォ!! 本当に異世界転生するのか! やっちゃうのか!」

 

 

「ガルペスさん!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!!

 

 

突如、外から耳の鼓膜を破くような爆発音が轟く。

 

盛大に窓ガラスが割れ、赤い炎が室内に入ろうとしていた。

 

窓から入る熱風に腰まで伸びた赤紫色の長髪が揺れる。サファイアのような美しい瞳には、燃える巨人が映っていた。

 

背後など全く見ないガルペスさん。私の方を向いたまま、最後の言葉を送った。

 

 

 

 

 

「―――楢原(ならはら) 無花果(いちじく)! その名に込められた生き方を忘れるな!」

 

 

 

 

 

―――無花果の視界は、真っ白に包まれた。

 

 

 

 

 

########

 

 

 

※前作『どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい』の紹介。

 

 

 

大樹「前作を知っている方たちはお久しぶりです。今作からの方は初めまして。楢原 無花果の父親の楢原 大樹です」

 

 

原田「前作を知っている方はお久しぶりです。今作では登場していませんが、私は大樹の友達で原田(はらだ)亮良(あきら)と言います。多分、そのうち出て来るのでよろしくお願いします」

 

 

大樹「そしてよく分からずこの地に迷い込んだ方々、こんにちは」

 

 

原田「どんな読者だよお前。上の話をすっ飛ばしてここに来るとかある意味天才だろ。いいから前作を紹介しろ」

 

 

大樹「だな。まぁこの手抜きに手抜きを重ねた無駄のない手抜きで前作を紹介しようと思います」

 

 

原田「お前は余計なことを言わないと死んじゃう病気でもかかってんのか。何だ『手抜きに手抜きを重ねた無駄のない手抜き』って」

 

 

大樹「台本形式の時点で察するじゃん。作者の力量」

 

 

原田「生みの親に容赦ないなお前」

 

 

大樹「前作の紹介しろって俺たちに丸投げされてもさ、『前作読んでね!』って後書きに書きゃいいわけじゃん」

 

 

原田「身も蓋もないことを……ちょうどプロローグの中身が薄かったからこうやって俺たちがカバーして―――」

 

 

大樹「薄いのはお前の頭だろ」

 

 

原田「坊主頭って言うんだよ! ハゲてねぇよ!」

 

 

大樹「いや今作はツルッツルらしいぞク〇リン」

 

 

原田「嘘だろおい!? あんな坊主頭のイケメンが!?」

 

 

大樹「おい。前作を知らない人間に嘘を吹き込むのはやめろサイ〇マ」

 

 

原田「さっきから俺を髪の無いアニメキャラの名前で呼ぶな!? というかツルツルじゃなくて坊主って言ってんだろ!」

 

 

大樹「黙れフ〇ーザ」

 

 

原田「お前がもう黙れよ!? ったく、前作の紹介一ミリもできてねぇじゃねぇか!」

 

 

大樹「お前のせいだよピッ〇ロ」

 

 

原田「だからやめろって!? というかドラゴン〇ール多いな! いいから話を進めるぞ! 前作の内容は―――」

 

 

大樹「前作を見れば一発で分かる!」

 

 

原田「当たり前のことをドヤ顔で言うな! 主人公の大樹(コイツ)が様々な世界に転生するよくある話だ。だが他とは違う点がウチの売りだ」

 

 

大樹「ああ、他では見ない話の展開だよな」

 

 

原田「それは、転生した世界の住人を一人……他の世界に連れて行くことができるのだ!」」

 

 

大樹「例えをあげるなら、ゴブリンス〇イヤーと一緒に『寄宿学校のジュ〇エット』の世界に行けるということだ!」

 

 

原田「そういうこと! ……………いや何が面白いんだそれ!?」

 

 

大樹「面白いだろ! 学校の中にゴブリンスレイヤーがいるんだぜ? ゴブリンいないのに」

 

 

原田「可哀想だろ!? あんな装備で歩き回ってたら周囲から引かれて浮いてしまうわ! せめてゴブリンがいる世界にしろよ!」

 

 

大樹「なるほど。転スラか」

 

 

原田「リグ〇ドたちを殺そうとするなお前!? 最低だな!」

 

 

大樹「冗談だって。例え話だろうが」

 

