BALDR GENESIS EXE~Revive of Future World~   作:デスイーター

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共闘者ーSharp Girlー

 

 俺は倦怠感を振り払い、目前のイニクィタティスを睨みつける。身体の中に、先程までの異物感はない……自己診断キットを奔らせても、『異常なし(オールグリーン)』と伝えて来る。

 

 『れ、怜二……? 貴方、なんで…確かに、浸蝕率は50%を超えていたのに…』

 

 通信越しに、双葉が信じられない、といった面持ちで呆然と呟いている。

 それはそうだろう……俺のバイタルをモニタリングしていた双葉は、俺の機体がウイルスに侵され()()()の状態になっていた事をしっかりと認識していた筈なのだから。

 

 そうでなければ、気丈な双葉があのように絶叫などする筈がない。あの絶叫は、状況を正しく認識していたが故の絶望の慟哭だったのだから。

 

 「……理由はよく分からないが、助かったみたいだ。それより双葉、流石に腹に風穴が空いたままはマズイ…修復を頼む」

 

 イニクィタティスの攻撃によって腹に大穴が空いている俺は、双葉に修復を頼む。

 

 既にライフチャージャーによってライフゲージは回復しているが、ライフチャージャーはライフゲージは回復させても機体の損傷まで修復してくれるワケではない。

 

 機体の損傷を修復する為には、専用のプログラムが必要だった。電子体アイテムとして自己修復(セルフリカバリー)キットというものも存在するが、既にライフゲージは回復している以上双葉に頼った方が効率がいい。

 

 『わ、分かった……っ! 修復(リカバリー)プログラム起動、対象…機体胴体部……っ!』

 

 双葉は俺の要請に応じてすぐさま修復プログラムを起動し、俺の胴体の大穴が塞がっていく。

 

 通常、通信越しでこんなプログラムを起動させる事は相当に難しいのだが……特級プログラマである双葉に、その常識は通用しない。

 

 電子体浸蝕ウイルスの件さえなければ、普通であれば修復不可能な損傷であっても双葉ならばどうにか出来てしまうのだ。

 

 俺の機体の損傷は瞬く間に回復し、鋼鉄の肉体に活力が漲る。相対するイニクィタティスは理解不能の復帰をした俺の様子が不可解なのか、警戒するようにこちらを見据えていた。

 

 『tnk3e=4:e;1sf、uyq.-@4sh! thu.45fm4eas@tnk3e=4abn、ck4z0=nqrsd94!』

 

 イニクィタティスの虚ろな眼窩には明確な敵意が宿っており、意味不明な言葉の羅列を垂れ流しながら殺気をこちらに向けて来る。

 

 俺の機体(ヴァナルガンド)黒い機体(イニクィタティス)の間に一触即発の空気が満ち、一歩も引かずに睨み合う。

 

 「……っ!」

 

 ーーそして、俺は予め仕掛けていた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を通して攻撃を察知し、その場から左へ跳躍する……! 

 

 それまで俺のいた場所に目を向ければ、地面から這い出るように()()1()()()()()()()()()()()がチェーンソーを突き出していた。

 

 「これは……」

 

 地面から這い出たイニクィタティスは、先程俺が破壊したイニクィタティスと全く同じ姿だった。

 

 後から出て来た方のイニクィタティスを女性型だとすれば、こちらは男性型……その二機を見て、俺は朧げながら先程の奇襲のからくりを理解する。

 

 『……どうやら、双子座の悪魔(イニクィタティス)はその名の通り、2機で1つの存在のようだね。正確には、本体が女性型で男性型は幾らでも生み出せる()()に過ぎないってところか』

 「成る程な。さっきのあれは俺が分身を倒した事で油断して、その隙を本体に突かれたというワケか」

 

 とはいえ、わざわざ本体が奇襲を行った以上、分身である男性型を生み出すには幾らかのタイムラグがあると見るべきだろう。

 

 そうでなければ、反撃される危険のある襲撃を全て男性型に任せ、本体の女性型は高みの見物をするだけでいい筈なのだから。

 

 『--ええ、その通りよ。流石に此処まで情報が揃えば、嫌でも分かるみたいね』

 「え……?」

 

