どうやら私はいろんな世界に転生するみたいです   作:夜紫希

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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
神々と暮らす世界


遠い昔―――

 

 

退屈で仕方なかった『神様達』は僕らの暮らすこの世界(下界)へと降り立った。

 

 

様々な無駄を(こしら)えながら文化や営みを育む子供たち(僕たち)娯楽(ごらく)を見出したのだという。

 

 

全く思うようにいかないこの世界に大いに興奮し、のめり込み、下界に永住すると決めた神様達は、

 

 

「チートはつまんなくなるからヤメねぇ?」

 

 

「あー」

 

 

「うむ」

 

 

神様達は万能である『神の力(アルカナム)』を使ってはいけないというルールを取り決めた。

 

 

「じゃあさぁ、こういうのはどうだ?」

 

 

そんな神様達はたった一つの力を与えた。

 

 

―――それが『神の恩恵(ファルナ)』。ステータスのアップデートだ。

 

 

神様達は『恩恵』を授けてくれる存在として重宝された。

 

 

神様による派閥である【神の眷属(ファミリア)】に加わり、お願いを聞いたり、お金を稼いできたりすることで『恩恵』を授かる。

 

 

それが神様と子ども達の利用し利用される関係だ。

 

 

でも、僕はこう思う。

 

 

【ファミリア】に加わるってことは神様の家族になるということだって―――

 

 

「ブハハハハハッ! ごめーん! 頑張って稼いできた所悪いけど、賭博(ギャンブル)でお金すっちゃったからお金貸してくんなーい?」

 

 

「死ねえええええええええええェェェ!!」

 

 

―――うん、まぁ、【神の眷属(ファミリア)】っていろいろあるから! 悪い神様だけじゃな―――

 

 

「俺に嘘は通じねぇ! さぁ吐け! お前の盛大な失恋話をよぉ!!」

 

 

「もうやめてぇ!!!」

 

 

―――ぼ、僕の神様は良い人ですから! 本当ですから!?

 

 

 

###

 

 

 

「———ここが『迷宮都市オラリオ』です。【七つの大罪】がいるとすれば、この場所が一番怪しいでしょう」

 

 

「結局、到着するのに一週間もかかったな……転生するならこの都市の目の前にして欲しかったぜ」

 

 

「ですが、この一週間である程度の情報を手に入れることはできました。この世界に馴染むなら情報は大事ですから」

 

 

世界で唯一『ダンジョン』と称される『地下迷宮』が存在する場所。神々の多くが人と一緒に暮らしている。

 

特に目立つのは都市から飛び抜けた摩天楼(まてんろう)。迷宮の真上に(そび)え立つ『バベル』だ。

 

多くの人々が住む都市にこれから入ろうとする所だが、この世界では学校の制服は悪目立ちする。無花果(いちじく)はRPGの冒険者が身に着けるような格好をしていた。

 

皮のブーツに黒タイツを穿()き、黒と白のゴシック服を着ていた。長い髪はウサギの耳のような大きな赤いリボンでポニーテールにしてある。訂正、これはこれで目立つ。

 

 

「……どうしてもこの格好で行かなければならないのですか」

 

 

「俺を信じろって! 完全にお前は女性冒険者の格好だ! ソシャゲで言うならSRくらいの女の子キャラだ!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

そうして修一は「だから頼む!」と土下座する。

 

 

「俺をゴブリンから解放してくれぇ!!!」

 

 

「はぁ……」

 

 

緑色の小さな怪物―――醜いゴブリンの姿になった修一の姿に、無花果は溜め息をついた。

 

彼の能力は【憑依(ひょうい)】だ。この異世界に来てから様々な物に【憑依(ひょうい)】することを試していた。

 

ロープやカバン、小さな無機物は可能。蟻や蝶などの虫にも【憑依(ひょうい)】することはできた。

 

途中、村の人にも試してみたができなかった。その時は「あいたぁ!?」「痛ッ!? な、なんだこの気持ち悪い物体は!?」と驚かれた。どうやら私だけではなく、他の人にも目視できるらしい。

 

「これじゃ女風呂を覗けねぇ!?」とアホなことを言い出したので森の中に住んでいたゴブリンに向かってヒトダマをぶん投げて【強制憑依】させた結果がこれだ。

 

解除しようとしても、無花果の意志がスイッチになっているのか【憑依】を解除できず、三日もゴブリンのまま目的地まで歩かされた。

 

 

「この姿じゃ都市に入った瞬間に殺される! 反省したからやめてくれ!」

 

 

「もし次、悪い事をしたら許しませんよ」

 

 

「約束する!!」

 

 

鼻水と涙を流すゴブリン。正直に言って気持ち悪い。ゴブリンスレイヤーどころか女神官すら容赦なく殺すレベルの醜さ。野生のゴブリンの方が数倍マシだった。

 

後ろの腰に装着した小さなカバンを開き、そこから取り出したのはぬいぐるみだ。

 

 

「これに【憑依】してください。私が動かしていることにすれば目立つことは無いでしょう。『魔法』という概念はあるのですから」

 

 

「おお! すっげぇ可愛い猫じゃねぇか!」

 

