BALDR GENESIS EXE~Revive of Future World~   作:デスイーター

4 / 10
探索者ーSeekerー

 「ふぅ……」

 

 仮想の大地に降り立ち、電子体を構成すると俺の身体は鋼鉄の肉体に変容していた。

 

 ーー戦闘用電子体(シュミクラム)…それが、この機体の名称である。

 

 仮想(ネット)で戦闘を行う場合に自身の電子体を戦闘用のものに組み替え、人間の形から機械の身体へと変異させるプログラム……それが、戦闘用電子体(シュミクラム)だ。

 

 外観はロボットそのものだが実際はロボットに搭乗しているのではなく、自身の電子体を変化させた代物である為、殴られれば苦痛を感じるし、破壊されれば最悪死に至る……決して、ゲーム感覚で使用してはいけないプログラムだ。

 

 噂によれば、遺跡発掘が行われるより以前から存在していたプログラムらしいのだが詳細は分かっていない……とにかく、仮想での戦闘や探索にシュミクラムは必要不可欠だ。

 

 こと遺跡探索に置いては、シュミクラムに移行(シフト)していなければ遺跡に通じる転送門は通過出来ないようになっている。

 

 遺跡内部には無数の自立敵性体(エネミー)がひしめいている為、当然の処置だ。

 

 俺のシュミクラムの名称は、『ヴァナルガンド』。青と黒をベースとした、スリムな外観の機体である。

 

 全体的なカラーリングはライトブルーが強めで、さながら青い装甲を纏った黒いヒトガタといったところだ。

 

 機体の形状は一般的なシュミクラムと同じく人型ベースだが、胸部には狼を象った装甲を装備しており、全体的に鋭角的な印象を受ける。

 

 俺が今いるのは、中継界(イーサ)と呼ばれる仮想に潜って最初に訪れる中継点(ハブ)であり、此処から転送門を通って目的地へ向かう事になる。

 

 周囲を見渡せば各所に大仰な扉が存在し、その扉一つ一つが各地の目的地緒へ繋がる転送門(ゲート)となっているのだ。

 

 『怜二、没入完了したみたいだね。こっちも準備OKだよ』

 

 目の前に表情画面(フェイスウインドウ)が開き、双葉の顔が映し出される。俺はそれを見て、こくりと頷いて見せた。

 

 通常の没入を行い実体ごと仮想に移動した俺と違い、双葉の実体は操作席に接続されたまま、意識の一部だけをこうして俺のサポートに充てている。

 

 双葉はサポートを行う際、分割思考(マルチタスク)を用いて意識の一部を仮想へ、一部を現実に飛ばし、仮想と現実双方から情報を集積してサポートを行っている。

 

 分割思考が可能かどうかでサポートの精度は格段に変化し、双葉の場合は6つまで思考を分割出来るそうだ。

 

 つまりそれだけ同時に行える作業が多く、人間の形をしたスーパーコンピュータと言っても大差ない性能(スペック)だった。

 

 「これより、遺跡(レムナント)NO1,花園(ガーデン)へ突入する。サポートを頼む、双葉」

 『了解(ヤー)!』

 

 俺は双葉に指示を送ると花の紋様が描かれた扉の前に立ち、ギルドから発行された探索者証(シーカーライセンス)を通じて転送門を起動させた。

 

 ーー転送(ムーブ)ーー

 

 そして開かれた転送門によって俺の身体はその場から消失し、目的地へと転送された。

 

 

 『座標確認、問題なし(オールグリーン)。無事花園(ガーデン)へ到着だね、怜二』

 「ああ、そのようだ」

 

 俺が転移した先は、見渡す限りの花畑だった。どうやら森の広場のような場所らしく、周囲には鬱蒼と茂った木々が揺れている。

 

 この見るからに自然溢れる牧歌的な場所こそ、遺跡の一つ、花園の接続地点(アクセスポイント)なのだ。

 

 遺跡は独立した構造体であり、転送門を経由する事でのみ出入りが可能となる。

 

 そして転送門を潜った先に出る接続地点は各遺跡で異なり、ガーデンの場合はこの花畑になる。

 

 接続地点内にいる限りはエネミーも寄って来ないが、探索の為に接続地点から出てしまえば探索者は常にエネミーの脅威に晒される事になる。

 

