転生しても僕だった件——凍結中——   作:らんらん

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序章
唐突すぎる死


 唐突だが僕、阿良々木暦は死んだ。

 いや、マジでマジで。

 これ以上ないくらい簡単に、紙を裂くかのように軽々と殺されたのだ。それも、なんて事のないトラックに轢かれて。

 怪異がらみや人助けがらみで死ぬのならまだ格好がつくのだが、トラックだ。それも、完全に自分の責任だ。

 だって、横断歩道を歩いてたら偶然向かいに羽川がいて、偶然風が吹いて偶然スカートが捲り上がって偶然羽川のパンティが目に入ってきたのだから誰だってその場で固まるだろう。もちろん、僕だってそうだ。

 一体なぜただの布一枚でここまで人を魅了することができるのか。肌にひっついていると言う点だけを見れば、パンティなんて靴下と一緒ではないか。訂正、靴下だと興奮するので他のものにしよう。ならば、服だ!羽川の上着!あの柔らかそうな肌と常に触れ合いながら、羽川が少しでも汗を書くたびにその全てを吸収してその内部に備蓄しているあの布と一緒だろう。訂正、上着でも興奮する。だとすると何なのだろうか。羽川の肌に触れながら僕が興奮しない布とは。

 ……………ないものは証明できない。悪魔の証明。Q!E!D!

 そもそも、パンティなんて物を開発したのが悪いのだ。いや、スカートだ。あんな見えるか見えないかなギリギリのラインを攻めて清純さと程よいエロスを醸し出す服を開発した人!グッジョブだ。その程よいエロスを制服に指定した校長先生にも敬意を払って敬礼したくなってくる。思わず頭痛が痛いみたいな言い回しをするほどに。

 話を戻そう。そもそも、なぜパンティはただの布っきれに過ぎないのに人を魅了するのか、だったか。

 

 パンティ。

 

 この言葉だけでも男ならば反応してしまうだろう。こと羽川翼のパンティとなれば女でも反応してしまうかもしれない。もはや神々しさまで兼ね備えている羽川のパンティ、実は僕は複数回観たことがある。観察したことがある。

 特に、初めて見た時の事は今でも鮮明に思い出すことができる。なにせ、その日は地獄の春休みのきっかけとなった日なのだから。まあ、例え地獄の春休みのきっかけとなった日でなくとも、あの事は絶対に鮮明に思い出すことができると思うのだけれど。あの清純そうな見た目とは裏腹にまぁドエロいパンティを……いや、羽川が来たらどんなにエロいパンティだろうがそれはもう清純になるのだけれど。マイクロビキニだって、羽川が着たのならばそれはもう清純でしかない。

 そもそも論として、僕は別に羽川のパンティをエロい目で見ていたから立ち止まったわけではないのだ。なにせ、僕が跳ねられた時にとっていたポーズは、合唱だったのだから。

 あまりの神々しさに思わず手を合わせて感謝してしまった。

 そう、神々しすぎて興奮してしまったのだ。別に、久々に見たらやっぱりエロいパンティで羽川がつけていてもエロいものはエロいんだヒャッホーイ!って思っていたわけではない。

 さて、そんな羽川のパンティだが、どんなものだったと思う?今僕が言ったことだが、まあドエロかった。ドエロいという表現が適切かどうかは分からないが、少なくとも僕が知っている中で最もセクシーな一般下着である黒のレースを履いていたのだ。

 それはそれは神々しかったさ。まるで太陽、色合い的に言うのならば漆黒の太陽が如き輝きで僕を照らしてくれた。人生で最後に見たものが羽川のパンティだというのならそれはとっても嬉しいなって。

 羽川のパンティ、なんて素敵な響きなのだろうか。

 きっと、その言葉を聞いたら誰だって立ち止まるだろう。ましてや、実物をその目で見たときには思わず瞬間記憶法を瞬時にマスターしてその風景を永遠に脳内に留めておくだろう。

 かく言う僕だって、瞬間記憶法をマスターしたかは知らないがさっきの羽川のパンティのことはこと細やかに思い出すことができる。そのシワや若干明るさに違いのある黒色、まるで草木がその場で自生しているかのような模様まで、全てをだ。

