BALDR GENESIS EXE~Revive of Future World~   作:デスイーター

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未踏領域ーDanger zoneー

 

 「……到着か」

 

 【花園】の中をエネミーを避けつつ進んでいた俺は一旦シュミクラムの疾駆を止め、眼の前の光景を見据えた。

 

 俺の視線の先には、森の広場に不釣り合いな鋼鉄の扉…アイリス・バルブがその威容を広げていた。

 

 このアイリス・バルブこそが、今回俺が目的としている場所…遺跡の未踏領域に繋がる、出入り口だ。

 

 花園は()()()()()()()()()()()という特徴を持つ遺跡の中でも、特に凝ったギミックも厄介な特性を備えたエネミーもなく、ある程度の実力があれば苦も無く奥へ辿り着ける。

 

 ……遺跡は通常六層構成となっており、第四層から下の階層が未踏領域として扱われている。

 

 ただし、遺跡の第三層の最奥に位置する未踏領域の入口にあたるこのアイリス・バルブは、序列二桁の者達に発行される特殊な解除キー(アンロック)がなければ開かないようになっている。

 

 解除キーは探索者証にインストールされており、既に解除キーを受け取っている俺はプログラムを起動すればこのアイリス・バルブの先に進む事が出来る。

 

 探索者証はギルドから発行される特殊な電子体アイテムで、様々なプログラムが内蔵されている。

 

 これがなければギルドの利用に制限がかかる他、遺跡探索で役に立つプログラムも複数プリインストールされている。

 

 シュミクラムに移行(シフト)している時でもインストールされているプログラムはいつでも起動する事が出来、遺跡探索に置いてなくてはならない代物だ。

 

 この探索者証を持たず、違法な活動を行っている探索者の事を盗掘者(ローグ)と呼び、盗掘者の中には解除キー持ちの探索者証所持者がアイリス・バルブを開いた瞬間に相乗りしようとして来るタチの悪い輩もいるらしい。

 

 『怜二、付近に不審な反応なし。いつでもいいよ』

 

 勿論、そんな輩の横槍を許すつもりはない。俺は双葉に頼んでいた索敵の結果を聞き届け、解除キーを起動した。

 

 『バルブ、解放します』

 

 周囲に機械音声(マシンボイス)が響き渡り、アイリス・バルブがゆっくりと開いて行く。隙間から垣間見えるバルブの奥は暗闇に閉ざされ、否応なく禍々しい空気を伝えて来る。

 

 ガゴン、という音と共にバルブが完全に開放され、未踏領域への道が開かれた。

 バルブの下からは冷たい空気が漂い始め、鋼鉄の身体を纏っている俺にさえその寒気を伝えて来る。

 

 「これより、未踏領域へ突入する。サポート、よろしく頼むぞ」

 『了解(ヤー)。行こうか、怜二』

 

 そして、俺は地獄の入口のようなバルブの中へ身を投じ、背後でバルブが閉まる音を聞きながら未知の領域へ降下していった。

 

 

 「……これが、未踏領域……今までの階層とは、別物だな」

 

 俺は周囲一帯に広がる光景を見詰め、息を呑んだ。

 

 今まで俺が踏破して来た階層とは、何もかも違う。あちらが日の当たる明るい庭園なら、此処はさながら朽ち果てた廃墟のようですらあった。

 

 未踏領域である第四層の光源は天井に生えたヒカリゴケらしきもののみで、それも天井の所々にしか存在しない為全体的に薄暗い。

 

 周囲の木々は全て枯れ果て、ウツボカズラやハエトリグサのような食虫植物をモチーフとしたオブジェクトが点在している。

 中にはしゃれこうべに根を張る不気味な植物もあって、ただ此処にいるだけで陰鬱な気分になりそうだった。

 

 『……私も初めて見たけど、想像以上だね。さっきまでは割と趣味の良い雰囲気だったけど、此処はもう最悪だね。何を考えてこんなフロアを作ったんだか』

 「確かに、同じ奴がデザインしたとは思えない豹変ぶりだな。ひょっとして、製作者が違うのかも」

 『ま、意味のない詮索ではあるけどね。遺跡はその名の通りいつ作られたか定かじゃないんだし、どんな奴が作ったとかを考えても答えは出ないよ』

 

 確かに、遺跡を作り出した存在に興味がないと言えば嘘になるが、それを知る術はないだろう。

 もしかすると探索を進めていけばそういった情報にも辿り着けるかもしれないが、捕らぬ狸の皮算用を考えても仕方ない。

 

 『お、早速来たみたいだよ。データ通りの電子体反応、浸蝕敵性情報体(キャンサー)だ……っ!』

 「来たか…っ!」

 

