どうやら私はいろんな世界に転生するみたいです   作:夜紫希

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エタるところでした。本当に遅れて申し訳ないです。


更なる冒険に備えて

「どうして【ロキ・ファミリア】と同盟なんか組むんだい!?」

 

 

「ぐぇ!? だから何で俺が首を絞めゲブフッ!?」

 

 

怒り狂ったヘスティアが修一をブンブンと首を掴みながら振り回す。まるで子どもが遊んでいるかのような光景だが、これでも神なのです。

 

それを止めるのは【改宗(コンバージョン)】して新たに【ヘスティア・ファミリア】の一員になったリリだ。

 

 

「それ以上は千切れちゃいますよヘスティア様。お二人にも考えがあっての行動だと思いますよ」

 

 

「リリさんの言う通りです。私も修一君も、考えての行動を取っています。それに、同盟は組んでいません」

 

 

「ロキの子たちと一緒にダンジョンの探索に行くなら同じさ! しかも中層どころか深層まで潜るなんていくら何でも危険過ぎる!」

 

 

言い返されたヘスティアの言葉に反論することはできない。実際、自分たちの到達階層は中層の手前。

 

見たことの無い未知の中層に潜ることすら危険だと分かった上で、深層まで潜ることを約束してしまったのだ。

 

 

「イチジク君。君が強いのはボクも知っている。けれど行くことは許可できないよ」

 

 

「……それでも私は―――」

 

 

「悪いなヘスティア。けど、俺たちはここで止まるわけには行かねぇんだよ」

 

 

無花果が何かを言いかけたが、修一の声で掻き消される。ヘスティアの手から脱出し、近くにあった木箱の上に飛び乗る。

 

 

()()()()()()の為に、許してくれねぇか?」

 

 

「断固拒否!!」

 

 

「頑固な女神だなチクショウ! 今のはモヤモヤしながら許す流れだろうが!」

 

 

「甘いね修一君! ボクは君たちの為ならNOと言える神なのさ!」

 

 

「聞いたことのあるフレーズだなおい! もう仕方ねぇ! 当日は何が何でも行くからな!」

 

 

「だったらボクはオラリオ都市のど真ん中で駄々を捏ねて阻止して見せるよ!」

 

 

「羞恥心とプライドを捨てるな!? 縛って【ロキ・ファミリア】に預けてやろうかコイツ!」

 

 

周りの人の目を気にせずにギャーギャーと言い争う神とぬいぐるみ。最終的にさっきと同じように修一がオモチャのようにブンブン振り回される。

 

無花果とリリは呆れて先に帰ろうと歩き出すと、

 

 

「……あの」

 

 

「知りません」

 

 

リリが何かを言う前に無花果はその場でUターン。露骨に先に行くことを拒んでいた。

 

小人族(パルゥム)の視線の先を追うと、そこには負のオーラを撒き散らした女性が木箱と木箱の間で座り込んでいた。

 

 

「先程聞いたイチジク様のお話から……」

 

 

「ヘスティア様、修一君。早く帰りますよ」

 

 

「グヘェ―――って……うわぁ」

 

 

「何だい……あの近づくだけで不幸になりそうな子は……」

 

 

争っていた修一とヘスティアも気付く。特に修一は見覚えのある女性に嫌な顔をした。

 

頭のウサ耳はへにょんと曲がり、今から飛び降り自殺でもしそうなくらい目が死んでいた。そう、彼女の名前は―――

 

 

「お前の姉さん、死にそうだぞ」

 

 

「……………はぁ。何をしているのですか、牡丹(ぼたん)姉さん」

 

 

「やっぱりイチジク様のお姉様でしたか……」

 

 

「えぇ……聞いた話と全然違うじゃないか……」

 

 

話しかけたくない雰囲気だったが、無花果は牡丹に近づく。リリとヘスティアは少し距離を取ったまま、姉妹の様子を見ていた。

 

 

「……アンタね……別に大したことじゃないわ」

 

 

「いや大したことあると思うぞ。この負のオーラは普通にヤバイ」

 

 

修一のツッコミに牡丹は無反応。ただ理由を口にした。

 

 

「しばらくお父様は帰って来れないらしいのよ……はぁ、死にたい」

 

 

「「「それだけで!?」」」

 