 

原田「えげつない例え話をするなよ……んで、増える仲間と共に世界を暴れ回る感じの話だな」

 

 

大樹「まぁ八割九割くらいギャグだけど」

 

 

原田「……ほぼスベっているけどな」

 

 

大樹「お前も生みの親に対して失礼だよな」

 

 

原田「とにかく! 宣伝しろ宣伝! こう、前作を読みたくなるような宣伝を!」

 

 

大樹「文字数は何と2,519,415!! 気軽に読めないから覚悟しろよ!」

 

 

原田「そこはボーリュムたっぷりって言え! 何で小説読むのに覚悟しなきゃいけない!?」

 

 

大樹「ガチ勢向けの宣伝を……」

 

 

原田「読者のガチ勢って何だ!?」

 

 

大樹「あの作品、読み止める人が多いから」

 

 

原田「それは作者が更新する速度が遅いからだ!」

 

 

大樹「あらキツい発言。完結したから褒めろよ」

 

 

原田「四年以上かかってんだぞ! 最終話を読んでくれた方々を神と敬え!!」

 

 

大樹「敬ってます」

 

 

原田「誠意が足りない。お前、ちょっと腹切れ」

 

 

大樹「何で切腹させようとしてんの!?」

 

 

原田「じゃあ指を詰めろ」

 

 

大樹「ヤクザか!? 敬い方おかしいだろ! カルト教団かお前!」

 

 

原田「読者は喜ぶ」

 

 

大樹「狂気過ぎんだろ! ここの読者たちを何だと思ってんのお前!?」

 

 

原田「神」

 

 

大樹「邪神の間違いだろ! お前までボケ始めたら永遠に宣伝できねぇよ!」

 

 

原田「そ、そうだな。真面目に宣伝するか」

 

 

大樹「あれだ。宣伝する点としたら主人公の俺は神から力を貰い、世界を無双する。無双好きな読者は食い付くだろ」

 

 

原田「いや無双ってお前……あれは無双と言うより―――」

 

 

大樹「口にしたら読む人が減るからやめろよ」

 

 

原田「———殺戮だろ」

 

 

大樹「してねぇよ! 人殺してねぇよ!」

 

 

原田「虐殺?」

 

 

大樹「だから殺してねぇって!」

 

 

原田「まぁ無双と言うにはアレな感じだが……アピールポイントだよな」

 

 

大樹「ダメだ……読もうと思える人たちが増えると思わない……むしろ今作すら減っている気がする……」

 

 

原田「でもこういうやり取りをする感じなのか~って分かる人もいるだろ?」

 

 

大樹「そうだけど……」

 

 

原田「……………」

 

 

大樹「……………え? 終わり?」

 

 

原田「うん」

 

 

大樹「うんじゃねぇよ!? アピールしろよそこから! 例えばギャグがいっぱいある話なんだな~って感じで!」

 

 

原田「なるほど。じゃあやり直して……このやり取りを見れば大樹はクズだな~って思うのは一目瞭然だろ」

 

 

大樹「どんな目をしているんだソイツ!? 思わねぇよ!」

 

 

原田「女の子を泣かせまくっている最低野郎だな~って思うのは火を見るよりも明らか」

 

 

大樹「だから思わねぇよ!? 上のやり取りを見て何が分かる!?」

 

 

原田「クソ具合?」

 

 

大樹「ッ……否定はできない」

 

 

原田「おう……………いや否定しろ主人公」

 

 

大樹「んふっw……否定はできないから」

 

 

原田「何笑ってんだお前……っw」

 

 

大樹「お前もじゃねぇか。宣伝最悪だな。ただの無法地帯じゃねぇか」

 

 

原田「まぁとりあえず自由な奴らが暴れているので、ぜひ見てください」

 

 

大樹「はい見てください。それではこれからもよろしくどうぞお願いします」

 

 

原田「はいお願いします」

 

 

大樹「……………」

 

 

原田「……………」

 

 

大樹「……………」

 

 

原田「……………」

 

 

大樹&原田「何で終わらない!?」

 

 

大樹「俺たちにしては割と綺麗に〆れただろ!?」

 

 

原田「嘘やろ!? 何で続いているの!? まだやれっていうのか!?」

 

 