 機体のカメラアイを遠望モードに切り替えると、視界の先にこちらに迫る無数の機影が確認出来る……その、おぞましい姿が。

 

 視認した敵影は、今までの植物をモチーフとしたエネミーと違い、有り体に言ってまともな姿をしていなかった。

 

 ……先頭にいるのは、二つの頭部を持った犬を模した化け物だった。

 その二頭犬の頭部は片目が潰れており、骨格が露出している。鋭い牙が並んだ口からは、黒いタールのような液体が流れ出ていた。

 

 他にも二つの首を持った蛇、前後に頭を持つ巨人、双頭の烏等、様々な姿の異形の機影が並んでいた。そのいずれも、口等から黒いタールのようなものを垂れ流している。

 

 あのタールのようなものは、可視化された特殊なウイルスであり…あのウイルスには、()()()()()()()()()()()

 つまり、あのウイルスを撃ち込まれた者は、奴らの()()となってしまうのだ。

 

 この能力こそが、こいつ等が浸蝕敵性情報体(キャンサー)と呼ばれる所以である。

 キャンサーに傷を負わされた者は、キャンサーになる……癌細胞(Cancer)という名前通りの、悪質極まりない能力である。

 

 未踏領域にはこのキャンサーが無数に跋扈している為、生半可な実力の者が立ち入りウイルスを注入されればキャンサーの戦力が増強され、感染爆発(パンデミック)に繋がる恐れがある。

 

 キャンサーは通常この未踏領域から出る事はないが、未踏領域と通常の遺跡を隔てるアイリス・バルブを通過出来る探索者証を持った者がキャンサーと化してしまった場合、()()()()()()()()()()()()()

 

 その結果、アイリス・バルブを自由に出入り出来るキャンサーが生まれる結果となり、電子体浸蝕能力を持つキャンサーが未踏領域の外に出てしまう危険がある。

 

 その為に、探索者証には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 万一ウイルスを撃ち込まれ、手遅れになった場合はこのプログラムを起動すれば機体は一瞬で()()し、キャンサー化を防ぐ事が出来る。

 

 最初は持ち主の死亡判定と同時に探索者証の機能を停止させる、というプログラムを仕込んでいたようだが…キャンサー化した機体にはそういった凍結処理は効果がないらしく、結局自決プログラムの採用に踏み切る以外に方法はなかったらしい。

 

 ともかく、此処からは一度のミスが文字通り命取りになる。第三層までとは、危険度の桁が違うのだ。

 

 「……こっからは使用を躊躇っている余裕はないな。数が多過ぎる」

 『キャンサーは再生能力を持つ個体が多い上に独自の耐性を持ってたりするから、駆除は中々大変だからね。その判断を支持するよ』

 「ああ、行くぞ……っ! 固有兵装(オリジン)起動、凍土領域(コキュートス)稼働開始する…っ!」

 

 瞬間、俺のシュミクラム(ヴァナルガンド)の胸部の狼の瞳が青く輝き、その顎から()()が放出され周囲の温度が急激に低下していく。

 

 「凍て付け……っ!」

 

 そして、俺に迫っていた無数のキャンサーを冷気の層が覆い、その機体を一瞬にして凍結させ次の瞬間には砕け散り塵と化した……っ!

 

 これが、俺のシュミクラム…ヴァナルガンドの固有兵装、凍土領域(コキュートス)だ。

 

 固有兵装(オリジン)とはその名の通り特定のシュミクラムだけが持つ唯一無二の能力であり、その効力は機体によって千差万別様々だ。

 

 俺のヴァナルガンドの能力は、周囲一帯に低温領域を発生させ、自在に対象を凍結破砕する事が可能だ。

 

 実弾系の武器は悉く凍り付いて砕け散り、接近戦を仕掛けて来た敵は瞬く間に氷の彫像と化す……攻防一体の強力な能力だが、当然そんな力には()()が付き物だ。

 

 まず、この能力を行使する為には使()()()()を自分で設定しなければならず、自動防御(オートディフェンス)ではない為当然不意打ちには無力である。

 

 やろうと思えば自動防御の展開も出来なくはないのだが、あまり現実的ではない。

 何故ならば、この凍土領域の使用に必要なリソースは、()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 つまり、この固有兵装を使えば使う程俺のシュミクラムのライフゲージが減少する為、基本的にこの能力は()()()()()()()()()()のだ。

 

 ライフゲージの減少量は凍結範囲と能力使用時間に比例する為、自動防御など展開しようものなら瞬く間にライフゲージが尽きてしまう。

 

 故に俺は、少しでも能力使用のリスクを抑える為に俺のシュミクラムには武装スロットを幾つか犠牲にして、一定以上ライフゲージが減少すると自動でライフゲージを回復する使()()()()()()()()()である『ライフチャージャー』を複数装備している。