 

「すいません……姉にはたったそれだけでネガティブになるので……」

 

 

身内の恥に無花果の顔は赤くなっている。顔を伏せたまま牡丹は続ける。

 

 

「用意していた綺麗なドレスも、何週間も練習した化粧も、全部無駄よ無駄。あと迷った」

 

 

「本当に引くほどのファザコンだな無花果の姉。道案内くらいはしてやれば?」

 

 

「方向音痴はいつものことですから」

 

 

姉に冷たい無花果。プイッと顔を逸らしてしまう。

 

見捨てられた牡丹は空を見上げ、不吉な言葉を口にする。

 

 

「……いっそ世界が滅びればいいのに」

 

 

「無関係な人間を巻き込もうとしているよこの人」

 

 

「いつものことですから」

 

 

それは問題があるのでは?と疑問に思ったが、三人は黙っていた。

 

捨てられた子犬のように可哀想な牡丹にヘスティアは歩み寄る。

 

 

「ボ―――」

 

 

「巨乳は敵」

 

 

「ウチの神様、一文字で拒絶されたぞ」

 

 

無言で泣きそうな顔で無花果の顔を見るヘスティア。すいませんと謝ることしかできない。

 

だが彼女は神。神なのだ。拒絶されても諦めない心がある。

 

 

「あ―――」

 

 

「恵まれて生まれた人には分からないでしょうね。恵まれなかった者の気持ちが。まな板と馬鹿にして来た者と仲良くできると?」

 

 

「すまない皆。ボクは前科持ちだから彼女を励ますことができない」

 

 

真顔で泣いているよウチの神様。神が前科持ちなのは三人も知っている。【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)『黄昏の館』を出る際に、主神であるロキに向かって「次はその貧相な(もの)を見せるんじゃないぞッ、負け犬め!」「うっさいわアホォー!!」と喧嘩別れしていた。

 

ネガティブ全開の牡丹に無花果は溜め息を漏らす。姉に歩み寄ると、

 

 

「豊胸手術って知っていますか?」

 

 

「あの無花果(クズ)、トドメ刺しに行きやがった!!」

 

 

なんて良い笑顔で姉の肩を叩くんだ! これには全員ビックリ。

 

ブチッと血管が切れるような音が聞こえた直後、パシッ!と無花果の手が振り払われる。

 

 

「馬糞みたいな料理を作る妹と比べたら、私の悩みなんて些細なことね」

 

 

「何を言っているのですか? ヘスティア様は美味しいと言って食べていますよ?」

 

 

「……………………………嘘でしょ」

 

 

顔面蒼白。ワナワナと震えながら牡丹はヘスティアの顔を見ていた。マジです。

 

流した涙を服で拭うと、ヘスティアは笑顔を浮かべて見せた。

 

 

「本当だよ。ボクは何度もイチジク君の料理を美味しく頂いている」

 

 

「敵とか言ってごめんなさい。あなたは尊敬に値する人……いいえ、猛者よ」

 

 

(ホント何食わされているのウチの神様。そんなにやべぇの?)

 

 

牡丹の変わり身にゾッとする修一。このまま味覚が無い方が幸福なのかもしれない。

 

ヘスティアの右手をグッと両手で握り絞める牡丹。そのまま抱き締めてよしよしと頭を撫で始めている。

 

事情を知らないリリも察したのだろう。無花果の料理には気を付けようと心に決めたはずだ。

 

 

「ありがとう。おかげで胸がスッキリしたわ。別にお母様とイチャイチャしているわけでもないし、チャンスはまだあるわ」

 

 

「ほ、本当に大好きなんだね……あと放してくれないかな?」

 

 

「……あ、そうだ」

 

 

ギュッとヘスティアを抱き締めた牡丹に修一は手を挙げる。

 

 

「えっと、姉さん」

 

 

「牡丹でいいわよ。因君」

 

 

「じゃあ俺のことも修一で大丈夫っす。お願いがあるんですけど」

 

 

ムッと無花果の表情が嫌な顔になったのが横目で分かる。このまま手を貸して欲しいと言えば、彼女が嫌がることぐらいお見通し。だから、

 

 

「———俺たちと一緒に、ダンジョンに潜ってくれませんか?」

 

 