大樹「これだよ! 自由過ぎて迷惑な奴! プロローグでこんなこと普通許されないからな! 作者の頭は狂ってる!」

 

 

原田「いやもう宣伝はアレくらいでいいだろ……ネタバレとかにもなるし……終わっとけよ」

 

 

大樹「……まぁでもハーメルンで四年以上。俺たちもそこそこの先輩なんじゃない?」

 

 

原田「急にどうした」

 

 

大樹「もうね、逸材が多いの。俺より強くてカッコイイ主人公、ズバ抜けたギャグセンス。世の中は広いと思うわけよ」

 

 

原田「だから急にどうした。何? 何をするつもり?」

 

 

大樹「だからさ、今まで見たことのないような主人公で活躍したいと思うんだ。だからさ」

 

 

原田「おう」

 

 

大樹「その属性を付けるから考えてよ」

 

 

原田「この作品の主人公お前じゃねぇんだけど!!??」

 

 

大樹「いいから! 確かに俺は今作の主人公じゃないけど、考えるだけ! 考えるだけタダじゃん!」

 

 

原田「……考えるだけな」

 

 

大樹「うんうん、考えるだけ」

 

 

原田「今まで見たことのない主人公……やっぱり武器は変わった物がいいよな」

 

 

大樹「お! 早速良い所に目が付く。何でも使いこなして見せるから言ってみろ」

 

 

原田「今まで見たこと無い武器を使いこなす主人公はカッコイイ! つまり!」

 

 

大樹「来い!」

 

 

原田「ファブ〇ーズ!!」

 

 

大樹「武器じゃねぇよ!? 見たことねぇけどダセぇわ! バイキン〇ンくらいしか倒せねぇよ!」

 

 

原田「必殺、除菌EX!!」

 

 

大樹「いやダセぇ! 違うだろ! もっとこう、個性が出るような武器!」

 

 

原田「個性が出るような武器……煙草を吸うキャラで」

 

 

大樹「おお! でもライターとか吐いた煙とかで戦っているのは見たことがあるから……」

 

 

原田「灰皿で戦う」

 

 

大樹「個性つっよ!!! 灰皿!? どう戦えばいいんだよ!?」

 

 

原田「ブーメランのように投げる! 灰を飛ばして姿を消す! 攻撃の盾にもなる!」

 

 

大樹「意外と役立ち過ぎて草生える」

 

 

原田「ふぅ……で、灰皿を用意するか?」

 

 

大樹「……遠慮するわ」

 

 

原田「何で?」

 

 

大樹「やっぱり剣とか銃で戦った方がカッコイイから」

 

 

原田「いい加減にしろ!!」

 

 

大樹&原田「どうも、ありがとうございました~」

 

 

大樹「……………」

 

 

原田「……………」

 

 

大樹「……………」

 

 

原田「……………」

 

 

大樹&原田「だから何で終わらない!?」

 

 

大樹「本編より長いぞこのクソ宣伝! わざわざ漫才までしてやったのに!」

 

 

原田「むしろダラダラし過ぎて前作を読もうと思う人、もういねぇだろ!」

 

 

大樹「俺ならブラウザ閉じて他の作品を読むわ」

 

 

原田「だろうな! 今作の主人公に宣伝させた方が絶対良いって! こんな茶番、今作では無いからさ!」

 

 

大樹「もう嫌だ! 前作ではカッコイイ主人公なのにここじゃタダのうるさい野郎じゃん! ファンが減ってしまうわ!」

 

 

原田「俺も限界だ! 最後にしっかりと宣伝してやる! 前作『どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい』(完結済み)をよろしくお願いしますッ!!」

 

 

大樹「この作品は前作を読めば更に楽しめるはず! 絶対に見てくれよなッ!! はい終了!」

 

 

原田「……………」

 

 

大樹「……………」

 

 

原田「ッ……………ぐぅ」

 

 

大樹「……あーくそ………ッ」

 

 

大樹&原田「もう無理!!!!」

 




誰だ、誰だ、誰だ~♪

主人公は一体誰の子どもなんだ~♪ ひ・み・つ☆

こんな感じで今作も作者はふざけた野郎なのでよろしくお願いします。

追記 挿絵は【Hibiya】様から頂きました! 仕事が早過ぎてビビり倒しました!
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