 つまり僕がなにを言いたいかと言うと、羽川のパンティは最高だぜ!って事だ。

 最後で最高。

 僕の人生の終着点で見えたものは、皮肉にも僕の人生が再び動き出したその日の始めに見たものと同じだった。同じ柄だった。

 ところどころの色褪せ具合から考えるに、もしかしたら同じ下着なのかもしれない。

 どんな偶然だよ、と笑ってしまいそうになるが、そもそも今の僕にはそんな余裕はないのだった。

 なにせ、僕は死んでしまったのだから。

 死んでしまったと言っても、別にまだあの世に行ったわけではない。ただ体を動かせなくなって、言葉すら発する事のできない状態でトラックの前に横たわっているだけなのだから。

 すぐに駆け寄ってきた羽川は、涙を流してくれていた。僕の止血や蘇生を始めたが、どれも効果を発揮させなかった。羽川が素人だから、ではなくもう手遅れだったのだ。

 なぜか忍の気配がせず、なぜか吸血鬼性も発動しなかった。発動したからといってこの傷が治る気はしないので別に問題ないのだが。

 

 《確認しました。吸血鬼性獲得・・・成功しました。続けて忍野忍の獲得・・・失敗しました。よって代行措置として吸血鬼性超強化・・・成功しました》

 

 ともかく、だ。僕、阿良々木暦は死んだのだ。

 意識がだんだんと朦朧としてくる。クソ、もっとしっかりしないと。

 

 《確認しました。意識覚醒獲得・・・成功しました》

 

 痛みには慣れているからまだいいのだが、手足が動かせないのが困る。

 

 《確認しました。断固実行獲得・・・成功しました》

 

 せめて、血が止まればなんとかなるのに。いや、傷も治って欲しいのだが。

 

 《確認しました。止血加護獲得・・・成功しました。続けて自然治癒促進獲得・・・成功しました》

 

 いや、まずあのトラックを避ける事が出来て入ればよかったのだ。クソ、羽川のパンティめ!なんて魅惑的なんだ!

 

 《確認しました。反射上昇獲得・・・成功しました。続けて魅力拒否獲得・・・失敗しました。よって代行措置として鋼の意思獲得・・・成功しました》

 

 だめだ、眠くなってきた。だがここで眠れば絶対に起きる事が出来なくなるだろう。確実に起き続けなければ。あとなんかお腹すいたな。

 

 《確認しました。不眠不休獲得・・・成功しました。続けて空腹対策獲得・・・成功しました》

 

 てか、さっきから明らかに羽川ではない声が聞こえる気がする。通行人のだれかだろうか?だけれど、その声はどこか生気のない機械音声のような……

 視覚すらぼやけてきた。肌の感覚もない。音も聞こえない。味はもちろん匂いもしない。

 

 《確認しました。五感強化獲得・・・成功しました。吸血鬼性に現在保有しているスキルを掛け合わせユニークスキル『鉄血にして(キスショット・)熱血にして(アセロラオリオン・)冷血の吸血鬼(ハートアンダーブレード)』を会得しました》

 

 

 

 

 

 そして阿良々木暦は、意識を完全に手放した。

 阿良々木暦の魂はその時、完全にこの世からいなくなったのだ。

 魂のかけらも残る事はなく、この世から完全に消え去るはずだった。いや、消えるは消えた。

 阿良々木暦の魂は天に昇る前に何かに引っかかり、別の時空に飛ばされたのだから。

 そんな必然的偶然の結果、阿良々木暦は転生し他の世界で過ごすこととなる。

 これはそんな彼の不思議で可笑しい転生物語。そう、転物語(ころびものがたり)

 

 

 

 

 

 

 死、というものは思いの外予想の範囲内だった。

 体に力が入らなくなり、全てが黒くなる。これは単純に瞼を閉じたからかもしれないが、目を開けたとしても暗いのだろう。

 ふと耳を澄ましてみると、水が滴る音が聞こえる。中を鳴らせば、湿気た苔や水の香りが鼻腔をくすぐる。肌に集中してみると、肌に当たる空気がわかった。

 あれ?死んでなくね?

 恐る恐る瞼を開けてみると、そこは見知らぬ洞窟の中だった。

 ここから見えるだけでも、いくつも道があるのがわかる。

 僕は、死んでいなかったことに安堵しながらも、ここはどこなのか、また僕はなぜここにいるのかを考えていた。

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