 --不意に、戦場に似つかわしくない涼やかな声が響いた。そして、次の瞬間には俺のすぐ傍に硬質な着地音が鳴り響き、紫紺の機影が露わになる。

 

 それは、俺が今まで見た事のあるシュミクラムのどれとも違った奇妙な姿をしていた。

 

 全体的なフォルムは兎を象っているようで、頭部から伸びた耳のようなパーツや鋭い膝部刃(ニーブレード)を装備した折り畳まれた脚部がそれを物語っている。

 

 その機体は鋼鉄の体躯であるというのに妙に艶めかしく、流麗な機体のラインは、相対する女性型インフィデレスよりよっぽど女性的で、不思議な色香すら纏っていた。

 

 『……兎を象った、シュミクラム……まさか、ラビットシリーズ……っ!?』

 「な……っ!?」

 

 俺は通信越しで双葉が叫んだ名称を聞き、驚きに目を見開いた。その名は、それだけ聞き捨てならないものなのだから。

 

 ーー『ラビットシリーズ』とは、電子体工学の第一人者で知られるドクター・ゼクスが作成したと言われる、特殊な戦闘用電子体(シュミクラム)の総称である。

 

 この『ラビットシリーズ』は他と隔絶した戦闘能力を持ちながらあまりにピーキーなその性能によって使い手が見つからず、長年凍結処理されていたという曰くつきの代物だ。

 

 その後凍結処理されていた『ラビットシリーズ』はドクター・ゼクスの死亡時の混乱で何処かに流出したと言われているが、それをこうして見る事になるとは思いも依らなかった。

 

 通常であればまともに動かす事すらままならないそれを纏って未踏領域にいる以上、この機体の搭乗者は現れる事が無いと言われていた『ラビットシリーズ』の使い手に間違いない。

 

 つまり、目の前の機体の主は紛れもなく超級の凄腕…恐らく、序列も俺より遥か上の筈だ。

 

 『ーー初めまして。私は探索者ランク19位、六条有栖。首刈り兎(ボーパルバニー)と名乗った方が、通りがいいかしらね』

 「……っ!」

 『序列19位、首刈り兎! エネミーやキャンサーのみならず、敵対した盗掘者の首を悉く斬り落としたとか言われている序列上位者(ハイランカー)か……っ!』

 

 機体の主、有栖の名乗りに俺は戦慄し、双葉も驚愕を露わにした。序列19位、首刈り兎……その名前は、あまりに有名だった。

 

 通常、単独攻略が難しいと言われている未踏領域を仲間の一人も持たずに我が物顔で蹂躙し、敵対者は相手が人間であっても容赦なく首を落とすと言われる危険極まりない孤高の凄腕……それが、序列19位首刈り兎にまつわる噂だった。

 

 いずれにせよ、序列91位の俺よりも遥か高みに存在する序列上位者である事に間違いはない。その彼女が何故、此処に現れたのかは疑問がつきない。

 

 話に聞く限り、彼女は窮地に陥った探索者がいてもわざわざ助けようとするようなお人好しではない筈だ。むしろ、下手に助けを求めれば彼女自身の手で引導を渡されかねないだろう。

 

 その彼女が何故、統率個体と相対する自分の下に現れたのかは分からない。しかし少なくとも、彼女から俺に対する明確な敵意は感じ取れなかったのは事実だ。

 

 『それで、その序列19位様がなんで此処に来たワケ? 赤の他人を助けるようなタマだとは思えないけど?』

 

 双葉は俺には決して向けない敵意丸出しの表情で表情画面越しに有栖を睨みつけ、遠慮なく値踏みするような視線を向けている。

 

 ……双葉は一見善良な少女だが、特級プログラマだけあってその実癖の強い性格をしている。

 

 有り体に言えば、彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 彼女にとって()()とは即ち俺やノインさんといった()()の事で、()()()()()()()()()()()()というのが双葉の持つ価値観だ。

 

 特に他の探索者相手にはその傾向が強く、遺跡で気に入らないタイプの探索者と遭遇した際には容赦のない毒舌を浴びせるのが常である。

 

 双葉は基本的に人間不信で、俺とノインさん以外の人間は誰一人信用していない。

 

