どうやら私はいろんな世界に転生するみたいです   作:夜紫希

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一日で二話……一話にまとめんかいッと自分にツッコミを入れていました。


打開への一歩

「この馬鹿野郎ッッ!!!」

 

 

「おぼごおおおおォォォホォンッ!!??」

 

 

拠点の外で修一の体が弧を描きながら宙を舞う。

 

ヘスティアの鉄拳が修一の顔に炸裂(さくれつ)した。小さな体の修一は後方20メートル近くまで吹き飛んでしまう。これがス〇ブラなら一発場外。プ〇ンの十字下+Bボタン技級の良い音が響いた。

 

その光景に無花果とリリは「痛そう」と引いた顔をしていた。だが修一が殴られ、ヘスティアが怒るのは当然。

 

 

「【ソーマ・ファミリア】を解体させるだって!? 君は何を言っているんだ!?」

 

 

「……………」

 

 

「すいませんヘスティア様。修一君はもう、死んでしまって……」

 

 

「し、死んでないと思いますよイチジク様」

 

 

珍しく冗談を言う無花果はレアだが、ヘスティアのきあいパンチをもろ食らった修一のHPはゼロ。ひんしだから交代して。控えているポケ〇ンに交代してよ。

 

 

「そ、【ソーマ・ファミリア】を何とかしない限り、リリはずっと狙われ続けるだろ」

 

 

「だからって君たちが危険なことをする必要は無いはずだ!」

 

 

「いいや、俺たちだって目を付けられているはずだ」

 

 

ヘスティアに掴まれながら修一は説明する。

 

 

「ゲスって言ったか? あの男を倒した時点で俺たち【ヘスティア・ファミリア】は【ソーマ・ファミリア】と敵対した。必ず向うから仕掛けてくるはずだ。無花果のカバンをリリに奪うように指示したのは【ソーマ・ファミリア】の連中だからな」

 

 

「ヘスティア様。修一君の言う事に全ては同意しませんが、このまま手を打たないのは危険だと私も思います。それからゲドという名前ですよ修一君」

 

 

修一の説明に無花果が付け足す。彼女も同じように危機感を感じているのだろう。

 

だが二人の意見に同意できない二人がいる。

 

 

「ボクは反対だ。どんな理由があっても【ソーマ・ファミリア】に関わろうとする方が危険だ。ギルドに報告するなり、安全な手はいくらでもあるはずだ」

 

 

「リリもヘスティア様と同じです。これ以上、リリの為に危険なことをしないでくださいッ」

 

 

ヘスティアとリリの訴えに無花果は何も言えなくなる。だが修一は違った。

 

 

「ヘスティア。ギルドに報告する方が不味いと思わないのか?」

 

 

「そんなことはないよ。ギルドは常に中立の立場だ。昨日のことを話せば―――」

 

 

「俺はこの街のことは(うと)い。ギルドがどういうことをするのか全く分からない。だから一般的な意見を言わせて貰う」

 

 

見たことのない真剣な顔をする修一にヘスティアは言葉を詰まらせる。

 

 

「———()()()()()()()()()()?」

 

 

「……………」

 

 

「俺は思わない。例えギルドがこっちの味方してくれても、奴らは大人しくならないし、絶対に抵抗するはずだ」

 

 

ヘスティアは否定することはできない。それだけ今の【ソーマ・ファミリア】は、異常なのだ。

 

昨日リリから聞かされた話は気分が悪くなるくらい嫌なものだった。信じられない外道、許されない裏切りが常に起きているのが現状なのだ。

 

 

「【ソーマ・ファミリア】は酒を求めてイカれた連中ばっかだ。でもな、あの連中は馬鹿じゃねぇんだよ。無駄にプライドが高くて、平気な顔で仲間を切り捨てて生き残ろうとするくらいズル賢い連中なんだよ」

 

 

だから修一は駒を動かそうとする。敵から攻められる前に、一手を打つ為に。

 

 

「リリを救う為だけじゃない。これは、【ヘスティア・ファミリア】を守る為の行動だ」

 

 

「……その為に修一君はイチジク君を危険に晒すのか」

 

 

厳しい一言に心が痛むが、修一の顔色は変わらない。

 

 

「悪いなヘスティア。俺はお前が思っているような良い奴じゃねぇんだ。無花果がここで動かないと、この騒動に終止符は打たれない」

 

 

「そんなことはないですよ」

 

 

修一の話を遮ったのは無花果だった。彼女は首を横に振り、真面目な顔では無く、笑顔を見せた。

 

 

「修一君は優しい人ですよ。ちょっと中身がクズなところがありますが、本質はずっと変わりません。何十年の付き合いだと思っているのですか」

 

 

「……仕返しのつもりか?」

 

 

「お返しです」

 

 

幼馴染の仕返しに修一は溜め息をつく。

 