 

「いいえ、ライオンですけど」

 

 

ピタッと動きを止めるゴブリン。

 

尖った耳にくるんっと巻いた尻尾。獅子の威厳する象徴であるふさふさのたてがみが無い緑色のネコをライオンと言った。

 

 

「たてがみは?」

 

 

「メスには無いですよ?」

 

 

何故メスのライオンを作った。修一の中でツッコミを入れたい欲が出るが、無花果の顔は真剣だった。

 

 

「ち、ちなみに名前とかあるのか?」

 

 

「ゲブちゃんです」

 

 

(クソみたいなネーミングセンスだなおい……って言いたいけど、このままゴブリンに【憑依】されてしまうのは嫌だから黙って置こう)

 

 

「わ、わーい」と言いながらゴブリンの中からヒトダマの修一が飛び出す。意識を取り戻したゴブリンは無花果の顔を見て驚き、そのまま森へと逃げて行った。

 

ぬいぐるみに【憑依】した修一は自分の体が動くかどうか試す。

 

 

「おお……動きやすい」

 

 

「……四足歩行」

 

 

「勘弁してくれ。二足歩行でいいだろ」

 

 

「……眼鏡」

 

 

「これはデフォルト装備みたいな物だから見逃せ」

 

 

「本当は遠隔操作で起爆する爆弾をぬいぐるみの中に入れたかったのですが、私には爆弾を作ることはできないので……」

 

 

少し残念そうに無花果は語る。テロ組織顔負けの発言に修一はドン引きだった。

 

 

「行きましょう。少し長くなりましたが、【七つの大罪】を探しましょう」

 

 

「お、おう! ……うんッ!?」

 

 

無花果は修一を抱っこして都市へと歩き出す。彼女は特に何も考えずにやっていた。

 

 

(歩幅を合わせて歩けないですし、人は多いので持ち運んだ方がいいでしょう)

 

 

と、効率のことだけしか考えていない。全く気にしていなかった。

 

いくら魂の具現化した修一でも、【憑依】していても、痛みや感触は感じる。つまり、

 

 

(や、役得ぅ……!?)

 

 

無花果の胸がダイレクトに当たった修一の思考は止まる。そのまましばらく動けなくなった。鼻血という血が流れていない体で良かったと後で喜ぶだろう。

 

同時に、新たな可能性の道を開いた瞬間である。

 

 

 

###

 

 

 

都市の中に入った無花果たちが最初に訪れたのはダンジョンを運営管理する『ギルド』だった。

 

窓口の受付に並んでいると、周囲から多くの視線を感じた。

 

 

「……何故目立つのでしょうか」

 

 

「さぁ?」

 

 

抱きかかえられたまま修一は適当に答える。浮かない格好をしているはずなのにと無花果は騙されていることに気付かない。割と浮いている。

 

視線を耐えながら待つこと数分。受付嬢の綺麗な女性と対面する。もちろん、喋らせないようにぬいぐるみの口は塞いだ。

 

 

「むぐぅ」

 

 

「すいません、ここに来たばかりで右も左も分からない者なのですが……」

 

 

「はい、でしたらまずは名前だけでも登録を―――」(今どこからか変な声がしたような……)

 

 

受付嬢の名前はエイナ・チュール。ほっそりと尖った耳に澄んだ緑玉色(エメラルド)の瞳を持ち、セミロングのブラウンの髪は光沢に溢れている。そう、彼女は人間(ヒューマン)とエルフのハーフだ。

 

この街には様々な種族が住んでいる。他にはドワーフ、アマゾネス、獣人、小人族(パルゥム)。おとぎ話のような世界だ。

 

 

(凄く綺麗な人です……)

 

 

無花果は思わずエイナに見惚れてしまう。ギルドの制服である黒のスーツとパンツを綺麗に着こなしている。

 

エイナは眼鏡をかけ直し、無花果の前に紙束を置いた。

 

 

「———次に【神の眷属(ファミリア)】に所属することですね。神から『恩恵』を貰った後に、冒険者の登録をお願いします。希望のある【ファミリア】があればご紹介しますが?」

 

 

紙束を見れば様々な【ファミリア】募集の―――うさんくさいチラシが束ねられていた。

 

お金持ちになるやら最強になれるやらビッグな男になれるやら……センスの無い見出しばかり。あと詐欺臭い。

 

 

「やっぱり強い【ファミリア】に乗り込んで『俺TUEEE!』をやるのが一番だろ」

 

 

「しませんよ。目的を忘れないでください」

 

 

(あれ? やっぱりこのぬいぐるみって喋れ……)

 

 

思わず修一の会話に乗ってしまったことに無花果はハッとなる。どう誤魔化そうと必死に考えたが、

 

 

「やぁ美しいエイナさん。俺の名前は修一。呪われてこんな姿になった可哀想な男さ……」

 

 

受付の机の上に乗って自己紹介までし始めていた。エイナは口を開けて驚いてしまっている。

 

 

(こ、この馬鹿ぁーーー!!)

 

 

アレほど目立つなと忠告したのに! どうしてドヤ顔でナンパしているのですかね!?