 双葉のこの極端な性格は彼女の過去に原因があるのだが、ともあれ彼女にとっていきなり理由も分からず現れた有栖は()であると認識しているのだろう。

 彼女の視線には、敵意どころか殺意がありありと浮かび上がっていた。

 

 『あら、礼のなっていないサポートね。これでも私は、彼の救援をしようとやって来たのよ? そんな不躾な視線を浴びせられる理由は、ないと思うのだけど?』

 『黙れよ兎女、それが信用出来ないっつってんのよこっちは。その様子じゃ、怜二がやられそうになる前から見物してたんじゃないの? 一度は見殺しにしようとした相手を助けようとするなんて、何様のつもり?』

 

 双葉は険しい顔で問い詰めるが、有栖は何処吹く風だ。

 

 『ふふ、それは誤解だわ。私はこの先で大量のキャンサーを処理していてその最中に彼に気付いただけよ? 幾ら私でも、あの数のキャンサーを処理するには時間がかかってね。彼の窮地に駆け付けられなかったのは、それが理由よ……まあ、()()()彼を助ける気がなかった事は否定しないけれど』

 

 表情画面を展開した有栖は双葉の罵声にも怯む様子はなく、不敵な笑みでそう宣った。

 表情画面に映る有栖の姿は眼元が隠されていて詳細は分からないが、片方だけ三つ編みに結んだ流れるような青いロングヘアと整った顔立ちは伺う事が出来た。

 

 その口元は愉快そうに歪んでおり、彼女自身この状況を楽しんでいる事が理解出来た。どうやら、彼女は中々に()()()()をしているらしい。

 

 「待て双葉、幾ら何でもこの状況だ。正直、序列上位者の手助けがあるなら願ってもない。納得出来ないのは分かるが、俺は彼女と共闘したいと思う」

 『怜二……っ! でも……っ!』

 「気持ちは理解出来る。けれど、この機会(チャンス)を逃せば統率個体相手に生き残れる確率は低い。分かってくれ」

 

 だが、それでも序列上位者の救援というのは何より心強い。悪名高い統率個体を相手にするのならば、彼女の救援を受ける以外に生き残る事は難しいだろう。

 

 正直、先程のような奇跡がそう何度も続くとは思えない。自分自身、一体何がどうなって助かったのか理解出来ていないのだ。

 事情を知っていそうなあの謎の少女はいつの間にか姿を消しているし、不確定な可能性に自分の命を預けたくはないのが本音だった。

 

 『…………分かった。でも、その女の動きは常にモニターしてるから。何か怪しい動きがあったら、容赦しない』

 「ありがとう、双葉。それで有栖、俺と共闘してくれる……という事でいいんだよな?」

 『ええ、そのつもりで来たのだもの。今更、前言を撤回したりはしないわ。私とこのヴォーパル・ラビットが、貴方の為の力になるわ。よろしくね、怜二』

 

 有栖は妙に親し気にそう呼びかけ、その様子に表情画面に映った双葉の眉が吊り上がるが、俺はそんな双葉をアイコンタクトで制し、有栖と共にイニクィタティスに向き直った。

 

 『6j5、6j5f、jxt……!』

 

 イニクィタティスはこちらを‥…否、有栖を見据えて狼狽したように機体を震わせた。その理由までは知った事ではないが、ともあれこれでようやく勝機が見えて来た。

 

 「さあーー」

 『ズタズタに、斬り刻んであげるわ……っ!』

 

 --そして俺は有栖と共に機体を疾駆させ、イニクィタティスとの戦闘を再開した……!




 というわけで満を持してメインヒロイン登場です。兎といってもパレットのあの子とは関係ないのであしからず。まあ、パレットやったの大分前なんで記憶は朧げなんですが。

 フォースは繰り返し何度も何度もやったから覚えてるけど、フォース程キャラに思い入れはなかった気がする。フォースのゲンハとか、最終ルートのあのシーンで好きになったし。ああいう言い訳しない悪役って凄くいいと思うんです。ヒロインではバチェラが好きかな。

 スカイで好きなキャラは前作を見た方は分かる通り、絶対正義クリスと真ちゃんの二強です。クリスは声や台詞が好みだし、真ちゃんもさらっと毒を吐くのが素敵です。毒舌系のキャラが結構好きなんですよね。
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