「……いろいろと面倒そうだから断るわ」

 

 

「えぇ……」

 

 

強力な助っ人にフラれてしまい、修一の肩はがっくしと下がる。その様子をニコニコ笑顔で見ていたのはもちろん無花果。

 

 

「はい! 死ぬほど面倒な仕事ですよ!」

 

 

「何意気揚々に言ってんだお前!? 姉の姿を見てから黒くなってないか!?」

 

 

「あー、でも愚妹の思い通りになるのは(しゃく)ね。そうね、少しだけ力は貸すわ。そこの小さい子?」

 

 

「えッ? リリに……ですか?」

 

 

牡丹はヘスティアから離れてリリの前まで歩くと、金色のカードを取り出す。

 

【ロキ・ファミリア】の本拠地でも見せたが、武器のようには全く見えない。変な髪型をした二重人格さんみたいに『ク〇ボーを召喚!』とかそういう感じで戦う人だろうか。何だこの下手くそな例え。

 

修一が怪訝な目で見ていると、カードは金色に光り始める。

 

 

「どれを渡そうかしら? 【悪魔の六目剣(デビル・ダイスソード)】とか?」

 

 

「な、何ですかそれは……?」

 

 

物騒な名前にリリは怯えながら聞くと、牡丹は説明する。

 

 

「その剣を振ると六つの内、ランダムで一つ効果が発揮するの。地獄の炎が燃え上がったり、地獄の吹雪が吹き上がったり、地獄の大地が割れたり」

 

 

「地獄ばっかじゃねぇか。しかも()()の大地が割れるのか。目の前の地面が割れろよ」

 

 

「で、ですがとても強そうな剣ですよシュウイチ様! リリはその剣を―――」

 

 

ジト目で怪しむ修一に、リリはそんなことないと首を横に振る。だが、

 

 

「———で、六分の一の確率で悪魔の契約が発動して爆死するデメリットがあるわ」

 

 

「———受け取らないと堅く決意しました」

 

 

よろしい。それが正しい判断だと牡丹以外の人間は頷いた。

 

クソみたいなデメリットに「違うのを出せ」と半ギレで修一は言ってしまう。

 

 

「お父様は三回連続引き当てても死ななかったのに……まぁ仕方ないわよね」

 

 

「今サラッとやべぇこと口にしたよあの人」

 

 

「ならデメリット無しの槍ね。【ハギヅメの(やり)】はどうかしら?」

 

 

また変な名前の武器が出て来たと一同は思う。恐る恐るヘスティアが代表して聞く。

 

 

「それは、どういう武器なんだい?」

 

 

「横に振れば相手の爪が全部取れるわ」

 

 

「グロいねッ!? とんでもない武器を持っているんだね君は!」

 

 

「人には効果抜群かもしれないが、ダンジョンのモンスターだったら限定されるだろその武器!」

 

 

修一のツッコミに牡丹は「確かに」と納得したあと、

 

 

「だったら一緒に【ツノガトレールのナイフ】もあげるわ」

 

 

「『角が取れる』ね! そのままかよ! というかモンスター限定されてるって!?」

 

 

「サービスよ! 【エラ呼吸封じの杖(サーカナ・ゼツ=メツ)】も渡してあげる!」

 

 

「手に負えねぇ!? 誰か止めてくれこの馬鹿を!」

 

 

まともな武器を提供しない牡丹に頭を抱えて苦しむ修一たち。後ろで見ていた無花果が溜め息を吐くと、

 

 

「……全部姉らしい武器じゃないですか。良かったですね、皆さん」

 

 

「カチーン……無花果、ここでアタシが最強の武器を渡したら世界のバランスが崩れることくらい分かっているよね?」

 

 

また始まる姉妹喧嘩。修一は思った。『カチーン』とかわざわざ口で言う奴、初めて見たと。

 

いやどうでもいいこと考えてた。首を横に振って話を戻す。

 

 

「だからデメリットの有る武器、あまり役に立たない武器、そういう武器しか渡せないってことか?」

 

 

「ええ、理解が早くて助かるわ修一君」

 

 

「……もう少しまともな道具でもいいですからくれませんか? 常識的な範囲で」

 

 

「ちょっとの冗談くらい良いでしょ? それとも面白くなかったかしら?」

 