 

私が動かしている設定だというのに、このままじゃ私がエイナさんをナンパしていることになるのですが!

 

しかも呪われてこんな姿になったですって!? 私の渾身の作をそんな風に言う何て……!

 

 

「え、えっとこれは……イチジクさんの、その……?」

 

 

「はい。これは死んだドブネズミの魂が可愛いぬいぐるみに入った愚かな生き物です」

 

 

「「ドブネズミ!?」」

 

 

満面の笑みで説明する無花果。修一とエイナは同時に驚愕していた。

 

 

「ドブネズミって何だ!? え? 何? 怒っているの!?」

 

 

「ドブネズミだという自覚が無いのでこんな情けない生き物になってしまったのです。なので慈悲深い私が面倒を見ているのです」

 

 

「これめっちゃ怒っているね! 悪かった! 勝手な真似をした俺が悪かったから本当っぽい嘘を言うのやめて!」

 

 

やめません。ここまで来たらあなたはドブネズミの魂だという設定にします。

 

心の中で反省しろと思っていると、エイナさんは別のことに驚いているようだった。

 

 

「イチジクさんはその……魔法が使えるのですか?」

 

 

「……先天性の魔法です。ちょっとした」

 

 

無花果は用意していた嘘を告げる。魔法を使えるのは神から恩恵を授かった者がほとんど。

 

だが苦しい嘘でもあった。先天性魔法は個体の性質や種族に由来する魔法。この世界ではヒューマンと称される自分に使える魔法ではないはず。

 

 

「あまり周りに言いたくない家系なので」

 

 

「……分かりました。このことは秘密にしておきます」

 

 

不安そうな顔をする無花果にエイナは笑顔で頷いた。深く聞こうとしない彼女の姿勢に無花果は安堵する。修一を叩きながら。

 

 

「話を戻しますが【ファミリア】の方はどうしますか? その魔法があれば有名な【ファミリア】に属することも夢じゃないですよ」

 

 

「いえ、大丈夫です。目星を付けている【ファミリア】はありますので」

 

 

「分かりました。では『恩恵』を授かったあと、またここに来てください。正式な冒険者になる為の手続きをしますので」

 

 

 

###

 

 

 

「それで、目星を付けている【ファミリア】ってどこだよ?」

 

 

「うるさいですよドブネズミさん。本当に下水道で見つけて【強制憑依】させますよ」

 

 

「やめて」

 

 

無花果は道のベンチに座りながら手渡された紙束をめくりながら印をつける。修一は暇そうに無花果の膝の上で休憩している。

 

 

「目星というより、都合の良い【ファミリア】を探して入るだけなので簡単ですよ」

 

 

「都合の良い? 何の?」

 

 

「私たちの目的は【七つの大罪】を探すこと。その邪魔をされるようであれば【ファミリア】に入る必要はありません」

 

 

「んあ? 難し過ぎて分からねぇ」

 

 

「はぁ……冒険者になる理由はダンジョンに入る為の口実が欲しかっただけです。もしこの都市に【七つの大罪】がいなければ長居する必要はないですよね?」

 

 

「……その為の都合の良い【ファミリア】ってか? 行動に縛られることもなく、出て行く時はすぐに辞めれる。そんな自由な【ファミリア】に入るってことか」

 

 

「YES」

 

 

無花果の考えを理解した修一は頭を悩ませる。自分としては大手の【ファミリア】に乗り込んで、下剋上して、俺最強とキメて、そこから自然と【七つの大罪】を暴けると考えていた。

 

そのことを無花果に話すと、彼女は呆れることなく感心していた。

 

 

「有りと言えば有りな方法です。ガルペスさんが言っていた()()を探す点ではいいかもしれません。【七つの大罪】は世界に擬態するとも言っていましたから」

 

 

「なら―――」

 

 

「ですが、私たちはその異物を知らない。どう言った形で世界の異物になっているのか。物なのか人なのか。何も知らない状態です。下手な真似はできません」

 

 

彼女の真面目な性格が出ていた。物事を常に慎重に行う。父親と違って出た目の勝負は一切しない。

 

それをよく知っている修一も、それ以上は何も言わない。彼女の案は間違っているわけではないからだ。

 

 

「まぁ俺はこの姿だからな。【七つの大罪】を見つけれるだけの体だから、あとのことは無花果に任せれば大丈夫だって信じてるよ」

 

 

「……すいません」

 

 

「謝ることなんて一つもねぇよ。お前のことは、俺がよく知ってる」

 

 

修一は「都合の良い【ファミリア】を見つけたら起こしてくれ」と言って無花果の膝の上で寝始める。どさくさに紛れて膝枕しているが、今の無花果は気にしていなかった。

 

無花果が修一の案に乗らない理由はもう一つ。それは、彼女自身の問題だった。

 

 

「……………」

 

 

忘れられない過去が脳裏を過ぎる。下唇を噛み、必死に別の事を考えようとしていた。

 

そして、いつの間にか紙束をめくる手が止まってしまっていた。

 

 

 




ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか


に、転生しましたぁ!!!!!


追記、挿絵があるぞおおおお!! うおおおおおおぉぉぉ!! もう素晴らしい……(昇天
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