 その為、探索者が遺跡で取るべき行動はエネミーを見つけ次第殲滅…するのではなく、()()()()()()()()()()()辿()()()()事だ。

 

 何故なら、エネミーとの戦闘は文字通りキリが無いからだ。遺跡内部のエネミーは破壊しても時間経過で再出現(リポップ)する上、戦闘が長引けばどんどん他のエネミーを呼び寄せてしまう。

 

 その為、如何にしてエネミーとの戦闘を避けて目的地へ辿り着けるかに全てがかかっており、安全なルート構築もサポートの仕事の一つである。

 

 『よし、ルート算出完了……っ! 今送るねっ!』

 

 双葉はそう告げるとデータを送信し、開封すれば遺跡第一層のマップが出て来た。

 

 マップにはエネミーの位置や罠の配置、リスクの少ない移動ルートが表示されている。

 

 双葉の指し示すルート通りに進めば戦闘は精々数回程度で済み、目立った罠も見受けられない。これならば、無理なく目的地へ到達出来そうだ。

 

 「ルート確認した。これより探索に移る」

 『了解(ヤー)、気を付けてね』

 

 俺はシュミクラムのブースターを起動させ、ホバー移動で森の中へ進んで行く。

 

 各所からエネミーの駆動音が聞こえるが一定以上の距離を保っている所為か接敵には至らない。俺は変わり映えのしない森の中を、一人突き進んでいた。

 

 この花園は遺跡の中でも最も難易度が低いと言われている場所で、エネミーの強さもそれ程ではなく初心者(アマチュア)の探索者が腕を磨くには格好の場所であるとされている。

 

 その為、初心者は敢えてエネミーの多い整備された街道のルートを選び、戦闘経験を積むのが普通である。

 

 無論、エネミー相手の戦闘で経験値を積む段階はとうに過ぎ去っている為、余計な戦闘の手間は省くに限る。

 

 しかし、それでもエネミー自体の数が多い為、接敵を0にする事は出来ない。

 

 マップを見渡せば進行方向に無数のエネミー反応があり、もう少しでで接敵範囲に入る事になる。

 

 『前方にエネミー有り! 『ファングフラワー』5、『トレントアーム』6……っ! 手早く蹴散らしちゃって……っ!』

 「了解(ヤー)!」

 

 俺は森の草木に隠れるようにラディカルスピナーを放出し、回転するブレードが草木を斬り裂きながら飛んでいく。

 

 そのブレードの進行方向には鋭い牙を備えた花型のエネミー、『ファングフラワー』と動く樹木のようなエネミーである『トレントアーム』が存在している。

 

 遺跡内部のエネミーは各遺跡ごとである程度モデルの統一性があり、この花園の場合はこの二機のような植物を象ったエネミーが多い。

 

 基本的に、その遺跡の雰囲気に見合ったモデルのエネミーが出現しているワケだ。

 

 花園のエネミーは耐久はそこそこだが動きが鈍重なタイプが多く、この二機も例によって動きは緩慢としている。

 

 特に厄介な能力を持っているワケではないので、ある程度経験を積んだ者からしてみれば正しく雑魚でしかない。

 

 結果、エネミーの集団は迫り来るラディカルスピナーを回避する事が出来ず、そのまま二機の『ファングフラワー』と三機の『トレントアーム』が真っ二つに斬り裂かれ爆散した…!

 

 「はぁ……っ!」

 

 俺はそのまま手元に出現させた大型のブレードを一閃して残った三機の『ファングフラワー』を両断し、同時に手元に戻って来たラディカルスピナーが三機の『トレントアーム』を両断…この場に集った全てのエネミーを、撃滅した。

 

 『エネミー殲滅を確認。周囲に敵影なし、そのまま進んで……っ!』

 「了解(ヤー)、探索を継続する」

 

 俺はエネミーの残骸をその場に残し、再びシュミクラムを加速させ疾駆を開始した。

 その後も数度の接敵はあったが問題なく駆除が終わり、俺は最短ルートで遺跡奥部にある目的地へと突き進んで行った。




 基本的な操作システムはBALDR SKYと同じく見下ろし型の2D戦闘を想定しています。此処はいわば最初のステージなので、通常階層ではそう苦労なく突破出来ますけども。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。