真面目な性格だから反論すると思っていたのに、自分の言ったことは間違っていないと信じてしまう。そんなよくできた彼女に、修一は参ったと両手を挙げる。

 

 

「分かった分かった。意地悪は無しだ。悪かったなヘスティア」

 

 

「……ボクの方こそ悪かったよ。君は、そういう男なんだろ?」

 

 

「ああ、俺はこういう男なんだよ。世間一般的に俺はこう呼ばれている……『イキリト』ってな!」

 

 

「「?????」」

 

 

残念ながらヘスティアとリリには通じない。無花果も笑みが消えて馬鹿を見る目になっていた。

 

変な空気になった修一はしばらく考えたあと、ポツポツと呟く。

 

 

「いや、その、まぁ、ねぇ……その俺が悪役ぶったのはごめんなさい。はい。で、皆さんで打開する方法がありますので協力してください……」

 

 

((えぇ……))

 

 

「へ、ヘスティア様? リリさん? あの、面倒くさい人だなぁと思うのは私も同じですが顔に出すのは……あぁ! 修一君! 泣かないでください!?」

 

 

少し時間はかかったが、修一は立ち直った。そして、彼の口から聞かされる打開方法に一同は目を丸くしたのだった。

 

 

 

###

 

 

広いバルコニーが備わった部屋の奥、作業机の上で乳鉢(にゅうばち)を用いて何種類もの植物を混和(こんんわ)させている男の姿があった。

 

薄汚れたロープ姿で作業を行っている彼の名は―――ソーマ。彼こそが【ソーマ・ファミリア】の主神、ソーマなのだ。

 

長い前髪の奥にある顔はとてもつまらなさそうな無関心。ただ酒を作ることに集中していた。

 

酒の原料を調合していた時、黒い影がソーマの視界に入った。

 

 

「……………」

 

 

作業机の上に飛び乗って来たのは小汚いネズミ。億劫(おっくう)そうな顔で見ていると、

 

 

 

「———いつまでクソ不味い酒を作ってんだよぶっ殺すぞゴラァ? あァん!?」

 

 

 

「  」

 

 

突如汚い言葉を喋り出したネズミに、ソーマは声を失った。

 

 

―――『 解決策その1 』

 

修一がドブネズミに【憑依】して神を脅す。

 

 

 

###

 

 

 

「それで、結果はどうでしたか?」

 

 

「三匹の同胞を失った……!」

 

 

「普通に失敗しましたね……」

 

 

無花果の足元では泣きながら同胞の死を悔やむドブネズミの姿があった。

 

ドブネズミに【憑依】した修一は【ソーマ・ファミリア】の拠点に忍び込んだあと、必死に逃げ出して来た。無花果の糸によるフォローと、リリの教えてくれた秘密のルートを教えてくれなければ大変なことになっていただろう。それから死にかけた瞬間に通りすがりの三匹のドブネズミに【憑依】できなければ捕まっていた。

 

 

「ソーマ様の反応はどうでしたか?」

 

 

「驚いた顔をしたあと、普通に殺しに来た」

 

 

「ええ、当然の反応ですよね」

 

 

「喋るのにか!?」

 

 

「あの、酒にしか興味が無い神だと言いませんでしたか?」

 

 

「そうだったぁ!!」

 

 

―――『 解決策その1 』 失敗。

 

 

 

###

 

 

喋り出した汚いネズミを追い払ったあと、ソーマは作業に戻る。久しぶりに驚いてしまったが、取り乱すことはない。

 

乳鉢を握れば落ち着き、再び酒の原料を調合を開始する。しばらくするとソーマの鼻腔に木の焦げた臭いが―――?

 

 

「……………」

 

 

異変に気付いたソーマは立ち上がる。閉じていたカーテンから明かりが部屋の中に入って来ていたのだ。

 

夜なのに何故? カーテンを開けると、答えはすぐに分かった。

 

 

ゴオォ……! パキパキッ……! ガシャンッ!!

 

 

―――ソーマの酒蔵(さかぐら)が、メラメラと()()()()()

 

 

「  」

 

 

ソーマ様、本日二度目の仰天だった。

 

 

―――『 解決策その2 』

 

事件の元凶である酒を、全部燃やしちゃおうぜ!作戦。

 

 

 

###

 

 

 

「最終手段が早くないですか!? というか犯罪ですよねこれ!?」

 

 

「無花果。あっちも犯罪行為をしているんだ。お互い様だろ?」

 

 

「テロリスト顔負けの悪い顔をしていますよ修一君」

 

 

「リリが酒蔵に火を点ける瞬間を思い出してみろよ。めっちゃ子どもみたいに喜んでいたじゃねぇか」

 

 

「アレは完全に開いちゃいけない扉を開けていましたよね?」

 

 