 

「ツッコミって、意外と疲れるんですよ」

 

 

「修一君。それが分かっているなら私にもツッコミをさせないでください」

 

 

「最近は無花果(お前)がボケ始めているだろ! お前も俺にツッコミをさせるな!?」

 

 

お互い様だった。無花果と修一の会話に牡丹は微笑むと、リリに古い羊皮紙のような物を渡した。

 

不思議そうな顔でリリは羊皮紙を広げてみるが、何も描かれていない。どういう代物なのか全く予想もできない。

 

 

「使い方は簡単よ。息を吹きかけるだけで発動するわ」

 

 

「何が発動するのですか……?」

 

 

「物は試しよ。別に危険な事は起きないわよ?」

 

 

警戒するリリに牡丹は試すように促す。少し羊皮紙から顔を離して小さく息を吹きかけた。

 

すると羊皮紙に変化が起きた。じわじわと羊皮紙にインクのような黒色が染み込み始め、描き始めた。

 

 

「これって……!」

 

 

驚いた声を上げるリリ。言わずとも、羊皮紙に描かれた物が何なのか全員分かるだろう。

 

―――羊皮紙に描かれたのは『地図』。オラリオ都市の地図だった。

 

 

「本当は見たい場所を考えながら息を吹きかける物なんだけど、何も考えなかったらそんな風に雑に描かれるの」

 

 

「見たい場所が分かる地図かぁ……それは便利な―――」

 

 

修一の言葉が不意に止まる。それもそのはず、牡丹を除いた【ヘスティア・ファミリア】の全員がピタッと動きを止めてしまった。

 

 

「見たい場所って……どこでも、なのかい?」

 

 

ヘスティアの質問に牡丹は頷いた。

 

 

「どこでも見れるわよ。それが【(みちび)きの地図】だから。まぁそれだけの使い道しかない―――」

 

 

「「「「えええええェェェ!!??」」」」

 

 

突如大声を出す無花果たちに牡丹はビックリしてしまう。何を驚いているのか聞こうとするが、

 

 

「リリさんリリさん! 試しに一層の地図を出してください!」

 

 

「分かりました! ふぅー! ……で、出ました! 一層の地図、ちゃんと出ましたよ!」

 

 

「すげぇ!! なら行ったことのない中層の地図も見れるんじゃないのか!?」

 

 

「ぼ、ボクが吹きかけても地図は出るのかい!? ふぅー! ……出たよ地図!」

 

 

「いやどこだこれ!? 中層のどこだこれ!? ヘスティアは何を考えながら吹きかけた!?」

 

 

「中層の始めとか考えて吹きかけたけど……合っているのかな?」

 

 

「私には分かりませんが、リリさんなら!」

 

 

「ちょっと待ってくださいね……ッ! 恐らくここが上層と中層を繋ぐ道だと思います! 合っていますよこの地図!」

 

 

「「「「凄過ぎる!!??」」」」

 

 

テンション爆上げで盛り上がっている一団に牡丹は空気に置いて行かれていた。自分が出した代物が、そこまで食い付かれると思わなかった。

 

 

「そ、そんなに嬉しい物なの……だって上とか下とか……右も左も分からないじゃない」

 

 

「方向音痴の姉さんは黙っていてください。この地図がどれだけ凄い価値があるのか分からないのでしょう!」

 

 

「え? あげたのに怒られているの? アタシ、妹に怒られているの?」

 

 

おかしい状況にキョトンとした顔で修一たちの顔を見るが、

 

 

「もっと大切にした方がいいですよこの地図。ちょっとボロいじゃないですか」

 

 

「ボロいのは元からなんだけど……え? 修一君、そっちの味方なの? ちょっと泣きそう」

 

 

と、姉をイジるのはここまでにしておく。だが本当に良い代物を貰った。

 

―――【導きの地図】。これが未知のダンジョンを攻略する俺たちに取ってどれだけ助かるアイテムなのか、牡丹には分からないだろう。

 

涙目で困惑の様子を見せる牡丹に、無花果はニッコリと微笑む。

 

 

「そう言えば道案内がまだでしたね。あっちに行けばオラリオ都市から出れますよ」

 

 

「雑過ぎるわよッッ!!」

 

 

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