 

 ライフゲージ回復の電子体アイテムは幾つか持ち歩いているが、回復量や即応性を考えると固有兵装の代償でライフゲージの消費が激しい俺にとってはライフチャージャーの装備は必要不可欠だ。

 

 そういった事情がある為、俺も今回の探索では無理をするつもりはない。サポートがあるとはいえ、単独(ソロ)での未踏領域探索には限界がある。

 

 キャンサーを苦も無く破壊出来る味方機が一機でもいれば大分違って来るのだが、無いものねだりをしてもしょうがない。

 

 「さて、探索を続けるぞ。双葉、周囲に技術遺産の反応はあるか?」

 『近くにはないみた……っ!? 待って、前方に敵影反応あり……っ!? う、嘘……っ!? 今まで、何もいなかった筈なのに……っ!?』

 

 表情画面から双葉の焦ったような声が響き、俺は前方を見据え…その存在を、視界に捉えた。

 

 ……それは、一見すればシュミクラムのように見えたが……違う。人が乗っているにしては、纏う雰囲気が異常に過ぎた。

 

 あまりにも細すぎるその外観はまるで骸骨が鎧を纏って立っているかのようであり、しゃべこうべを象っている頭部の口からは黒いタールが流れ出している。

 

 そして何より目を引くのは、()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 腕部と一体化しているそのチェーンソーからは絶えず黒いコールタールのようなものが流れ落ちており、チェーンソーの不快な回転音が響くと共に周囲に黒い液体がまき散らされている。

 

 「……チェーンソーを装備した、黒い機体…まさか、あれは…っ!」

 『……っ! データが一致した……っ! あれは統率個体(グレゴリオ)の一機、双子座の悪魔(イニクィタティス)だ……っ!』

 

 ……最悪の予感が当たり、俺は思わず舌打ちした。目の前の機体の脅威を、正しく理解したが故に。

 

 ーー統率個体(グレゴリオ)とは、その名の通りキャンサーを率いる存在であり、その()()()でもある。

 

 統率個体はキャンサーの()()()()を持ち、この統率個体が健在である限り幾らキャンサーを倒しても結局は終わりのないいたちごっこになる。

 

 この統率個体はシュミクラムのような姿をしているが、その機体から溢れ出る黒いタールと……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()によって判別出来る。

 

 その為、探索者の間には暗黙の了解として()()()()()()()()()()()()()()というものがある。

 もしもチェーンソーを装備していれば、統率個体と間違われて攻撃されても文句は言えないのだ。

 

 『66、tnk4z09! 6]t5i3t@ljdq!』

 

 視界の先の統率個体、イニクィタティスは意味不明な言葉を垂れ流し、その虚ろな眼窩でじっとこちらを見据えている。

 

 イニクィタティスの垂れ流す黒いタールは形を変え、次々と新たなキャンサーが生産され包囲を狭めて来る。最早、戦う以外に道はなさそうだ。

 

 「く、仕方ない……っ! これより、統率個体との戦闘に入る……っ! サポート頼むぞ、双葉……っ!」

 『気軽に言ってくれるね……っ! 仕方ない、生存を第一に考えこの場からの離脱を最優先目標に設定……っ! いけるね……っ!?』

 「了解(ヤー)!」

 

 ーー開戦(オープン・コンバット)ーー

 

 俺は固有兵装を躊躇いなく稼働させ、突如襲来したイニクィタティスとの戦闘を開始した…!

 




  固有兵装(オリジン)はバルジェネで追加した要素で、実機での操作方法はAボタンを押す事で通常兵装から固有兵装(オリジン)を使用した攻撃方法に切り替わる感じです。もう一度Aボタンを押せば通常兵装に切り替わります。

 主人公機の『ヴァナルガンド』の場合はZボタンが前方を凍結させての攻撃(射撃に充てれば迎撃可能)、Xボタンで目前の敵を凍結させ切り裂く攻撃、Cボタンで一定範囲の敵を凍結させる広範囲攻撃、等となる。また、作中で説明があった通り使えば使う程ライフゲージが減っていくので、考えなしに使いこなす事は出来ない。
 
 この攻撃の種類も通常の兵装のように設定する事が出来、自分なりのカスタマイズを施す事が出来、通常兵装と同じく使えば使う程強化される。

 『ライフチャージャー』は通常の兵装スロットを一つ使う事で一定以上ライフゲージが減った時に1つにつき一度限りライフゲージを回復出来る。
 『ライフチャージャー』は複数装備する事が出来、武装のバリエーションを犠牲にする代わりにライフの保険が出来る装備である。

 とまあこんな風に妄想してました。ゲームをプレイしてるつもりで書くのは中々楽しいですね。
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