「闇堕ちする女の子は可愛いから大丈夫だって。ファンからの人気も厚そう」

 

 

「何の話ですか。それで、結果の方は?」

 

 

「ああ、速攻で鎮火(ちんか)された。冒険者で消防団を結成した方が平和で儲かって良いんじゃないか?」

 

 

―――『 解決策その2 』 失敗。

 

 

 

###

 

 

 

昨日は散々な目にあった。自分の酒蔵が燃やされるなど思いもしなかった。

 

ソーマは厳重に警備するように言い付けた。ザニスが物凄く嫌そうな顔をしていたが、問題無いだろう。

 

ネズミが部屋に入って来ていないことを確認したあと、酒作りを始める―――

 

 

「?」

 

 

しかし、乳鉢が見つからない。作業机の上を見渡すが、どこにもない。

 

面倒だが仕方ない。ソーマは予備の乳鉢を取る為に席を立ち、戸棚の引き出しを開けようとする。

 

 

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

 

 

引き出しの奥で何かが引っかかり、開かなくなっていた。

 

イライラするアレだ。何度開け閉めしても、引き出しが開く様子はない。

 

時間を掛けて引っかかっていた物を取り出し、引き出しから乳鉢を手に取る。

 

やっと酒を作れるとソーマが椅子に座った瞬間、

 

 

バギッ!!

 

 

「ッ!?」

 

 

椅子の足が折れてしまい、ソーマは尻から床に落ちてしまう。

 

尻だけでなく腰にまで来て地味に痛い。フラフラと震えた足で立ち上がると、

 

 

「あぁ~、快便だわぁ~」

 

 

「  」

 

 

―――喋るドブネズミが、調合しようとした材料に糞をしていた。

 

 

―――『 解決策その3 』

 

ソーマにずっと嫌がらせを続ける。

 

 

 

###

 

 

 

「ソーマが膝を抱えて部屋の隅から動かなくなったらしい……!」

 

 

「「「一番効いていたああああァァァ!!??」」」

 

 

ヘスティアの報告に三人は驚愕する。ソーマの部屋に忍び込み、リリがいくつもの細工を仕掛け、無花果は椅子やテーブルの破壊工作、そして修一は酒の原料に脱糞。最後はある意味クソ野郎だった。

 

部屋の侵入はとても簡単だった。修一は例の如く【憑依】を使い、無花果は糸を使って建物から建物へ移動しての侵入。そしてリリは『変身魔法』を使って侵入していた。

 

【シンダー・エラ】は相手の身体能力まで『模写(コピー)』することができる便利な魔法だ。能力(アビリティ)以上の能力(ステイタス)は不可能だが、獣人の恩恵未熟(元々)の嗅覚や聴覚は反映可能。

 

そこで、無花果はエジソンの発明すら越えるような発想に辿り着く。

 

 

「修一君は【憑依】が使えます。リリさんが修一君に変身したら、【憑依】が使えるのでは?」

 

 

「「「ッ!?」」」

 

 

結果、成功した。リリは修一の唯一の取り柄だった【憑依】が使えてしまったのだ。

 

「俺のアイデンティティがぁ!!」と嘆いていたが、これを活用しないわけにはいかない。というわけで修一と一緒にリリは行動して安全に侵入することができた。最初の時に気付けば三匹のネズミは死ぬことはなかったのに……。

 

話は戻る。そんなソーマの嫌がらせを毎日続けていると、ヘスティアからそんな報告があった。

 

 

「団員たちは神酒が飲めなくなっているはずだ。狙い通り、暴動は起きるはず」

 

 

「暴動は起きるが、これで安心しちゃいけないぜヘスティア。ここからが、俺たちの戦いだ」

 

 

修一の言葉に無花果とヘスティアは頷く。

 

今更後戻りはできないことは分かっているが、リリは問いかけてしまう。

 

 

「本当に良いのですか? リリなんかの為に……」

 

 

「いい加減覚悟を決めたらどうだいサポート君? もう二人は火が点いてしまっているんだ」

 

 

腕を組みながらヘスティアはリリの目をジッと見る。視線を無花果と修一に移すと、二人は笑っていた。

 

 

「私は、これからもリリさんと冒険したい。助けたいという気持ちは本当ですよ」

 

 

「リリを馬鹿にして来た奴らをギャフンと言わせるチャンスだぜ? 一緒に来いよ」

 

 

そう言ってリリに手を伸ばす二人。それが堪らなく嬉しくて、リリは涙が出そうになる。

 

でも、今はグッと堪えた。リリは満面の笑みで二人の手を握る。

 

 

「はいッ!!」

 

 

―――また笑ってダンジョンを潜る日々を送る為に、彼らは戦う。

 

最後の解決策、それは【ヘスティア・ファミリア】と【ソーマ・ファミリア】の未来を賭けた戦いになる。

 

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